ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

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ヴァンパイア編。

22.あら? アマラ様は純愛派でしたか?

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「(そういうワケで、リリの船には乗れない)」
「(そんな・・・ならば、仕方ありません)」

 悲しげに潤むアクアマリン。が、キッとまなじりを吊り上げて下を向いた。そして、

「わたくしは、人魚のリリアナイトと申しますわ! 出て来て頂けませんことっ? アマラ様っ!」

 リリの澄んだソプラノが響いた。

「「「「・・・」」」」

 シンとする船の面々。どうやら、この船の人魚さんはアマラという名前らしい。

「・・・出ていらっしゃらないおつもりですか…ならば、致し方ありません」

 無い反応に、ふぅと深呼吸するリリ。そして、腹からの声で言った。

「アマラおじ様っ!!!」

「・・・だ・れ・がっ、おじ様ですってェェっ!? こんの乳臭い小娘がァっ!?!?」

 低い、低温のハスキーがとどろいた。心なしか、気温も下がった気がする。

「あら? お呼びしてもいらっしゃらないんですもの。お初お目にかかりますわ。アマラ、お・じ・さ・ま♪」

 蜂蜜色の金髪巻き毛、アイスブルーの瞳でマーメイドラインの赤いドレスを颯爽と着こなしたゴージャス美女(リリ曰く、おじ様…)がパッと甲板に現れる。リリの煽りに、憤怒の形相。

「お黙りっ!? 小娘がっ!!!」

 ビリビリと空気を震わせるド迫力の声。

「一族の数少ない男性でられるというにもかかわらず、並みいる求婚者の方々を振り切って出奔しゅっぽんなされただとか…お噂は予々かねがね、聞いておりますわ。アマラ様」

 にこりと負けないリリの微笑み。美貌の女装(リリ曰く)人魚vs美少女人魚と言ったところだろうか? バチバチしている。すごく・・・

 というか、確か人魚って、男の出生率が異様に低いんじゃなかったっけ? しかも、生まれた男は将来ハーレムが約束されてるとか、王族候補だとか…あと、男の人魚は海を操る能力が高い。という話をうっすら聞いた覚えがある。

「アンタねっ? こんな小娘に人魚の加護を与えたのはっ!? お陰でこの小娘をアタシの船から追い出せないじゃないっ!? なにしてくれてンのよっ!? つか、女に惚れる人魚とか前代未聞なんだけどっ!? アホ小娘がっ!!」

 カツカツと赤いハイヒールを鳴らし、ビシッとオレを指差しつつ、リリへと向かう美貌(女装)のゴージャス人魚。

「あぁら? 前代未聞の、しかも出奔なされた王族候補男性の人魚がなにを仰いますの? しかも、ご自分が女装していることを棚上げになさってっ!」

 マジで王族候補か。他人事ヒトごとながら、いいのか? こんなところにいて・・・

五月蝿うるさいわねっ、お黙り小娘っ! アタシはね、美しいアタシに似合う格好をしているだけよ!!」

 ふんっ、と胸を張るアマラ。その膨らみは、詰め物だろうか・・・

「なによっ、詰めてるわよっ? なんか悪いっ?」

 バチッと目が合った。

「いえ、よくお似合いですよ? 趣味嗜好は個人の自由ですからね」

 うん。本当に似合っているし。

「大体、こんな小娘のどこがいいのよ? 確かに…肌は綺麗ね? まっ、髪の毛も艶々じゃない。顔は・・・」
「?」

 つぅと頬を撫でる指先が髪の毛を摘み、更に下がる指。くいっと顎を掴まれて上を向かされ、真剣な色をしたアイスブルーがじっと覗き込む。

「長いまつげに、翡翠の瞳。あら、瞳孔が銀色? 珍しいわね。白い肌…薄めの唇。悪くないじゃない・・・近くでも、充分鑑賞に耐え得る顔なのね…チッ」

 あれ? なんか舌打ちされた?

「あの? アマラさん?」
「当然ですわっ! アル様はお綺麗ですものっ♥️ というか、ちょっとアマラおじ様。アル様が嫌がっておいでですわ。お離しください」
「ギャンギャン五月蝿い小娘ね? ちょっとお黙り! あと、おじ様言うなっ! アマラでいいわよ」
「アマラ様?」

 ちらりとオレを見やるアイスブルー。

「…アマラ?」
「ま、いいでしょう。で、小娘」
「なんでしょうか? アマラ様」
「アンタじゃないわよ、ア・ン・タ!」

 ビッと突き付けられる指先。

「え~と? はい?」
「名前は?」
「アル」
「そう・・・ま、いいわ」
「(アダマス系統に近付かないなら、置いてやってもいいわよ? アンタ、なかなか綺麗な顔してるし)」

 と、高周波で話し始めるアマラ。

「え?」
「(あそこの当主、胡散臭いじゃない。あまり好きじゃないの、アタシ。あの男)」
「・・・(会ったこと、あるんですか?)」
「(ええ。昔、金融業のトップ? だかを打診されたの。胡散臭いから断って、適度に優秀な女を紹介してやったわよ)」
「(そして出奔なされた、と)」

 リリが続ける。

「(ウルサいわね。アンタにわかる? 毎日毎日毎日っ、好きでもない、盛ってる頭ユルい女共から求婚される気持ち。本っ当、心底うんざりするわよ)」

 なにやら垣間見える壮絶な日々。結婚が嫌で放浪を選んだ身としては、親近感を覚える。

「(あら? アマラ様は純愛派でしたか?)」
「(はあ゛? 頭ユルいおバカな常春ピンク女共に嫌気が差しただけよ! 勝手に変な誤解すんじゃないわ。小娘が)」

 何気に辛辣だな。

「(まあ、それはわたくしにもわかりますが…何故お仲間の方々は、あのように頭がユル…おおらかなのでしょうね?)」

 リリもなかなか言うな。

「(アンタも、大概ピンクじゃない)」
「(わたくし、お仕事はちゃんと致しますわ。計算もできない方々と一緒にしないでくださいまし)」
「(ああ、アンタは真性の変人タイプ…)」

 アマラが残念なモノを見る目でリリを見下ろす。

「(どういう意味ですの? アマラ様)」
「(頭ユルくない人魚は大抵、変人なのよ)」
「(わたくしのどこが変人ですの?)」
「(アンタ、それ本気で言ってる? 女に惚れた人魚なんて、前代未聞だって言ってンでしょ。人魚は基本、男好きだもの)」

 種族特性というやつだろうか?

「(男性女性という区別概念が、そもそもおかしいのですっ! わたくしが愛してしまったお方が、偶々アル様なだけですもの♥️)」
「(ものは言い様ねー)」
「(そう仰るアマラ様こそ、並みいる人魚《じょせい》達を袖にしたではありませんか! アマラ様こそ、殿方をお好みなのではありませんのっ?)」
「(ハアっ!? 冗談じゃないわっ!! アタシはねっ、男も女も嫌いなのっ!!!)」
「盛り上がってるとこごめん、いい加減普通に話してくれないかな? さっきから、耳痛くてさ…」

 ジンが耳を押さえて言った。確かに、音として聴こえるだけで、意味不明な、しかも耳に痛い高音をずっと聞かされるのは堪ったものじゃないだろう。

「ウルサいわね! ならこれでも付けてなさい」

 と、アマラはジンに耳栓を投げ付け、非情にもそのままリリとの論争バトルを続けた。

 そしてジンが疲弊し、ヒューが我関せずを決め込み、雪君とカイルが見物に厭きて食事の用意をしに行ってから・・・大分経った頃。

「フッ、なかなかやるじゃない」
「アマラ様こそ」

 女同士? のバトルに、一応の決着。二人に友情が芽生えたようだ。

 なかなか面白い話だった。
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