もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
532 / 876
連載

布確保⑨

 金の睫毛を持つ、暖かい色合いのオレンジの瞳が、悲しげに伏せられる。
「お話は伺っています」
 やっぱり気にされていたよね。なんと言ってもジークフリード王太子殿下は、実の弟だし、その伴侶になる方はいずれ義妹だし。
 何よりいずれはこのユリアレーナ王国を背負う方々の結婚式に、あの事件が妙な影を落とさないか心配されているんやね。
「子供達を保護できたのは、せめてもの救いです」
 あの事件はズロー商会の単独犯ってことで、アスラ王国は片付けた。まあ、色々加担していた人たちも、芋づる式に引っ捕らえているそうだけど。布の準備を指示したのは、アスラ王国夫妻。現在、ユリアレーナ王国王太后ミッシェル様は、もともとアスラ王国のお姫様だ。つまり、今のアスラ王国の国王は、ミッシェル王太后様の実弟に当たる。せっかく、これからもユリアレーナ王国とアスラ王国が仲良くしましょうって準備したのに、あの14人の子供達の事件だ。
 言わずもがな、アスラ王国夫妻は、かんかんらしい。
「はい。今はカルーラの修道院で保護されています。私は、シスター・アモルを、カルーラの修道院の皆さんを信じています。ギルドも対応してくれていますから」
「まあ、ミズサワ様は、カルーラの修道院の皆様と交流を?」
「はい。うちのチュアンさんが、そこで保護されて育った経緯がありまして。私は真面目なチュアンさんを信じています。そしてチュアンさんが信頼しているカルーラの修道院が子供達をチュアンさんのように守ってくれると信じていますから」
「そうでしたか」
 そう、フェリアレーナ様は微笑む。わっふ、美しい。晃太が、綺麗な人やー、と呟く。
「それで、ですね。そのレティシア様、ファクル侯爵令嬢の為に、色んな人達の願いがこもった大切な布が、使えなくなってしまって。どうしても気になっていました」
「まあ。ミズサワ様がお気になさる必要はありませんのよ。ミズサワ様は最悪の事態を防いでいただいたのですから」
「それでもどうしても気になってしまいます。せっかく、ユリアレーナ王国とアスラ王国の更なる友好の架け橋になるはずだったのに。私には責はないと色んな方から言ってもらえますが、何かできることはないかと思って。でも、私が出来るのは限られています」
 静かにフェリアレーナ様は聞いてくれる。そして、父と話していたダストン様も、お隣のイザベラ様も、そしてセザール様も聞いてくれている。
「私には、頼もしい家族、従魔達がいます。先日ダンジョンに行った際に、素晴らしい布が手に入りました。それを王家に、レティシア嬢に差し上げたいのです」
「まあ、ミズサワ様」
 綺麗な声は感極まるのを、抑えている。
「本日持参しています。商人ギルドのタージェルさんからお墨付きを頂いたものです。ハルスフォン侯爵様のお手を煩わせるかと思いますが、これをレティシア嬢に、ファクル侯爵令嬢に使って頂けるようにご配慮していただきたいのです」
 私はある程度考えていたセリフを必死に紡ぐ。
 国を挙げての結婚式だけど、レティシア嬢にしてみたら、人生最大のイベントになるはず。だって、結婚式だよ。それを全く関係ないところで泥を塗られて、ショックを受けないわけはない。せめて、綺麗な布を贈って、少しでも、そんなショックをいずれ思い出の一つくらいにしてもらいたい。幸せな結婚式にしてほしい。
「お義父様、お義母様、私はその役目を引き受けたく存じます」
 話を聞いてくれたフェリアレーナ様が、ダストン様とイザベラ様に視線を移す。
「そうですわあなた。私も同じくそのように思います」
「父上、私もフェリアレーナと同じ考えです」
 イザベラ様とセザール様も援護してくれる。
 それを受けて、ダストン様は静かに姿勢を正す。
「ミズサワ殿。是非、我々ハルスフォン侯爵家は、その役目を引き受けさせていただきます」
 軽く、会釈。
 素敵。
 やけど、良かった。無事になんとかなったね。
感想 851

あなたにおすすめの小説

「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました

歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜 

なつめ
恋愛
夫の愛人に「妻の座を譲れ」と言い渡された主人公は、怒鳴り返すこともしがみつくこともせず、ただ静かに頷いた。 家のこと、食事のこと、社交のこと、義実家のこと、会社の裏方のこと。 誰も価値を知らなかった“妻の座”の中身を、そっくりそのまま置いて家を出る。 向かった先は、かつて傷ついた自分を受け入れてくれた老舗旅館。 再建に奔走する若旦那とともに働く中で、主人公は初めて「役に立つから愛される」のではなく、「あなた自身がいてほしい」と言われる温かさを知っていく。 一方、主人公を軽んじた元夫の家では、生活も体裁も仕事もじわじわと崩壊を始める。 これは、何も持たずに出ていったはずの女が、自分の人生を取り戻し、最後には新しい恋と居場所を手に入れる再生の物語。

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!

山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。

「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった

歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです

天宮有
恋愛
 子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。  数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。  そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。  どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。  家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。