ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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婚約者と被害者⑧

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 あの後、結局沈黙が続いた。
 紙面上の婚約者が、私との婚約の経緯を説明するって言ったけど。

「結構です。もう知りたくありません」

 バサバサバッサリ。
 とりつく島を与えない様にした。
 だいたい、私が手紙を読んでないのを、知らないで来た事がおかしいんだよ。ローザ伯爵から連絡行ってないの? それにそっちが今まで手紙を送って返事がないの、不信に思わなかったわけ?
 あー、と項垂れる紙面上の婚約者。
 
「ウィンティア嬢」

「紙面上の婚約者様。名前を呼ぶのはお止めください」

「いや、しかし、ほら、もう知り合いですし」

「名前しか知らないのは、知り合いとは言いません」

 我ながら嫌な言い方。
 でも、どうにかして、この婚約を解消したい。ウィンティアを道具の様に扱うのはなら、なんとかしないと。

「私は、貴女にこれだけ嫌われる何かをしましたか? 貴女には誠実でありたいと思っています」

 だってさ。
 私は鼻で嗤いそうになる。
 結局、こいつは、最後はウィンティアを捨てるんだ。なら、最初からそうならなければいい。向こうにまだウィンティアに利用価値があるのなら、その利用価値をどうにかして放棄しなくては。まだ、ウィンティアが子供だから手段はないかもしれないが、準備を怠らないようにしないと。
 まずは、スムーズに解消出来るように、紙面上の婚約者との関係をすれさせよう。

「誠実ねぇ」

 ウーヴァ公爵に言われての婚約でしょうに。
 
「私にまだ利用価値があるからではないですか?」

 貴族の婚約なんてそんなもんだしね。個人の意見は無視。互いに理解して寄り添っていくもんらしいけど。理解もなにも、向こうはその利用価値の説明もしないと来たもんだ。なら、こっちから歩み寄る必要はない。
 ウーヴァ公爵家の提案受けなくて良かった。
 本当に、ウィンティアにティーナ夫人が何かしらの権利を遺していて、それ目当てなら、それを紙面上の婚約者を通して奪えば、要済みとなったウィンティアはゴミの様に捨てられる。
 紙面上の婚約者はため息。

「その様な事はないとは言えませんが、私はこの婚約には」

「あ、結構です。知りたくないです」

 バサバサバッサリ。

「どうせ、その内、利用価値がなくなれば、ゴミの様に捨てるんでしょう」

 紙面上の婚約者の顔が、一気に険しくなる。
 あ、ちょっと怖いけど、引けない。
 すんっ、て顔のまま。

「誰がその様な事を?」

「少し考えたら分かること。私を公爵家が後見している人物を使ってまでも、繋ぎたいのであれば、ね」

 咄嗟のはったり。
 これが効果覿面だったのが、紙面上の婚約者は撃沈する。
 撃沈したところで、ウーヴァ公爵家の帰宅となる。
 一応お見送りしますかね。
 仕事しているはずの紙面上の婚約者、ウーヴァ公爵家の人達もあれだけど、予定を合わせて来たはずだしね。最低限の礼儀かな? これ以上ウィンティアの評価は下がらないだろうけど。

 玄関に向かうと、華やかに話す一堂が。
 やっぱり貴族なんだなあ。おほほ、みたいに話してる。私には入れないや。
 私の姿を見て、生物学上の母親がやって来た。

「ウィンティア、先程のあれ、謝罪しなさい」 

「はぁ? 何で?」

 向かうから聞いたんじゃないの? 聞いたくせにまともに返さなかったのに。

「いいからっ」

 とりあえず謝れってか? 嫌、絶対嫌。
 そう言えば、働いていた職場の上の人が、下の人のやらかした事で平謝りしていた。何でって思ったけど、責任者って大変だなー、って思った。それと大人の世界だなー、って。でも、私は精神年齢二十歳だけど、大人とは言えない。胸を張るような事ではないが、成熟してないのは確かだ。
 押し出されて、私はウーヴァ公爵夫人の前に、はぁ。

「ウーヴァ公爵夫人」

 声をかけるのは、談笑していた生物学上の父親。私に目配せする。仕方ない、一歩前に。ちらり、とまるで試すように見てくる。
 一息ついて、と。

「ウーヴァ公爵夫人。先程の態度、私は謝るつもりはありません」
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