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婚約者と被害者⑥
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向かい合う形で座るレオナルド・キーファー。
よくよく見たら優しい顔立ち、鼻筋も通り、綺麗な青い目がマッチしていて、総合的イケメン。しかもすらっとしているかと思ったけど、肩とか見たら、がっちりしている。さっき手を差し出したので見てしまったが、生々しい傷や胼胝があった。お仕事確か、護衛騎士なら訓練とかしているんだ。
「あー、ウィンティア嬢」
気まずい雰囲気のまま。私は、すんっ、とした顔のまま。レオナルド・キーファーが声をかけてきた。
「先程の事で、後気分を害されたかと」
「そうですね。さっさと、この婚約を解消して欲しいです」
身も蓋もなくバッサリ、私の核心を告げる。
お茶を運んでいたメイドが、溢しそうになり、レオナルドに付いてきたフットマンの眉が羽上がる。
きっと可愛げもないやつって思われているだろうけど、構うもんか、どうせ最後はウィンティアをゴミのように捨てるんだから。
徹底的に嫌われてやるっ。
「あの、ウィンティア嬢」
「馴れ馴れしく名前を呼ばないでいただけます? 親しくもないのに」
「で、では、ローザ伯爵ご令嬢」
「私はローザ伯爵を毛嫌いしています。そしてその名は、あの女を指し示すのでやめてください」
とりつく島なしとはこんな感じかな。
レオナルド・キーファーの顔がピクピク。わあ、めんどくさーい、って思っているんだろうなあ。
「では、どう呼べば…………」
「ここでは『腐ったどぶ』と呼ばれていました。その様に」
途端に、レオナルド・キーファーの顔が引きつる。
「女性をその様な呼び名で呼ぶのは」
「あら? そちらは、私を人として扱ってくれるのかしら?」
斜に構えた私に、レオナルド・キーファーの顔が、静かに色が変わる。
「それはどう言うことでしょうか?」
「そちらの認識を表しただけですわ。あなた方にしてみたら、私はローザ伯爵家の地雷でしょう? どんな弱みを握ったか分かりませんが、そちらにしては私はその程度の価値」
この婚約を色々考えた。赤い本にもあったが、ウィンティアがレオナルドと婚約したのは、ティーナが遺した共同特許だった。それが今私にあるかどうかを確認したいが、手段がない。それを管理している役場はあるが、まだ十二歳のウィンティアには教えられないって。十五歳になれば、両親か、そのどちからを伴えば説明してくれる。十八になれば一人でもいいって。めんどくさい。だけど、ウィンティアに守りの力を託したティーナ夫人が、それだけを遺しているとは思えない。
さっきのウーヴァ公爵夫人の態度で痛感した。
私の価値は貴族のパワーバランスを少しでもいい方につかいたい事、額の傷を理由にね。それからティーナ夫人が遺したであろう何かしらの権利。
最後に、私という存在は、ローザ伯爵家では目の上のたんこぶだ。貴族令嬢としては致命的な額の傷。虐待されてコクーン修道院に二度も保護された経歴。もしかしなくても、ローザ伯爵家が知られたくない私に関する事を、ウーヴァ公爵家が掴んでいるんじゃないかって。
だって、神様が言ってた。
この婚約は、ローザ伯爵家とウーヴァ公爵家で、取り決めしてあるって。私が、嫌だと言ったくらいでどうにもならないって。
絶対、ローザ伯爵家の弱みを握って、ウーヴァ公爵家がいいように取り決めしたんだって。しかも、私は貴族としての基礎知識やマナーがまったくなってない。最低限の貴族令嬢としてスタートラインにすら立ててないのも承知の上。それを求めてもない。
つまり、私はその程度の価値しかないって事。
ゆっくりとレオナルド・キーファーは言葉を吐き出す。
「我々は確かに家同士で契約の元に決まった紙面上の婚約者ですが。私は貴女に、誠実でありたいと思っています」
誠実って。
あんたはキャサリンの悪意ある横槍で、あっさり鞍替えするくせに。
すんっ、プラス白けた目になる。
だけど、セリフの中にいい言葉が。
「それ、いいですね」
「えっ?」
私の反応に、レオナルド・キーファーが戸惑い。
「その紙面上の婚約者ですよ。そう呼んでください、私もそう呼びます」
「いや、確かにそう言いましたが」
「紙面上の婚約者、まさにそうです。まあ、その紙面の内容も一切知りませんが」
途端に、レオナルド・キーファー、紙面上の婚約者の頭に?が一杯飛ぶ。
「あの、ウィンティア嬢」
「紙面上の婚約者」
「…………私との婚約の経緯は、どこまでご存知ですか?」
「一切知りません。婚約者がいるのも、コクーン修道院の院長先生から初めて聞きました。二ヶ月前です」
それを聞いて、紙面上の婚約者は片手で顔を覆った。
よくよく見たら優しい顔立ち、鼻筋も通り、綺麗な青い目がマッチしていて、総合的イケメン。しかもすらっとしているかと思ったけど、肩とか見たら、がっちりしている。さっき手を差し出したので見てしまったが、生々しい傷や胼胝があった。お仕事確か、護衛騎士なら訓練とかしているんだ。
「あー、ウィンティア嬢」
気まずい雰囲気のまま。私は、すんっ、とした顔のまま。レオナルド・キーファーが声をかけてきた。
「先程の事で、後気分を害されたかと」
「そうですね。さっさと、この婚約を解消して欲しいです」
身も蓋もなくバッサリ、私の核心を告げる。
お茶を運んでいたメイドが、溢しそうになり、レオナルドに付いてきたフットマンの眉が羽上がる。
きっと可愛げもないやつって思われているだろうけど、構うもんか、どうせ最後はウィンティアをゴミのように捨てるんだから。
徹底的に嫌われてやるっ。
「あの、ウィンティア嬢」
「馴れ馴れしく名前を呼ばないでいただけます? 親しくもないのに」
「で、では、ローザ伯爵ご令嬢」
「私はローザ伯爵を毛嫌いしています。そしてその名は、あの女を指し示すのでやめてください」
とりつく島なしとはこんな感じかな。
レオナルド・キーファーの顔がピクピク。わあ、めんどくさーい、って思っているんだろうなあ。
「では、どう呼べば…………」
「ここでは『腐ったどぶ』と呼ばれていました。その様に」
途端に、レオナルド・キーファーの顔が引きつる。
「女性をその様な呼び名で呼ぶのは」
「あら? そちらは、私を人として扱ってくれるのかしら?」
斜に構えた私に、レオナルド・キーファーの顔が、静かに色が変わる。
「それはどう言うことでしょうか?」
「そちらの認識を表しただけですわ。あなた方にしてみたら、私はローザ伯爵家の地雷でしょう? どんな弱みを握ったか分かりませんが、そちらにしては私はその程度の価値」
この婚約を色々考えた。赤い本にもあったが、ウィンティアがレオナルドと婚約したのは、ティーナが遺した共同特許だった。それが今私にあるかどうかを確認したいが、手段がない。それを管理している役場はあるが、まだ十二歳のウィンティアには教えられないって。十五歳になれば、両親か、そのどちからを伴えば説明してくれる。十八になれば一人でもいいって。めんどくさい。だけど、ウィンティアに守りの力を託したティーナ夫人が、それだけを遺しているとは思えない。
さっきのウーヴァ公爵夫人の態度で痛感した。
私の価値は貴族のパワーバランスを少しでもいい方につかいたい事、額の傷を理由にね。それからティーナ夫人が遺したであろう何かしらの権利。
最後に、私という存在は、ローザ伯爵家では目の上のたんこぶだ。貴族令嬢としては致命的な額の傷。虐待されてコクーン修道院に二度も保護された経歴。もしかしなくても、ローザ伯爵家が知られたくない私に関する事を、ウーヴァ公爵家が掴んでいるんじゃないかって。
だって、神様が言ってた。
この婚約は、ローザ伯爵家とウーヴァ公爵家で、取り決めしてあるって。私が、嫌だと言ったくらいでどうにもならないって。
絶対、ローザ伯爵家の弱みを握って、ウーヴァ公爵家がいいように取り決めしたんだって。しかも、私は貴族としての基礎知識やマナーがまったくなってない。最低限の貴族令嬢としてスタートラインにすら立ててないのも承知の上。それを求めてもない。
つまり、私はその程度の価値しかないって事。
ゆっくりとレオナルド・キーファーは言葉を吐き出す。
「我々は確かに家同士で契約の元に決まった紙面上の婚約者ですが。私は貴女に、誠実でありたいと思っています」
誠実って。
あんたはキャサリンの悪意ある横槍で、あっさり鞍替えするくせに。
すんっ、プラス白けた目になる。
だけど、セリフの中にいい言葉が。
「それ、いいですね」
「えっ?」
私の反応に、レオナルド・キーファーが戸惑い。
「その紙面上の婚約者ですよ。そう呼んでください、私もそう呼びます」
「いや、確かにそう言いましたが」
「紙面上の婚約者、まさにそうです。まあ、その紙面の内容も一切知りませんが」
途端に、レオナルド・キーファー、紙面上の婚約者の頭に?が一杯飛ぶ。
「あの、ウィンティア嬢」
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「…………私との婚約の経緯は、どこまでご存知ですか?」
「一切知りません。婚約者がいるのも、コクーン修道院の院長先生から初めて聞きました。二ヶ月前です」
それを聞いて、紙面上の婚約者は片手で顔を覆った。
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