ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

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ヴァンパイア編。

104.ウォッカを一瓶一気しやがったっ!?

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 海賊共は雪君とヒューがほとんど戦闘不能にしたので、仕方無く海賊の船内を物色している。

 仕方無く、だ。つまらん。

「食料は・・・まずまずだな。よし、とりあえず全部持ってくか」

 厨房と食料庫を見渡してほくほく顔の雪君。なにげに鬼畜なことを言っている。

「雪君。ある程度の水くらいは残してやらないと、海賊共が死ぬぞ」

 人間は二、三日程度なら食べなくても死にはしないが、水を飲まないとすぐに死んでしまう。幾ら船の下に膨大にあろうとも、海水は飲めないからな。

「おう。うちは別に水には困ってねぇからな? 水は、残しといてやるよ」

 ニヤリと笑う雪君。

 あれだ。水以外は根こそぎ持ってくつもりのようだ。まあ、ここは陸地まで一週間は掛からない場所だからな。オレらが去った後、急いで陸地に向けて進路を取れば、餓死することはないだろう。

「お、酒類が充実してンな」

 船長室を物色するヒュー。

 ウイスキー、ブランデー、テキーラ、ウォッカなどの蒸留酒が戸棚にコレクションされている。
 オマケに、ワインセラーまであるようだ。

 海賊船長の特権とやらだろうか?

「おっしゃ! 今夜は酒盛りだ!」

 どうやら、ヒューは酒が好きらしい。

「ん? なんだ、アル。ガキにはやらんぞ?」

 別にうらやましくもなんともないが、少しカチンと来たので、未開封のウォッカを取り、封を切って、その中の透明な液体を一気にあおる。※アルコール度数の高いお酒を一気飲みすると、急性アルコール中毒で死ぬ恐れがあります!

「へ?」

 喉を通り過ぎるアルコールの感触。別に、美味くもなければ不味くもない味。

「・・・ぷはっ!」
「なっ…なにしてンだアルっ!? は、吐けっ! 今すぐ吐けっ!? いやっ、ジンっ!? ジンはどこだ~っ!?」

 と、慌てたヒューに小脇に抱えられ、ジンを探して船内を走ることに。そして、

ろくな医療設備無いな」

 医務室らしき部屋を呆れ顔で覗くジンを発見。オレを抱えたヒューが突進して行く。

「ジンっ!?」
「ヒュー? なにをそんなに慌てて」

 と、ジンが言い切る前に小脇からひょいと抱え上げられ、ジンの目の前に差し出された。

「今すぐ診ろっ!?」
「え? アルちゃん? 怪我でもしたの?」

 血の匂いがしないからか、ジンが慌てる様子はない。眼鏡越しにパチパチとまばたく薄い琥珀。

「ウォッカを一瓶一気しやがったっ!?」
「え? ええっ!? ウォッカをっ?」

 ヒューの言葉に驚くジン。

「アルちゃんを降ろして、ヒュー」
「お、おう」

 と、ヒューがオレを降ろす。

「アルちゃん、これ判る?」

 ジンの白くて長い指が三本、目の前でひらひらと振られる。

「三本。忘れてるようだから言っとくけど、オレ。毒無効体質で、アルコールでは一切酔わないんだ」
「へ?」

 間抜けな低い声でぽかんとするヒュー。

「そういえば、そうだったね。アルコールも、毒と言えば毒だね。それも全く効かないんだ? 凄いな」
「ええ。全く」

 魔力や血には酔うけど、酒では酔わない。

「じゃあ、なんでウォッカの一気なんかしたの?」
「ガキにはやらんとか言うので、ムカついて」
「なんだそりゃっ!? びっくりしたじゃねぇかよっ!?」
「あっそう。オレ知ーらない」

 ちょっとした腹いせだ。

「おいっ、待てやこらっ! アルっ!?」

 と、喚くヒューを捨て置いて、オレは適当にあちこちの部屋を覗いて回ることにした。

 薄暗い倉庫を覗くと、楽器を発見した。

 グランドではない、小さめのピアノだ。
 その近くには、ヴァイオリンやチェロ、管楽器などのケースが無造作に転がっている。
 部屋自体が埃臭いので、普段からここは人が出入りしてない場所なのだろう。

 埃は好かん。

「・・・換気するか」

 部屋の中の空気を掻き回し、旋風を起こし、舞い上がる埃ごとそれを部屋の外へと出す。ついでに、埃をぎゅっと圧縮。ごみの塊を廊下に放置。

 空気の匂いはまだ埃っぽいが、さっきより部屋は綺麗になった。本当は、水蒸気を集めて霧を出して空気ごと洗いたいところだけど、楽器があるのでそれは我慢する。楽器は過剰な湿気に弱いからな。過剰な乾燥にも弱いけど。

 管楽器は専門外だが、ヴァイオリンとヴィオラ、チェロはちょっとだけ弾ける。

 そして、ピアノは得意だ。

 ヴァイオリンのケースを開けてみると、艶やかに曲線を描くヴァイオリンが納められていた。生憎、弦は切れてしまっているが、状態はいい。これなら、弦を張り替えれば弾ける筈だ。

 ヴィオラもチェロも同様の状態。

 質は割といい楽器類だと思うが・・・おそらくはどこぞの不幸な船が襲われた際の戦利品なのだろう。けど、ここの海賊には楽器を嗜むどころか、価値を判る奴がいなかったようだ。

 触った形跡すら、ほとんど無い。

 ピアノの蓋を開け、軽く鍵盤を押す。
 タンと、澄んだ音が出た。弦はまだ死んでない。

 ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ドと順番に鳴らし、音程を確かめる。
 絶対音感を持っているワケではないが、聴いた感触ではあまり音が狂ってもいないようだ。

 ということで、弾いてみよう。
 ピアノは久々だ。
 指を組んでぐっと伸ばし、準備をする。

 そして鍵盤に指を乗せ、ゆっくりと走らせる。

 まずは軽い指慣らしに、エリーゼのために。そして、きらきら星変奏曲を軽やかに。続いてトルコ行進曲。指が乗って来たら、剣の舞い。そして、ラ・カンパネラを。やがてピアノに夢中になって、知っている中でテンポの速い曲を片っ端から弾いて行く。と・・・

 パチパチと拍手の音がした。

「凄いね、アルちゃん。そんなにピアノ弾けたんだ? しかも、譜面無しで」

 部屋の入り口に立つジン。

「まあ、譜面無いんで、間違ってるとこやなんとなくなとこも大分あったと思いますけどね?」
「つか、こんな暗い中でよく弾けるな?」

 ジンの後ろからひょいと顔を出すヒュー。

「アルのお嬢っぽいとこ、初めて見たぜ」

 いつの間にか背後にいた雪君が言った。

「楽器があったからね。あとは、単なる憂さ晴らし。どこぞの猫や、刀剣マニアが海賊を全滅させたから、暴れる機会を逃した」
「早いもん勝ちっつったろ?」

 ニヤリと笑う雪君。

「雪君のアホー。オレがあししてる間に全滅とか、ヒドいじゃないか。少しくらい残しとけよな」

 ヒトがヒューやジンを運んでいる間に・・・

「・・・アルちゃん。もしかして、それでヒューへの当て付けでウォッカを一気飲みしたの?」

 呆れ混じりにジンが言う。

「まあ、全く酔わないけど、ヒューがムカついたから。なんとなく?」
「お前なっ、あれはマジで焦ったんだぞ!」
「なんなら、酒類全滅させようか?」

 ニヤリと笑うと、ヒューの焦った顔。

「や、やめろっ! あれは俺の飲む分だっ! 大体、酔わねぇってンなら、飲む必要無ぇだろっ!?」
「うん。全く無いね。カクテルならかく、酒自体を美味しいと思ったこともないし・・・カクテルなんてジュースと同じだ」※毒無効のアルには、です!酒は飲み過ぎると普通に危険です!

「いや、ジュースの方が美味しいかな?」
「なら飲むなっ!?」
「別に、飲まなくても酒は全滅はできるよ?」
「は?・・・捨てさせねぇぞっ!? 絶対っ!?」

 どうやらヒューは、捨てることを思い付いたようだが・・・まあ、ある意味では合っているかな?

「や、水分操作でアルコール分だけ飛ばすことできるし。アルコール飛んだ酒なんて、なんとなく味の付いた水みたいなもんだろ」

 アルコール分を揮発させれば、全滅する。

「や、やめろっ!? なんておそろしく勿体無いことをするつもりなんだお前はっ!?」

 焦るヒューを見て、少しスッキリした。

「それで、もう戻るの?」
「うん。そろそろ戻ろうかと思って」

 ジンが頷く。

「うちの船に向かって、この船を動かしてンだ」
「久々の操船ってやつー?」
「アルちゃんは先に戻ってていいよ? それとも、もう少しピアノ弾いてる?」
「今は・・・もういいかな。先戻ってます」

 久々のピアノで、指がつりそうだ。指先が軽く熱を持って、じんじんしている。調子に乗って、少し弾き過ぎたようだ。

 アマラの船に戻って、指を冷やしながら手をマッサージしよ。

 それにしても・・・大分だいぶ指がなまってるな? 前よりも指が動かない。
 やっぱり、毎日弾かないとダメらしい。

__________

 今更ながらのピアノ得意設定でした。
 ※お酒は無茶な飲み方をすると、病気になったり、下手をするとその場で死にます。絶対に無茶な飲み方はしないでください。
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