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連載
白夜⑫
「儂がしたのは、きっかけじゃよ」
ふふふ、と微笑む始祖神様。
「お嬢さんがかつて、リルの娘達の救いを求める声に答えた時のように。神子の願いに適合したお嬢さんに」
「え?」
どういう事?
「お嬢さん、あの集落での神子の役割は象徴であった。こちらの世界に実際に移住してきたことができたから、余計に神へ信仰心は強く、その神への祈りを捧げる神子達は誰からも敬愛されたのじゃ。役割、象徴だったが、年月の流れで、ある時、本物の神子が生まれた」
神子。
聖女とのよく間違えられるが、その違いははっきりしている。神子も聖女も、神様にお願いして色々な奇跡を起こす。違いは生まれだ。神子はこちらの世界で、おぎゃあ、と生まれること。聖女は異世界からの転移者がその奇跡を起こす事ができる者だ。こちらの世界の人達もよく分かってない人が多く、いまでも混合されて使われている。
「神子はな、遠い未来を予見しておた。いずれ自分達は、あの白蛇、白夜じゃな、それを残して全滅してしまうと。神子にはその全滅してしまう理由が分からなかったが、ただ、気がかりは、残される白夜じゃった。自分達にしては守り神のような存在じゃが、もし、外の世界の誰かに見つかり、敵とみなされ、害をなされては、と」
確かに、私が見た、あの光景の中でも、討伐対象のようなサイズやったもん。
「だから、儂ら神へ願った。白夜がひとりぼっちになってしまったら、どうか、救いの神子を遣わして欲しい、と」
まさか、それって。
「もちろん、条件付きで儂らは答えた。同じ世界からの転移者、黒い髪を持ち、僅かでもいい、集落を守り続けていた白夜に思いを寄せてくれる者」
あ、確かに、イシス達が頑張っているってのに、ぼろぼろになっていくヤマタノオロチに、いたたまれない気持ちになってしまった。
「まあ、そう簡単に現れるわけもない。そうしているうちに時が経ちすぎ、白蛇がヤマタノオロチにまで進化してしもうたがな。皇帝竜との戦いで休眠状態になり儂はダンジョンの中で静かに朽ちて、いずれ神子達の元に逝くであるなら、それまで見守っているつもりであったが、あの地脈の乱れじゃ」
ああ、あの華憐が起こした厄災ね。
「儂ら神は、下界にできるとなら、介入できん。ただ下手な半覚醒をしてしまったヤマタノオロチは、確かに大惨事にしかならぬ。じゃが、もしかしたら、お嬢さんなら、神子の条件に合うのではないか? 長い時の中で、たった一人で誰もいない集落を守り続けていた、白夜と呼ばれた、ヤマタノオロチを救い上げてくれるのではないか、と。だから、儂は神子の願いに答えた。きっかけ、その鍵は、その神秘の紫水晶(ミスティック・アメジスト)じゃ、それ自体に神子の願いを宿し、必要時過去を見せる。そしてお嬢さんの側におる従魔達じゃ」
始祖神様は一区切り置く。
「ヤマタノオロチは皇帝竜と激しくぶつかり合ってしまったこと、長く眠りすぎてしまったことで、混乱の極みじゃった。そんな状況では、とてもじゃないがお嬢さんに白夜を説得しろ、なんて言えんじゃろ? それに下手に儂から頼めば、お嬢さんなら真っ先に自分からヤマタノオロチを説得しそうじゃからな」
うっ。確かに、もし最初から始祖神様から言われたら、そうしたかも、取り敢えず説得してみようかなって。
「その神秘の紫水晶(ミスティック・アメジスト)は、確かに神子達が代々引き継いで来たもの。ヤマタノオロチの記憶をつつき、かつての賑やかな景色を見せるが、何よりいずれお嬢さんのその後に役にたつじゃろうと儂が作った。それにかなり、ガツン、とせんとヤマタノオロチも正気にならん。そのガツンできる強者となると限られてしまう。以前、ヤマタノオロチと対立した皇帝竜に神託を下せば、王冠山は吹き飛び、あたり一面焦土になりかねん。お嬢さんの従魔達の力なら、儂らのブーストを与えればなんとか出来そうじゃった。被害が最小限にできると、な。もし、従魔達でも歯が立たなければ、お嬢さん達をルームで守り、皇帝竜に神託の下すしかなかった。これはすべては賭けじゃった。無事にヤマタノオロチは正気に戻り、次の神子を見つけた、それがお嬢さんじゃ。そして理解した、自分のできる最良の方法で、外の世界に行く神子を守るには、代償魔法が最良だと、な。それで、お嬢さんの中に入り込んだんじゃ」
始祖神様が優しく笑う。
ヤマタノオロチに、神子認定されてしまった。
正気に戻ったヤマタノオロチが、始祖神様から神秘の紫水晶(ミスティック・アメジスト)と、私の黒い髪、そして神子様が実際語った夢を、言葉に出した。それで、私を神子認定したんやろうなあ。あの時ちょっと夢中やったし、神子様から救って伝えてなんて言われて、無意識に足が外に向かっていたし。
つまり結局、あの神子様の願いを叶えるために、神様が色んな事をして、私達に賭けたんだ。イシスやアレスに始祖神様直々にブーストをくれた、冒険者の皆さんも説得してくれた。神への祈りもスムーズに発動した。神様ができる限りの介入。
以前聞いた、ある世界の神様が良かれと介入してしまい、世界が破壊するという最悪の結果になった。
始祖神様が皇帝竜に神託を下せば、王冠山周囲が焦土になり、魔の森や町が壊滅する。そして逃げ惑う人達は、願う『神様、助けて』と。でも、神様が直接の介入ができない。限られた能力がある人に、限られた力しか与えられない。そうしなければ、世界が壊れてしまうからだ。でも始祖神様が歯がゆい思いをする。それを避ける為に、神様ができるギリギリの介入だったはず。
ヤマタノオロチにしてもそうだ。気が遠くなる時間を待ち続けて、やっと思い出した。かつて、神子様が語った夢を、実現させるために、最良の方法を取り、私に神聖魔法という形で、いま、ここにいるんや。
「お嬢さん、無理難題を押し付けてしまって申し訳なかったなあ。じゃが、最高の結果じゃ」
始祖神様は、再びそっと私の手を包み込む。
「本来であれば討伐するしかない、ヤマタノオロチじゃが。そのヤマタノオロチの目を覚まし、本来の白肌の姿に戻し、お嬢さんの言葉に惹き付けられた。神子が帰って来たのだと、山の向こうに行けるのだと。お嬢さん、ありがとうなあ、神子を願いを叶え、白夜を救ってくれた事を、そして何より大惨事となるはずじゃったのに、防いでくれた事に」
「いえ、そんな、私は、その迷ってばっかりで」
イシス達が必死に戦ってくれているのに、怪我してほしくないと思っていたのに、ほんの一瞬、思ってしまった。
甘い、いや、あの時、そんな風に思ってはいけなかったのに。
我ながら、自分に幻滅する。
「お嬢さんらしい、人らしい感情じゃろう。迷い、思考し、後悔し、後ろに向かい、前に進み、迷走する。儂をそれを生きると言う事に必要だと思うがの」
ニコニコと笑う始祖神様。
「儂はそれを美しいと思う。さあ、お嬢さん、よくやってくれた。ああ、表だってのご褒美はやれんが、いくつかの情報を開示しよう」
「情報?」
神様からのご褒美になるような情報? え? 何?
「まず、脱出用の魔法陣じゃが、さっきの戦闘で壊れたぞ」
…………………………………………
「はいーっ」
私は思わず叫んだ。
ふふふ、と微笑む始祖神様。
「お嬢さんがかつて、リルの娘達の救いを求める声に答えた時のように。神子の願いに適合したお嬢さんに」
「え?」
どういう事?
「お嬢さん、あの集落での神子の役割は象徴であった。こちらの世界に実際に移住してきたことができたから、余計に神へ信仰心は強く、その神への祈りを捧げる神子達は誰からも敬愛されたのじゃ。役割、象徴だったが、年月の流れで、ある時、本物の神子が生まれた」
神子。
聖女とのよく間違えられるが、その違いははっきりしている。神子も聖女も、神様にお願いして色々な奇跡を起こす。違いは生まれだ。神子はこちらの世界で、おぎゃあ、と生まれること。聖女は異世界からの転移者がその奇跡を起こす事ができる者だ。こちらの世界の人達もよく分かってない人が多く、いまでも混合されて使われている。
「神子はな、遠い未来を予見しておた。いずれ自分達は、あの白蛇、白夜じゃな、それを残して全滅してしまうと。神子にはその全滅してしまう理由が分からなかったが、ただ、気がかりは、残される白夜じゃった。自分達にしては守り神のような存在じゃが、もし、外の世界の誰かに見つかり、敵とみなされ、害をなされては、と」
確かに、私が見た、あの光景の中でも、討伐対象のようなサイズやったもん。
「だから、儂ら神へ願った。白夜がひとりぼっちになってしまったら、どうか、救いの神子を遣わして欲しい、と」
まさか、それって。
「もちろん、条件付きで儂らは答えた。同じ世界からの転移者、黒い髪を持ち、僅かでもいい、集落を守り続けていた白夜に思いを寄せてくれる者」
あ、確かに、イシス達が頑張っているってのに、ぼろぼろになっていくヤマタノオロチに、いたたまれない気持ちになってしまった。
「まあ、そう簡単に現れるわけもない。そうしているうちに時が経ちすぎ、白蛇がヤマタノオロチにまで進化してしもうたがな。皇帝竜との戦いで休眠状態になり儂はダンジョンの中で静かに朽ちて、いずれ神子達の元に逝くであるなら、それまで見守っているつもりであったが、あの地脈の乱れじゃ」
ああ、あの華憐が起こした厄災ね。
「儂ら神は、下界にできるとなら、介入できん。ただ下手な半覚醒をしてしまったヤマタノオロチは、確かに大惨事にしかならぬ。じゃが、もしかしたら、お嬢さんなら、神子の条件に合うのではないか? 長い時の中で、たった一人で誰もいない集落を守り続けていた、白夜と呼ばれた、ヤマタノオロチを救い上げてくれるのではないか、と。だから、儂は神子の願いに答えた。きっかけ、その鍵は、その神秘の紫水晶(ミスティック・アメジスト)じゃ、それ自体に神子の願いを宿し、必要時過去を見せる。そしてお嬢さんの側におる従魔達じゃ」
始祖神様は一区切り置く。
「ヤマタノオロチは皇帝竜と激しくぶつかり合ってしまったこと、長く眠りすぎてしまったことで、混乱の極みじゃった。そんな状況では、とてもじゃないがお嬢さんに白夜を説得しろ、なんて言えんじゃろ? それに下手に儂から頼めば、お嬢さんなら真っ先に自分からヤマタノオロチを説得しそうじゃからな」
うっ。確かに、もし最初から始祖神様から言われたら、そうしたかも、取り敢えず説得してみようかなって。
「その神秘の紫水晶(ミスティック・アメジスト)は、確かに神子達が代々引き継いで来たもの。ヤマタノオロチの記憶をつつき、かつての賑やかな景色を見せるが、何よりいずれお嬢さんのその後に役にたつじゃろうと儂が作った。それにかなり、ガツン、とせんとヤマタノオロチも正気にならん。そのガツンできる強者となると限られてしまう。以前、ヤマタノオロチと対立した皇帝竜に神託を下せば、王冠山は吹き飛び、あたり一面焦土になりかねん。お嬢さんの従魔達の力なら、儂らのブーストを与えればなんとか出来そうじゃった。被害が最小限にできると、な。もし、従魔達でも歯が立たなければ、お嬢さん達をルームで守り、皇帝竜に神託の下すしかなかった。これはすべては賭けじゃった。無事にヤマタノオロチは正気に戻り、次の神子を見つけた、それがお嬢さんじゃ。そして理解した、自分のできる最良の方法で、外の世界に行く神子を守るには、代償魔法が最良だと、な。それで、お嬢さんの中に入り込んだんじゃ」
始祖神様が優しく笑う。
ヤマタノオロチに、神子認定されてしまった。
正気に戻ったヤマタノオロチが、始祖神様から神秘の紫水晶(ミスティック・アメジスト)と、私の黒い髪、そして神子様が実際語った夢を、言葉に出した。それで、私を神子認定したんやろうなあ。あの時ちょっと夢中やったし、神子様から救って伝えてなんて言われて、無意識に足が外に向かっていたし。
つまり結局、あの神子様の願いを叶えるために、神様が色んな事をして、私達に賭けたんだ。イシスやアレスに始祖神様直々にブーストをくれた、冒険者の皆さんも説得してくれた。神への祈りもスムーズに発動した。神様ができる限りの介入。
以前聞いた、ある世界の神様が良かれと介入してしまい、世界が破壊するという最悪の結果になった。
始祖神様が皇帝竜に神託を下せば、王冠山周囲が焦土になり、魔の森や町が壊滅する。そして逃げ惑う人達は、願う『神様、助けて』と。でも、神様が直接の介入ができない。限られた能力がある人に、限られた力しか与えられない。そうしなければ、世界が壊れてしまうからだ。でも始祖神様が歯がゆい思いをする。それを避ける為に、神様ができるギリギリの介入だったはず。
ヤマタノオロチにしてもそうだ。気が遠くなる時間を待ち続けて、やっと思い出した。かつて、神子様が語った夢を、実現させるために、最良の方法を取り、私に神聖魔法という形で、いま、ここにいるんや。
「お嬢さん、無理難題を押し付けてしまって申し訳なかったなあ。じゃが、最高の結果じゃ」
始祖神様は、再びそっと私の手を包み込む。
「本来であれば討伐するしかない、ヤマタノオロチじゃが。そのヤマタノオロチの目を覚まし、本来の白肌の姿に戻し、お嬢さんの言葉に惹き付けられた。神子が帰って来たのだと、山の向こうに行けるのだと。お嬢さん、ありがとうなあ、神子を願いを叶え、白夜を救ってくれた事を、そして何より大惨事となるはずじゃったのに、防いでくれた事に」
「いえ、そんな、私は、その迷ってばっかりで」
イシス達が必死に戦ってくれているのに、怪我してほしくないと思っていたのに、ほんの一瞬、思ってしまった。
甘い、いや、あの時、そんな風に思ってはいけなかったのに。
我ながら、自分に幻滅する。
「お嬢さんらしい、人らしい感情じゃろう。迷い、思考し、後悔し、後ろに向かい、前に進み、迷走する。儂をそれを生きると言う事に必要だと思うがの」
ニコニコと笑う始祖神様。
「儂はそれを美しいと思う。さあ、お嬢さん、よくやってくれた。ああ、表だってのご褒美はやれんが、いくつかの情報を開示しよう」
「情報?」
神様からのご褒美になるような情報? え? 何?
「まず、脱出用の魔法陣じゃが、さっきの戦闘で壊れたぞ」
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「はいーっ」
私は思わず叫んだ。
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