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領地運営と戦争準備⑫
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あの日から時は経ち、俺は8回目の夏の訪れを体感していた。
3年間、これと言って何事もなく平和に過ごしては来たものの、未だ発展途上のこの街の運営に勤しむ毎日だ。
それと同時に兵士育成も進め、今では王都の新兵教育まで担う程に評判はいい。
どこか、国づくりのシュミレーションゲームをしているかのようで、時折前世の光景が脳裏に浮かび上がる。
「ご主人、そろそろ休まれては? 」
初めの一年は休む間もなく仕事をしていた為、ついついその時の癖か仕事をしていなければどこか落ち着かない。そんなある種の病気になってしまっているようで、よく従者達に心配をかけてしまっているようだ。
「そうだな、そろそろ休憩としよう。あ、そうそう。帝国の動きはどうだ? 」
「もう、ご主人! 私は休んでくださいと言ったはずよ」
「いや、すまないな。だが、三日後にある会談に向けて色々と情報は集めておきたいんだ」
この国では年に1度、主要貴族による国家会談が行われる。
王国の子爵、伯爵、侯爵、公爵が集まって国家のアレコレについて報告会のようなものを開くのだが、これがまた難儀なもの。
我よ我よと自らの街の良き所をアピールする場と勘違いしている貴族共で溢れかえり、俺としては余り意味をなさない会談だと強く思っているほどだ。
だが、それも陛下にとっては重要な事柄らしく、どうせ参加するのであれば少しでも意義のあるものにしたいと、恐らく近頃に勃発する帝国との戦争に向けてそれらの情報を集めているのだ。
その帝国の戦争とやらも、耳にしているのは極小数。帝国が秘密裏に買い漁っている武器や魔法薬の仕入れ情報を、カジノに来ていた商人から耳にしたのが事の発端。
恐らく急な争いで先手を取ろうとしているのだろうが、無名の商人は国家情勢よりも目先の金。金貨を握らせれば全てを話した。
それからというもの、スーリヤやネメスに頼んで帝国の監視をさせているのだ。
「分かりました、後でまとめて提出するから、ご主人は夕刻頃までゆっくりとしてください」
「それはまた、随分と時間がかかるものだな」
「ええ、私も暇ではありませんので」
「悪かったな、忙しいお前に面倒な事を頼んで」
「いいえ、ご主人のためとあれば喜んで致しますよ」
暖かい笑みを浮かべて部屋を出たスーリヤと入れ替わるように、紅茶を手にしたメイドが部屋に入ってきた。
大方、スーリヤが持って行くようにと支持したのだろうと、有難く頂くことにした。
こうして紅茶を飲みながら流れる雲を見ていると、やはり時が流れるのは早く感じる。
俺がこの世に生まれてから8年――意識を持ち出してからは3年程度だが、その3年さえも早く感じる。
今頃父様はどうして居るのだろうか。ふと、そんな事を考えていると扉がノックされた。
「入って」
「失礼致します! 」
ビシッと敬礼をしたのは20ばかりの男の兵士。恐らく新兵で昨年訓練を終えたばかりの若い兵士だろう。
その証拠か、屋敷内で身につける身分証の代わりをしている銀のバッジはまだ新しく、しかり輝いている。
「で、何かあったの? 」
「はい。辺境伯閣下より、文書が届いております」
「どれ、見せて? 」
この国に辺境伯は2人しかいない。もしや生まれ故郷の辺境伯からの手紙なのでは無いかと、どこか不安な気持ちを抱えながら文書に記された送名を見る。
――そこには
「クリード家当主、グラン・フォン・クリードか……」
3年間、これと言って何事もなく平和に過ごしては来たものの、未だ発展途上のこの街の運営に勤しむ毎日だ。
それと同時に兵士育成も進め、今では王都の新兵教育まで担う程に評判はいい。
どこか、国づくりのシュミレーションゲームをしているかのようで、時折前世の光景が脳裏に浮かび上がる。
「ご主人、そろそろ休まれては? 」
初めの一年は休む間もなく仕事をしていた為、ついついその時の癖か仕事をしていなければどこか落ち着かない。そんなある種の病気になってしまっているようで、よく従者達に心配をかけてしまっているようだ。
「そうだな、そろそろ休憩としよう。あ、そうそう。帝国の動きはどうだ? 」
「もう、ご主人! 私は休んでくださいと言ったはずよ」
「いや、すまないな。だが、三日後にある会談に向けて色々と情報は集めておきたいんだ」
この国では年に1度、主要貴族による国家会談が行われる。
王国の子爵、伯爵、侯爵、公爵が集まって国家のアレコレについて報告会のようなものを開くのだが、これがまた難儀なもの。
我よ我よと自らの街の良き所をアピールする場と勘違いしている貴族共で溢れかえり、俺としては余り意味をなさない会談だと強く思っているほどだ。
だが、それも陛下にとっては重要な事柄らしく、どうせ参加するのであれば少しでも意義のあるものにしたいと、恐らく近頃に勃発する帝国との戦争に向けてそれらの情報を集めているのだ。
その帝国の戦争とやらも、耳にしているのは極小数。帝国が秘密裏に買い漁っている武器や魔法薬の仕入れ情報を、カジノに来ていた商人から耳にしたのが事の発端。
恐らく急な争いで先手を取ろうとしているのだろうが、無名の商人は国家情勢よりも目先の金。金貨を握らせれば全てを話した。
それからというもの、スーリヤやネメスに頼んで帝国の監視をさせているのだ。
「分かりました、後でまとめて提出するから、ご主人は夕刻頃までゆっくりとしてください」
「それはまた、随分と時間がかかるものだな」
「ええ、私も暇ではありませんので」
「悪かったな、忙しいお前に面倒な事を頼んで」
「いいえ、ご主人のためとあれば喜んで致しますよ」
暖かい笑みを浮かべて部屋を出たスーリヤと入れ替わるように、紅茶を手にしたメイドが部屋に入ってきた。
大方、スーリヤが持って行くようにと支持したのだろうと、有難く頂くことにした。
こうして紅茶を飲みながら流れる雲を見ていると、やはり時が流れるのは早く感じる。
俺がこの世に生まれてから8年――意識を持ち出してからは3年程度だが、その3年さえも早く感じる。
今頃父様はどうして居るのだろうか。ふと、そんな事を考えていると扉がノックされた。
「入って」
「失礼致します! 」
ビシッと敬礼をしたのは20ばかりの男の兵士。恐らく新兵で昨年訓練を終えたばかりの若い兵士だろう。
その証拠か、屋敷内で身につける身分証の代わりをしている銀のバッジはまだ新しく、しかり輝いている。
「で、何かあったの? 」
「はい。辺境伯閣下より、文書が届いております」
「どれ、見せて? 」
この国に辺境伯は2人しかいない。もしや生まれ故郷の辺境伯からの手紙なのでは無いかと、どこか不安な気持ちを抱えながら文書に記された送名を見る。
――そこには
「クリード家当主、グラン・フォン・クリードか……」
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