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神からの依頼⑦
「ユイさん、ダメですっ」
ホークさんは小さく首を振る。
「全員助かるにはそれしかありませんっ」
こんな劣悪な状況に、エマちゃんや仔達をこのままにしてはおけん。なにより、他の皆さんだってそうだ。座り込んだまま動けそうになさそうやし。
一番いいのは、イシスとアレス、ビアンカ、ルージュが雨を降らせている相手の感知範囲から逃れることや。ルームに皆さんにいてもらって、ノワールに乗って移動して、土石流危険範囲から逃れる。これが一番やないかな。もし、ノワールの脚で無理なら、途中でルームに避難。サブ・ドアから出て、少数でばれないようにカルーラから出て、魔の森でルームを開けて山風や金の虎の皆さんに、出てもらい、徒歩でカルーラに戻ってもらう。今はそれしか思い付かん。だけど、サブ・ドア使用は、リスクが伴う。
「姉ちゃん、よかと?」
晃太も確認する。
ルームは最後の手段だし、私達の最大の強みであり、最も秘匿したいものだ。
「非常事態や」
その言葉に、晃太はそれ以上言わない。私はエマちゃんの肩を抱く。
「…………ユイさん、ごめんなさい…………………」
「何ばいいようと、エマちゃんは何も悪くないんよ」
「……ユイさん、グスッ……………」
抱いたエマちゃんの肩が震えている。私はそっとさする。
「気がつかんでごめんね。ホークさん、エマちゃんを」
「はい」
私はエマちゃんをホークさんに託す。
「皆さん」
立ち上がり、私は成り行きを見守っている皆さんの方に向き直る。会話の端々から、なんとなく察知はしている人はいるようやけど。
「皆さん。ここは長く持ちません、いずれ土砂崩れが起きて飲み込まれます」
息を飲むのが分かる。
「このままでは誰も助かりません。だから」
私は1つ、息を吸う。
「私が持つ特殊スキルを使います。その中に入ってください」
入る? と、誰かが呟く。
何か言いたそうだが、時間が惜しい。
「ルーム」
私はいつものサイズのドアを出す。
ざわっ、とするが、私は声を張り上げる。
「さあっ、皆さん入ってくださいっ」
あからさまに戸惑いの空気が流れる。そりゃそうだな、いきなりドアが出てきたらね。
「わんわんっ」
そんな中、いつもの調子で元気が入って行き、コハクが続く。
「さあ、エマちゃんを」
「はい」
私はエマちゃんを抱えたホークさんと入る。
「とにかく部屋に運んで、横にしてください」
「はい」
それから三人娘とシルフィ達を誘導してアリスと晃太が入ってくる。マデリーンさんはチュアンさんに支えられて、ミゲル君はノワールの手綱を引く。私は暖房のスイッチオン。
ドアからまず、おずおずと入って来るのは山風の皆さんだ。
「こ、これは一体?」
ロッシュさんが呟く。説明したいが、後で。マアデン君とハジェル君は、キョロキョロしている。
『早く入るのですっ』
『入りなさい』
ビアンカとルージュがせっついて、その後ろからガリストさんを支えたファングさんを先頭に金の虎の皆さんが入ってくる。
「ユイちゃん、これ、何?」
アルスさんが呆然と聞いてくるが、後でね。
蒼の麓もラスチャーニエの皆さんも、ビアンカとルージュにせっつかれて入って来るが、唖然呆然だ。
てってれってー
【ルーム レベル39にアップしました】
【HP4000追加】
【生命体 30以上同時在室確認 ボーナスポイント300000追加されます 特別オプション追加されます】
『ねえね~』
不安そうにヒスイがすり寄って来る。
「ヒスイ、いい子にしとってね」
『ねえね~』
次に私はカルーラのサブ・ドアを開ける。
「お母さんっ」
母を呼ぶ。窓の外、天候が悪くなっている。まず真っ先に来たのは、花だ。ワガママボディをくねらせる。よしよし。
「どうしたん? 今日は早かね」
母がエプロン姿で、出てきた。
「お母さん、ごめんけど来て、エマちゃんが熱があるんよ」
「ええっ?」
「それと緊急事態なんよ、とにかく来て」
「分かった」
母はそのままルームに来てくれた。花は一足先に行ってけたたましく吼えている。
「えっ、何で?」
「ケイコお母さんっ?」
サブ・ドアから出てきた母に、マアデン君とハジェル君は更に混乱している。母もびっくりだが、泥やらで汚れている皆さんを見て、なんとなく私が言った緊急事態を感じたようや。中庭はルームを開けた場所の天候と連動しているから、ゲリラ豪雨だ。アルスさんが、もう一度、ユイちゃんと来るが。ごめん、後でっ。
「晃太、悪かけど、ちょっと説明しとって」
「分かった」
晃太は吼える花を抱えている。
私は鷹の目のエリアから出てきたホークさんを捕まえる。
「ホークさん、こんな天候で申し訳ないですが、ノワールに乗ってください」
「はい」
碌な説明もしていないのに、ホークさんは了承してくれる。
「ノワール、ごめんね。走ってくれる?」
「ブヒヒヒンッ」
鼻息荒いノワール、大丈夫かな? ホークさんがノワールのレッサードラゴンの装備品を最低限にしていく。その間に私はエマちゃんを母に託す。
「悪寒が治まるまで保温して、治まったら無理のないように水分補給して解熱剤飲ませて」
「抗生剤は?」
「お父さんの鑑定待ちや」
「分かった」
「それから、他の皆さんもかなりくたびれとうんよ。身体が暖まるもんばお願い」
「まかせんしゃい」
ホークさんがノワールを厩舎から出す。
「姉ちゃん、行くん?」
いつもは飄々としている晃太も、流石に心配そうだ。
「ビアンカやルージュ達だけ、こんな雨の中ほったらかしに出来んしね。無理そうなら逃げ込むから、入り口付近におらんでね」
「ん、分かった。やけど、本当に気をつけてよ、姉ちゃんに何かあったらこのルームだってどうなるか」
「うん。分かっとる。後は頼むね」
私はゴーグルを晃太から受け取る。
「ユイちゃん、外、危ないよっ」
アルスさんが心配してくれるが、その腕をファングさんが掴む。
「アルス、じっとしていろ。テイマーさんは俺達の為に動いてくれているんだ。邪魔をするんじゃない」
「でも」
「アルス」
「……………うん」
言い聞かせるようなファングさんに、アルスさんはなんとか納得。ちらっ、私をみるも、青い目には、一杯の心配が溢れている。ありがとうアルスさん。皆不安そうだが、心配している。シュタインさんが、私の手を取ろうとしたが、タイミングが合わず、するりと抜けてしまう。何か、言わんといかんけど、思い付かない。
「ユイさん」
ノワールの準備ができたのか、ホークさんが声をかけてくる。いかん、いかん、こっちに集中せんと。
「ホークさん、お願いします」
「はい」
洞穴に出て、外を見るも雨脚は弱くなる様子はない。
『ヌシヨ、共ニ行クノカ』
「うん、私は皆の主人やしね。イシス達が雨の中走るのに、私だけ雨宿りは出来んよ」
『ソウカ』
ふう、と優しく息を吐く。いつも騒がしいアレスは、黙ったまま外を睨み付けている。
『ユイ、大丈夫なのですか?』
『ルームを使ってどうにか出来ない? ユイに何かあったら』
「危ないと思ったらルームに逃げ込むよ。そうなったら、気配範囲内から抜けた先の魔の森の中で待機しとってね。カルーラのサブ・ドアからこっちに来るから数日は待ってもらうけど。とにかく無理はせんよ」
そこまで言うとしぶしぶ納得してくれる。晃太がギリギリまで支援魔法を使っていると、フェリクスさんまでかけてくれる。さっきまで具合悪そうやったのに。てか、支援魔法使えるんや。
「これくらいさせてください」
「ありがとうございます」
ホークさんが身軽にノワールに飛び乗り、私はいつものようにチュアンさんの肩をかりて、ホークさんに引き上げてもらう。しっかり鞍に跨がり、ホークさんはマントを出して、具材の私を皮のホークさんが包む。はい、餃子の出来上がり。
「姉ちゃん、気をつけてな」
「うん、晃太、後は頼むばい」
「ん。ホークさん、お願いします」
「はい、コウタさん。チュアン、後は頼む」
「分かった」
全員がルームに入ったのを確認して、ドアを締める。
『行クゾッ』
神様、ノワールと、ホークさんを守ってください。ビアンカとルージュ、イシスとアレスを守ってください。
ふわっと、魔力が抜かれる。
神様が見守ってくれている。そう思うと心強い。
「行きますっ」
「はいっ」
ゲリラ豪雨の中、ノワールが駆け出した。
ホークさんは小さく首を振る。
「全員助かるにはそれしかありませんっ」
こんな劣悪な状況に、エマちゃんや仔達をこのままにしてはおけん。なにより、他の皆さんだってそうだ。座り込んだまま動けそうになさそうやし。
一番いいのは、イシスとアレス、ビアンカ、ルージュが雨を降らせている相手の感知範囲から逃れることや。ルームに皆さんにいてもらって、ノワールに乗って移動して、土石流危険範囲から逃れる。これが一番やないかな。もし、ノワールの脚で無理なら、途中でルームに避難。サブ・ドアから出て、少数でばれないようにカルーラから出て、魔の森でルームを開けて山風や金の虎の皆さんに、出てもらい、徒歩でカルーラに戻ってもらう。今はそれしか思い付かん。だけど、サブ・ドア使用は、リスクが伴う。
「姉ちゃん、よかと?」
晃太も確認する。
ルームは最後の手段だし、私達の最大の強みであり、最も秘匿したいものだ。
「非常事態や」
その言葉に、晃太はそれ以上言わない。私はエマちゃんの肩を抱く。
「…………ユイさん、ごめんなさい…………………」
「何ばいいようと、エマちゃんは何も悪くないんよ」
「……ユイさん、グスッ……………」
抱いたエマちゃんの肩が震えている。私はそっとさする。
「気がつかんでごめんね。ホークさん、エマちゃんを」
「はい」
私はエマちゃんをホークさんに託す。
「皆さん」
立ち上がり、私は成り行きを見守っている皆さんの方に向き直る。会話の端々から、なんとなく察知はしている人はいるようやけど。
「皆さん。ここは長く持ちません、いずれ土砂崩れが起きて飲み込まれます」
息を飲むのが分かる。
「このままでは誰も助かりません。だから」
私は1つ、息を吸う。
「私が持つ特殊スキルを使います。その中に入ってください」
入る? と、誰かが呟く。
何か言いたそうだが、時間が惜しい。
「ルーム」
私はいつものサイズのドアを出す。
ざわっ、とするが、私は声を張り上げる。
「さあっ、皆さん入ってくださいっ」
あからさまに戸惑いの空気が流れる。そりゃそうだな、いきなりドアが出てきたらね。
「わんわんっ」
そんな中、いつもの調子で元気が入って行き、コハクが続く。
「さあ、エマちゃんを」
「はい」
私はエマちゃんを抱えたホークさんと入る。
「とにかく部屋に運んで、横にしてください」
「はい」
それから三人娘とシルフィ達を誘導してアリスと晃太が入ってくる。マデリーンさんはチュアンさんに支えられて、ミゲル君はノワールの手綱を引く。私は暖房のスイッチオン。
ドアからまず、おずおずと入って来るのは山風の皆さんだ。
「こ、これは一体?」
ロッシュさんが呟く。説明したいが、後で。マアデン君とハジェル君は、キョロキョロしている。
『早く入るのですっ』
『入りなさい』
ビアンカとルージュがせっついて、その後ろからガリストさんを支えたファングさんを先頭に金の虎の皆さんが入ってくる。
「ユイちゃん、これ、何?」
アルスさんが呆然と聞いてくるが、後でね。
蒼の麓もラスチャーニエの皆さんも、ビアンカとルージュにせっつかれて入って来るが、唖然呆然だ。
てってれってー
【ルーム レベル39にアップしました】
【HP4000追加】
【生命体 30以上同時在室確認 ボーナスポイント300000追加されます 特別オプション追加されます】
『ねえね~』
不安そうにヒスイがすり寄って来る。
「ヒスイ、いい子にしとってね」
『ねえね~』
次に私はカルーラのサブ・ドアを開ける。
「お母さんっ」
母を呼ぶ。窓の外、天候が悪くなっている。まず真っ先に来たのは、花だ。ワガママボディをくねらせる。よしよし。
「どうしたん? 今日は早かね」
母がエプロン姿で、出てきた。
「お母さん、ごめんけど来て、エマちゃんが熱があるんよ」
「ええっ?」
「それと緊急事態なんよ、とにかく来て」
「分かった」
母はそのままルームに来てくれた。花は一足先に行ってけたたましく吼えている。
「えっ、何で?」
「ケイコお母さんっ?」
サブ・ドアから出てきた母に、マアデン君とハジェル君は更に混乱している。母もびっくりだが、泥やらで汚れている皆さんを見て、なんとなく私が言った緊急事態を感じたようや。中庭はルームを開けた場所の天候と連動しているから、ゲリラ豪雨だ。アルスさんが、もう一度、ユイちゃんと来るが。ごめん、後でっ。
「晃太、悪かけど、ちょっと説明しとって」
「分かった」
晃太は吼える花を抱えている。
私は鷹の目のエリアから出てきたホークさんを捕まえる。
「ホークさん、こんな天候で申し訳ないですが、ノワールに乗ってください」
「はい」
碌な説明もしていないのに、ホークさんは了承してくれる。
「ノワール、ごめんね。走ってくれる?」
「ブヒヒヒンッ」
鼻息荒いノワール、大丈夫かな? ホークさんがノワールのレッサードラゴンの装備品を最低限にしていく。その間に私はエマちゃんを母に託す。
「悪寒が治まるまで保温して、治まったら無理のないように水分補給して解熱剤飲ませて」
「抗生剤は?」
「お父さんの鑑定待ちや」
「分かった」
「それから、他の皆さんもかなりくたびれとうんよ。身体が暖まるもんばお願い」
「まかせんしゃい」
ホークさんがノワールを厩舎から出す。
「姉ちゃん、行くん?」
いつもは飄々としている晃太も、流石に心配そうだ。
「ビアンカやルージュ達だけ、こんな雨の中ほったらかしに出来んしね。無理そうなら逃げ込むから、入り口付近におらんでね」
「ん、分かった。やけど、本当に気をつけてよ、姉ちゃんに何かあったらこのルームだってどうなるか」
「うん。分かっとる。後は頼むね」
私はゴーグルを晃太から受け取る。
「ユイちゃん、外、危ないよっ」
アルスさんが心配してくれるが、その腕をファングさんが掴む。
「アルス、じっとしていろ。テイマーさんは俺達の為に動いてくれているんだ。邪魔をするんじゃない」
「でも」
「アルス」
「……………うん」
言い聞かせるようなファングさんに、アルスさんはなんとか納得。ちらっ、私をみるも、青い目には、一杯の心配が溢れている。ありがとうアルスさん。皆不安そうだが、心配している。シュタインさんが、私の手を取ろうとしたが、タイミングが合わず、するりと抜けてしまう。何か、言わんといかんけど、思い付かない。
「ユイさん」
ノワールの準備ができたのか、ホークさんが声をかけてくる。いかん、いかん、こっちに集中せんと。
「ホークさん、お願いします」
「はい」
洞穴に出て、外を見るも雨脚は弱くなる様子はない。
『ヌシヨ、共ニ行クノカ』
「うん、私は皆の主人やしね。イシス達が雨の中走るのに、私だけ雨宿りは出来んよ」
『ソウカ』
ふう、と優しく息を吐く。いつも騒がしいアレスは、黙ったまま外を睨み付けている。
『ユイ、大丈夫なのですか?』
『ルームを使ってどうにか出来ない? ユイに何かあったら』
「危ないと思ったらルームに逃げ込むよ。そうなったら、気配範囲内から抜けた先の魔の森の中で待機しとってね。カルーラのサブ・ドアからこっちに来るから数日は待ってもらうけど。とにかく無理はせんよ」
そこまで言うとしぶしぶ納得してくれる。晃太がギリギリまで支援魔法を使っていると、フェリクスさんまでかけてくれる。さっきまで具合悪そうやったのに。てか、支援魔法使えるんや。
「これくらいさせてください」
「ありがとうございます」
ホークさんが身軽にノワールに飛び乗り、私はいつものようにチュアンさんの肩をかりて、ホークさんに引き上げてもらう。しっかり鞍に跨がり、ホークさんはマントを出して、具材の私を皮のホークさんが包む。はい、餃子の出来上がり。
「姉ちゃん、気をつけてな」
「うん、晃太、後は頼むばい」
「ん。ホークさん、お願いします」
「はい、コウタさん。チュアン、後は頼む」
「分かった」
全員がルームに入ったのを確認して、ドアを締める。
『行クゾッ』
神様、ノワールと、ホークさんを守ってください。ビアンカとルージュ、イシスとアレスを守ってください。
ふわっと、魔力が抜かれる。
神様が見守ってくれている。そう思うと心強い。
「行きますっ」
「はいっ」
ゲリラ豪雨の中、ノワールが駆け出した。
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