虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
345 / 673

300

しおりを挟む


「これで、一応勝負は付いたという形になると思うのですが、ネイサン様はどうしますか?」
「そうですねぇ・・・」

 勝負は先輩の体調不良で棄権。レースは最後まで走らず、わたしの勝ち。ということになるみたいだけど、耐久レースの時間は、あと一時間半程(十時間とは言ったものの、馬場の使用時間の関係でレースの時間は休憩時間を除くと九時間半になった)残っている。

「まだ時間が余っているので、どうせなら最後まで走り切ろうと思います。後で、わたしが最後まで走っていないから勝負は無効だ、と言われてもなんなので」

 さすがに、そういうこと文句を付けるような人はなかなかいないとは思うけど。またケイトさんに因縁を付けるような人が出ないとも限らないし。

 ケイトさんに因縁を付けると、ネイサン・ハウウェルわたしが相手になりますよ? ということを周知させるのに、いい機会でもあるだろう。

 それに、一度こういう実績を作っておくと、次もまた耐久レースで勝負。という風に決め易いし。

「そうですか」
「あ、ケイトさんは先に上がって頂いても結構ですよ? 長時間外にいてお疲れでしょう? これはわたしの自己満足のようなものなので」
「お気遣いありがとうございます。でも、どうせならわたしも最後までお付き合いします。最後まで、見届けさせてください」
「・・・では、疲れたと思ったら、無理しないで上がってくださいね?」
「はい」

 と、予定通り十五分の休憩後、わたしは一人でレースを再開することにした。

 スタート位置に着く。

 先輩が運ばれて行ったことで勝負は付いたようなものなので、ギャラリーは減った。でも一部、わたしが走り出したことで見学を続けている生徒も見える。

 さて、先輩もいなくなったし、馬も走りたがっていることだし・・・

 いつもは乗馬クラブの部員が銘々、思い思いに馬を走らせているトラックには誰もいない。これはもう、久々に……思いっ切り走ってみますか。

「ハッ!」

 と、馬の腹を蹴って走らせる。

 いやぁ、実は一度、思う存分ここのトラックで走ってみたいと思っていたんだよね。前にレザンが人がいるときに爆走させてたけど、あれはさすがに真似できない。誰かに接触でもして、まかり間違って怪我でもさせたらと思うと怖くてできない。

 偶に爆走するとは言っても、やっぱり人がいるとある程度気を遣うから、こんな風に人のいない場所で走れるチャンスなんて滅多に無い。

 どうせわたしの勝ちは決まっているし、体力もペース配分も考えなくていい。と、何週回ったかを数えながら楽しく一時間半を走り切って、馬を降りると・・・

「お疲れ様です、ネイサン様」
「頑張ったな、ハウウェル」
「なにしてんのハウウェル?」
「……最後、走る意味あったのか?」

 と、ケイトさん、レザン、テッド、リールに出迎えられた。

 リール、来てたんだ。

「……ああ、ちゃんと最後まで走らなかったから無効だって。後で……因縁付けられても嫌だから。最後まで、走り切ろうと思って」

 さすがに、疲れた。息も切れている。

「や、その言い分はわからなくもないけど! なんだあの最後の走り! 八時間走った後で最後あんな走りするとか、お前どんな体力してんだよっ!?」
「がんばってみた」
「や、がんばったのはわかってっけどな!」
「?」

 テッドがなにを言いたいのかわからなくて首を傾げると、

「ネイサン様、タオルをどうぞ」

 ケイトさんからタオルが差し出されたので受け取って、

「ありがとうございます」

 汗を拭う。ストレッチしないと明日が大変だなぁ、なんて考えていると・・・

「ハウウェルぜんばいっ、あいたかったでず~~~~っ!?」

しおりを挟む
感想 176

あなたにおすすめの小説

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

私の婚約者を奪った妹が婚約者を返品してきようとするけど、返品は受け付けません。 どうぞご幸せに。

狼狼3
恋愛
ある日。 私の婚約者を奪った妹。 優越感に浸っているのか、私を見下しながらそう告げた妹に、そっと呟く。 奪うのはいいけど、返品は受け付けないからね? 妹がどうなるのか、私は楽しみで仕方なくなった。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

処理中です...