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新たな名物⑦

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「ねえねえ、ローザさん、カレーパンって知ってる?」

 アンネが楽しそうに聞いてくる。

「うん。知っているよ。おいしいよね」

 散々味見したもん。
 やっぱり玉ねぎ炒めてからのカレーは日本で食べたことのある、家庭的な感じに近づいていた。
 本場のテヘロンの人にしてみたら、野菜の甘さが全面に出ているので、微妙かもしれないが、ルルディではこれが大受けしている。

「そうよねっ。私この前並んで買ったのっ、2時間も待っちゃった」

「2時間?」

 そんなに?

「まだ、スムーズなほうだって言われたわ。整理券もらうのに、並んだのよ」

「へー」

 カレーパンの人気が冷めやらない。
 とうとう整理券まで出てきた。
 カレーパンは1日3回出来上がるために、時間に合わせて整理券が配られる。
 そういえば、アンジェリカ様のお店の懇親会以来、アサーヴ殿下とはお会いしていないが、スティーシュルラ様経由でお礼は何がいいかな? みたいなことを聞かれたけど、もう、十分なことをしてもらっている。時々スティーシュルラ様とランチすることで、周りが私に対して変なちょっかいかけてこないしね。

「2時間かあ、俺、待てないな」

 と、マーク。

「でも一度はおすすめよ。パンもちょっと違うのよね、柔らかいのに弾力があるっているか。何より中のあのソースが絶品よ。あー、また食べたーい」

 アンネが思いだしたようにうっとり。

「そ、そうなのか? 並んでみようかな」

 マークが悩みだす。
 でも、2時間か、なんとかいろんな人に食べてもらえないだろうか? 2時間も待つなんて、体力ないとだめだし。あ、そうだ、学食に、無理だよねー。
 ダメ元でスティーシュルラ様に相談。
 すると、なんと金曜日だけ、カレーパンの販売はされることになった。もちろん数量限定、抽選だけどね。それからテヘロン大使館のお茶会で大好評になった、スープカレーもメニューに加わることになった。
 なので、金曜日の学食がいつもにまして大騒ぎになった。
 
 私はアンネとマーク、そしてリーナ嬢、ロッティ、スクールの五人でスープカレーランチを堪能していると、後ろから気になる会話が。

「ねえ、知っている。グラーフ伯爵家。なんでも、訴えられているって」

 ようやく、キリール・ザーデクの名誉回復のための裁判が始まった。
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