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スライムダンジョン⑦
「えっ、てことは?」
「あのジャガーのレベルって」
「おほんっ」
わざとらしい咳払いは、多いと言ったリーダーさん。残り二人のリーダーさんが口を噤む。
「テイマーさん、本当にいいのか? ギルドに回せばかなりの額になると思うが」
「そういうお約束で、ボス部屋を譲って頂きましたから。宝箱の中身も確認お願いします」
咳払いリーダーさんは、口を噤んだリーダーさんに確認してからビロードの箱を慎重に開ける。私も見せてもらったが、涙型の透明な宝石の下がったピアスだった。カットが細かく入りキラキラと輝いている。あら、素敵。すっ、と覗き込んできたリィマさんが耳元で囁く。
「ダイヤモンド、約二百万」
やっぱりルージュが開けるとすごくことになるなあ。
開けた咳払いリーダーさんは、更に戸惑いの表情だ。
「どうされました?」
「いや、今まで一番高そうだなって」
どうやらこの咳払いリーダーさんのパーティは、何度かこのボス部屋に挑んでいるみたい。だから、いつものドロップ品と比べて、余計にびっくりしたんやね。
「こちらどうされます? 一旦どなたかまとめて持たれますか?」
「そうだな…ちょっと待ってくれ」
咳払いリーダーさんは、残り二人のリーダーさんと短い会議をしている。直ぐに決まったみたい。
「とりあえず、コアを全部数えて把握してからギルドに持ち込む。どうぞ先にテイマーさん、脱出してくれ」
「ありがとうございます。では、お先しますね」
「こちらが礼を言わんとな。ボス部屋譲っただけで、逆に申し訳ない稼ぎになってしまって」
咳払いリーダーさんが申し訳なさそうね顔になっている。
後方が騒がわしくなる。
『ねえねっ、ヒスイお腹減っちゃったっ』
『ばーちゃんのご飯食べたいねんっ』
『私もよ、ユイ、帰りましょう』
「はいはい。そういうお約束でしたので、私達、お先失礼しますね」
「ああ、お気をつけて」
私はすべてのドロップ品とビロードの箱を渡して、脱出用の魔法陣が浮かぶボス部屋に入る。
『いいわね?』
ルージュが魔力を流して、いつもの様に景色が変わった。
噂のテイマーを見送った後。
「すっげえっ、こんな色付きのコア始めてじゃねっ?」
誰かが興奮したように声を上げる。
釣られたように数人がはしゃいだような声を上げ始めたが、
「ちょっと黙ってろっ」
と、ぴしゃり、と一喝したのは咳払いリーダーだ。一瞬驚いて黙るが、直ぐに不満顔になっていく。
「コアの数を数えて待ってろ。おい」
咳払いリーダーは残り二人のリーダーを呼び寄せる。
「おい、ダンジョン出てもあのジャガーについて、不用意に触れ回るなよ」
顔を見合わせる二人のリーダー。
「なんでって顔してるが、基本的だろうが。相手の了承もなしに、そのレベルとかスキルとか、不特定多数にべらべら喋るのか?」
「あっ」
「確かに、ダメだよな」
「それぞれメンバーに徹底させろよ。もともとギルドからも注意が来るようなテイマーだが、これは他の誰でも本来当たり前に注意するべき事だしな」
「そうだな、注意しとく」
「分かった」
咳払いリーダーは、二人のリーダーの反応にホッとする。
しかし、と思い直す。
咳払いリーダーは、何度か七階のボス部屋に挑んだことがある。だから、いつも出るドロップ品や宝箱の内容はおおよその数は分かっていた。だからルージュが開けた時の差が激しいことに気がついていた。
あのクリムゾンジャガーが、どれだけの高ランクの魔物であるか。
マーファで起きたドラゴン騒ぎ。
クリムゾンジャガーの援護で、フォレストガーディアンウルフが倒した、と流れた情報は少し人々に違った印象を与えながら流れた。
強いのは倒したフォレストガーディアンウルフで、クリムゾンジャガーは援護程度しか出来ない、と。
(これは間違いだ。フォレストガーディアンウルフは見てないが、このクリムゾンジャガーもとんでもないぞ)
先程見せた輝きをまとった戦闘モードもそうだが、ちょっとだけ、姿勢を低くして、あの赤い目で射貫かれるように見られただけで、腹の奥底から湧き上がるのは、絶対的な強者を前にした恐怖。
足がすくんだ。
ほんの一瞬の出来事だったが、だが、長く冒険者をしていて、その一瞬で理解した。
逆らってはいけない、と。
そして、まるで我が子のようにその身を心配しているテイマー。まだ、若そうなジャガー二匹の睨み合いを、ケンカせんの、で諌めたその姿に。思わず後ずさるような光景だったのに。彼女は、よしよし、と諌めていた。そしてその後どうみても明らかに一般人の高齢男性、おそらくテイマーの父親らしき男性が、おお、よしよし、と撫でている姿に疑問が湧き上がった。だが、若いとはいえ、思わず後ずさるような睨み合いをするジャガーを、まるで猫のように撫でているから、テイマー同様に対応するのが無難だと思った。
スライムコアを数えて、脱出して、ギルドに持ち込むと、予感はしていたが、別室に案内された。
そこで、あのテイマーとのやりとりを説明すると、あぁ、と納得してくれた。
やはり異常な数だった。そして、これもやはりと思っていたが、無闇にあちこちで今回の事を触れ回るなと釘を刺されてからやっと解放された。
後日、スライムコアと宝箱の中身のダイヤモンドのピアスの買取額が出た。
各パーティ、二百万となり、思わず二度も額の確認をしてしまった。
「あのジャガーのレベルって」
「おほんっ」
わざとらしい咳払いは、多いと言ったリーダーさん。残り二人のリーダーさんが口を噤む。
「テイマーさん、本当にいいのか? ギルドに回せばかなりの額になると思うが」
「そういうお約束で、ボス部屋を譲って頂きましたから。宝箱の中身も確認お願いします」
咳払いリーダーさんは、口を噤んだリーダーさんに確認してからビロードの箱を慎重に開ける。私も見せてもらったが、涙型の透明な宝石の下がったピアスだった。カットが細かく入りキラキラと輝いている。あら、素敵。すっ、と覗き込んできたリィマさんが耳元で囁く。
「ダイヤモンド、約二百万」
やっぱりルージュが開けるとすごくことになるなあ。
開けた咳払いリーダーさんは、更に戸惑いの表情だ。
「どうされました?」
「いや、今まで一番高そうだなって」
どうやらこの咳払いリーダーさんのパーティは、何度かこのボス部屋に挑んでいるみたい。だから、いつものドロップ品と比べて、余計にびっくりしたんやね。
「こちらどうされます? 一旦どなたかまとめて持たれますか?」
「そうだな…ちょっと待ってくれ」
咳払いリーダーさんは、残り二人のリーダーさんと短い会議をしている。直ぐに決まったみたい。
「とりあえず、コアを全部数えて把握してからギルドに持ち込む。どうぞ先にテイマーさん、脱出してくれ」
「ありがとうございます。では、お先しますね」
「こちらが礼を言わんとな。ボス部屋譲っただけで、逆に申し訳ない稼ぎになってしまって」
咳払いリーダーさんが申し訳なさそうね顔になっている。
後方が騒がわしくなる。
『ねえねっ、ヒスイお腹減っちゃったっ』
『ばーちゃんのご飯食べたいねんっ』
『私もよ、ユイ、帰りましょう』
「はいはい。そういうお約束でしたので、私達、お先失礼しますね」
「ああ、お気をつけて」
私はすべてのドロップ品とビロードの箱を渡して、脱出用の魔法陣が浮かぶボス部屋に入る。
『いいわね?』
ルージュが魔力を流して、いつもの様に景色が変わった。
噂のテイマーを見送った後。
「すっげえっ、こんな色付きのコア始めてじゃねっ?」
誰かが興奮したように声を上げる。
釣られたように数人がはしゃいだような声を上げ始めたが、
「ちょっと黙ってろっ」
と、ぴしゃり、と一喝したのは咳払いリーダーだ。一瞬驚いて黙るが、直ぐに不満顔になっていく。
「コアの数を数えて待ってろ。おい」
咳払いリーダーは残り二人のリーダーを呼び寄せる。
「おい、ダンジョン出てもあのジャガーについて、不用意に触れ回るなよ」
顔を見合わせる二人のリーダー。
「なんでって顔してるが、基本的だろうが。相手の了承もなしに、そのレベルとかスキルとか、不特定多数にべらべら喋るのか?」
「あっ」
「確かに、ダメだよな」
「それぞれメンバーに徹底させろよ。もともとギルドからも注意が来るようなテイマーだが、これは他の誰でも本来当たり前に注意するべき事だしな」
「そうだな、注意しとく」
「分かった」
咳払いリーダーは、二人のリーダーの反応にホッとする。
しかし、と思い直す。
咳払いリーダーは、何度か七階のボス部屋に挑んだことがある。だから、いつも出るドロップ品や宝箱の内容はおおよその数は分かっていた。だからルージュが開けた時の差が激しいことに気がついていた。
あのクリムゾンジャガーが、どれだけの高ランクの魔物であるか。
マーファで起きたドラゴン騒ぎ。
クリムゾンジャガーの援護で、フォレストガーディアンウルフが倒した、と流れた情報は少し人々に違った印象を与えながら流れた。
強いのは倒したフォレストガーディアンウルフで、クリムゾンジャガーは援護程度しか出来ない、と。
(これは間違いだ。フォレストガーディアンウルフは見てないが、このクリムゾンジャガーもとんでもないぞ)
先程見せた輝きをまとった戦闘モードもそうだが、ちょっとだけ、姿勢を低くして、あの赤い目で射貫かれるように見られただけで、腹の奥底から湧き上がるのは、絶対的な強者を前にした恐怖。
足がすくんだ。
ほんの一瞬の出来事だったが、だが、長く冒険者をしていて、その一瞬で理解した。
逆らってはいけない、と。
そして、まるで我が子のようにその身を心配しているテイマー。まだ、若そうなジャガー二匹の睨み合いを、ケンカせんの、で諌めたその姿に。思わず後ずさるような光景だったのに。彼女は、よしよし、と諌めていた。そしてその後どうみても明らかに一般人の高齢男性、おそらくテイマーの父親らしき男性が、おお、よしよし、と撫でている姿に疑問が湧き上がった。だが、若いとはいえ、思わず後ずさるような睨み合いをするジャガーを、まるで猫のように撫でているから、テイマー同様に対応するのが無難だと思った。
スライムコアを数えて、脱出して、ギルドに持ち込むと、予感はしていたが、別室に案内された。
そこで、あのテイマーとのやりとりを説明すると、あぁ、と納得してくれた。
やはり異常な数だった。そして、これもやはりと思っていたが、無闇にあちこちで今回の事を触れ回るなと釘を刺されてからやっと解放された。
後日、スライムコアと宝箱の中身のダイヤモンドのピアスの買取額が出た。
各パーティ、二百万となり、思わず二度も額の確認をしてしまった。
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