ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

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ヴァンパイア編。

78.さあ、ロゼットを呼ぶ準備を進めましょう。

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 アルちゃんが目を覚ました。
 しかし、とても具合いが悪そうだ。

 歯を食い縛った蒼白な顔が苦痛に歪む。荒い呼吸の隙間から、呻く声。

 頭がかなり痛むらしく、朦朧もうろうとしている。

 それなのに、触れられることを拒む。
 強く掴まれた手首が軋んだ。触らないからと言って、それを放してもらった。

 アルちゃんは、薬が効かない体質なので鎮痛剤や麻酔などは無意味。

 対処方法として、無理矢理寝かせることしかできないというなら、アマラを呼ぶべきだろう。

 クラウド君の血液で、アルちゃんを寝かせよう。

「アマラ。アルちゃんが起きた。すぐに来てくれ」

 呼び掛けると、すぐに現れるアマラ。
 緊急時になんだけど、普段からこうして呼んだらすぐに出て来てほしいものだ。

「・・・アルは…」

 アルちゃんを見て、アマラが顔をしかめる。

「寝かせろってこと?」
「察しが良くて助かるよ」
「・・・断るわ」

 険しい顔でキッパリと断られた。思わず、低い声でアイスブルーを見下ろす。

「…アマラ。理由は?」
「あの淫魔の血は、あれだけしか無いから。耐えられるギリギリまでは、我慢させるべきよ」

 渋い顔がアルちゃんを見下ろす。

「それか、強制的に寝かせるか、よ」
「肉体的ダメージで…か」
「ええ…」
「・・・いや、シーフ君がしたことは? 酸素濃度を低下させて気絶させることはできないか? アマラ」※酸素濃度の低下は脳機能に重篤な障害を引き起こしたり、最悪死にます!

「・・・できなくは、ないわね」

 親指を唇に当て、考えるように言うアマラ。

「ただ、この部屋ごと、になるわ。アタシはあのイフリートのガキみたいに空気の組成分を細かく操れるワケじゃないもの。小娘の周りだけの酸素濃度の調整じゃなくて、区画ごとに、空気自体を薄くすることしかできないわ」※空気が薄いと高山病などを引き起こし、最悪死にます!

「となると、俺が邪魔?」
「そうね。アタシは人魚だから、空気が多少薄くても全然平気だけど、アンタ達は死ぬでしょ」
「まあ…酸素濃度に拠るかな? 一応、無呼吸でも五分くらいは動けるけど・・・」
「?」

 ふっと、アマラが顔を上げて上を見る。

「アマラ? どうかした?」
「ええ。必要、無くなったかもしれないわ」
「?」

 俺が首を傾げると、医務室へと向かって走る足音を捉えた。これは…

「アルっ!?」

 ドアを開けて飛び込んで来たのは、黒髪に金色の混ざる紫の瞳、濃い蜜色の肌の少年。

「クラウド君っ!?」
「ごめんっ、アルっ!」

 必死な顔でアルちゃんへ駆け寄り、

「ちょっ、クラウド君っ!?」

 そのままアルちゃんへキスをした。
 瞬間、ふっとアルちゃんの顔から苦痛の色が抜け落ちて静かになった。意識を失ったらしい。

 そういえば、前にアルちゃんをキスで寝かせたとか言っていたような気がする。

「…ごめんっ、離れなければよかったっ…」

 艶やかな声に滲む苦い色。

「ごめんね、アル・・・」

 蜜色の手が、白い頬をそっと撫でる。

※※※※※※※※※※※※※※※

 緊急連絡が入りました。

 我らが始祖にして真祖しんその有名な子殺しの始祖と父上が闘ったそうです。
 結果、父上の意識は不明。
 の方も、行方知れず。

 そして・・・

『わたしが死亡、または生死不明、意志決定困難に陥った場合は、息子のフェンネル・アダマスをアダマスの当主代理として任命する。

ローレル・ピアス・アダマス』

 という父上の署名サインがされた書類が届きました。

 他にも、細々とした条件が書かれていますが・・・要約すると、妹及びその家族へ個人的な命令をしてはいけない。特に、あのヘタレ野郎アクセル・ブライトがアダマスへ明確に敵対行為を示さない限り、個人または当主権限で害することはしないこと。

 ・・・などが書かれています。

 あと、職人やエレイスのある程度の裁量を認める旨・・・要は、フェイドやハルトへ当主権限を振りかざすなということですね。

 椿、ロゼットへ命令はするな。
 ハルトやフェイドへも無茶振りはするな。と、父上は言いたいようです。

 そして父上は・・・意識不明とは書いてありますが、実質的には休眠状態になっているそうです。
 命に別状は無いでしょう。
 どの程度の休養が必要なのかは不明ですが・・・

 仕方ないので、後で父上へお見舞いとしてロゼットの血晶けっしょうを幾つか送りましょう。
 ロゼットの血は、回復を早めますからね。

 その分、フェイドから巻き上げて補充…いえ、フェイドが僕へ献上して来る筈です。ええ、きっと。

 それにしても・・・当主権限での命令対象に、椿とロゼットを入れてはいけないとは、やりますね。更には、ご丁寧に彼女達へ拒否権まで与えるとは…父上は、どれ程僕を信用していないのでしょうか?

 これでは、僕が個人的に椿とロゼットへ逢うことができないではないですか・・・

 アダマスの当主になったらしようと思っていたこと、それに釘を刺された形になりますね。

 椿に離縁を命じて実家うちへ戻したり、ロゼットを僕の手許へ置くという僕の目論見もくろみを見越しての、先手なのでしょうが・・・

 その程度で、僕は引き下がりません。

 個人的に逢うことが難しいのなら、おおやけの場で彼女達に逢えばいいのですっ!

 幸いなことに、リリアナイトはそろそろ僕の説得に応じてくれそうですからね。

 さあ、ロゼットを呼ぶ準備を進めましょう。
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