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連載
隠れて護衛④
「熱いからね」
『あっついのですーッ』
『熱いわーッ』
「言ったやん」
ビアンカとルージュの分のお好み焼きを並べる。途端にがっつくので、熱いと連呼する。
「ゆっくり食べり」
『あつつ、いい匂いなのに直ぐに食べれないのですぅ』
『エビの匂いもしてるのにぃ』
「はいはい、ちょっと待って」
私はうちわで軽くパタパタする。いい温度になってばくばく食べ出す。
『美味しいのです。中身が違うのですね』
『私はエビがいいわ、あ、貝柱も美味しいわね』
『あ、ドラゴンの肉も入っているのですね』
『あと、これは何かしら? 好きな味だわ。この赤いピリッとしてるのは?』
「それね、クラーケンを小さく切って入れとるんよ。赤いのは明太子ね」
『そうなのですね。クラーケン美味しいのです。あ、目玉焼きもあるのです』
『本当。あ、チーズも入っているわ』
いろいろのバリエーションがある。母が具材にドラゴンの筋煮や、明太子、目玉焼きを追加。ちなみに我が家はお好み焼きに餅はいれない。
仔達はエビと貝柱とクラーケンのお好み焼きと、ウサギ肉の親子丼だ。少し冷まして、と。がふがふ言いながら食べてるから、美味しいのだろう。
ビアンカとルージュもげふう、と満足してから、私達もゆっくりお好み焼きだ。
私は豚バラとエビとクラーケン。母も同じ。晃太はドラゴンの筋煮とエビ、貝柱にクラーケン。たっぷりネギをのせてる。父は豚バラとエビ、明太子、ネギをそこそこ。
ホークさんは豚バラにクラーケン、サイコロ状に小さく切ったモッツァレラチーズ。チュアンさんはエビと貝柱、目玉焼き。マデリーンさんはエビとクラーケン、ピザ用のチーズ。ミゲル君はドラゴンの筋煮と目玉焼き。エマちゃんとテオ君は、豚バラとエビとクラーケンだ。鷹の目の皆さん、明太子にはちょっと抵抗ある様子。こちらでは魚卵を食べる習慣がないそうだ。
ちょっと小振りに焼いて、2枚目何にしようかな?
本日はアルコールオッケー。私は缶チューハイ、晃太とチュアンさんは芋焼酎。これは異世界のメニューで追加した、セレクトショップダリアの品だ。両親とホークさん、ミゲル君はビール。マデリーンさんはロゼだ。エマちゃんとテオ君はお茶ね。
「では、いただきます」
「「「「いただきまーす」」」」
マヨネーズ付けて、ぱくり、あっつい。ふふ、やっぱり母の生地はふわふわで美味しい。クラーケンも普通に烏賊で、まるでミックス焼きみたいな感じや。
久しぶりにお好み焼きパーティーや。
1枚目をペロリと食べてしまう。次の生地をホットプレートにお玉ですくってのせる。
「姉ちゃん、わいのも」
「はいはい」
『ユイ、私もなのです』
『私はエビ多めね』
「まだ、食べるね? もう、1枚だけよ」
ビアンカは豚バラとクラーケン、目玉焼き。ルージュは多めにエビとクラーケン。ちょっと大きめサイズで焼く。
晃太はドラゴンの筋煮、目玉焼きにたっぷりネギ。私はエビと貝柱とクラーケン、ピザ用チーズ。
鷹の目の皆さんも、ホットプレートで2枚目を焼き始めている。
「リーダー、焼いてあげる」
エマちゃんがお玉を持ち、テオ君は具材の皿を持ち、奉行と化している。
「大丈夫か?」
「大丈夫。ちゃんとケイコお母さんのお手伝いしたから出来る」
「なら、肉とエビと、クラーケン。上にネギのせてくれるか?」
「分かったっ。チュアンはっ?」
「ん? 焼いてくれるのか? ありがとうエマ、テオ。そうだな、肉とクラーケンとネギをたっぷりで」
「「分かったっ」」
お好み焼き奉行となったエマちゃんとテオ君がせっせと焼く。かわいか。鷹の目の成人組が微笑ましい顔してる。
マデリーンさんは貝柱とクラーケン、モッツァレラチーズ。ミゲル君はたっぷり豚バラとピザ用チーズだ。
4枚焼いて、それから自分の分を焼いてる。エマちゃんは豚バラと貝柱とエビと、モッツァレラチーズだ。テオ君はドラゴンの筋煮、目玉焼きにしている。
皆でワイワイ楽しいお好み焼きパーティーは楽しい。
両親も楽しい様子で追加で焼く。母はエビと貝柱、父はエビと明太子。
従魔の部屋から、わんわん、にゃんにゃんが始まる。
『ユイ、元気とコハクが足りないようなのです。私は赤いのとクラーケンとエビとチーズなのです』
『ヒスイ達も少し物足りないようよ。私はエビ多めね。お肉とチーズも入れてね』
「まだ、食べるんかい」
すでに10人前くらい食べてるやん。ダイエットはどうした? いくらカロリーハーフのマヨネーズでも、摂りすぎや。
『お母さん、美味しいのです。いくらでも入るのです』
『ええ、とっても美味しいわ。もっと食べたいわ』
きゅるん。皿を咥えてきゅるん。前肢上げてきゅるん。
ジュージュー。
母がホットプレートに生地を流し入れていた。
楽しいお好み焼きパーティーが終わり、後片付けにお風呂が終了。ブラッシングもすんだし、仔達も本日最後の遊びは終了。最近、元気とコハクのサイズが更にアップしているような気がする。まだビアンカやルージュのサイズには届かないけどね。成長期なんやろう、よく食べるし、よく出すし、よく遊ぶし。よかよか。
そう言えば、フェリアレーナ様の輿入れ行列、もう出発して、今はどの辺りだろう? 襲撃予定の場所までの到着予定日は………
なんて考えていると、ホークさんが声をかけてきた。
「ユイさん、少しよろしいですか?」
「あ、はい。何ですか?」
「ちょっと中庭で」
「はい」
なんやろ? 私はホークさんの後に続く。
「ユイさん」
改まるホークさん。
「明明後日にはフェリアレーナ王女様の輿入れ行列が、トッパに入ります。襲撃場所はおそらくあの場所でしょう」
「はい」
明明後日、予定通りだね。よほどの天候不良でもない限り、行列は止まらない。輿入れ行列は、普通の馬車のスピードでは進まない。電車でいう快速だ。馬車より早く駆け抜けて、夜営を極力避ける。まあ、そうよね、王女様をテントで寝かせるのはね。
「ユイさん、改めてお願いです。後方に控えて、前線には出ないでください」
「それは」
前も同じ話をした。襲撃場所にビアンカとルージュを援護に向かわせるのに、主人の私が行かないのはおかしい気がする。それに怪我人がいたら、対応しないと。私にはそれくらいしか出来ない。それにサエキ様やエレオノーラ様に直接お願いされたのは私やし。
「ユイさん」
ホークさんの表情が、いつになく怖い気がする。
「こんなことを言ってはいけないのは分かっていますが、失礼を承知で、はっきり申し上げます。足手まといです」
容赦ないが、ハッキリとした現実問題だ。
「もし、ビアンカさんとルージュさんを先行させて、ユイさんが後から来たとします。もし、ユイさんとフェリアレーナ王女に同時に危険が迫れば、ビアンカさんとルージュさんはどちらを優先しますか? 分かりきってますよね? どんな混戦になるか分かりません、ユイさんは人に襲われたとして、咄嗟に迎撃できますか? 向こうは殺しにかかってくるんですよ」
うっ。
「敵の数は未知数です。ビアンカさんとルージュさんがいれば、襲撃犯なんて直ぐに蹴散らすでしょう。だが、ああいった類いの連中は思わぬ手を使うことがあります。それを防ぐには、連中の息の根を止めること。でも、ユイさんはそれを良しとせず、生け捕りを命じてましたね。サエキ様の命ですが、俺はそれに反対はしません」
ホークさんは息を吐く。
「この生け捕りって言うのは、ただ闘うのとは訳が違います。相手を殺さず、手加減をする。向こうはこちらを殺す気できます。そうなれば、こちらが圧倒的に不利になる可能性があります。下手をすればこちらに犠牲がでます」
「か、返す言葉がございません」
そりゃそうだわ。ドンパチしているなかで、私みたいな素人がいたら、迷惑極まりない。それにビアンカとルージュは、私の身の安全第一のはずだし、最高戦力を欠いたら、フェリアレーナ様達や、護衛のマーファの騎士の皆さんの命が危ない。
でも、私が主人であること、出るであろう怪我人の事を考える。
「ユイさん。ビアンカさんとルージュさんの後には俺たちが続きます。俺達はユイさんの戦闘奴隷ですし、チュアンには治療魔法もあり、応急処置なら俺達全員できます。マーファの騎士なら、ビアンカさんとルージュさんを知らないわけはないはず、おそらく援護に行くことも知らされている。トラブルにはなりませんよ」
私の最も心配していることを、ホークさんがフォローしてくれる。ここまで気にかけてくれてる。私は、受けなくてはならない。
「分かりました、私は後方で控えます。あのホークさん、まさかエマちゃんとテオ君は、連れていったりしませんよね?」
私にしたら、まだまだ未成年な双子。確かにエマちゃんもテオ君も、こちらでは立派な成人だし、冒険者だけど、私は抵抗があった。
「エマとテオは今回は連れていきません。行くのは対人戦を経験している俺達だけです」
対人戦。この様子ならホークさん達は、人と戦ったことがあるってことだ。なんだか、急に怖くなってきた。エマちゃんとテオ君を連れていかないことには安堵したが、怖くなってきた。
日本では正当防衛と言われても、人を殺したら一生日陰に生きているイメージがある。情報社会の世界で、そんなのすぐにバレるし、生きづらい世界。
ここは、そうではない。
人が人を襲い、命や金品を簡単に奪い、それが明るみになりにくい世界。人知れず、命が奪われる世界。人の命が、価値観が違う世界。
私がいるのは、そんな世界。
「ユイさん?」
「いえ、何でもないです。その、ホークさん達が対人戦してるのに驚いて」
「まあ、冒険者なら、避けられない事ですからね」
「そうですか。私もそのうち、避けられないことなんですね」
対人戦、いやや。Gとか、軍隊蟻とか、目のつりあがった家鴨とは訳が違う。いやや。
「そんなことにはさせませんよ」
え? てっきり、そうですね、みたいな返事が来ると思ったけど。下げていた視線を上げて、ホークさんを見上げる。ホークさんは優しい表情だ。
「ユイさんは無理してそんなことしなくていいんですよ」
「でも、私は、冒険者でランクも上げたし」
「だからと言って、無理に対人戦をする必要はないんです。俺だって本心は嫌ですよ、人を斬ったりするのは。ユイさんはビアンカさんとルージュさんの為に、冒険者の資格を取った。それだけでいいじゃないですか。無理して冒険者をする必要はない。そう言った事は全部俺達の仕事です」
なんだか、さっきまで、いやや、いやや、と思って固くなった心に、ホークさんの言葉が染み込んでくる。確かに、私はビアンカとルージュ達のために冒険者資格を得た。それがないと、街に入れないし、私の従魔と示すことで、無理矢理連れていかれるのを防げるから。
「そこまで、皆さんに甘えていいんですかね?」
余りにも、ホークさんの気遣いが優しくて、嬉しくて、疑いたくなる。もしかして、誰かに言われたのかな?
「何を言っているんですか? ユイさん、俺達は貴方に返せない程の恩があるんですよ。俺とエマを救ってくれた、ミゲルの目を治してくれた、これだけでも十分なのに。俺達をパーティーごと買ってくれた。手にすることができないような物を与えてくれた。許される限り、貴方に尽くすのは当たり前なんですよ」
『神への祈り』でホークさんとエマちゃんを治した事は、あれは時空神様、魔力を供給してくれたビアンカとルージュのおかげやし。ミゲル君の目は、たまたまダワーさんが渡してくれた蛇のポーションがあっただけ。
自分の力やない。
「ユイさん。俺とエマはあのままだったら死んでました。チュアンの治療魔法を使っても数日も保たずに。あの状況から、ここまでの回復は通常では有り得ないんですよ、エリクサーか再生魔法でもなければ。俺とエマが死ねば、バラになり、ミゲルはかなり対応の悪い所にしか買われなかったはず。無属性魔法も覚醒していない、剣しか使えない奴隷なんて履いて棄てる程いる。しかも片目は失明、左腕の骨折。買い叩かれたはずです。それに、バーザタイラントの眼球回復ポーションなんて、上級ポーションより高価で滅多に手に入らないんですよ」
「そ、そうなんですか?」
まだ一本あるけど。確かに材料となる蛇の目玉は、不足していて隣国やアルティーナからも問い合わせが来てるけど。
「チュアン達もそうです。まだ、チュアンには治療魔法、マデリーンやテオにはアイテムボックスがあるから、買い手はすぐについたでしょうが、戦闘奴隷なんて、あまり待遇は良くないんですよ。長時間の拘束や、食事なんて黒パンひとかけらなんてザラです。武装だってぼろぼろの中古として売れないような物なこともあるんです。中にはきちんとした所もあるでしょうが、そんな所は僅かです。ユイさんのような厚待遇は、有り得ないんですよ」
契約時、いろいろ聞いたが、実際購入後に労働拘束時間の延長なんてザラだし、衣食住も本当に最低限なのがあたり前だと。中には出来るだけの事をする人もいるが、そんな人は少ないと。ホークさんやチュアンさん達が武装準備の時に遠慮の姿勢だったのは、そんな事情を知っていたからだ。奴隷の武装は最低限と。
「ユイさん。貴女は俺達を救ってくれた」
ホークさんは繰り返す。
「だから、貴女の傷つく事を避ける為に、俺達が動くのは当たり前なんですよ。俺達は貴女の戦闘奴隷なんですから」
とても真剣に、真摯に言ってくれる。
これは、鷹の目の皆さんの気持ちやね。なら、受けとらんと。
「ありがとうございますホークさん。頼りにしてます。やけど、私は皆さんを奴隷って思ってませんからね。うちの一員ですからね」
すると、ちょっと困った顔のホークさん。
「はい、ユイさん」
「じゃあ、中に入りましょう」
「はい」
明明後日、いよいよやな。
一番は何事もなければだけど。それはないやろう。出来れば、ビアンカとルージュの姿を見て、引いてくれることだけど。それもなかろうなあ。
『あっついのですーッ』
『熱いわーッ』
「言ったやん」
ビアンカとルージュの分のお好み焼きを並べる。途端にがっつくので、熱いと連呼する。
「ゆっくり食べり」
『あつつ、いい匂いなのに直ぐに食べれないのですぅ』
『エビの匂いもしてるのにぃ』
「はいはい、ちょっと待って」
私はうちわで軽くパタパタする。いい温度になってばくばく食べ出す。
『美味しいのです。中身が違うのですね』
『私はエビがいいわ、あ、貝柱も美味しいわね』
『あ、ドラゴンの肉も入っているのですね』
『あと、これは何かしら? 好きな味だわ。この赤いピリッとしてるのは?』
「それね、クラーケンを小さく切って入れとるんよ。赤いのは明太子ね」
『そうなのですね。クラーケン美味しいのです。あ、目玉焼きもあるのです』
『本当。あ、チーズも入っているわ』
いろいろのバリエーションがある。母が具材にドラゴンの筋煮や、明太子、目玉焼きを追加。ちなみに我が家はお好み焼きに餅はいれない。
仔達はエビと貝柱とクラーケンのお好み焼きと、ウサギ肉の親子丼だ。少し冷まして、と。がふがふ言いながら食べてるから、美味しいのだろう。
ビアンカとルージュもげふう、と満足してから、私達もゆっくりお好み焼きだ。
私は豚バラとエビとクラーケン。母も同じ。晃太はドラゴンの筋煮とエビ、貝柱にクラーケン。たっぷりネギをのせてる。父は豚バラとエビ、明太子、ネギをそこそこ。
ホークさんは豚バラにクラーケン、サイコロ状に小さく切ったモッツァレラチーズ。チュアンさんはエビと貝柱、目玉焼き。マデリーンさんはエビとクラーケン、ピザ用のチーズ。ミゲル君はドラゴンの筋煮と目玉焼き。エマちゃんとテオ君は、豚バラとエビとクラーケンだ。鷹の目の皆さん、明太子にはちょっと抵抗ある様子。こちらでは魚卵を食べる習慣がないそうだ。
ちょっと小振りに焼いて、2枚目何にしようかな?
本日はアルコールオッケー。私は缶チューハイ、晃太とチュアンさんは芋焼酎。これは異世界のメニューで追加した、セレクトショップダリアの品だ。両親とホークさん、ミゲル君はビール。マデリーンさんはロゼだ。エマちゃんとテオ君はお茶ね。
「では、いただきます」
「「「「いただきまーす」」」」
マヨネーズ付けて、ぱくり、あっつい。ふふ、やっぱり母の生地はふわふわで美味しい。クラーケンも普通に烏賊で、まるでミックス焼きみたいな感じや。
久しぶりにお好み焼きパーティーや。
1枚目をペロリと食べてしまう。次の生地をホットプレートにお玉ですくってのせる。
「姉ちゃん、わいのも」
「はいはい」
『ユイ、私もなのです』
『私はエビ多めね』
「まだ、食べるね? もう、1枚だけよ」
ビアンカは豚バラとクラーケン、目玉焼き。ルージュは多めにエビとクラーケン。ちょっと大きめサイズで焼く。
晃太はドラゴンの筋煮、目玉焼きにたっぷりネギ。私はエビと貝柱とクラーケン、ピザ用チーズ。
鷹の目の皆さんも、ホットプレートで2枚目を焼き始めている。
「リーダー、焼いてあげる」
エマちゃんがお玉を持ち、テオ君は具材の皿を持ち、奉行と化している。
「大丈夫か?」
「大丈夫。ちゃんとケイコお母さんのお手伝いしたから出来る」
「なら、肉とエビと、クラーケン。上にネギのせてくれるか?」
「分かったっ。チュアンはっ?」
「ん? 焼いてくれるのか? ありがとうエマ、テオ。そうだな、肉とクラーケンとネギをたっぷりで」
「「分かったっ」」
お好み焼き奉行となったエマちゃんとテオ君がせっせと焼く。かわいか。鷹の目の成人組が微笑ましい顔してる。
マデリーンさんは貝柱とクラーケン、モッツァレラチーズ。ミゲル君はたっぷり豚バラとピザ用チーズだ。
4枚焼いて、それから自分の分を焼いてる。エマちゃんは豚バラと貝柱とエビと、モッツァレラチーズだ。テオ君はドラゴンの筋煮、目玉焼きにしている。
皆でワイワイ楽しいお好み焼きパーティーは楽しい。
両親も楽しい様子で追加で焼く。母はエビと貝柱、父はエビと明太子。
従魔の部屋から、わんわん、にゃんにゃんが始まる。
『ユイ、元気とコハクが足りないようなのです。私は赤いのとクラーケンとエビとチーズなのです』
『ヒスイ達も少し物足りないようよ。私はエビ多めね。お肉とチーズも入れてね』
「まだ、食べるんかい」
すでに10人前くらい食べてるやん。ダイエットはどうした? いくらカロリーハーフのマヨネーズでも、摂りすぎや。
『お母さん、美味しいのです。いくらでも入るのです』
『ええ、とっても美味しいわ。もっと食べたいわ』
きゅるん。皿を咥えてきゅるん。前肢上げてきゅるん。
ジュージュー。
母がホットプレートに生地を流し入れていた。
楽しいお好み焼きパーティーが終わり、後片付けにお風呂が終了。ブラッシングもすんだし、仔達も本日最後の遊びは終了。最近、元気とコハクのサイズが更にアップしているような気がする。まだビアンカやルージュのサイズには届かないけどね。成長期なんやろう、よく食べるし、よく出すし、よく遊ぶし。よかよか。
そう言えば、フェリアレーナ様の輿入れ行列、もう出発して、今はどの辺りだろう? 襲撃予定の場所までの到着予定日は………
なんて考えていると、ホークさんが声をかけてきた。
「ユイさん、少しよろしいですか?」
「あ、はい。何ですか?」
「ちょっと中庭で」
「はい」
なんやろ? 私はホークさんの後に続く。
「ユイさん」
改まるホークさん。
「明明後日にはフェリアレーナ王女様の輿入れ行列が、トッパに入ります。襲撃場所はおそらくあの場所でしょう」
「はい」
明明後日、予定通りだね。よほどの天候不良でもない限り、行列は止まらない。輿入れ行列は、普通の馬車のスピードでは進まない。電車でいう快速だ。馬車より早く駆け抜けて、夜営を極力避ける。まあ、そうよね、王女様をテントで寝かせるのはね。
「ユイさん、改めてお願いです。後方に控えて、前線には出ないでください」
「それは」
前も同じ話をした。襲撃場所にビアンカとルージュを援護に向かわせるのに、主人の私が行かないのはおかしい気がする。それに怪我人がいたら、対応しないと。私にはそれくらいしか出来ない。それにサエキ様やエレオノーラ様に直接お願いされたのは私やし。
「ユイさん」
ホークさんの表情が、いつになく怖い気がする。
「こんなことを言ってはいけないのは分かっていますが、失礼を承知で、はっきり申し上げます。足手まといです」
容赦ないが、ハッキリとした現実問題だ。
「もし、ビアンカさんとルージュさんを先行させて、ユイさんが後から来たとします。もし、ユイさんとフェリアレーナ王女に同時に危険が迫れば、ビアンカさんとルージュさんはどちらを優先しますか? 分かりきってますよね? どんな混戦になるか分かりません、ユイさんは人に襲われたとして、咄嗟に迎撃できますか? 向こうは殺しにかかってくるんですよ」
うっ。
「敵の数は未知数です。ビアンカさんとルージュさんがいれば、襲撃犯なんて直ぐに蹴散らすでしょう。だが、ああいった類いの連中は思わぬ手を使うことがあります。それを防ぐには、連中の息の根を止めること。でも、ユイさんはそれを良しとせず、生け捕りを命じてましたね。サエキ様の命ですが、俺はそれに反対はしません」
ホークさんは息を吐く。
「この生け捕りって言うのは、ただ闘うのとは訳が違います。相手を殺さず、手加減をする。向こうはこちらを殺す気できます。そうなれば、こちらが圧倒的に不利になる可能性があります。下手をすればこちらに犠牲がでます」
「か、返す言葉がございません」
そりゃそうだわ。ドンパチしているなかで、私みたいな素人がいたら、迷惑極まりない。それにビアンカとルージュは、私の身の安全第一のはずだし、最高戦力を欠いたら、フェリアレーナ様達や、護衛のマーファの騎士の皆さんの命が危ない。
でも、私が主人であること、出るであろう怪我人の事を考える。
「ユイさん。ビアンカさんとルージュさんの後には俺たちが続きます。俺達はユイさんの戦闘奴隷ですし、チュアンには治療魔法もあり、応急処置なら俺達全員できます。マーファの騎士なら、ビアンカさんとルージュさんを知らないわけはないはず、おそらく援護に行くことも知らされている。トラブルにはなりませんよ」
私の最も心配していることを、ホークさんがフォローしてくれる。ここまで気にかけてくれてる。私は、受けなくてはならない。
「分かりました、私は後方で控えます。あのホークさん、まさかエマちゃんとテオ君は、連れていったりしませんよね?」
私にしたら、まだまだ未成年な双子。確かにエマちゃんもテオ君も、こちらでは立派な成人だし、冒険者だけど、私は抵抗があった。
「エマとテオは今回は連れていきません。行くのは対人戦を経験している俺達だけです」
対人戦。この様子ならホークさん達は、人と戦ったことがあるってことだ。なんだか、急に怖くなってきた。エマちゃんとテオ君を連れていかないことには安堵したが、怖くなってきた。
日本では正当防衛と言われても、人を殺したら一生日陰に生きているイメージがある。情報社会の世界で、そんなのすぐにバレるし、生きづらい世界。
ここは、そうではない。
人が人を襲い、命や金品を簡単に奪い、それが明るみになりにくい世界。人知れず、命が奪われる世界。人の命が、価値観が違う世界。
私がいるのは、そんな世界。
「ユイさん?」
「いえ、何でもないです。その、ホークさん達が対人戦してるのに驚いて」
「まあ、冒険者なら、避けられない事ですからね」
「そうですか。私もそのうち、避けられないことなんですね」
対人戦、いやや。Gとか、軍隊蟻とか、目のつりあがった家鴨とは訳が違う。いやや。
「そんなことにはさせませんよ」
え? てっきり、そうですね、みたいな返事が来ると思ったけど。下げていた視線を上げて、ホークさんを見上げる。ホークさんは優しい表情だ。
「ユイさんは無理してそんなことしなくていいんですよ」
「でも、私は、冒険者でランクも上げたし」
「だからと言って、無理に対人戦をする必要はないんです。俺だって本心は嫌ですよ、人を斬ったりするのは。ユイさんはビアンカさんとルージュさんの為に、冒険者の資格を取った。それだけでいいじゃないですか。無理して冒険者をする必要はない。そう言った事は全部俺達の仕事です」
なんだか、さっきまで、いやや、いやや、と思って固くなった心に、ホークさんの言葉が染み込んでくる。確かに、私はビアンカとルージュ達のために冒険者資格を得た。それがないと、街に入れないし、私の従魔と示すことで、無理矢理連れていかれるのを防げるから。
「そこまで、皆さんに甘えていいんですかね?」
余りにも、ホークさんの気遣いが優しくて、嬉しくて、疑いたくなる。もしかして、誰かに言われたのかな?
「何を言っているんですか? ユイさん、俺達は貴方に返せない程の恩があるんですよ。俺とエマを救ってくれた、ミゲルの目を治してくれた、これだけでも十分なのに。俺達をパーティーごと買ってくれた。手にすることができないような物を与えてくれた。許される限り、貴方に尽くすのは当たり前なんですよ」
『神への祈り』でホークさんとエマちゃんを治した事は、あれは時空神様、魔力を供給してくれたビアンカとルージュのおかげやし。ミゲル君の目は、たまたまダワーさんが渡してくれた蛇のポーションがあっただけ。
自分の力やない。
「ユイさん。俺とエマはあのままだったら死んでました。チュアンの治療魔法を使っても数日も保たずに。あの状況から、ここまでの回復は通常では有り得ないんですよ、エリクサーか再生魔法でもなければ。俺とエマが死ねば、バラになり、ミゲルはかなり対応の悪い所にしか買われなかったはず。無属性魔法も覚醒していない、剣しか使えない奴隷なんて履いて棄てる程いる。しかも片目は失明、左腕の骨折。買い叩かれたはずです。それに、バーザタイラントの眼球回復ポーションなんて、上級ポーションより高価で滅多に手に入らないんですよ」
「そ、そうなんですか?」
まだ一本あるけど。確かに材料となる蛇の目玉は、不足していて隣国やアルティーナからも問い合わせが来てるけど。
「チュアン達もそうです。まだ、チュアンには治療魔法、マデリーンやテオにはアイテムボックスがあるから、買い手はすぐについたでしょうが、戦闘奴隷なんて、あまり待遇は良くないんですよ。長時間の拘束や、食事なんて黒パンひとかけらなんてザラです。武装だってぼろぼろの中古として売れないような物なこともあるんです。中にはきちんとした所もあるでしょうが、そんな所は僅かです。ユイさんのような厚待遇は、有り得ないんですよ」
契約時、いろいろ聞いたが、実際購入後に労働拘束時間の延長なんてザラだし、衣食住も本当に最低限なのがあたり前だと。中には出来るだけの事をする人もいるが、そんな人は少ないと。ホークさんやチュアンさん達が武装準備の時に遠慮の姿勢だったのは、そんな事情を知っていたからだ。奴隷の武装は最低限と。
「ユイさん。貴女は俺達を救ってくれた」
ホークさんは繰り返す。
「だから、貴女の傷つく事を避ける為に、俺達が動くのは当たり前なんですよ。俺達は貴女の戦闘奴隷なんですから」
とても真剣に、真摯に言ってくれる。
これは、鷹の目の皆さんの気持ちやね。なら、受けとらんと。
「ありがとうございますホークさん。頼りにしてます。やけど、私は皆さんを奴隷って思ってませんからね。うちの一員ですからね」
すると、ちょっと困った顔のホークさん。
「はい、ユイさん」
「じゃあ、中に入りましょう」
「はい」
明明後日、いよいよやな。
一番は何事もなければだけど。それはないやろう。出来れば、ビアンカとルージュの姿を見て、引いてくれることだけど。それもなかろうなあ。
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聖女って無給で無休なんですか?じゃあやらないです
こじまき異世界に聖女として召喚されたイラストレーターのチヒロ。しかし聖女には給料も休みもないことを知って「じゃあやらないです」と聖女就任を断る。
「国と人を救う崇高な仕事には、私どもからの感謝を捧げよう」
「心底いらないです」
異世界でまで、やりがい搾取されてたまるかよ。
※小説家になろうにも投稿しています
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
妹を踏みにじった奴らに、復讐の花束を
楠ノ木雫 妹を傷つけたやつは誰だ。
隣国に嫁いだこの国の王女であり双子の妹でもあるクラリスが2年後に亡き人となって帰ってきた。死因すら伝えられず嫁ぎ先の墓にも入れてもらえずに隣国の使者が連れてきた。
この事実に信じられずにいると、クラリスが帰ってくる半年前に戻っていた。
一体隣国でクラリスの身に何があったのか。
絶対に、もうクラリスのあんな姿を見たくない。堅く決意し使節団の使者として隣国に乗りこむ事になった。
※一話で過激なシーンがあります。
【第1回新エンタメ小説大賞】にエントリー中です。
五年も笑わなかった辺境伯の娘が、追放された保育係の令嬢の前で初めて笑った
歩人(あゆと)侯爵令嬢クラリスは、五年間、兄夫婦の公爵家で三人の御子の保育を任されてきた。表向きは「下女扱い」だったが、彼女の保育記録には毎日の歌・手作りの絵札・夜泣きの記録が綿密に綴られていた。「育児など侍女の手伝い。本物の貴族のすることではないわ」兄嫁の侮辱に、クラリスは保育記録帳を置いて去る。訪ねた先は、妻を亡くした辺境伯ロタールの屋敷だった。彼の娘リーリャは六歳、母を亡くして以来、誰の前でも笑わなかった。「五年、御子さま方を見続けたあなたなら、リーリャの心も読めるだろうか」ロタールの不器用な依頼に、クラリスは静かに頷く。春が来る頃、リーリャは初めて声を上げて笑った。クラリスの隣で、ロタールも気づくと微笑んでいた——五年ぶりに。
【完結済】ワザと醜い令嬢をしていた令嬢一家華麗に亡命する
satomi醜く自らに魔法をかけてケルリール王国王太子と婚約をしていた侯爵家令嬢のアメリア=キートウェル。フェルナン=ケルリール王太子から醜いという理由で婚約破棄を言い渡されました。
もう王太子は能無しですし、ケルリール王国から一家で亡命してしまう事にしちゃいます!