虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「女の子こわい、女の子こわい……」

 がたがたと震えながらレザンの後ろでぶつぶつ呟くアルトの声。

「まぁ、落ち着けフィールズ」

 ぽんぽんと、あやすように震える背中を撫でるレザンの手。

「レザンぜんばい~っ」
「えっと、わたしは席を外した方が宜しいでしょうか? 怪我も心配ですし、ご挨拶もしようと思ったのですが……この様子だと、無理そうですよね?」

 情けないエリオットの姿を、困ったように見詰めるケイトさん。

「ああ、いえ。あれは放っておいて大丈夫です」

 まぁ、挨拶は一応しといた方がいいとは思うけど・・・どうせコイツは一頻ひとしきり泣いたら、またきゃんきゃん喚き始める。

「え? ネイサン様?」
「つか、え~と、フィールズだっけ? 部長にめっちゃ失礼じゃね?」
「ああ、フィールズは女性が苦手だからな。なんでも、年の離れた三人の姉君におもちゃにされて育ったのが原因だと聞いたぞ」
「ぁ~、ねーちゃん達のおもちゃかー。ドンマイ」
「……同情する」

 なんて話していると、そろそろ馬場を閉めるから出なさいと顧問に促された。そう言えば、十八時はとっくに過ぎている。

「では、出ましょうか」

 と、馬を厩舎へ連れて行って馬場を出た。

「今日はお疲れ様でした。ゆっくり身体を休めてくださいね」
「はい」

 返事をすると、ケイトさんは心配そうな顔でレザンに引っ付いたままのエリオットを見ている。

「フィールズ様はミラベル様の弟君だと思うので、ご挨拶をしたかったのですが……」
「っ!? み、ミラ姉様のお知り合いですかっ!?」

 姉君の名前に反応したのか、パッと顔を上げるエリオット。

「え? ええ、はい。ミラベル様がご在学の頃には、よくして頂いたので」
「ご、ごめんなさいっ! 失礼な態度をとってしまいました! ミラベル・フィールズの弟のエリオット・フィールズです! 謝罪致しますので、ど、どうかっ、ミラ姉様には言わないでくださいっ!!」

 「どんだけ ねーちゃんが コワい んだよ」

 小さく呟くテッド。

「ええ、わかりました。わたしはケイト・セルビアです。宜しくお願いします。フィールズ様」

 ケイトさんが頷くと、

「ケイト・セルビア様……って、ハウウェル先輩のお兄様の、セディック様の婚約者様ですかっ!?」

 驚いたようなアルトの声。

「はい」
「知ってたの? エリオット」
「もちろんです! セディック様は、ハウウェル侯爵家の跡取りと目されている方ですからね! 僕がハウウェル先輩にお世話になったということもあって、お祖父様がお祝いを贈っていました」
「ああ、そう言えば君って、フィールズ公爵のお孫さんだったっけ」
「はいっ!」
「え?」
「……公爵令孫?」
「うむ。フィールズは、フィールズ伯爵令息でもあるがな」
「マジでっ!?」
「マジだねぇ。しかも、嫡男だったりするし」
「え? 伯爵令息がなんでそんなもんで顔隠してんの? めっちゃ怪しいんだけど?」
「え? 怪しいですか? この格好してると、誰も僕に話し掛けて来ないんですよ? 女の子が避けて行くんです! すごいでしょ!」

 ふふんと胸を張るエリオット。女の子避けということで、ストールで顔をぐるぐる巻きなのか。女の子というか、普通の生徒もエリオットを避けていると思うけど。

「すごいっつーか……なぁ? ハウウェル」

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