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か弱い彼女(そう見せ掛けているだけなのに)を守る俺、カッコイイ! とか思っていそうな顔ですねぇ?
しおりを挟む「そこでなにをしているっ!?」
怒気の籠った鋭く低い声が掛けられました。
「か、彼女はなにもしてないんです!」
先程までの苛立った様子を微塵も見せず、なんなら瞬時に瞳を潤ませ、彼女は低い声のした方へと小走りで駆けて行きました。
凄い変わり身の早さですね。思わず感心してしまいます。
「彼女を虐げることは、国に逆らうことだと宣言してからは嫌がらせの数々は減っていたと思っていたが・・・まだこのようにこそこそと陰で動く輩がいたとはな! 貴様、どこの学科の者だ! 疚しいことが無いならば、名を名乗れ!」
と、ぽっと出の男子生徒が彼女の肩を抱きながら、なにやらわたくしが悪だと断定したような口上が飛んで来ました。
別に、怒鳴らなくても聞こえるのですけど。か弱い彼女(そう見せ掛けているだけなのに)を守る俺、カッコイイ! とか思っていそうな顔ですねぇ? なんというか、わたくしに言わせれば、勘違いしたイタい野郎なのですけど。
ああ、ウザいですわ。
「彼女は、国に請われてこの学園に通っているんだ! 平民だからと馬鹿にすることは許されることではない! それとも、彼女の特別な属性への嫉妬か? 見苦しい奴だな!」
わたくしがまだ一言も返していないというのに、つらつらと話を進める勘違い野郎。
「彼女はこの学園で魔術の腕を磨いて、やがては国家のために尽くす素晴らしい女性……聖女になると決まっている! そのときに後悔したって遅いんだからな!」
なんぞ言っていますわね……彼女のことを盛り過ぎじゃないでしょうか? 恋は盲目とやらでしょうか? 周りが見えないにも程があると思います。
「も、もう、誉め過ぎだよっ! あたし、そんなにすごい人なんかじゃないってば」
彼女の方も満更じゃない様子で。勘違い野郎彼に謙遜している振りをしながら、わたくしへは見下すような視線でマウントを取って来ます。
器用な方ですわ。それとも、勘違い野郎が鈍いだけなのかしら?
「いいや、君はいずれ、国を背負って立つことになる尊い存在なんだ! こんなところで、虐げられていい筈が無い!」
と、イチャコラしながらわたくしへと厳しい視線を向ける彼。
お花畑が見えるような気がします。ああ、お腹が空いて来ましたわ。
彼らに悪だと判断されると、くどくどといちゃもんを付けられてしまうので仕方ありません。
「あの、質問なのですが」
「なんだっ!?」
「その、彼女が国を背負って立つ程の凄い魔術を身に付けるのは、いつのことなのでしょうか?」
「はあっ? なにを言っている! そんなの、彼女の努力を見ていればわかることだろうっ!?」
なぜか逆ギレ? のようにわたくしを怒鳴り付ける勘違い野郎。
「努力……ですか。では、その努力の具体的な内容を教えてくださいな」
そう、努力をしているなら、なのですが。
「彼女はっ、治癒魔術の精度を上げるために授業の合間の休憩時間は医務室で生徒達の怪我を治しているだろうが!」
「そうなのですか? 日替わりどころか休憩時間ごとに、毎回別の男子生徒達と学園内をあちこちふらふらしている場面しか見たことがないのですが?」
「え?」
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