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帰る為に⑥
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次の日。
一晩考えた内容を院長先生に伝えた。ローザ伯爵家に帰るに為の条件。
・私に暴力暴言をしない事。
・私の身体に一切触れない事。
・食事を買うために、毎日一定額を渡す事。
・学園に通うにあたり、寮に入る手配をする事。
・寮にいる間、必要な物品購入の為に毎月一定額を渡す事。
・必要な連絡は蜜蝋で封をした手紙にすること。
・寮にいる間、必要時以外にローザ伯爵家に帰る事を強要しないこと。
・ローザ伯爵家の行事は、祖母の周回忌以外は参加を強要しない事。
・学園の長期休みの間も、寮が使えるように手配する事。
・もし、誰かが私の事を聞いても娘だと言わない事。
・私に自分達を両親の呼称を言わせない事。
こんな感じ。
とにかくウィンティアの身体を守るのが大前提だ。食事に関しては、ウィンティアは靄をかけている記憶の中に、ぼやっ、と食事に関する嫌がらせがあったから。なら、自分で毎日買いに行けばいい。資金は出してもらうの当たり前よね。それからお金に関する事にすべて山岸まどかの経験がある。高校卒業後に独り暮らししたけど、とにかくお金が必要だった。病院の寮に入れたから助かったけど、高校時代のアルバイトで貯めたお金だけでは家電や家具をすべて揃えられず、少しずつかいたしていった。お金がなくて、おつとめひんコーナーを漁り、割引シールが張られるまで、スーパー内をうろうろした記憶が一つや二つではない。いろいろあって、惨めな気持ちに何度なったか。安いカップ麺で空腹を数日過ごした事もあった。ウィンティアにそんな思いさせたくない。どっかで節約しながら、独り暮らしの資金を貯めないと。ローザ伯爵家のお金だけど、お金はお金だ。ウィンティアの自活の為に使わないと。
聞いた院長先生は、うーん、と悩む仕草をされるがため息をだす。
「分かりましたウィンティア。ローザ伯爵家にはこの件を伝えます。ただ、すべてが通るとは思えません。時にこの項目」
下から二番目。
・もし、誰かが私の事を聞いても娘だと言わない事。
「こちらに関しては、防ぎきれない場に直面するかもしれませんよ」
そうなのかなあ。
あ、そう言えば、家族以外の人とは面会だめな患者さんがいた。たまたま検査で一階に移動した際に近所の人とは鉢合わせしたことがあった。マスクと毛糸の帽子まで被っていたのにね。
どうしようもない遭遇だから、家族も何も言わなかったけどね。
「出来る限りで、を加えます」
「では」
書き加える。
「もう一つ、この蜜蝋については、普通郵便でない理由は?」
この蜜蝋って言うのは、お金がかかる。ただ、送った、受け取った。それがいつ何時かしっかり記録として残される。当然お金がかかる。途中で紛失とかない。日本の郵便ではないだろうけど。ここでの普通郵便では、たまーに、あるらしい。それを防ぐのではない、ただ単にローザ伯爵家にお金を使わせたいだけ。我ながらせこいけど。
「単に防ぐだけです。散々奪われて来ましたから」
そう。あのローザ伯爵家長女であるキャサリン。ウィンティアの持ち物を片っ端から奪っていった。ぬいぐるみからお菓子から、部屋の置物、飾られた花、果ては部屋まで。
靄が少し晴れる。ウィンティアがローザ伯爵家で、最後の方に過ごしたのは、狭い屋根裏だった。キャサリンが両親が屋敷を空けた間に、ウィンティアから取り上げてしまったのだ。
そこが不審点なんだけど。
ローザ伯爵家はキャサリンにより『魅了』に耐えられるように訓練されていた。しかもキャサリン自身には『魅了封じ』が施されていたのにも関わらず。
でも、その事はどうでもいい。あの頃には、戻れないんだから。
院長先生とシスタースロウの表情が固まる。
これからだってそうなる可能性がある。ウィンティア宛の郵便を、キャサリンが勝手に奪うのではないかと。
もし、寮にいる生徒に対して手紙や荷物を送る場合は、必ず生家からの発送に限られる。例えば、その顔も知らない婚約者、レオナルドが、ウィンティア宛てに手紙を書いても、わざわざローザ伯爵家に渡して、ローザ伯爵家からの発送にしないと、窓口の学園が受け取らない仕組み。めんどくさい仕組み。
「分かりました、そのようにしましょう」
院長先生はローザ伯爵家に手紙を認め発送。
二週間後、すべてのウィンティア条件を受け入れる。ただ、寮に入るにあたり、月に一度はローザ伯爵家に帰宅する事だけを条件に。
私は考えて、ある考えが浮かび、頷いた。
一晩考えた内容を院長先生に伝えた。ローザ伯爵家に帰るに為の条件。
・私に暴力暴言をしない事。
・私の身体に一切触れない事。
・食事を買うために、毎日一定額を渡す事。
・学園に通うにあたり、寮に入る手配をする事。
・寮にいる間、必要な物品購入の為に毎月一定額を渡す事。
・必要な連絡は蜜蝋で封をした手紙にすること。
・寮にいる間、必要時以外にローザ伯爵家に帰る事を強要しないこと。
・ローザ伯爵家の行事は、祖母の周回忌以外は参加を強要しない事。
・学園の長期休みの間も、寮が使えるように手配する事。
・もし、誰かが私の事を聞いても娘だと言わない事。
・私に自分達を両親の呼称を言わせない事。
こんな感じ。
とにかくウィンティアの身体を守るのが大前提だ。食事に関しては、ウィンティアは靄をかけている記憶の中に、ぼやっ、と食事に関する嫌がらせがあったから。なら、自分で毎日買いに行けばいい。資金は出してもらうの当たり前よね。それからお金に関する事にすべて山岸まどかの経験がある。高校卒業後に独り暮らししたけど、とにかくお金が必要だった。病院の寮に入れたから助かったけど、高校時代のアルバイトで貯めたお金だけでは家電や家具をすべて揃えられず、少しずつかいたしていった。お金がなくて、おつとめひんコーナーを漁り、割引シールが張られるまで、スーパー内をうろうろした記憶が一つや二つではない。いろいろあって、惨めな気持ちに何度なったか。安いカップ麺で空腹を数日過ごした事もあった。ウィンティアにそんな思いさせたくない。どっかで節約しながら、独り暮らしの資金を貯めないと。ローザ伯爵家のお金だけど、お金はお金だ。ウィンティアの自活の為に使わないと。
聞いた院長先生は、うーん、と悩む仕草をされるがため息をだす。
「分かりましたウィンティア。ローザ伯爵家にはこの件を伝えます。ただ、すべてが通るとは思えません。時にこの項目」
下から二番目。
・もし、誰かが私の事を聞いても娘だと言わない事。
「こちらに関しては、防ぎきれない場に直面するかもしれませんよ」
そうなのかなあ。
あ、そう言えば、家族以外の人とは面会だめな患者さんがいた。たまたま検査で一階に移動した際に近所の人とは鉢合わせしたことがあった。マスクと毛糸の帽子まで被っていたのにね。
どうしようもない遭遇だから、家族も何も言わなかったけどね。
「出来る限りで、を加えます」
「では」
書き加える。
「もう一つ、この蜜蝋については、普通郵便でない理由は?」
この蜜蝋って言うのは、お金がかかる。ただ、送った、受け取った。それがいつ何時かしっかり記録として残される。当然お金がかかる。途中で紛失とかない。日本の郵便ではないだろうけど。ここでの普通郵便では、たまーに、あるらしい。それを防ぐのではない、ただ単にローザ伯爵家にお金を使わせたいだけ。我ながらせこいけど。
「単に防ぐだけです。散々奪われて来ましたから」
そう。あのローザ伯爵家長女であるキャサリン。ウィンティアの持ち物を片っ端から奪っていった。ぬいぐるみからお菓子から、部屋の置物、飾られた花、果ては部屋まで。
靄が少し晴れる。ウィンティアがローザ伯爵家で、最後の方に過ごしたのは、狭い屋根裏だった。キャサリンが両親が屋敷を空けた間に、ウィンティアから取り上げてしまったのだ。
そこが不審点なんだけど。
ローザ伯爵家はキャサリンにより『魅了』に耐えられるように訓練されていた。しかもキャサリン自身には『魅了封じ』が施されていたのにも関わらず。
でも、その事はどうでもいい。あの頃には、戻れないんだから。
院長先生とシスタースロウの表情が固まる。
これからだってそうなる可能性がある。ウィンティア宛の郵便を、キャサリンが勝手に奪うのではないかと。
もし、寮にいる生徒に対して手紙や荷物を送る場合は、必ず生家からの発送に限られる。例えば、その顔も知らない婚約者、レオナルドが、ウィンティア宛てに手紙を書いても、わざわざローザ伯爵家に渡して、ローザ伯爵家からの発送にしないと、窓口の学園が受け取らない仕組み。めんどくさい仕組み。
「分かりました、そのようにしましょう」
院長先生はローザ伯爵家に手紙を認め発送。
二週間後、すべてのウィンティア条件を受け入れる。ただ、寮に入るにあたり、月に一度はローザ伯爵家に帰宅する事だけを条件に。
私は考えて、ある考えが浮かび、頷いた。
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