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王冠山へ③
「彼の日頃の戦闘訓練は?」
フェリクスさんがロッシュさんに確認。
「基礎訓練、体幹訓練、魔力訓練が主です。弓に関しては本人に任せています。それから剣術訓練に関しては俺が」
「にしては、彼は細いな」
ペタペタ触れているハジェル君を眺めるフェリクスさん。
「俺もそれには疑問で。ハジェルを引き受けて2年になりますが、その時のままで」
ロッシュさんがため息。
同時期に新人として引き受けたマアデン君は、身長も伸びたし、筋肉も付いた。ただ、ハジェル君はそのまんま。
そう言えば、ハジェル君のお腹、ペッタンコだったなあ。でも、私も疑問。
「ハジェルは好き嫌いもせず、よく食べるし、訓練だってサボるような事はしません」
ふう、と息を着くロッシュさん。
「何よりもハジェルがその事を気にしています」
リーダーであるロッシュさんは新人を引き受ける以上、自分がかつてフェリクスさんにしてもらった様に、マアデン君とハジェル君に指導している。栄養面だって気を付けてる。
だけど、何故かハジェル君が伸び悩んでいる。それはラーヴさん、シュタインさんも気がついてる。そして同期であるマアデン君も気がついてるけど、ハジェル君は何でもないって顔をしてるから、相談にも乗れないみたい。ただ、変わらずハジェル君の側にいるって。
「だから、腹に力をいれなっ」
リィマさんが腹パン。
「あんた、ちょっと太りなっ」
「ぐへぇっ、何食べても体重増えなくって」
リィマさんが無言で腹パン。ホークさんはやや呆れ顔。
でも、なんで、ハジェル君筋肉着かんのやろ? 何でも食べるし、訓練だって真面目なのに、あの細さ。若さで片付ける感じやないね。
「彼は、人族?」
「だと思います」
多種多様な種族がいて、自分のルーツを正解に分かるのが困難な世界。
「だと?」
「ハジェルは農村出身なんですが、本人が幼い頃に廃村になって孤児院に兄と姉と入っています。両親の事は覚えてないようで、あえて根掘り葉掘り聞くわけには」
「それはそうだが、ちょっと気になるな、あの細さは」
うーん、と逞しい腕を組むフェリクスさん。
「一度、種族鑑定を受けさせる手もある。何かしら、手立てが分かるはずだ。このままだったら、彼も辛いままだぞ」
「そう、ですね。この件が落ち着いてから」
種族鑑定って、正にその人が何族であるか、又は他の種族の血がどれくらい流れているか分かる。例えば私は人族100%で、ミゲル君ならドワーフ族12.5%、人族87.5%。だけどこちらはファンタジーの世界。確実にそうとは言えない。なので、ここで種族鑑定だ。種族によって、身体の成長具合があり、種族に合った訓練だって異なって来る。ほっそりエルフのケルンさんと、がっちり筋肉隆々ドワーフのツヴァイクさんが全く同じ訓練しても、色々無理がかかる。
種族鑑定は出来る所は限られている。ユリアレーナでは、首都かマーファだって。
鑑定か。
「あの、鑑定なら、父ができますよ」
なんて言っても鑑定SSSだもんね。
「うーん」
父が目の前で、椅子にちょこんと腰掛けているハジェル君を鑑定。ハジェル君、ドキドキと分かる顔だ。
「人族が71%でエルフが29%やな。で、軽度後発成長やな」
後発成長?
その言葉で何人かは、納得みたいな顔。
「え? お、俺エルフなんて聞いてないっす。兄ちゃんも姉ちゃんもそんなこと…………」
当のハジェル君は戸惑いの表情だ。
「ハジェル君は先祖帰りしとるな。これもしっかり先祖帰りしてるわけやない、何代も前にエルフの人がおったんや。軽度後発成長とスコープはその先祖帰りの影響みたいや」
「えっと、それが俺の背が伸びない理由っすか? あ、ですか?」
なんや、ハジェル君の顔に、不安が一杯や。
「伸びない訳やないよ」
父がどう説明しようか悩む。
「あの、これから先は我々が」
と、ケルンさんが引き継ぐ。フェリクスさんとこしょこしょ。
「エドワルド」
ケルンさんが静観していたエドワルドさんを呼ぶ。
「はい」
「彼に後発成長の説明を」
「…………はい。こっちへ」
エドワルドさんがハジェル君を呼ぶ。戸惑いのハジェル君は、ロッシュさんをちらり。
「行ってこい」
「あ、はい」
エドワルドさんがハジェル君を連れていく。なんでエドワルドさんなんやろ。
「ではロッシュ、お前達にも説明をしよう」
と、フェリクスさんがロッシュさん達に説明を始める。
後発成長って言うのは、長命なエルフ特有の成長の仕方。第二次性徴が他の種族に比べたら遅く出る。エルフに言わせたら当然なんだけど、これが他の種族の血が混じるとおかしな感じになる事が時々ある。ハジェル君の場合は身長と筋肉の付きにくさ。
スコープに関しては、エルフは種族的に結構な確率で保有している。因みにドワーフは暗視だって。
「私も苦労しました」
「私もです」
ハーフエルフのヒェリさんとドーラさんも苦い顔だ。ヒェリさんは今の体格になるまでの成長速度は獣人と同じだったけど、どんなに訓練しても魔力の保有量がある一定量から伸びず、二十歳過ぎるまで僅かな魔力で何とか遣り繰りしてたと。因みに人族と獣人の成長速度はあまり変わりない。寿命に関しては誤差はあるけどね。ドーラさんはハジェル君と同じ身長だ。ドーラさんは30過ぎるまで130センチしかなかったって。30過ぎてから40歳になるまでに今の身長になったんだって。現在のお歳は聞けない。
「なら、ハジェルはまだ背が伸びる可能性があると」
「そうですよ。十分に可能性がある」
と、返すフェリクスさん。
「ただ、突然に成長の兆候がでる。背が伸びるのであれば、急激に関節痛が出るはずだ。その時は絶対に無理はさせないように。栄養面も気を付けて」
フェリクスさんがロッシュさん達に指導。真剣に聞いてる皆さん。
「長い目で見て上げなさい。今やってる訓練も継続するように、エルフの影響があるなら、魔力の保有量も増える可能性も…………」
私も聞きながら、ふと、ハジェル君とエドワルドさんを見る。多分、コテージのベンチで話しているんかな? 姿が見えない。
「なんで、エドワルドさんが説明してるんやろ?」
実際に後発成長で苦労したヒェリさんとドーラさんの方が良くない?
「そりゃ、あいつも後発成長で苦労しとるからな」
と、ツヴァイクさん。そう言えば、確か、サエキ様のお父さんがエルフやったなあ。
「あいつの場合は、あの軽度の坊主と違って、重度だったがな。同じ戦闘職として、何が辛いか分かるから、リーダーはエドワルドを寄越したんじゃよ」
懐かしむ様に、ツヴァイクさんがコテージに視線を向けた。
しばらくして夕食時、すっきりしたハジェル君がロッシュさん達に言ってた。
「俺、もうちょっとしたら背が伸びて、きっと役に立つっすっ」
赤茶けたハジェル君の頭をロッシュさん達はぐしゃぐしゃにしてた。
フェリクスさんがロッシュさんに確認。
「基礎訓練、体幹訓練、魔力訓練が主です。弓に関しては本人に任せています。それから剣術訓練に関しては俺が」
「にしては、彼は細いな」
ペタペタ触れているハジェル君を眺めるフェリクスさん。
「俺もそれには疑問で。ハジェルを引き受けて2年になりますが、その時のままで」
ロッシュさんがため息。
同時期に新人として引き受けたマアデン君は、身長も伸びたし、筋肉も付いた。ただ、ハジェル君はそのまんま。
そう言えば、ハジェル君のお腹、ペッタンコだったなあ。でも、私も疑問。
「ハジェルは好き嫌いもせず、よく食べるし、訓練だってサボるような事はしません」
ふう、と息を着くロッシュさん。
「何よりもハジェルがその事を気にしています」
リーダーであるロッシュさんは新人を引き受ける以上、自分がかつてフェリクスさんにしてもらった様に、マアデン君とハジェル君に指導している。栄養面だって気を付けてる。
だけど、何故かハジェル君が伸び悩んでいる。それはラーヴさん、シュタインさんも気がついてる。そして同期であるマアデン君も気がついてるけど、ハジェル君は何でもないって顔をしてるから、相談にも乗れないみたい。ただ、変わらずハジェル君の側にいるって。
「だから、腹に力をいれなっ」
リィマさんが腹パン。
「あんた、ちょっと太りなっ」
「ぐへぇっ、何食べても体重増えなくって」
リィマさんが無言で腹パン。ホークさんはやや呆れ顔。
でも、なんで、ハジェル君筋肉着かんのやろ? 何でも食べるし、訓練だって真面目なのに、あの細さ。若さで片付ける感じやないね。
「彼は、人族?」
「だと思います」
多種多様な種族がいて、自分のルーツを正解に分かるのが困難な世界。
「だと?」
「ハジェルは農村出身なんですが、本人が幼い頃に廃村になって孤児院に兄と姉と入っています。両親の事は覚えてないようで、あえて根掘り葉掘り聞くわけには」
「それはそうだが、ちょっと気になるな、あの細さは」
うーん、と逞しい腕を組むフェリクスさん。
「一度、種族鑑定を受けさせる手もある。何かしら、手立てが分かるはずだ。このままだったら、彼も辛いままだぞ」
「そう、ですね。この件が落ち着いてから」
種族鑑定って、正にその人が何族であるか、又は他の種族の血がどれくらい流れているか分かる。例えば私は人族100%で、ミゲル君ならドワーフ族12.5%、人族87.5%。だけどこちらはファンタジーの世界。確実にそうとは言えない。なので、ここで種族鑑定だ。種族によって、身体の成長具合があり、種族に合った訓練だって異なって来る。ほっそりエルフのケルンさんと、がっちり筋肉隆々ドワーフのツヴァイクさんが全く同じ訓練しても、色々無理がかかる。
種族鑑定は出来る所は限られている。ユリアレーナでは、首都かマーファだって。
鑑定か。
「あの、鑑定なら、父ができますよ」
なんて言っても鑑定SSSだもんね。
「うーん」
父が目の前で、椅子にちょこんと腰掛けているハジェル君を鑑定。ハジェル君、ドキドキと分かる顔だ。
「人族が71%でエルフが29%やな。で、軽度後発成長やな」
後発成長?
その言葉で何人かは、納得みたいな顔。
「え? お、俺エルフなんて聞いてないっす。兄ちゃんも姉ちゃんもそんなこと…………」
当のハジェル君は戸惑いの表情だ。
「ハジェル君は先祖帰りしとるな。これもしっかり先祖帰りしてるわけやない、何代も前にエルフの人がおったんや。軽度後発成長とスコープはその先祖帰りの影響みたいや」
「えっと、それが俺の背が伸びない理由っすか? あ、ですか?」
なんや、ハジェル君の顔に、不安が一杯や。
「伸びない訳やないよ」
父がどう説明しようか悩む。
「あの、これから先は我々が」
と、ケルンさんが引き継ぐ。フェリクスさんとこしょこしょ。
「エドワルド」
ケルンさんが静観していたエドワルドさんを呼ぶ。
「はい」
「彼に後発成長の説明を」
「…………はい。こっちへ」
エドワルドさんがハジェル君を呼ぶ。戸惑いのハジェル君は、ロッシュさんをちらり。
「行ってこい」
「あ、はい」
エドワルドさんがハジェル君を連れていく。なんでエドワルドさんなんやろ。
「ではロッシュ、お前達にも説明をしよう」
と、フェリクスさんがロッシュさん達に説明を始める。
後発成長って言うのは、長命なエルフ特有の成長の仕方。第二次性徴が他の種族に比べたら遅く出る。エルフに言わせたら当然なんだけど、これが他の種族の血が混じるとおかしな感じになる事が時々ある。ハジェル君の場合は身長と筋肉の付きにくさ。
スコープに関しては、エルフは種族的に結構な確率で保有している。因みにドワーフは暗視だって。
「私も苦労しました」
「私もです」
ハーフエルフのヒェリさんとドーラさんも苦い顔だ。ヒェリさんは今の体格になるまでの成長速度は獣人と同じだったけど、どんなに訓練しても魔力の保有量がある一定量から伸びず、二十歳過ぎるまで僅かな魔力で何とか遣り繰りしてたと。因みに人族と獣人の成長速度はあまり変わりない。寿命に関しては誤差はあるけどね。ドーラさんはハジェル君と同じ身長だ。ドーラさんは30過ぎるまで130センチしかなかったって。30過ぎてから40歳になるまでに今の身長になったんだって。現在のお歳は聞けない。
「なら、ハジェルはまだ背が伸びる可能性があると」
「そうですよ。十分に可能性がある」
と、返すフェリクスさん。
「ただ、突然に成長の兆候がでる。背が伸びるのであれば、急激に関節痛が出るはずだ。その時は絶対に無理はさせないように。栄養面も気を付けて」
フェリクスさんがロッシュさん達に指導。真剣に聞いてる皆さん。
「長い目で見て上げなさい。今やってる訓練も継続するように、エルフの影響があるなら、魔力の保有量も増える可能性も…………」
私も聞きながら、ふと、ハジェル君とエドワルドさんを見る。多分、コテージのベンチで話しているんかな? 姿が見えない。
「なんで、エドワルドさんが説明してるんやろ?」
実際に後発成長で苦労したヒェリさんとドーラさんの方が良くない?
「そりゃ、あいつも後発成長で苦労しとるからな」
と、ツヴァイクさん。そう言えば、確か、サエキ様のお父さんがエルフやったなあ。
「あいつの場合は、あの軽度の坊主と違って、重度だったがな。同じ戦闘職として、何が辛いか分かるから、リーダーはエドワルドを寄越したんじゃよ」
懐かしむ様に、ツヴァイクさんがコテージに視線を向けた。
しばらくして夕食時、すっきりしたハジェル君がロッシュさん達に言ってた。
「俺、もうちょっとしたら背が伸びて、きっと役に立つっすっ」
赤茶けたハジェル君の頭をロッシュさん達はぐしゃぐしゃにしてた。
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