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連載
鉱山の魔物②
宿に帰り、ルームに全員集合する。
「と、言うことで、今からソルトに移動になりました。ノワール、大丈夫ね?」
「ブヒヒヒンッ」
『大丈夫と言っているのです』
頼りになるね。
「アイアンって事は鉄の塊の魔物よね? そんなの倒せるん? ビアンカ、ルージュ、大丈夫ね?」
母が心配している。
『数と大きさ次第なのですが。私とルージュの魔法でなんとでもなるのです』
『そうね。アイアンゴーレムでも闘い方次第では、そう難しくないわ』
『新しい戦闘モードを試してもいいのです』
『私も上位戦闘モードを使って見ようかしら』
母を安心させようと、物騒な話をし始めてる。だが、母は一度も戦闘を見たこと無いため、ピンときてない。
ビアンカとルージュの話によると、アイアンゴーレムは含まれる金属によるが、物理攻撃がゴーレムの中で最も効果がない。ストーンゴーレムなら、身体強化して、一撃するって。いや、ビアンカとルージュの身体強化の一撃って、ドラゴン一撃やないね? アイアンゴーレムの場合は、魔法で外皮をごりごりに削るか、コアの位置を確認して撃ち抜くそうだ。下手に魔法金属を含んでいたら、通常の火力では歯が立たない。レベル500の2人に頑張ってもらうしかない。
ルームの中で、サブ・ドアを開けっ放しにする。父が帰って来たらと、色々鑑定のお願いをしておく。宿を後にして、お昼寝モードの仔達を馬車に乗せる。
晃太が地図を確認。
「どれくらいで着く?」
「ノワールのスピードなら、夕方前には十分間に合うよ」
「そうな。ノワール、無理せんでね」
「ブルブルッ」
馬車を繋ぎ、晃太とホークさんが馭者台に上がる。わざわざアステリさんがお見送りにきてくれた。
私は馬車の中で、ルームを開けて、おねむな仔達を誘導する。
私は馭者台の窓から、ホークさんに声をかける。
すぐに、馬車は動き出した。
鉱山の町、ソルト。ノワールの足でスカイランから3時間。本来なら半日近くかけての移動だ。
規模的にはスカイランの半分くらいの町だ。管轄はスカイラン領主。
ぐるりと高い柵に囲まれている。
門では半信半疑の表情されたが、木札を見せると、直ぐにギルドに案内してくれた。
「本当にきてくれるとは、とにかくありがたいです」
案内してくれた門番さんは、しきりに感謝している。
「ゴーレムなんて討伐料以外、倒しても旨味はありませんから断られるんじゃないかって心配していました。さ、こちらです」
「ありがとうございます」
門番さんがギルドまで同行してくれたので、じろじろ見られたが、騒ぎにならなかった。
ギルドもスカイランのより小さい、ダンジョンもないしね。石喰いの魔物が出るし、魔の森も近いので、冒険者は当然にいる。
私は晃太と、ホークさん、ルージュ、と中に入る。仔達はさっき起きたが、再びおねむで馬車の中。ギルド内に入ると、ルージュの姿にぎょっとされたが、当のルージュは知らん顔。
門番さんはギルド内まで付き添ってくれて、直ぐに窓口まで繋いでくれた。
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ、こちらのセリフですよ。テイマーさん、どうぞお願いします」
門番さんは一礼して戻っていった。
さて。
「スカイランのギルドより、討伐依頼を受けましたミズサワです」
私は預かっていた手紙を提出。
まあ、ルージュと門番さんで察してはくれていたみたい。
対応してくれた、中年男性は、直ぐに私達を奥に誘導してくれる。
古いが綺麗に掃除され、趣のある応接室に通される。
「こちらでお待ちください」
そういって中年男性は一旦退室。ルージュは気ままにごろり。ソファーに座って待つと、どすどすとした足音が。
『敵意なし。興奮しているけど』
「お待たせしたっ、テイマー殿っ」
ノック直後に、ばあーん、と扉を開けたのは、ひゃー、すごい迫力のあるごつい男性がっ。髭もじゃ、白髪混じり茶髪の天パが入ってもじゃもじゃ。わあ、ダワーさんと初めてお会いした時みたい。
町中に、山賊が。
あ、失礼だね。ギルドのお偉いさんだね。
「ど、どうも…………」
「ああ、失礼、儂は冒険者ギルドマスターのビオーザだ。討伐依頼を受けていただき感謝しますテイマー殿」
「いえいえ」
こちらこそ山賊って思ってしまってすみません。
山賊、失礼。冒険者ギルドマスタービオーザさんは、見た目と違い丁寧に会釈する。私と晃太もソファーから立ち上がりお辞儀。
ビオーザさんは私達に着席を促し、対面のソファーに座る。
「早速で申し訳ないが、依頼の話でよろしいですかな?」
「はい」
アイアンゴーレムが出たのは2週間前。
メインの坑道の奥で、新しい坑道が見つかり、ソルトが沸き立った。しかし、調査に入って直ぐに、アイアンゴーレムが顔を出したので、調査隊は引き返しバリケードを張った。上位ゴーレムは縄張り意識が高いが、行動範囲が広いわけではないので、そこでおとなしくしているならと様子を見た。新しい坑道で、新しい鉱脈がでると沸いていたが、命が最優先だ。崩落させる手もあるが、連動してあちこち崩落したら目も当てられない。ギルドと役場が封鎖の判断を下し、土魔法のレベルの高い魔法使いを、国から派遣してもらう手はずを整えた矢先。アイアンゴーレムがバリケードを破り、メインの坑道に侵入。居座ってしまい、どうにも出来なくなってしまった。
「小型のストーンゴーレム程度なら、誘きだして、総動員で対応したが、アイアンとなれば話は別だ。とてもじゃないが、歯が立たん。そこにテイマー殿が軍隊ダンジョンに挑んでいるのを思い出して、依頼した次第です」
ストーンなら地道に魔法でコツコツ削るが、アイアンは金属だし、上位種だからと魔法攻撃も物理攻撃も通りにくい。しかも向こうが大人しく削られるわけない。抵抗必須だ。
「ルージュ、なんとかなるね?」
『大きさと数次第ね。場合によってはその坑道という洞穴を潰したほうがいいわ』
私が通訳すると、ビオーザさんは困った顔。
「坑道を潰すのだけは勘弁願いたい。ソルトの生活源、なければ多くの民が路頭に迷うことになる」
それは、非常に困った事になる。うーん、それだけは避けたい。
『アイアンゴーレムは知能は低いけど、新しい場所があると分かれば、出てくる可能性はあるわ。実際に元の穴から出て、別の洞穴に居座っているんでしょ? それは別の場所があると認識しているはず。いずれ地上に出てくるのは時間の問題よ』
通訳。
頭を抱えるビオーザさん。
「ルージュ、アイアンゴーレム、一体だけやったら誘きだしてなんとかなるね?」
一番いいのは、それだけど。
『一体ならね。ゴーレムってのはスライムみたいにコアが分裂しながら増殖するの。上位になれば、その回数や頻度はすごく少なくなるけどね。一体だと確実に分かっていないのであれば、他にもいると考えた方がいいわ。それに母体となったゴーレムを倒せば、連動して倒れるわけじゃないし。時間はかかるだろうけど、ほっといたら増殖するわよ。あいつら独特のコミュニケーション能力あるから、分裂体に危機が及べば、集まってくるわよ』
アイアンゴーレムが集まるって。
「あのアイアンゴーレムの数は正解な数は分かっているんですか?」
「一体だけしか目視されておりません」
「だって」
『そうねえ、ちょっとその洞穴を調べる必要があるわね。近くに行けば私かビアンカの気配感知である程度は分かるから。場合によっては洞穴を潰す必要が出てるわよ』
それって、ビアンカとルージュで手に負えないってことね。
私は通話すると、ビオーザさんは更に困った顔。
「テイマー殿の従魔にどうにか出来ることを願うしかないと言うことですな。はあ」
と、ため息。だが、すぐに気を取り直す。
「可能性の問題ですな。アイアンゴーレムがメインの坑道に居座った時点で、ある程度は覚悟はしておりました。すぐに対応していただきたいが、スカイランからの移動でお疲れでしょう。宿の手配をしましょう。明日、坑道にご案内しますので、それまで、ゆっくり過ごされてください」
いいのかな?
「ゴーレムが行動範囲を広げるには、かなりの時間がかかるはず。1日2日くらいで地上には出んでしょう」
『そうね』
なら、いいかな。さすがにビアンカとルージュを休ませたい。明日の為に、今日は豪勢にしようかね。
優衣達が冒険者ギルドの宿に向かった後、ギルドでひと悶着起きた。
「なんで直ぐに討伐しないッ」
そうだそうだと殺気立つのは、他のギルドや、鍛冶工房だ。
ソルトは鉱山の町、それで生計を立てている者が多い。
メインの坑道が使えず、供給が途絶え、いつになったら採掘が再開されるかの目処すらない。このままでは、確実にソルトは干上がる。生きるため、生活がかかっていた。
対応したビオーザは、無表情に文句を言ってきた連中を見下す。それでも彼らは叫ぶ、早く討伐させろ、と。
ビオーザが握る拳が、軋むような音を立てる。。
そしてみるみる内に纏う空気が、まるで般若のように変わっていく。
「討伐、させろ、だと? てめえら、よくもそんな偉い事を言えたな、おい」
拳に力が入り、軋むような音を立てる。文句を言ってきた連中が、あまりの迫力に、口を閉じ後ずさる。
「あのテイマー殿はな、今日ダンジョンから出てきたばっかりなんだぞ。休みなくソルトまで来てくれたんだぞ。ギルドの依頼だからといって、旨味もあるような依頼でもないのにだッ」
ビオーザが叫ぶ。
「テイマー殿ははっきり言わないがなッ、ソルトが干上がって、困る奴がいるからって来ているッ。それが分からないのかぁぁぁぁッ」
咆哮のような叫び声に、一斉に人並みが引き、回りで傍観していた職員までも竦み上がる。
「てめえら、デカイ図体の野郎がッ。アイアンゴーレム一体どうにも出来ねえ癖に、よくもそんなことが言えたなぁぁぁぁ。あぁ、俺がその曲がった性根、叩き直して」
「やめな、ビオーザ」
ビリビリとした空気の中、ひどく冷静な女性の声が、一斉に注目を集める。
そこには、1人の高齢女性が、佇んでいた。
「ギ、ギルドマスター…………」
誰かが呟く。
「ふん、ディンジィか。鍛冶師ギルドマスターが何のようだ? 現場の指揮はどうした?」
ビオーザが鼻で息を吐く。
「挨拶に来たんだよ。かのテイマー様にね。アイアンゴーレムをどうにか直ぐに出来るのは、現状彼女だけなら、誠心誠意お願いするしかないって思ってね」
こちらはため息を吐く。
「ギルドマスターッ、直ぐにでも討伐してもらって………」
1人が食い下がるように言うと、高齢女性、鍛冶師ギルドマスターディンジィが鋭い視線投げる。
「黙りな。忘れるんじゃないよ、こちらが請うている立場なんだ。勘違いをするんじゃない」
ぐっ、と息を潜めるのを見て、ディンジィが息を吐く。
「あんた達の生活がかかっているのは、分かっているけど。こればっかりは彼女の機嫌を損ねられない。彼女に無理強いしたら、分かるだろう? あの従魔が黙っていないことは」
更に息を潜める気配が広がる。
「それにアイアンゴーレムなんて出た時点で、なんの被害なく終わるなんて、思っちゃないだろう?」
アイアンゴーレムが出た坑道は良質な金属の埋蔵を示しているが、問題はそれをどうやって排除するかだ。ただでさえ、魔法も物理も効かない相手。倒すには、許容量以上の力押ししかない。そしてアイアンゴーレムを倒せたとして、そんな戦闘をして坑道が無事に残る可能性の方が、討伐確率より低いのだから。
それは、鉱山の仕事に関わる者全てが知っている。
歩くゴーレムを見たら、ストーンなら倒せ、アイアンなら全てを諦めよ。
一斉に肩を落とす面々。
「さあ、帰りな。くれぐれも彼女に無理な接近は禁止だ。ビオーザ、あんたも拳を仕舞いな」
「ふんっ」
さっき迄文句を言ってきた者達は、1人1人去っていき、残ったのは冒険者ギルドマスタービオーザと鍛冶師ギルドマスターディンジィのみ。
「まったく、そんなに青筋立てて、どうするつもりなんだい」
「威嚇のつもりだ。あんなバカどもならこれくらいで十分だろう」
「で、あのテイマー様の感じは?」
「当人か? ゴーレムか?」
「今回は後者だよ」
「数とサイズだとさ。手に負えない可能性もある。とにかく明日、坑道に案内して、運を天に任せるしかなかろう。最悪はアイアンゴーレムはそのままで坑道は崩す必要があるかもしれん」
盛大にため息をつくディンジィ。
「それだけは避けたいが、そうも言えないね。私は現場に戻るよ」
「現場の連中に徹底させろ。失礼な態度を取るなってな」
「分かっているよ」
「と、言うことで、今からソルトに移動になりました。ノワール、大丈夫ね?」
「ブヒヒヒンッ」
『大丈夫と言っているのです』
頼りになるね。
「アイアンって事は鉄の塊の魔物よね? そんなの倒せるん? ビアンカ、ルージュ、大丈夫ね?」
母が心配している。
『数と大きさ次第なのですが。私とルージュの魔法でなんとでもなるのです』
『そうね。アイアンゴーレムでも闘い方次第では、そう難しくないわ』
『新しい戦闘モードを試してもいいのです』
『私も上位戦闘モードを使って見ようかしら』
母を安心させようと、物騒な話をし始めてる。だが、母は一度も戦闘を見たこと無いため、ピンときてない。
ビアンカとルージュの話によると、アイアンゴーレムは含まれる金属によるが、物理攻撃がゴーレムの中で最も効果がない。ストーンゴーレムなら、身体強化して、一撃するって。いや、ビアンカとルージュの身体強化の一撃って、ドラゴン一撃やないね? アイアンゴーレムの場合は、魔法で外皮をごりごりに削るか、コアの位置を確認して撃ち抜くそうだ。下手に魔法金属を含んでいたら、通常の火力では歯が立たない。レベル500の2人に頑張ってもらうしかない。
ルームの中で、サブ・ドアを開けっ放しにする。父が帰って来たらと、色々鑑定のお願いをしておく。宿を後にして、お昼寝モードの仔達を馬車に乗せる。
晃太が地図を確認。
「どれくらいで着く?」
「ノワールのスピードなら、夕方前には十分間に合うよ」
「そうな。ノワール、無理せんでね」
「ブルブルッ」
馬車を繋ぎ、晃太とホークさんが馭者台に上がる。わざわざアステリさんがお見送りにきてくれた。
私は馬車の中で、ルームを開けて、おねむな仔達を誘導する。
私は馭者台の窓から、ホークさんに声をかける。
すぐに、馬車は動き出した。
鉱山の町、ソルト。ノワールの足でスカイランから3時間。本来なら半日近くかけての移動だ。
規模的にはスカイランの半分くらいの町だ。管轄はスカイラン領主。
ぐるりと高い柵に囲まれている。
門では半信半疑の表情されたが、木札を見せると、直ぐにギルドに案内してくれた。
「本当にきてくれるとは、とにかくありがたいです」
案内してくれた門番さんは、しきりに感謝している。
「ゴーレムなんて討伐料以外、倒しても旨味はありませんから断られるんじゃないかって心配していました。さ、こちらです」
「ありがとうございます」
門番さんがギルドまで同行してくれたので、じろじろ見られたが、騒ぎにならなかった。
ギルドもスカイランのより小さい、ダンジョンもないしね。石喰いの魔物が出るし、魔の森も近いので、冒険者は当然にいる。
私は晃太と、ホークさん、ルージュ、と中に入る。仔達はさっき起きたが、再びおねむで馬車の中。ギルド内に入ると、ルージュの姿にぎょっとされたが、当のルージュは知らん顔。
門番さんはギルド内まで付き添ってくれて、直ぐに窓口まで繋いでくれた。
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ、こちらのセリフですよ。テイマーさん、どうぞお願いします」
門番さんは一礼して戻っていった。
さて。
「スカイランのギルドより、討伐依頼を受けましたミズサワです」
私は預かっていた手紙を提出。
まあ、ルージュと門番さんで察してはくれていたみたい。
対応してくれた、中年男性は、直ぐに私達を奥に誘導してくれる。
古いが綺麗に掃除され、趣のある応接室に通される。
「こちらでお待ちください」
そういって中年男性は一旦退室。ルージュは気ままにごろり。ソファーに座って待つと、どすどすとした足音が。
『敵意なし。興奮しているけど』
「お待たせしたっ、テイマー殿っ」
ノック直後に、ばあーん、と扉を開けたのは、ひゃー、すごい迫力のあるごつい男性がっ。髭もじゃ、白髪混じり茶髪の天パが入ってもじゃもじゃ。わあ、ダワーさんと初めてお会いした時みたい。
町中に、山賊が。
あ、失礼だね。ギルドのお偉いさんだね。
「ど、どうも…………」
「ああ、失礼、儂は冒険者ギルドマスターのビオーザだ。討伐依頼を受けていただき感謝しますテイマー殿」
「いえいえ」
こちらこそ山賊って思ってしまってすみません。
山賊、失礼。冒険者ギルドマスタービオーザさんは、見た目と違い丁寧に会釈する。私と晃太もソファーから立ち上がりお辞儀。
ビオーザさんは私達に着席を促し、対面のソファーに座る。
「早速で申し訳ないが、依頼の話でよろしいですかな?」
「はい」
アイアンゴーレムが出たのは2週間前。
メインの坑道の奥で、新しい坑道が見つかり、ソルトが沸き立った。しかし、調査に入って直ぐに、アイアンゴーレムが顔を出したので、調査隊は引き返しバリケードを張った。上位ゴーレムは縄張り意識が高いが、行動範囲が広いわけではないので、そこでおとなしくしているならと様子を見た。新しい坑道で、新しい鉱脈がでると沸いていたが、命が最優先だ。崩落させる手もあるが、連動してあちこち崩落したら目も当てられない。ギルドと役場が封鎖の判断を下し、土魔法のレベルの高い魔法使いを、国から派遣してもらう手はずを整えた矢先。アイアンゴーレムがバリケードを破り、メインの坑道に侵入。居座ってしまい、どうにも出来なくなってしまった。
「小型のストーンゴーレム程度なら、誘きだして、総動員で対応したが、アイアンとなれば話は別だ。とてもじゃないが、歯が立たん。そこにテイマー殿が軍隊ダンジョンに挑んでいるのを思い出して、依頼した次第です」
ストーンなら地道に魔法でコツコツ削るが、アイアンは金属だし、上位種だからと魔法攻撃も物理攻撃も通りにくい。しかも向こうが大人しく削られるわけない。抵抗必須だ。
「ルージュ、なんとかなるね?」
『大きさと数次第ね。場合によってはその坑道という洞穴を潰したほうがいいわ』
私が通訳すると、ビオーザさんは困った顔。
「坑道を潰すのだけは勘弁願いたい。ソルトの生活源、なければ多くの民が路頭に迷うことになる」
それは、非常に困った事になる。うーん、それだけは避けたい。
『アイアンゴーレムは知能は低いけど、新しい場所があると分かれば、出てくる可能性はあるわ。実際に元の穴から出て、別の洞穴に居座っているんでしょ? それは別の場所があると認識しているはず。いずれ地上に出てくるのは時間の問題よ』
通訳。
頭を抱えるビオーザさん。
「ルージュ、アイアンゴーレム、一体だけやったら誘きだしてなんとかなるね?」
一番いいのは、それだけど。
『一体ならね。ゴーレムってのはスライムみたいにコアが分裂しながら増殖するの。上位になれば、その回数や頻度はすごく少なくなるけどね。一体だと確実に分かっていないのであれば、他にもいると考えた方がいいわ。それに母体となったゴーレムを倒せば、連動して倒れるわけじゃないし。時間はかかるだろうけど、ほっといたら増殖するわよ。あいつら独特のコミュニケーション能力あるから、分裂体に危機が及べば、集まってくるわよ』
アイアンゴーレムが集まるって。
「あのアイアンゴーレムの数は正解な数は分かっているんですか?」
「一体だけしか目視されておりません」
「だって」
『そうねえ、ちょっとその洞穴を調べる必要があるわね。近くに行けば私かビアンカの気配感知である程度は分かるから。場合によっては洞穴を潰す必要が出てるわよ』
それって、ビアンカとルージュで手に負えないってことね。
私は通話すると、ビオーザさんは更に困った顔。
「テイマー殿の従魔にどうにか出来ることを願うしかないと言うことですな。はあ」
と、ため息。だが、すぐに気を取り直す。
「可能性の問題ですな。アイアンゴーレムがメインの坑道に居座った時点で、ある程度は覚悟はしておりました。すぐに対応していただきたいが、スカイランからの移動でお疲れでしょう。宿の手配をしましょう。明日、坑道にご案内しますので、それまで、ゆっくり過ごされてください」
いいのかな?
「ゴーレムが行動範囲を広げるには、かなりの時間がかかるはず。1日2日くらいで地上には出んでしょう」
『そうね』
なら、いいかな。さすがにビアンカとルージュを休ませたい。明日の為に、今日は豪勢にしようかね。
優衣達が冒険者ギルドの宿に向かった後、ギルドでひと悶着起きた。
「なんで直ぐに討伐しないッ」
そうだそうだと殺気立つのは、他のギルドや、鍛冶工房だ。
ソルトは鉱山の町、それで生計を立てている者が多い。
メインの坑道が使えず、供給が途絶え、いつになったら採掘が再開されるかの目処すらない。このままでは、確実にソルトは干上がる。生きるため、生活がかかっていた。
対応したビオーザは、無表情に文句を言ってきた連中を見下す。それでも彼らは叫ぶ、早く討伐させろ、と。
ビオーザが握る拳が、軋むような音を立てる。。
そしてみるみる内に纏う空気が、まるで般若のように変わっていく。
「討伐、させろ、だと? てめえら、よくもそんな偉い事を言えたな、おい」
拳に力が入り、軋むような音を立てる。文句を言ってきた連中が、あまりの迫力に、口を閉じ後ずさる。
「あのテイマー殿はな、今日ダンジョンから出てきたばっかりなんだぞ。休みなくソルトまで来てくれたんだぞ。ギルドの依頼だからといって、旨味もあるような依頼でもないのにだッ」
ビオーザが叫ぶ。
「テイマー殿ははっきり言わないがなッ、ソルトが干上がって、困る奴がいるからって来ているッ。それが分からないのかぁぁぁぁッ」
咆哮のような叫び声に、一斉に人並みが引き、回りで傍観していた職員までも竦み上がる。
「てめえら、デカイ図体の野郎がッ。アイアンゴーレム一体どうにも出来ねえ癖に、よくもそんなことが言えたなぁぁぁぁ。あぁ、俺がその曲がった性根、叩き直して」
「やめな、ビオーザ」
ビリビリとした空気の中、ひどく冷静な女性の声が、一斉に注目を集める。
そこには、1人の高齢女性が、佇んでいた。
「ギ、ギルドマスター…………」
誰かが呟く。
「ふん、ディンジィか。鍛冶師ギルドマスターが何のようだ? 現場の指揮はどうした?」
ビオーザが鼻で息を吐く。
「挨拶に来たんだよ。かのテイマー様にね。アイアンゴーレムをどうにか直ぐに出来るのは、現状彼女だけなら、誠心誠意お願いするしかないって思ってね」
こちらはため息を吐く。
「ギルドマスターッ、直ぐにでも討伐してもらって………」
1人が食い下がるように言うと、高齢女性、鍛冶師ギルドマスターディンジィが鋭い視線投げる。
「黙りな。忘れるんじゃないよ、こちらが請うている立場なんだ。勘違いをするんじゃない」
ぐっ、と息を潜めるのを見て、ディンジィが息を吐く。
「あんた達の生活がかかっているのは、分かっているけど。こればっかりは彼女の機嫌を損ねられない。彼女に無理強いしたら、分かるだろう? あの従魔が黙っていないことは」
更に息を潜める気配が広がる。
「それにアイアンゴーレムなんて出た時点で、なんの被害なく終わるなんて、思っちゃないだろう?」
アイアンゴーレムが出た坑道は良質な金属の埋蔵を示しているが、問題はそれをどうやって排除するかだ。ただでさえ、魔法も物理も効かない相手。倒すには、許容量以上の力押ししかない。そしてアイアンゴーレムを倒せたとして、そんな戦闘をして坑道が無事に残る可能性の方が、討伐確率より低いのだから。
それは、鉱山の仕事に関わる者全てが知っている。
歩くゴーレムを見たら、ストーンなら倒せ、アイアンなら全てを諦めよ。
一斉に肩を落とす面々。
「さあ、帰りな。くれぐれも彼女に無理な接近は禁止だ。ビオーザ、あんたも拳を仕舞いな」
「ふんっ」
さっき迄文句を言ってきた者達は、1人1人去っていき、残ったのは冒険者ギルドマスタービオーザと鍛冶師ギルドマスターディンジィのみ。
「まったく、そんなに青筋立てて、どうするつもりなんだい」
「威嚇のつもりだ。あんなバカどもならこれくらいで十分だろう」
「で、あのテイマー様の感じは?」
「当人か? ゴーレムか?」
「今回は後者だよ」
「数とサイズだとさ。手に負えない可能性もある。とにかく明日、坑道に案内して、運を天に任せるしかなかろう。最悪はアイアンゴーレムはそのままで坑道は崩す必要があるかもしれん」
盛大にため息をつくディンジィ。
「それだけは避けたいが、そうも言えないね。私は現場に戻るよ」
「現場の連中に徹底させろ。失礼な態度を取るなってな」
「分かっているよ」
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これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
妹を踏みにじった奴らに、復讐の花束を
楠ノ木雫 妹を傷つけたやつは誰だ。
隣国に嫁いだこの国の王女であり双子の妹でもあるクラリスが2年後に亡き人となって帰ってきた。死因すら伝えられず嫁ぎ先の墓にも入れてもらえずに隣国の使者が連れてきた。
この事実に信じられずにいると、クラリスが帰ってくる半年前に戻っていた。
一体隣国でクラリスの身に何があったのか。
絶対に、もうクラリスのあんな姿を見たくない。堅く決意し使節団の使者として隣国に乗りこむ事になった。
※一話で過激なシーンがあります。
【第1回新エンタメ小説大賞】にエントリー中です。
【完結済】ワザと醜い令嬢をしていた令嬢一家華麗に亡命する
satomi醜く自らに魔法をかけてケルリール王国王太子と婚約をしていた侯爵家令嬢のアメリア=キートウェル。フェルナン=ケルリール王太子から醜いという理由で婚約破棄を言い渡されました。
もう王太子は能無しですし、ケルリール王国から一家で亡命してしまう事にしちゃいます!