文字の大きさ
大
中
小
326 / 878
連載
鉱山の魔物②
宿に帰り、ルームに全員集合する。
「と、言うことで、今からソルトに移動になりました。ノワール、大丈夫ね?」
「ブヒヒヒンッ」
『大丈夫と言っているのです』
頼りになるね。
「アイアンって事は鉄の塊の魔物よね? そんなの倒せるん? ビアンカ、ルージュ、大丈夫ね?」
母が心配している。
『数と大きさ次第なのですが。私とルージュの魔法でなんとでもなるのです』
『そうね。アイアンゴーレムでも闘い方次第では、そう難しくないわ』
『新しい戦闘モードを試してもいいのです』
『私も上位戦闘モードを使って見ようかしら』
母を安心させようと、物騒な話をし始めてる。だが、母は一度も戦闘を見たこと無いため、ピンときてない。
ビアンカとルージュの話によると、アイアンゴーレムは含まれる金属によるが、物理攻撃がゴーレムの中で最も効果がない。ストーンゴーレムなら、身体強化して、一撃するって。いや、ビアンカとルージュの身体強化の一撃って、ドラゴン一撃やないね? アイアンゴーレムの場合は、魔法で外皮をごりごりに削るか、コアの位置を確認して撃ち抜くそうだ。下手に魔法金属を含んでいたら、通常の火力では歯が立たない。レベル500の2人に頑張ってもらうしかない。
ルームの中で、サブ・ドアを開けっ放しにする。父が帰って来たらと、色々鑑定のお願いをしておく。宿を後にして、お昼寝モードの仔達を馬車に乗せる。
晃太が地図を確認。
「どれくらいで着く?」
「ノワールのスピードなら、夕方前には十分間に合うよ」
「そうな。ノワール、無理せんでね」
「ブルブルッ」
馬車を繋ぎ、晃太とホークさんが馭者台に上がる。わざわざアステリさんがお見送りにきてくれた。
私は馬車の中で、ルームを開けて、おねむな仔達を誘導する。
私は馭者台の窓から、ホークさんに声をかける。
すぐに、馬車は動き出した。
鉱山の町、ソルト。ノワールの足でスカイランから3時間。本来なら半日近くかけての移動だ。
規模的にはスカイランの半分くらいの町だ。管轄はスカイラン領主。
ぐるりと高い柵に囲まれている。
門では半信半疑の表情されたが、木札を見せると、直ぐにギルドに案内してくれた。
「本当にきてくれるとは、とにかくありがたいです」
案内してくれた門番さんは、しきりに感謝している。
「ゴーレムなんて討伐料以外、倒しても旨味はありませんから断られるんじゃないかって心配していました。さ、こちらです」
「ありがとうございます」
門番さんがギルドまで同行してくれたので、じろじろ見られたが、騒ぎにならなかった。
ギルドもスカイランのより小さい、ダンジョンもないしね。石喰いの魔物が出るし、魔の森も近いので、冒険者は当然にいる。
私は晃太と、ホークさん、ルージュ、と中に入る。仔達はさっき起きたが、再びおねむで馬車の中。ギルド内に入ると、ルージュの姿にぎょっとされたが、当のルージュは知らん顔。
門番さんはギルド内まで付き添ってくれて、直ぐに窓口まで繋いでくれた。
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ、こちらのセリフですよ。テイマーさん、どうぞお願いします」
門番さんは一礼して戻っていった。
さて。
「スカイランのギルドより、討伐依頼を受けましたミズサワです」
私は預かっていた手紙を提出。
まあ、ルージュと門番さんで察してはくれていたみたい。
対応してくれた、中年男性は、直ぐに私達を奥に誘導してくれる。
古いが綺麗に掃除され、趣のある応接室に通される。
「こちらでお待ちください」
そういって中年男性は一旦退室。ルージュは気ままにごろり。ソファーに座って待つと、どすどすとした足音が。
『敵意なし。興奮しているけど』
「お待たせしたっ、テイマー殿っ」
ノック直後に、ばあーん、と扉を開けたのは、ひゃー、すごい迫力のあるごつい男性がっ。髭もじゃ、白髪混じり茶髪の天パが入ってもじゃもじゃ。わあ、ダワーさんと初めてお会いした時みたい。
町中に、山賊が。
あ、失礼だね。ギルドのお偉いさんだね。
「ど、どうも…………」
「ああ、失礼、儂は冒険者ギルドマスターのビオーザだ。討伐依頼を受けていただき感謝しますテイマー殿」
「いえいえ」
こちらこそ山賊って思ってしまってすみません。
山賊、失礼。冒険者ギルドマスタービオーザさんは、見た目と違い丁寧に会釈する。私と晃太もソファーから立ち上がりお辞儀。
ビオーザさんは私達に着席を促し、対面のソファーに座る。
「早速で申し訳ないが、依頼の話でよろしいですかな?」
「はい」
アイアンゴーレムが出たのは2週間前。
メインの坑道の奥で、新しい坑道が見つかり、ソルトが沸き立った。しかし、調査に入って直ぐに、アイアンゴーレムが顔を出したので、調査隊は引き返しバリケードを張った。上位ゴーレムは縄張り意識が高いが、行動範囲が広いわけではないので、そこでおとなしくしているならと様子を見た。新しい坑道で、新しい鉱脈がでると沸いていたが、命が最優先だ。崩落させる手もあるが、連動してあちこち崩落したら目も当てられない。ギルドと役場が封鎖の判断を下し、土魔法のレベルの高い魔法使いを、国から派遣してもらう手はずを整えた矢先。アイアンゴーレムがバリケードを破り、メインの坑道に侵入。居座ってしまい、どうにも出来なくなってしまった。
「小型のストーンゴーレム程度なら、誘きだして、総動員で対応したが、アイアンとなれば話は別だ。とてもじゃないが、歯が立たん。そこにテイマー殿が軍隊ダンジョンに挑んでいるのを思い出して、依頼した次第です」
ストーンなら地道に魔法でコツコツ削るが、アイアンは金属だし、上位種だからと魔法攻撃も物理攻撃も通りにくい。しかも向こうが大人しく削られるわけない。抵抗必須だ。
「ルージュ、なんとかなるね?」
『大きさと数次第ね。場合によってはその坑道という洞穴を潰したほうがいいわ』
私が通訳すると、ビオーザさんは困った顔。
「坑道を潰すのだけは勘弁願いたい。ソルトの生活源、なければ多くの民が路頭に迷うことになる」
それは、非常に困った事になる。うーん、それだけは避けたい。
『アイアンゴーレムは知能は低いけど、新しい場所があると分かれば、出てくる可能性はあるわ。実際に元の穴から出て、別の洞穴に居座っているんでしょ? それは別の場所があると認識しているはず。いずれ地上に出てくるのは時間の問題よ』
通訳。
頭を抱えるビオーザさん。
「ルージュ、アイアンゴーレム、一体だけやったら誘きだしてなんとかなるね?」
一番いいのは、それだけど。
『一体ならね。ゴーレムってのはスライムみたいにコアが分裂しながら増殖するの。上位になれば、その回数や頻度はすごく少なくなるけどね。一体だと確実に分かっていないのであれば、他にもいると考えた方がいいわ。それに母体となったゴーレムを倒せば、連動して倒れるわけじゃないし。時間はかかるだろうけど、ほっといたら増殖するわよ。あいつら独特のコミュニケーション能力あるから、分裂体に危機が及べば、集まってくるわよ』
アイアンゴーレムが集まるって。
「あのアイアンゴーレムの数は正解な数は分かっているんですか?」
「一体だけしか目視されておりません」
「だって」
『そうねえ、ちょっとその洞穴を調べる必要があるわね。近くに行けば私かビアンカの気配感知である程度は分かるから。場合によっては洞穴を潰す必要が出てるわよ』
それって、ビアンカとルージュで手に負えないってことね。
私は通話すると、ビオーザさんは更に困った顔。
「テイマー殿の従魔にどうにか出来ることを願うしかないと言うことですな。はあ」
と、ため息。だが、すぐに気を取り直す。
「可能性の問題ですな。アイアンゴーレムがメインの坑道に居座った時点で、ある程度は覚悟はしておりました。すぐに対応していただきたいが、スカイランからの移動でお疲れでしょう。宿の手配をしましょう。明日、坑道にご案内しますので、それまで、ゆっくり過ごされてください」
いいのかな?
「ゴーレムが行動範囲を広げるには、かなりの時間がかかるはず。1日2日くらいで地上には出んでしょう」
『そうね』
なら、いいかな。さすがにビアンカとルージュを休ませたい。明日の為に、今日は豪勢にしようかね。
優衣達が冒険者ギルドの宿に向かった後、ギルドでひと悶着起きた。
「なんで直ぐに討伐しないッ」
そうだそうだと殺気立つのは、他のギルドや、鍛冶工房だ。
ソルトは鉱山の町、それで生計を立てている者が多い。
メインの坑道が使えず、供給が途絶え、いつになったら採掘が再開されるかの目処すらない。このままでは、確実にソルトは干上がる。生きるため、生活がかかっていた。
対応したビオーザは、無表情に文句を言ってきた連中を見下す。それでも彼らは叫ぶ、早く討伐させろ、と。
ビオーザが握る拳が、軋むような音を立てる。。
そしてみるみる内に纏う空気が、まるで般若のように変わっていく。
「討伐、させろ、だと? てめえら、よくもそんな偉い事を言えたな、おい」
拳に力が入り、軋むような音を立てる。文句を言ってきた連中が、あまりの迫力に、口を閉じ後ずさる。
「あのテイマー殿はな、今日ダンジョンから出てきたばっかりなんだぞ。休みなくソルトまで来てくれたんだぞ。ギルドの依頼だからといって、旨味もあるような依頼でもないのにだッ」
ビオーザが叫ぶ。
「テイマー殿ははっきり言わないがなッ、ソルトが干上がって、困る奴がいるからって来ているッ。それが分からないのかぁぁぁぁッ」
咆哮のような叫び声に、一斉に人並みが引き、回りで傍観していた職員までも竦み上がる。
「てめえら、デカイ図体の野郎がッ。アイアンゴーレム一体どうにも出来ねえ癖に、よくもそんなことが言えたなぁぁぁぁ。あぁ、俺がその曲がった性根、叩き直して」
「やめな、ビオーザ」
ビリビリとした空気の中、ひどく冷静な女性の声が、一斉に注目を集める。
そこには、1人の高齢女性が、佇んでいた。
「ギ、ギルドマスター…………」
誰かが呟く。
「ふん、ディンジィか。鍛冶師ギルドマスターが何のようだ? 現場の指揮はどうした?」
ビオーザが鼻で息を吐く。
「挨拶に来たんだよ。かのテイマー様にね。アイアンゴーレムをどうにか直ぐに出来るのは、現状彼女だけなら、誠心誠意お願いするしかないって思ってね」
こちらはため息を吐く。
「ギルドマスターッ、直ぐにでも討伐してもらって………」
1人が食い下がるように言うと、高齢女性、鍛冶師ギルドマスターディンジィが鋭い視線投げる。
「黙りな。忘れるんじゃないよ、こちらが請うている立場なんだ。勘違いをするんじゃない」
ぐっ、と息を潜めるのを見て、ディンジィが息を吐く。
「あんた達の生活がかかっているのは、分かっているけど。こればっかりは彼女の機嫌を損ねられない。彼女に無理強いしたら、分かるだろう? あの従魔が黙っていないことは」
更に息を潜める気配が広がる。
「それにアイアンゴーレムなんて出た時点で、なんの被害なく終わるなんて、思っちゃないだろう?」
アイアンゴーレムが出た坑道は良質な金属の埋蔵を示しているが、問題はそれをどうやって排除するかだ。ただでさえ、魔法も物理も効かない相手。倒すには、許容量以上の力押ししかない。そしてアイアンゴーレムを倒せたとして、そんな戦闘をして坑道が無事に残る可能性の方が、討伐確率より低いのだから。
それは、鉱山の仕事に関わる者全てが知っている。
歩くゴーレムを見たら、ストーンなら倒せ、アイアンなら全てを諦めよ。
一斉に肩を落とす面々。
「さあ、帰りな。くれぐれも彼女に無理な接近は禁止だ。ビオーザ、あんたも拳を仕舞いな」
「ふんっ」
さっき迄文句を言ってきた者達は、1人1人去っていき、残ったのは冒険者ギルドマスタービオーザと鍛冶師ギルドマスターディンジィのみ。
「まったく、そんなに青筋立てて、どうするつもりなんだい」
「威嚇のつもりだ。あんなバカどもならこれくらいで十分だろう」
「で、あのテイマー様の感じは?」
「当人か? ゴーレムか?」
「今回は後者だよ」
「数とサイズだとさ。手に負えない可能性もある。とにかく明日、坑道に案内して、運を天に任せるしかなかろう。最悪はアイアンゴーレムはそのままで坑道は崩す必要があるかもしれん」
盛大にため息をつくディンジィ。
「それだけは避けたいが、そうも言えないね。私は現場に戻るよ」
「現場の連中に徹底させろ。失礼な態度を取るなってな」
「分かっているよ」
「と、言うことで、今からソルトに移動になりました。ノワール、大丈夫ね?」
「ブヒヒヒンッ」
『大丈夫と言っているのです』
頼りになるね。
「アイアンって事は鉄の塊の魔物よね? そんなの倒せるん? ビアンカ、ルージュ、大丈夫ね?」
母が心配している。
『数と大きさ次第なのですが。私とルージュの魔法でなんとでもなるのです』
『そうね。アイアンゴーレムでも闘い方次第では、そう難しくないわ』
『新しい戦闘モードを試してもいいのです』
『私も上位戦闘モードを使って見ようかしら』
母を安心させようと、物騒な話をし始めてる。だが、母は一度も戦闘を見たこと無いため、ピンときてない。
ビアンカとルージュの話によると、アイアンゴーレムは含まれる金属によるが、物理攻撃がゴーレムの中で最も効果がない。ストーンゴーレムなら、身体強化して、一撃するって。いや、ビアンカとルージュの身体強化の一撃って、ドラゴン一撃やないね? アイアンゴーレムの場合は、魔法で外皮をごりごりに削るか、コアの位置を確認して撃ち抜くそうだ。下手に魔法金属を含んでいたら、通常の火力では歯が立たない。レベル500の2人に頑張ってもらうしかない。
ルームの中で、サブ・ドアを開けっ放しにする。父が帰って来たらと、色々鑑定のお願いをしておく。宿を後にして、お昼寝モードの仔達を馬車に乗せる。
晃太が地図を確認。
「どれくらいで着く?」
「ノワールのスピードなら、夕方前には十分間に合うよ」
「そうな。ノワール、無理せんでね」
「ブルブルッ」
馬車を繋ぎ、晃太とホークさんが馭者台に上がる。わざわざアステリさんがお見送りにきてくれた。
私は馬車の中で、ルームを開けて、おねむな仔達を誘導する。
私は馭者台の窓から、ホークさんに声をかける。
すぐに、馬車は動き出した。
鉱山の町、ソルト。ノワールの足でスカイランから3時間。本来なら半日近くかけての移動だ。
規模的にはスカイランの半分くらいの町だ。管轄はスカイラン領主。
ぐるりと高い柵に囲まれている。
門では半信半疑の表情されたが、木札を見せると、直ぐにギルドに案内してくれた。
「本当にきてくれるとは、とにかくありがたいです」
案内してくれた門番さんは、しきりに感謝している。
「ゴーレムなんて討伐料以外、倒しても旨味はありませんから断られるんじゃないかって心配していました。さ、こちらです」
「ありがとうございます」
門番さんがギルドまで同行してくれたので、じろじろ見られたが、騒ぎにならなかった。
ギルドもスカイランのより小さい、ダンジョンもないしね。石喰いの魔物が出るし、魔の森も近いので、冒険者は当然にいる。
私は晃太と、ホークさん、ルージュ、と中に入る。仔達はさっき起きたが、再びおねむで馬車の中。ギルド内に入ると、ルージュの姿にぎょっとされたが、当のルージュは知らん顔。
門番さんはギルド内まで付き添ってくれて、直ぐに窓口まで繋いでくれた。
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ、こちらのセリフですよ。テイマーさん、どうぞお願いします」
門番さんは一礼して戻っていった。
さて。
「スカイランのギルドより、討伐依頼を受けましたミズサワです」
私は預かっていた手紙を提出。
まあ、ルージュと門番さんで察してはくれていたみたい。
対応してくれた、中年男性は、直ぐに私達を奥に誘導してくれる。
古いが綺麗に掃除され、趣のある応接室に通される。
「こちらでお待ちください」
そういって中年男性は一旦退室。ルージュは気ままにごろり。ソファーに座って待つと、どすどすとした足音が。
『敵意なし。興奮しているけど』
「お待たせしたっ、テイマー殿っ」
ノック直後に、ばあーん、と扉を開けたのは、ひゃー、すごい迫力のあるごつい男性がっ。髭もじゃ、白髪混じり茶髪の天パが入ってもじゃもじゃ。わあ、ダワーさんと初めてお会いした時みたい。
町中に、山賊が。
あ、失礼だね。ギルドのお偉いさんだね。
「ど、どうも…………」
「ああ、失礼、儂は冒険者ギルドマスターのビオーザだ。討伐依頼を受けていただき感謝しますテイマー殿」
「いえいえ」
こちらこそ山賊って思ってしまってすみません。
山賊、失礼。冒険者ギルドマスタービオーザさんは、見た目と違い丁寧に会釈する。私と晃太もソファーから立ち上がりお辞儀。
ビオーザさんは私達に着席を促し、対面のソファーに座る。
「早速で申し訳ないが、依頼の話でよろしいですかな?」
「はい」
アイアンゴーレムが出たのは2週間前。
メインの坑道の奥で、新しい坑道が見つかり、ソルトが沸き立った。しかし、調査に入って直ぐに、アイアンゴーレムが顔を出したので、調査隊は引き返しバリケードを張った。上位ゴーレムは縄張り意識が高いが、行動範囲が広いわけではないので、そこでおとなしくしているならと様子を見た。新しい坑道で、新しい鉱脈がでると沸いていたが、命が最優先だ。崩落させる手もあるが、連動してあちこち崩落したら目も当てられない。ギルドと役場が封鎖の判断を下し、土魔法のレベルの高い魔法使いを、国から派遣してもらう手はずを整えた矢先。アイアンゴーレムがバリケードを破り、メインの坑道に侵入。居座ってしまい、どうにも出来なくなってしまった。
「小型のストーンゴーレム程度なら、誘きだして、総動員で対応したが、アイアンとなれば話は別だ。とてもじゃないが、歯が立たん。そこにテイマー殿が軍隊ダンジョンに挑んでいるのを思い出して、依頼した次第です」
ストーンなら地道に魔法でコツコツ削るが、アイアンは金属だし、上位種だからと魔法攻撃も物理攻撃も通りにくい。しかも向こうが大人しく削られるわけない。抵抗必須だ。
「ルージュ、なんとかなるね?」
『大きさと数次第ね。場合によってはその坑道という洞穴を潰したほうがいいわ』
私が通訳すると、ビオーザさんは困った顔。
「坑道を潰すのだけは勘弁願いたい。ソルトの生活源、なければ多くの民が路頭に迷うことになる」
それは、非常に困った事になる。うーん、それだけは避けたい。
『アイアンゴーレムは知能は低いけど、新しい場所があると分かれば、出てくる可能性はあるわ。実際に元の穴から出て、別の洞穴に居座っているんでしょ? それは別の場所があると認識しているはず。いずれ地上に出てくるのは時間の問題よ』
通訳。
頭を抱えるビオーザさん。
「ルージュ、アイアンゴーレム、一体だけやったら誘きだしてなんとかなるね?」
一番いいのは、それだけど。
『一体ならね。ゴーレムってのはスライムみたいにコアが分裂しながら増殖するの。上位になれば、その回数や頻度はすごく少なくなるけどね。一体だと確実に分かっていないのであれば、他にもいると考えた方がいいわ。それに母体となったゴーレムを倒せば、連動して倒れるわけじゃないし。時間はかかるだろうけど、ほっといたら増殖するわよ。あいつら独特のコミュニケーション能力あるから、分裂体に危機が及べば、集まってくるわよ』
アイアンゴーレムが集まるって。
「あのアイアンゴーレムの数は正解な数は分かっているんですか?」
「一体だけしか目視されておりません」
「だって」
『そうねえ、ちょっとその洞穴を調べる必要があるわね。近くに行けば私かビアンカの気配感知である程度は分かるから。場合によっては洞穴を潰す必要が出てるわよ』
それって、ビアンカとルージュで手に負えないってことね。
私は通話すると、ビオーザさんは更に困った顔。
「テイマー殿の従魔にどうにか出来ることを願うしかないと言うことですな。はあ」
と、ため息。だが、すぐに気を取り直す。
「可能性の問題ですな。アイアンゴーレムがメインの坑道に居座った時点で、ある程度は覚悟はしておりました。すぐに対応していただきたいが、スカイランからの移動でお疲れでしょう。宿の手配をしましょう。明日、坑道にご案内しますので、それまで、ゆっくり過ごされてください」
いいのかな?
「ゴーレムが行動範囲を広げるには、かなりの時間がかかるはず。1日2日くらいで地上には出んでしょう」
『そうね』
なら、いいかな。さすがにビアンカとルージュを休ませたい。明日の為に、今日は豪勢にしようかね。
優衣達が冒険者ギルドの宿に向かった後、ギルドでひと悶着起きた。
「なんで直ぐに討伐しないッ」
そうだそうだと殺気立つのは、他のギルドや、鍛冶工房だ。
ソルトは鉱山の町、それで生計を立てている者が多い。
メインの坑道が使えず、供給が途絶え、いつになったら採掘が再開されるかの目処すらない。このままでは、確実にソルトは干上がる。生きるため、生活がかかっていた。
対応したビオーザは、無表情に文句を言ってきた連中を見下す。それでも彼らは叫ぶ、早く討伐させろ、と。
ビオーザが握る拳が、軋むような音を立てる。。
そしてみるみる内に纏う空気が、まるで般若のように変わっていく。
「討伐、させろ、だと? てめえら、よくもそんな偉い事を言えたな、おい」
拳に力が入り、軋むような音を立てる。文句を言ってきた連中が、あまりの迫力に、口を閉じ後ずさる。
「あのテイマー殿はな、今日ダンジョンから出てきたばっかりなんだぞ。休みなくソルトまで来てくれたんだぞ。ギルドの依頼だからといって、旨味もあるような依頼でもないのにだッ」
ビオーザが叫ぶ。
「テイマー殿ははっきり言わないがなッ、ソルトが干上がって、困る奴がいるからって来ているッ。それが分からないのかぁぁぁぁッ」
咆哮のような叫び声に、一斉に人並みが引き、回りで傍観していた職員までも竦み上がる。
「てめえら、デカイ図体の野郎がッ。アイアンゴーレム一体どうにも出来ねえ癖に、よくもそんなことが言えたなぁぁぁぁ。あぁ、俺がその曲がった性根、叩き直して」
「やめな、ビオーザ」
ビリビリとした空気の中、ひどく冷静な女性の声が、一斉に注目を集める。
そこには、1人の高齢女性が、佇んでいた。
「ギ、ギルドマスター…………」
誰かが呟く。
「ふん、ディンジィか。鍛冶師ギルドマスターが何のようだ? 現場の指揮はどうした?」
ビオーザが鼻で息を吐く。
「挨拶に来たんだよ。かのテイマー様にね。アイアンゴーレムをどうにか直ぐに出来るのは、現状彼女だけなら、誠心誠意お願いするしかないって思ってね」
こちらはため息を吐く。
「ギルドマスターッ、直ぐにでも討伐してもらって………」
1人が食い下がるように言うと、高齢女性、鍛冶師ギルドマスターディンジィが鋭い視線投げる。
「黙りな。忘れるんじゃないよ、こちらが請うている立場なんだ。勘違いをするんじゃない」
ぐっ、と息を潜めるのを見て、ディンジィが息を吐く。
「あんた達の生活がかかっているのは、分かっているけど。こればっかりは彼女の機嫌を損ねられない。彼女に無理強いしたら、分かるだろう? あの従魔が黙っていないことは」
更に息を潜める気配が広がる。
「それにアイアンゴーレムなんて出た時点で、なんの被害なく終わるなんて、思っちゃないだろう?」
アイアンゴーレムが出た坑道は良質な金属の埋蔵を示しているが、問題はそれをどうやって排除するかだ。ただでさえ、魔法も物理も効かない相手。倒すには、許容量以上の力押ししかない。そしてアイアンゴーレムを倒せたとして、そんな戦闘をして坑道が無事に残る可能性の方が、討伐確率より低いのだから。
それは、鉱山の仕事に関わる者全てが知っている。
歩くゴーレムを見たら、ストーンなら倒せ、アイアンなら全てを諦めよ。
一斉に肩を落とす面々。
「さあ、帰りな。くれぐれも彼女に無理な接近は禁止だ。ビオーザ、あんたも拳を仕舞いな」
「ふんっ」
さっき迄文句を言ってきた者達は、1人1人去っていき、残ったのは冒険者ギルドマスタービオーザと鍛冶師ギルドマスターディンジィのみ。
「まったく、そんなに青筋立てて、どうするつもりなんだい」
「威嚇のつもりだ。あんなバカどもならこれくらいで十分だろう」
「で、あのテイマー様の感じは?」
「当人か? ゴーレムか?」
「今回は後者だよ」
「数とサイズだとさ。手に負えない可能性もある。とにかく明日、坑道に案内して、運を天に任せるしかなかろう。最悪はアイアンゴーレムはそのままで坑道は崩す必要があるかもしれん」
盛大にため息をつくディンジィ。
「それだけは避けたいが、そうも言えないね。私は現場に戻るよ」
「現場の連中に徹底させろ。失礼な態度を取るなってな」
「分かっているよ」
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。