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ヴァンパイア編。
124.とても、酷く、不安になった。
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リリのところへ向かうと、そのままリリの部屋へパッと移動させられた。
「アレク様♥️」
「リリ・・・」
レモンイエローのドレスを纏い、腕に飛び込んで来たリリをぎゅっと抱き締める。
アイマスクを引っ剥がして、脱力。
ああ・・・疲れたーっ!!!
舐めるような視線とか、マジキモいしっ!
ったく…混血ですけどなにかっ!? とか言って手当たり次第にぶっ飛ばしてやりてぇぜ!!!
奴隷や愛玩がどうのとか言う奴、死ね!
まあ、純血共に喧嘩売るとガチで危険だから、この怒りは我慢するけどねっ!?
神経磨り減るわー。全く・・・
「大丈夫、ですか? アレク様…」
アイマスクをしたままの、心配そうなアクアマリンが下から覗き込む。
「疲れた・・・」
「はい」
「気分悪い」
「はい」
「・・・リリ、大好き」
「リリも、アレク様を愛しています♥️」
「ありがと」
※※※※※※※※※※※※※※※
お嬢さん達と泣く泣く別れ、船を物色していて、気付いたことがある。
この船は、おかしい。
お宝がありそうな場所へ侵入れない。
鍵の掛かっているドアが、開かない。
鍵が掛かっているからと開けようと(ピッキング)しても、鍵穴から弾かれる。
拠って、鍵の掛かっているドアが全く開かない。
かといって、全てのドアが開かないワケでもない。鍵の掛かっていないドアなら簡単に開く。
けれど、そんな部屋には価値のある物が無い。
なんて防犯の確りした船なんだ。
盗賊に全く優しくない船だぜ。
そして、あちこち歩き回って腹が減ったので、厨房から手掴みで食べられる物を少し失敬して来た。
無論、誰にも見付かってないぜ!さすが俺!
それを食べながら歩いていると・・・
「? なんだ?」
ふと、物凄く厭な予感がして、バッと身体が勝手に動いた。そして、アイマスクと上着が廊下へ落ちる。
瞬間、またもや身体が動き、大きく後ろに跳び退いていた。
「っ!?」
ぞわりと、一斉に皮膚が粟立つと、アイマスクと上着が赤いなにかに貫かれて裂けて壊れた。
「な、んだ…これ、は・・・」
冷たい汗が頬を流れる。
「侵入者撃退の仕掛けか?危なかったぜ・・・?」
そして、気付いた。
犇めいていた吸血鬼の気配が・・・
「減った? しかも、一気に」
どういう、ことだ?
この船は、思っていたよりも危険なようだ。
「・・・お嬢さん達は無事か?」
気になるので、彼女達を探してみようと思う。
それから、この船を出よう。
※※※※※※※※※※※※※※※
・・・血の匂いがする。
その場所へ向かうと、ヴァンパイアが数名倒れていた。胸と頭を貫かれて。
ああ、こんな連中の血なんか飲みたくない。
不味いに決まっている。
けど、身体が重い。
血が足りない。
仕方ないから死んでる連中の血を集めて、圧縮。血晶化して、それを飲み込む。
「ああ・・・少し、マシになった」
膜が掛かったように遠かった音が少し近くなり、酷い耳鳴りが少し小さくなった。
くらくらして、酷い目眩と貧血とで明滅していた視界が、少し明るくなった。
そして、見渡す。
「どこだ? ここは・・・」
まあ、いいか。
今は、身体がこんなに酷い状態だというのに、少し…いや、とても気分がいいんだ。
だってさ、君の気配がするんだ。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、長い、永い間探して捜して捜して探して捜して探して捜して探し続けていた君が近くにいる。
こんなに嬉しいことはないよ。
ああ、漸く君に逢える。
君が大好きなんだ。
君だけが好きなんだ。
君を愛してるんだ。
君だけを愛してるんだ。
その、君が近くにいるんだ。
だから、身体が焼け焦げて、半分以上吹っ飛んで、ずたぼろ状態なのも平気だよ。
不味いけど、それなりに魔力を含んでいる血を飲んで、少しはマシになったからね。
うん。いつもよりは少し小さいけど、人型を維持して動ける程度には回復した。
長い、永いかくれんぼだったね。
とても永くて、とても寂しかったんだ。
でも、それも今日で終わりだよ。
「ふふっ、君はどこにいるのかな?」
ねえ、君を見付けたら、また昔みたいにずっと一緒にいようね?
もう、離れないで。
独りは、もう嫌なんだ。
寂しいのは、もう厭なんだ。
だから、今度こそずっとずっと一緒にいてよ。
「ああ……愛してるよ…アーク…」
※※※※※※※※※※※※※※※
「?」
「どうかされました? アレク様」
「い、や…わから、ない…」
なんか、今、すごくぞわりとした。
「アレク様? お顔が蒼白になっています」
とても、酷く、不安になった。
「アレク様?」
なん、だろうこの悪寒は・・・
厭な、予感がする。
額が、ぴりぴりする。
全身が、一気に冷たくなって強張る。
なんか、怖い・・・
リリを、強く抱き締める。
「アレク様? どうされました?」
なにか、怖いモノが、来る・・・
疼く額を、強く押える。
「アレク様? 頭が痛むのですか?アレク様?」
不安そうなリリの声に、ゆるく首を振る。
「アレク様♥️」
「リリ・・・」
レモンイエローのドレスを纏い、腕に飛び込んで来たリリをぎゅっと抱き締める。
アイマスクを引っ剥がして、脱力。
ああ・・・疲れたーっ!!!
舐めるような視線とか、マジキモいしっ!
ったく…混血ですけどなにかっ!? とか言って手当たり次第にぶっ飛ばしてやりてぇぜ!!!
奴隷や愛玩がどうのとか言う奴、死ね!
まあ、純血共に喧嘩売るとガチで危険だから、この怒りは我慢するけどねっ!?
神経磨り減るわー。全く・・・
「大丈夫、ですか? アレク様…」
アイマスクをしたままの、心配そうなアクアマリンが下から覗き込む。
「疲れた・・・」
「はい」
「気分悪い」
「はい」
「・・・リリ、大好き」
「リリも、アレク様を愛しています♥️」
「ありがと」
※※※※※※※※※※※※※※※
お嬢さん達と泣く泣く別れ、船を物色していて、気付いたことがある。
この船は、おかしい。
お宝がありそうな場所へ侵入れない。
鍵の掛かっているドアが、開かない。
鍵が掛かっているからと開けようと(ピッキング)しても、鍵穴から弾かれる。
拠って、鍵の掛かっているドアが全く開かない。
かといって、全てのドアが開かないワケでもない。鍵の掛かっていないドアなら簡単に開く。
けれど、そんな部屋には価値のある物が無い。
なんて防犯の確りした船なんだ。
盗賊に全く優しくない船だぜ。
そして、あちこち歩き回って腹が減ったので、厨房から手掴みで食べられる物を少し失敬して来た。
無論、誰にも見付かってないぜ!さすが俺!
それを食べながら歩いていると・・・
「? なんだ?」
ふと、物凄く厭な予感がして、バッと身体が勝手に動いた。そして、アイマスクと上着が廊下へ落ちる。
瞬間、またもや身体が動き、大きく後ろに跳び退いていた。
「っ!?」
ぞわりと、一斉に皮膚が粟立つと、アイマスクと上着が赤いなにかに貫かれて裂けて壊れた。
「な、んだ…これ、は・・・」
冷たい汗が頬を流れる。
「侵入者撃退の仕掛けか?危なかったぜ・・・?」
そして、気付いた。
犇めいていた吸血鬼の気配が・・・
「減った? しかも、一気に」
どういう、ことだ?
この船は、思っていたよりも危険なようだ。
「・・・お嬢さん達は無事か?」
気になるので、彼女達を探してみようと思う。
それから、この船を出よう。
※※※※※※※※※※※※※※※
・・・血の匂いがする。
その場所へ向かうと、ヴァンパイアが数名倒れていた。胸と頭を貫かれて。
ああ、こんな連中の血なんか飲みたくない。
不味いに決まっている。
けど、身体が重い。
血が足りない。
仕方ないから死んでる連中の血を集めて、圧縮。血晶化して、それを飲み込む。
「ああ・・・少し、マシになった」
膜が掛かったように遠かった音が少し近くなり、酷い耳鳴りが少し小さくなった。
くらくらして、酷い目眩と貧血とで明滅していた視界が、少し明るくなった。
そして、見渡す。
「どこだ? ここは・・・」
まあ、いいか。
今は、身体がこんなに酷い状態だというのに、少し…いや、とても気分がいいんだ。
だってさ、君の気配がするんだ。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、長い、永い間探して捜して捜して探して捜して探して捜して探し続けていた君が近くにいる。
こんなに嬉しいことはないよ。
ああ、漸く君に逢える。
君が大好きなんだ。
君だけが好きなんだ。
君を愛してるんだ。
君だけを愛してるんだ。
その、君が近くにいるんだ。
だから、身体が焼け焦げて、半分以上吹っ飛んで、ずたぼろ状態なのも平気だよ。
不味いけど、それなりに魔力を含んでいる血を飲んで、少しはマシになったからね。
うん。いつもよりは少し小さいけど、人型を維持して動ける程度には回復した。
長い、永いかくれんぼだったね。
とても永くて、とても寂しかったんだ。
でも、それも今日で終わりだよ。
「ふふっ、君はどこにいるのかな?」
ねえ、君を見付けたら、また昔みたいにずっと一緒にいようね?
もう、離れないで。
独りは、もう嫌なんだ。
寂しいのは、もう厭なんだ。
だから、今度こそずっとずっと一緒にいてよ。
「ああ……愛してるよ…アーク…」
※※※※※※※※※※※※※※※
「?」
「どうかされました? アレク様」
「い、や…わから、ない…」
なんか、今、すごくぞわりとした。
「アレク様? お顔が蒼白になっています」
とても、酷く、不安になった。
「アレク様?」
なん、だろうこの悪寒は・・・
厭な、予感がする。
額が、ぴりぴりする。
全身が、一気に冷たくなって強張る。
なんか、怖い・・・
リリを、強く抱き締める。
「アレク様? どうされました?」
なにか、怖いモノが、来る・・・
疼く額を、強く押える。
「アレク様? 頭が痛むのですか?アレク様?」
不安そうなリリの声に、ゆるく首を振る。
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