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結婚式まで④
フェリアレーナ王女様の歓迎の為に集まった人達で道がごったがえしている。
馬車で移動はかえって危ないから、晃太のアイテムボックスに入れて、徒歩移動。
目指すはギルドだ。
到着報告や、トッパ逗留中に溜まった魔物達の買い取りだ。
それからまた依頼の確認しよう。
はぐれない様に慎重に進む。まあ、ビアンカとルージュが進むと、自然と周りが引いてくれるけどね。
無事にギルドに到着、ふう。
「ミズサワ様、お帰りなさいませ」
リティアさんが出てきてくれた。
「到着報告に来ました。それと色々ビアンカとルージュが獲りまして。依頼の確認も出来たら」
「どうぞこちらに」
スマイルリティアさんが、いつもの応接室にご案内してくれた。ノワールはギルド外で、チュアンさん、テオ君、エマちゃんが付いてくれる。晃太は倉庫だ。そっちには、マデリーンさんとミゲル君が付いてくれる。私にはホークさんとビアンカとルージュに仔達だ。ホークさんはソファーの後ろにたち、ビアンカとルージュ達は気ままにゴロン。
「ミズサワ様、襲撃されたフェリアレーナ王女殿下の輿入れにご同行されたのですね」
「はい、流れで」
お願いされました、なんて言えない。誤魔化す。だけど、襲撃の件、すでに知れ渡っているんだ。そう言えばモールス信号みたいな魔道具あるって聞いた。
あれは、たまたま。たまたまトッパにノワールの為に逗留していただけ。そういう体裁にしている。
だけどリティアさんは、笑みを深くする。
「結果姪のマーニが救われました。感謝の言葉がありません」
マーニっていうのは、あのフェリアレーナ王女様の茶髪の侍女さん。リティアさんのお姉さんの娘。つまり姪ね。
「ビアンカとルージュが優秀なので。本当にそれだけですよ」
「それでも、感謝しております」
今日は感謝されてばっかり。照れます、照れます。
「リティアさん、また、冷蔵庫ダンジョンに行こうと思っていますが」
「依頼でございますね。実はミズサワ様にお願いしたい高ランクのものがありまして。それからタージェルからもお願いがございます。直ぐにこちらに来ると」
『もう来てるのです』
『見上げた根性ね。息切れしてるわ』
わーお。タージェルさん、走って来てるの?
コンコン
『商人ギルド、タージェルです』
だけど、そんな気配を感じさせない声。
リティアさんが私に確認。お断りする理由はないしね。入ってきたタージェルさん、穏やかな顔だけど、額に汗が浮かんでいる。走って来たね。
「お帰りなさいませ、ミズサワ様」
「只今戻りました」
タージェルさんとも挨拶を済ませる。そこに女性職員さんがお茶を出してくれる。
「それで、お願いとは?」
私が切り出す。
「まず、冒険者ギルドからです。セザール様とフェリアレーナ王女殿下の結婚式が、来月行われる事に関連した依頼でございます。出席される貴族の皆様、まあ、奥方様達より、フレアタートルの依頼が殺到しております」
はい、分かりますよ、コラーゲンでしょ。あのコラーゲン鍋、何故か私の顔が艶々にならない。膝とか肘とか踵とか見えないところが艶々になるんよね、晃太はいつも顔がてかてか。きぃぃ。
「それ以外にも、上層階の乳製品や、肉や海産物の依頼が来ております。今回の結婚式のあと、短い期間ですがマーファが社交場になりますので」
いつもなら、首都が社交場なのだけど、今回の結婚式の前後は国の主要な貴族達が集まる為にそうなると。他国からの特使達も来るし、その家族も来る。社交場となれば、飲酒を伴うので、当然お料理も出される。その材料確保の依頼だ。
「特に問題ありません。少し引き取りさえ出来れば」
後ろから、食べたいのですー、食べたいわー、と視線が突き刺さるからね。
「商人ギルドからですが。私としては無事にミズサワ様に戻ってきてくれさえすれば何もございませんでしたが、お願いがございまして。職人ギルドも関わって来ます。以前お譲り頂いた布がまだあれば、それとダンジョンで出るシルクをギルドに回して頂けませんか?」
「布?」
「はい。今回、結婚式で国中から貴族の方々がマーファに集まります。中には冬をマーファで過ごす方もおります。茶会や夜会も行われるでしょう」
ふむふむ。
お貴族様は、そういった場所には新しいお衣装で行くことが多い。長くマーファにいれば当然、現地で新しく拵える事もある。つまりパーカーさんみたいな仕立て屋さんが忙しくなる。マーファは第2都市。仕立て屋さんはパーカーさんだけではない。
あ、分かった。
一度だけギルドに布を卸した。あれはぺんたごんの布で、冷蔵庫ダンジョンから出た布は、フェリアレーナ王女様の花嫁衣装予定のものだけ。それもハルスフォン伯爵家に寄贈したしね。結構冷蔵庫ダンジョンからシルクが出たけど、パーカーさんにしか卸してないし、それ以外は母が仕立ている。
タージェルさん的には、他の仕立て屋さんにも上質な布を回して、経営と言うか、社会活性したいんだね。
マーファの経済が活性化すれば、色々良いことになるかな。ちら、と聞くと、そんな感じです、と。また、パーカーさんのように自分のお店を持っている人ばかりではない、どこかの工房に所属している。最大の工房は、マーファのギルド直営の工房。大半の新人さんはギルド直営の工房に勤め、パーカーさんのように独立したり、そのまま勤めたりだ。飛び抜けてお給料が高い訳ではないが、自力でお店を構えるなんて大変なのは皆分かっている。ギルド直営の工房は、片親の人も多い。託児所や保証とかあるそうで。以前卸した布は、そんなマーファ直営工房に買い取られ、人口増加に伴い盛況で、臨時ボーナスも出たと。今回、社交場になるなら、仕事が増える。ギルド直営工房だけではなく、あちこちの工房でお互いに刺激になれば、活気に溢れる。かつての首都のように。
お互いに刺激になるのはいいけど、やはり仕立て屋さんに必要となるのは針子さんやテーラーさん、そして材料だ。私に求められているのは材料ね。それぞれの工房によって、ターゲットとなる階層は違うけど、出来るだけ多種類の布を手に出来れば、と思っていますと。
「分かりました。布が出たら回します。晃太、弟のアイテムボックス内にまだ少し手付かずの布もありますが」
あのご褒美部屋で出た大量の布。流石にすべてをパーカーさんは買い取れなかった。母が何着かワンピースとかにしているが、まだ、手付かずがあったはず。
「良かったら是非とも卸していただけませんか?」
「母とも相談させてください」
「はい」
それから麻や綿の布も出来たら回して欲しいと。私がパーカーさんに卸している布が、好評の様で、タージェルさんも当然チェックしている。
どうしようかな。以前卸した無地とかギンガムチェックとかならいいかな。ぺんたごんに行こう。
タージェルさんと話して、明後日、持ってくることになる。
『ユイ、コウタなのです』
『来たわよ。別の雄もいるわ』
「別の?」
コンコン
『失礼、ストヴィエです。よろしいでしょうか?』
あら? ストヴィエさん。
リティアさんとタージェルさんが顔を見合わせる。そして私にお伺い。
「構いませんよ」
ドアから姿を見せたのは冒険者ギルドマスターのストヴィエさんだ。なんだろう? 後ろに晃太が少し戸惑いの表情。
「お話し中失礼します。ミズサワ殿に至急確認したいことがありまして」
「な、何でしょう?」
「先ほど持ち込まれたもので」
あらら?
嫌な予感。
私はビアンカとルージュをちらり。ビアンカは後ろ足で耳の後ろをかきかき。ルージュは毛繕い。全く興味なしの姿勢。
「レッサードラゴンがありましたが、あれはどちらで?」
ドラゴンとなっ。
ストヴィエさんのこめかみがピクピクしてる。リティアさんとタージェルさんが唖然。
レッサードラゴンは時折シーラの試練のダンジョンや、魔境に出て確保される。以前マーファでビアンカとルージュが確保した普通のドラゴンより、ワンランク低い魔物だけど、脅威は脅威だ。あの冷蔵庫ダンジョンから落ちた熊よりは強いそうだ。
私は、ぎゅるん、とビアンカとルージュを見る。
「ビアンカさん、ルージュさん」
『私ではないのですよ』
『だって、しつこいんだもの』
「あのね」
ルージュ曰く、ちょっと気晴らしに魔の森を全力疾走したら、そのレッサードラゴンの縄張りに入ってしまったと。向こうにしたら、不法侵入だわな。で、ルージュを迎撃。直ぐに縄張りを出たルージュを追いかけて来た。ルージュが縄張りを出た時点で、そのレッサードラゴンも引けばいいのに、付いてきたと。
『元気とコハクに相手をさせても良かったけど、流石に早いから、私がちょっとね』
ちゅどん、どかん、したのね。気軽に言うが、きっとおお騒動ものやないの?
「生後1年ちょっとになにばさせる気? 本当にもう。怪我がなかったからよかけど」
私が説明すると、ストヴィエさんが場所を確認。かなり魔の森の奥だった事と、他に巣を作ってはいないと聞いて、ほっとしている。
レッサーとはいえドラゴンだ。高価買取となる。
「全てギルドが買い上げても?」
ストヴィエさんが確認。
「発言の許可を」
黙っていたホークさんが挙手。私は構わないけど。ストヴィエさんがどうぞ、してくれた。
「ユイさん、ユイさんとコウタさんの装備にそのレッサードラゴンの革を使用してください」
「え? ドラゴンの革で?」
「そうです。いくらビアンカさんとルージュさんがいるからと言っても、そのポンチョのままでは厳しいですよ。ユイさんはランクA、相応の装備品にしないと」
「まあ、AはAですが。革ぁ」
爬虫類の革、嫌やあ。
リティアさんとタージェルさんをちら、と見ると、まさにホークさんの言うとおり、みたいな顔だし。
「ミズサワ様、彼の言う通りです。これだけの従魔がいて、装備がそのポンチョでは、釣り合いません」
リティアさんが頷きながら言う。いやいや、元が釣り合ってないし。だけど、高位ランクの魔物を従魔にしているのに、ぺんたごんの布製ポンチョに、武器なんてフライパンだしね。確かにおかしいかな?
「レッサーとは言えドラゴン。十分ミズサワ様に相応しいかと。物理的魔力的防御力は最高でしょうか」
タージェルさんまで。確か革系最高だったなあ。
でも、爬虫類。
「晃太、どうする?」
「爬虫類やろ? いややけど、よく考えたらワイバーンも爬虫類やしなあ。良かない? あ、そや、ノワールの馬具にしたらどうかね?」
「よかな。あ、それとエマちゃんに新しかジャケット作るかね」
「ユイさん、奴隷にドラゴンの装備品はちょっと…………」
ホークさんが待ったをかける。
「そうですか? でも、エマちゃんのジャケット、傷が入ってしまったし」
そう、あのワイヤーみたいのに絡まれ傷が入っている。
「まだ十分に使えます」
「そうですか?」
そこにストヴィエさんが会話に加わる。
「ミズサワ殿、あのレッサードラゴンの革は少々厚みがあります。エマとはあの小柄の少女でしょう? 重量もあり、彼女が着ると動きに制限が来ます。ワイバーンの革の方が最適ですよ。ワイバーンはドラゴンに比べて防御力はどうしても落ちますが、それでも他の革に比べて上質です。何より軽く薄いですからね」
なるほど。なら、軍隊ダンジョンで、ワイバーンの革を手にいれなくては。
「ありがとうございます、では革は引き取ります。あ、お肉は? レッサードラゴン食べれますか?」
『レッサードラゴンはあんまり美味しくないのです』
『筋っぽいし、ちょっと臭いのよね』
ああ、だからレッサードラゴンを狩っても騒がなかったわけね。晃太も、食べんと? と聞いていて、そんな返答だった為に、レッサーやし大したことないんやな、って思っていたみたい。
じゃ、お肉はお断り、と。
革だけ引き取りの手続きを済ませる。レッサードラゴンの革を扱える革工房は、明後日来るときに幾つかピックアップしてくれるそうだ。ただし、今はどこも忙しいから、またされる可能性は十分だと。それは仕方ない事だしね。
私達はリティアさん達に挨拶して、応接室を出る。そこでダワーさんと鉢合わせ。
「ダワーさん、こんにちは。小児用の薬ありがとうございます。無事に向こうに渡せました」
「それは良かった。ミズサワ殿、レッサードラゴンを持ち込まれたとお聞きしまして」
「はい、ルージュが」
「内臓は? 内臓を回して頂けませんか?」
「革以外は回しましたよ」
「あ、ありがとうございます。これで再びドラゴンのポーションが作れます」
あ、レッサードラゴンでも、ドラゴンのポーション作れるんだ。あのドラゴンよりは出来る数はぐーっと少ないが、それでも助かる人はいる。ダワーさんは製薬でくすんでしまったエプロンで、何度も感謝の言葉を繰り返す。
今日は本当に感謝されっぱなしだ。嬉しか恥ずかしか、照れ照れ。
ダワーさんまでお見送りしてくれて、私達はやっと両親と花が待つ、パーティーハウスに向かった。
馬車で移動はかえって危ないから、晃太のアイテムボックスに入れて、徒歩移動。
目指すはギルドだ。
到着報告や、トッパ逗留中に溜まった魔物達の買い取りだ。
それからまた依頼の確認しよう。
はぐれない様に慎重に進む。まあ、ビアンカとルージュが進むと、自然と周りが引いてくれるけどね。
無事にギルドに到着、ふう。
「ミズサワ様、お帰りなさいませ」
リティアさんが出てきてくれた。
「到着報告に来ました。それと色々ビアンカとルージュが獲りまして。依頼の確認も出来たら」
「どうぞこちらに」
スマイルリティアさんが、いつもの応接室にご案内してくれた。ノワールはギルド外で、チュアンさん、テオ君、エマちゃんが付いてくれる。晃太は倉庫だ。そっちには、マデリーンさんとミゲル君が付いてくれる。私にはホークさんとビアンカとルージュに仔達だ。ホークさんはソファーの後ろにたち、ビアンカとルージュ達は気ままにゴロン。
「ミズサワ様、襲撃されたフェリアレーナ王女殿下の輿入れにご同行されたのですね」
「はい、流れで」
お願いされました、なんて言えない。誤魔化す。だけど、襲撃の件、すでに知れ渡っているんだ。そう言えばモールス信号みたいな魔道具あるって聞いた。
あれは、たまたま。たまたまトッパにノワールの為に逗留していただけ。そういう体裁にしている。
だけどリティアさんは、笑みを深くする。
「結果姪のマーニが救われました。感謝の言葉がありません」
マーニっていうのは、あのフェリアレーナ王女様の茶髪の侍女さん。リティアさんのお姉さんの娘。つまり姪ね。
「ビアンカとルージュが優秀なので。本当にそれだけですよ」
「それでも、感謝しております」
今日は感謝されてばっかり。照れます、照れます。
「リティアさん、また、冷蔵庫ダンジョンに行こうと思っていますが」
「依頼でございますね。実はミズサワ様にお願いしたい高ランクのものがありまして。それからタージェルからもお願いがございます。直ぐにこちらに来ると」
『もう来てるのです』
『見上げた根性ね。息切れしてるわ』
わーお。タージェルさん、走って来てるの?
コンコン
『商人ギルド、タージェルです』
だけど、そんな気配を感じさせない声。
リティアさんが私に確認。お断りする理由はないしね。入ってきたタージェルさん、穏やかな顔だけど、額に汗が浮かんでいる。走って来たね。
「お帰りなさいませ、ミズサワ様」
「只今戻りました」
タージェルさんとも挨拶を済ませる。そこに女性職員さんがお茶を出してくれる。
「それで、お願いとは?」
私が切り出す。
「まず、冒険者ギルドからです。セザール様とフェリアレーナ王女殿下の結婚式が、来月行われる事に関連した依頼でございます。出席される貴族の皆様、まあ、奥方様達より、フレアタートルの依頼が殺到しております」
はい、分かりますよ、コラーゲンでしょ。あのコラーゲン鍋、何故か私の顔が艶々にならない。膝とか肘とか踵とか見えないところが艶々になるんよね、晃太はいつも顔がてかてか。きぃぃ。
「それ以外にも、上層階の乳製品や、肉や海産物の依頼が来ております。今回の結婚式のあと、短い期間ですがマーファが社交場になりますので」
いつもなら、首都が社交場なのだけど、今回の結婚式の前後は国の主要な貴族達が集まる為にそうなると。他国からの特使達も来るし、その家族も来る。社交場となれば、飲酒を伴うので、当然お料理も出される。その材料確保の依頼だ。
「特に問題ありません。少し引き取りさえ出来れば」
後ろから、食べたいのですー、食べたいわー、と視線が突き刺さるからね。
「商人ギルドからですが。私としては無事にミズサワ様に戻ってきてくれさえすれば何もございませんでしたが、お願いがございまして。職人ギルドも関わって来ます。以前お譲り頂いた布がまだあれば、それとダンジョンで出るシルクをギルドに回して頂けませんか?」
「布?」
「はい。今回、結婚式で国中から貴族の方々がマーファに集まります。中には冬をマーファで過ごす方もおります。茶会や夜会も行われるでしょう」
ふむふむ。
お貴族様は、そういった場所には新しいお衣装で行くことが多い。長くマーファにいれば当然、現地で新しく拵える事もある。つまりパーカーさんみたいな仕立て屋さんが忙しくなる。マーファは第2都市。仕立て屋さんはパーカーさんだけではない。
あ、分かった。
一度だけギルドに布を卸した。あれはぺんたごんの布で、冷蔵庫ダンジョンから出た布は、フェリアレーナ王女様の花嫁衣装予定のものだけ。それもハルスフォン伯爵家に寄贈したしね。結構冷蔵庫ダンジョンからシルクが出たけど、パーカーさんにしか卸してないし、それ以外は母が仕立ている。
タージェルさん的には、他の仕立て屋さんにも上質な布を回して、経営と言うか、社会活性したいんだね。
マーファの経済が活性化すれば、色々良いことになるかな。ちら、と聞くと、そんな感じです、と。また、パーカーさんのように自分のお店を持っている人ばかりではない、どこかの工房に所属している。最大の工房は、マーファのギルド直営の工房。大半の新人さんはギルド直営の工房に勤め、パーカーさんのように独立したり、そのまま勤めたりだ。飛び抜けてお給料が高い訳ではないが、自力でお店を構えるなんて大変なのは皆分かっている。ギルド直営の工房は、片親の人も多い。託児所や保証とかあるそうで。以前卸した布は、そんなマーファ直営工房に買い取られ、人口増加に伴い盛況で、臨時ボーナスも出たと。今回、社交場になるなら、仕事が増える。ギルド直営工房だけではなく、あちこちの工房でお互いに刺激になれば、活気に溢れる。かつての首都のように。
お互いに刺激になるのはいいけど、やはり仕立て屋さんに必要となるのは針子さんやテーラーさん、そして材料だ。私に求められているのは材料ね。それぞれの工房によって、ターゲットとなる階層は違うけど、出来るだけ多種類の布を手に出来れば、と思っていますと。
「分かりました。布が出たら回します。晃太、弟のアイテムボックス内にまだ少し手付かずの布もありますが」
あのご褒美部屋で出た大量の布。流石にすべてをパーカーさんは買い取れなかった。母が何着かワンピースとかにしているが、まだ、手付かずがあったはず。
「良かったら是非とも卸していただけませんか?」
「母とも相談させてください」
「はい」
それから麻や綿の布も出来たら回して欲しいと。私がパーカーさんに卸している布が、好評の様で、タージェルさんも当然チェックしている。
どうしようかな。以前卸した無地とかギンガムチェックとかならいいかな。ぺんたごんに行こう。
タージェルさんと話して、明後日、持ってくることになる。
『ユイ、コウタなのです』
『来たわよ。別の雄もいるわ』
「別の?」
コンコン
『失礼、ストヴィエです。よろしいでしょうか?』
あら? ストヴィエさん。
リティアさんとタージェルさんが顔を見合わせる。そして私にお伺い。
「構いませんよ」
ドアから姿を見せたのは冒険者ギルドマスターのストヴィエさんだ。なんだろう? 後ろに晃太が少し戸惑いの表情。
「お話し中失礼します。ミズサワ殿に至急確認したいことがありまして」
「な、何でしょう?」
「先ほど持ち込まれたもので」
あらら?
嫌な予感。
私はビアンカとルージュをちらり。ビアンカは後ろ足で耳の後ろをかきかき。ルージュは毛繕い。全く興味なしの姿勢。
「レッサードラゴンがありましたが、あれはどちらで?」
ドラゴンとなっ。
ストヴィエさんのこめかみがピクピクしてる。リティアさんとタージェルさんが唖然。
レッサードラゴンは時折シーラの試練のダンジョンや、魔境に出て確保される。以前マーファでビアンカとルージュが確保した普通のドラゴンより、ワンランク低い魔物だけど、脅威は脅威だ。あの冷蔵庫ダンジョンから落ちた熊よりは強いそうだ。
私は、ぎゅるん、とビアンカとルージュを見る。
「ビアンカさん、ルージュさん」
『私ではないのですよ』
『だって、しつこいんだもの』
「あのね」
ルージュ曰く、ちょっと気晴らしに魔の森を全力疾走したら、そのレッサードラゴンの縄張りに入ってしまったと。向こうにしたら、不法侵入だわな。で、ルージュを迎撃。直ぐに縄張りを出たルージュを追いかけて来た。ルージュが縄張りを出た時点で、そのレッサードラゴンも引けばいいのに、付いてきたと。
『元気とコハクに相手をさせても良かったけど、流石に早いから、私がちょっとね』
ちゅどん、どかん、したのね。気軽に言うが、きっとおお騒動ものやないの?
「生後1年ちょっとになにばさせる気? 本当にもう。怪我がなかったからよかけど」
私が説明すると、ストヴィエさんが場所を確認。かなり魔の森の奥だった事と、他に巣を作ってはいないと聞いて、ほっとしている。
レッサーとはいえドラゴンだ。高価買取となる。
「全てギルドが買い上げても?」
ストヴィエさんが確認。
「発言の許可を」
黙っていたホークさんが挙手。私は構わないけど。ストヴィエさんがどうぞ、してくれた。
「ユイさん、ユイさんとコウタさんの装備にそのレッサードラゴンの革を使用してください」
「え? ドラゴンの革で?」
「そうです。いくらビアンカさんとルージュさんがいるからと言っても、そのポンチョのままでは厳しいですよ。ユイさんはランクA、相応の装備品にしないと」
「まあ、AはAですが。革ぁ」
爬虫類の革、嫌やあ。
リティアさんとタージェルさんをちら、と見ると、まさにホークさんの言うとおり、みたいな顔だし。
「ミズサワ様、彼の言う通りです。これだけの従魔がいて、装備がそのポンチョでは、釣り合いません」
リティアさんが頷きながら言う。いやいや、元が釣り合ってないし。だけど、高位ランクの魔物を従魔にしているのに、ぺんたごんの布製ポンチョに、武器なんてフライパンだしね。確かにおかしいかな?
「レッサーとは言えドラゴン。十分ミズサワ様に相応しいかと。物理的魔力的防御力は最高でしょうか」
タージェルさんまで。確か革系最高だったなあ。
でも、爬虫類。
「晃太、どうする?」
「爬虫類やろ? いややけど、よく考えたらワイバーンも爬虫類やしなあ。良かない? あ、そや、ノワールの馬具にしたらどうかね?」
「よかな。あ、それとエマちゃんに新しかジャケット作るかね」
「ユイさん、奴隷にドラゴンの装備品はちょっと…………」
ホークさんが待ったをかける。
「そうですか? でも、エマちゃんのジャケット、傷が入ってしまったし」
そう、あのワイヤーみたいのに絡まれ傷が入っている。
「まだ十分に使えます」
「そうですか?」
そこにストヴィエさんが会話に加わる。
「ミズサワ殿、あのレッサードラゴンの革は少々厚みがあります。エマとはあの小柄の少女でしょう? 重量もあり、彼女が着ると動きに制限が来ます。ワイバーンの革の方が最適ですよ。ワイバーンはドラゴンに比べて防御力はどうしても落ちますが、それでも他の革に比べて上質です。何より軽く薄いですからね」
なるほど。なら、軍隊ダンジョンで、ワイバーンの革を手にいれなくては。
「ありがとうございます、では革は引き取ります。あ、お肉は? レッサードラゴン食べれますか?」
『レッサードラゴンはあんまり美味しくないのです』
『筋っぽいし、ちょっと臭いのよね』
ああ、だからレッサードラゴンを狩っても騒がなかったわけね。晃太も、食べんと? と聞いていて、そんな返答だった為に、レッサーやし大したことないんやな、って思っていたみたい。
じゃ、お肉はお断り、と。
革だけ引き取りの手続きを済ませる。レッサードラゴンの革を扱える革工房は、明後日来るときに幾つかピックアップしてくれるそうだ。ただし、今はどこも忙しいから、またされる可能性は十分だと。それは仕方ない事だしね。
私達はリティアさん達に挨拶して、応接室を出る。そこでダワーさんと鉢合わせ。
「ダワーさん、こんにちは。小児用の薬ありがとうございます。無事に向こうに渡せました」
「それは良かった。ミズサワ殿、レッサードラゴンを持ち込まれたとお聞きしまして」
「はい、ルージュが」
「内臓は? 内臓を回して頂けませんか?」
「革以外は回しましたよ」
「あ、ありがとうございます。これで再びドラゴンのポーションが作れます」
あ、レッサードラゴンでも、ドラゴンのポーション作れるんだ。あのドラゴンよりは出来る数はぐーっと少ないが、それでも助かる人はいる。ダワーさんは製薬でくすんでしまったエプロンで、何度も感謝の言葉を繰り返す。
今日は本当に感謝されっぱなしだ。嬉しか恥ずかしか、照れ照れ。
ダワーさんまでお見送りしてくれて、私達はやっと両親と花が待つ、パーティーハウスに向かった。
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【第1回新エンタメ小説大賞】にエントリー中です。
五年も笑わなかった辺境伯の娘が、追放された保育係の令嬢の前で初めて笑った
歩人(あゆと)侯爵令嬢クラリスは、五年間、兄夫婦の公爵家で三人の御子の保育を任されてきた。表向きは「下女扱い」だったが、彼女の保育記録には毎日の歌・手作りの絵札・夜泣きの記録が綿密に綴られていた。「育児など侍女の手伝い。本物の貴族のすることではないわ」兄嫁の侮辱に、クラリスは保育記録帳を置いて去る。訪ねた先は、妻を亡くした辺境伯ロタールの屋敷だった。彼の娘リーリャは六歳、母を亡くして以来、誰の前でも笑わなかった。「五年、御子さま方を見続けたあなたなら、リーリャの心も読めるだろうか」ロタールの不器用な依頼に、クラリスは静かに頷く。春が来る頃、リーリャは初めて声を上げて笑った。クラリスの隣で、ロタールも気づくと微笑んでいた——五年ぶりに。
【完結済】ワザと醜い令嬢をしていた令嬢一家華麗に亡命する
satomi醜く自らに魔法をかけてケルリール王国王太子と婚約をしていた侯爵家令嬢のアメリア=キートウェル。フェルナン=ケルリール王太子から醜いという理由で婚約破棄を言い渡されました。
もう王太子は能無しですし、ケルリール王国から一家で亡命してしまう事にしちゃいます!