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なんでシナリオ通りに動かないワケっ!?
しおりを挟む午前の授業後が終了してお昼休みの時間。
「アンタも転生者なんでしょ」
と、低い声でわたくしに囁いたのは、少し前から有名になっている編入生でした。
「あの、お昼がまだなのですが?」
「いいから! ちょっと顔貸しなさいよ」
平民として暮らしていたのに、いきなり希少属性と言われる光の治癒魔力に目覚め、魔力暴走を防ぐため&希少属性の研究をするためとして国立学園に試験も受けずに編入し、正規に試験を受けて入学した生徒達からやっかまれている……愛らしい容姿をした女子生徒です。
そして、やっかみが嫌がらせへと発展。それにもめげず、彼女は学園に通い続けています。その姿が健気だと、一部の男子生徒達からは大事に庇護されているようです。
『魔力暴走を防ぐために学園に通うよう、国が定めたことだ。その彼女へ嫌がらせをするということは、国の方針に逆らうということだぞ! 国家反逆の意志ありと疑われたいのか!』
なんて、彼女のナイト気取りの高位貴族子息が声高に触れ回ったお陰か、彼女への嫌がらせは下火になりつつあるようですが――――
ぶっちゃけ、彼女の方にも問題があると思うんですよねぇ?
だって彼女、明確にやる気……ご自分の魔術を磨く気が無さそうに見えるんですもの。
この国立学園は、将来を有望されたエリート達が学科ごとの厳しい試験に合格し、見事勝ち取って通えるようになった場所。しかも、年に三度の定期試験もあり、それの成績が一定以下の点数であれば容赦無く転校か退学を勧められます。
そんな学園に魔力が稀少属性だからと、初等教育も受けていないような平民が入って来て、必死で努力をしている方々を尻目に――――
『あたし、こんな学校入りたくなかった。もっと普通の女の子でいたかったのに……』
だとか、うるうるした瞳で抜かして、顔のいい貴族子息に擦り寄っているのを見た日には、一般合格者の生徒が激怒するのも無理はないかと思われます。
しかも、ある程度の修学課程をクリアすれば魔術科へ転科する予定で一時的に総合科に通っているという生徒なのに? 定期試験は難しくてわからないと言って、免除されているのに? それでも退学にならないからと? 騎士科や経営科、音楽科などの他の学科の男子生徒達と休憩時間ごとに一緒に過ごして、随分とお忙しいようですし?
そんなお忙しい筈の彼女が、淑女科の一生徒であるわたくしに、一体なんの用があるというのでしょうか?
「早くしてよ」
あらあら、いつも男子生徒に見せている気弱そうな表情や困った顔、や悲しそうだったり寂しそうな顔が、今はとても冷え冷えとしたお顔に見えていてよ?
まあ、今はわたくしの研究も一段落したところですし。希少属性……光の治癒魔術にも興味があります。なので、お誘いに乗ってあげましょうか。
ちなみにわたくし、家の都合で淑女科に通ってはおりますが、実はこっそり魔術科の授業に潜り込んでいたりします。なんて、学園側や教諭公認のこっそりなのですけど。
なにげに多かったりするんですよね。『女に高等な学問は不要だ』とか主張する、頭の固いおじさま達が。女性に高等学問が不要だと声高に、事あるごとに宣うクセに、名門校に通わせて箔を付けたいという謎思考。
ホンっト、意味がわかりませんわ。
と、愚痴はおいといて――――
彼女の後に付いて歩きます。
魔術談義ができたりすると嬉しいのですが。
人気の無い場所まで歩くと、彼女がわたくしを睨みながら口を開きました。
「どういうつもり?」
「どう、とはなんのことでしょうか?」
「はあっ? しらばっくれてもアンタが転生者なのはわかってんだから! なんでシナリオ通りに動かないワケっ!?」
苛立ったようにわたくしに詰め寄る彼女。
なんだか怖いので、彼女から離れようと少し後ろへ下がります。すると――――
「そこでなにをしているっ!?」
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