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婚約者と被害者⑦
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ウィンティア・ローザとレオナルド・キーファーの婚約の経緯。
調べる手段が無かったわけではない。
ウィンティアがコクーン修道院にいた時に、ローザ伯爵家から手紙や小包が来ていたから、その中に説明する内容もあったはず。コクーン修道院は、受けとる側の知り合いでなければ、突き返される。この婚約は、ウィンティアが二度目の保護が行われた後で結ばれた。つまり、それを知らないウィンティアにしては、ウーヴァ公爵家もレオナルド・キーファーも赤の他人。届くことはなく、突き返されたはず。なので、ローザ伯爵家の配達物と一緒に送ったが、特にウィンティアの様に危害を加えた側からの配達物は、絶対に直接渡さず、まず、来たことを伝える。それからそれをどうするかは受けとる側の判断に委ねられる。中には見ずに焼却処理をしたり、修道院側に中身を確認してもらってから、と言う人もいる。
ウィンティアの場合は、その内どうするか考えるって事で、部屋の木箱の中に貯まっていった。結局、ウィンティアが開封することはなかった。
今は、その木箱は一旦生物学上の父親にすべて返却したが、最近帰って来た。
あの配達物の中に、ウーヴァ公爵家や紙面上の婚約者からの手紙があるらしいので、確認だけするように、と。
だけど、私は開けてない。
何度も内側に籠ったウィンティアと交信したが、やっと返事が来た。「いいえ」だ。
確かに、元々ウィンティアへの配達物だ、私が開けちゃダメよね。なので、開けてない。なので、知りません。
「ほ、本当に、何も?」
確認してくる。
「ええ、知りません」
私は座ったままに近くのメイドに告げる。
「私の部屋から木箱持ってきて。ああ、私の私物に触らないでね」
このメイドは、ジョアンナ夫人が誕生日にくれた青いウサギのぬいぐるみを、抵抗するウィンティアから奪った。しかも泣いてすがるウィンティアを突き飛ばして。
触ってほしくないのは、全部あのトランクに隠している。あのトランクの鍵はちょっと特殊で、きちんと手段を踏まないと開かない仕組み。なのでぶーちゃんと、青いウサギ、うーちゃんはトランクに避難している。
メイドは、びくり、と震えてそそくさと頭を下げて去っていく。
しばらくして、男性使用人と共に木箱を持ってきた。ちらっと、心配そうなナタリアが見えた。私の部屋の鍵はナタリアしか持ってないからね。
「どうぞ、ご確認ください」
私は座ったまま、どうぞ。
紙面上の婚約者は、そっと蓋を開けると、目を見開く。
みっちり四年分だ。
結構な量になっている。
未開封の手紙を見て、紙面上の婚約者が私を振り返る。
「なぜ、開けて………」
「はぁ?」
私の口から、まるで不良の様なドスの効いた声が出る。
なんで、開けないといけないわけ? ウィンティアが、わずか八歳のウィンティアが心を壊しかけるような事をした、ローザ伯爵家からの手紙なんて。
私は前髪をかきあげる。
そう、右眉の上にはっきり残る傷。
「この様な仕打ちをした、ローザ伯爵家からの手紙を、何故私が読まねばならないのですか?」
効いたみたい、紙面上の婚約者は沈黙した。
調べる手段が無かったわけではない。
ウィンティアがコクーン修道院にいた時に、ローザ伯爵家から手紙や小包が来ていたから、その中に説明する内容もあったはず。コクーン修道院は、受けとる側の知り合いでなければ、突き返される。この婚約は、ウィンティアが二度目の保護が行われた後で結ばれた。つまり、それを知らないウィンティアにしては、ウーヴァ公爵家もレオナルド・キーファーも赤の他人。届くことはなく、突き返されたはず。なので、ローザ伯爵家の配達物と一緒に送ったが、特にウィンティアの様に危害を加えた側からの配達物は、絶対に直接渡さず、まず、来たことを伝える。それからそれをどうするかは受けとる側の判断に委ねられる。中には見ずに焼却処理をしたり、修道院側に中身を確認してもらってから、と言う人もいる。
ウィンティアの場合は、その内どうするか考えるって事で、部屋の木箱の中に貯まっていった。結局、ウィンティアが開封することはなかった。
今は、その木箱は一旦生物学上の父親にすべて返却したが、最近帰って来た。
あの配達物の中に、ウーヴァ公爵家や紙面上の婚約者からの手紙があるらしいので、確認だけするように、と。
だけど、私は開けてない。
何度も内側に籠ったウィンティアと交信したが、やっと返事が来た。「いいえ」だ。
確かに、元々ウィンティアへの配達物だ、私が開けちゃダメよね。なので、開けてない。なので、知りません。
「ほ、本当に、何も?」
確認してくる。
「ええ、知りません」
私は座ったままに近くのメイドに告げる。
「私の部屋から木箱持ってきて。ああ、私の私物に触らないでね」
このメイドは、ジョアンナ夫人が誕生日にくれた青いウサギのぬいぐるみを、抵抗するウィンティアから奪った。しかも泣いてすがるウィンティアを突き飛ばして。
触ってほしくないのは、全部あのトランクに隠している。あのトランクの鍵はちょっと特殊で、きちんと手段を踏まないと開かない仕組み。なのでぶーちゃんと、青いウサギ、うーちゃんはトランクに避難している。
メイドは、びくり、と震えてそそくさと頭を下げて去っていく。
しばらくして、男性使用人と共に木箱を持ってきた。ちらっと、心配そうなナタリアが見えた。私の部屋の鍵はナタリアしか持ってないからね。
「どうぞ、ご確認ください」
私は座ったまま、どうぞ。
紙面上の婚約者は、そっと蓋を開けると、目を見開く。
みっちり四年分だ。
結構な量になっている。
未開封の手紙を見て、紙面上の婚約者が私を振り返る。
「なぜ、開けて………」
「はぁ?」
私の口から、まるで不良の様なドスの効いた声が出る。
なんで、開けないといけないわけ? ウィンティアが、わずか八歳のウィンティアが心を壊しかけるような事をした、ローザ伯爵家からの手紙なんて。
私は前髪をかきあげる。
そう、右眉の上にはっきり残る傷。
「この様な仕打ちをした、ローザ伯爵家からの手紙を、何故私が読まねばならないのですか?」
効いたみたい、紙面上の婚約者は沈黙した。
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