ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
171 / 179
過去編。

Lost memory~紫苑~

しおりを挟む
 『わたし・・・』の一番・・最初・・の記憶は、幸せそうに微笑む『彼女』の顔だった。

「愛しているわ」

 甘やかな優しい声が、愛おしそうに紡ぐ言葉。

「大好きよ。わたしの・・・」

 緩く波打つ淡い色の長い金髪。細められる翠の瞳。頬へと触れる優しい指先。

 彼女は慈しむように、とても幸せそうに、わたしへと微笑んでくれた。

 それが、『わたし・・・』の始まりの記憶。

※※※※※※※※※※※※※※※

 小さな家の中で二人きり。

 掃除、洗濯、炊事など、家のことを一人でこなす彼女。ふわふわと揺れる淡い色の金髪。『わたし』はその後ろをヒヨコのようによたよたと付いて回り、手伝いにならない…むしろ、邪魔にしかならないようなことをしていたように思う。

 それでも彼女は愛おしそうな眼差しを向け、

「ありがとう、××××」

 と、『わたし』へ優しく微笑む。

 食料は森で採取。彼女に抱かれ、ときには手を引かれ、二人で森の中をゆったりと歩く。

 木々の木洩れ日をキラキラと弾き返す淡い金髪。柔らかく見下ろす翡翠の瞳。微笑む表情。

 巡る季節。

 服が小さくなったら、

「ふふっ、大きくなったのね」

 愛おしげな眼差しで微笑んだ彼女は、嬉しそうにチクチクと『わたし』の服を繕う。

 彼女の作った食事を食べ、彼女の作った服を着て、彼女と一緒に過ごす。

※※※※※※※※※※※※※※※

 穏やかで、のんびりとした日々。

 そんな日々が続く中、時折家にやって来る訪問者がいた。それは、銀色の髪に銀灰色の瞳の男。

「××××、×××、二人共元気だったか?」

 柔らかく息災を問うすっきりと低い声。
 彼女が『わたし』を呼ぶのとは違う名で『わたし』を呼び、愛おしげに微笑む男に抱き上げられる。頭を撫でる優しい手。けれど、触れられるのがいやな額に触れることはしない。

 そんな彼がこの小さな家へやって来るのは、年に数回程のこと。

 長くて数日間、短いと数時間程度の滞在で彼は去ってしまう。この小さな家で過ごす三人の時間を、惜しむようにして・・・

「また来る。××××、×××」

 切ない声で彼女と『わたし』とを抱き締めて、けれどそうやってすぐに帰ってしまう彼のやって来る日を、彼女はとても心待ちにする。

「××××様はね…………、あのとき私を…………てくれて、だから今の私があるのよ」

 彼が帰ると――――甘やかな声が彼の名を呼び、大切そうに、愛おしそうに、彼女が彼との思い出を『わたし』に語る。柔らかい笑顔に、ほんの少しの切なさを含んで。

「早くお逢いしたいわ。××××様」

 白い頬が、薄紅色に染まる。

「ねぇ、××××。あなたも早く逢いたいでしょう? あなたには、寂しい思いをさせていると思うの。ごめんなさいね、××××」

 寂しい? そんなの、わからない。でも、『わたし』には貴女がいたから・・・

※※※※※※※※※※※※※※※

 銀髪の彼が蝙蝠こうもりのような羽根を背中に生やし、ふわりと舞い降りる。

 それを見て、『わたし』も飛びたいと思った。すると、ぴょこんと背中に蝙蝠のような小さな黒い羽根が出た。それがパタパタと羽撃はばたく。

「まあ! 凄いわ××××! ××××様とお揃いね! 見て見て、××××様! ××××に羽根が生えたわ! ほら、飛べるかしら? ねぇ、××××!」

 『わたし』以上に嬉しそうな彼女が、『わたし』を抱き上げてくるくると嬉しそうに回る。

「さすがにまだ無理だろう」

 『わたし』よりもはしゃぐ彼女に微笑む彼。

 それから家に入り――――

「×××、これをどう思う?」

 彼に示されたのは、紅い石。それがふるりと揺れて膨れ上がり、彼の手の平の上でとろりとした深紅の液体へと変わる。

「飲みたいと思うか?」

 じっと見詰める銀灰色の瞳に首を振り、

「そうか・・・まぁ、お前は××××寄りなのかもしれないな。大きくなればどうなるか判らないが・・・とりあえず、血液が飲みたくなったら、絶対に教えろ。ヴァンパイアとしての渇きや飢餓感は、××××にはわからない感覚だろう。約束だ。×××」

 真剣な表情で言い募る彼と約束を交わす。

「××××も、気を付けてやってくれ。×××が血を欲するようなら、直ぐに俺を呼べ。軽く舐める程度ならかく、ハーフである×××の許容量がまだ判らないから、下手に血をやるのはやめろ。あまり血に酔うと、×××が困ることになる」
「はい。わかりました」

※※※※※※※※※※※※※※※

 年に数回、ふらりとやって来て、たくさんのお土産を手にし、愛おしげな眼差しで見下ろす銀色の髪の彼との短い時間の触れ合い。

 そして彼が帰り、寂しげに見送る彼女の姿。

 また、森の中の小さな家に彼女と二人切り。

 でも、寂しくはなかった。

 『わたし』は、彼女と彼に愛されていたから。

 けれど――――

 彼女と『わたし』で偶に来る彼を待つ穏やかな、そして愛しい日々は過ぎ行き――――

 それが、唐突に終わった。

__________

 この『Lost Memory』の話だけ、いつもとサブタイを変えてます。

 紫苑の花言葉。『追憶』『君を忘れない』『遠方にある人を思う』
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...