31 / 61
コルドのバカっ、イジワルっ!?
しおりを挟む
ライと別れてから、図書館へと向かうと・・・
見覚えのある奴が、見覚えのある連中に囲まれて、人気のない方へと歩いて行くのが見えた。
「ったく、仕方ねーな」
後を追うと、
「………さ、金欠で困ってんだ。言ってる意味、わかるよな?痛い目見たくなきゃ、出せよ」
やっぱり、カツアゲ。
男子学生三名に囲まれたチビは、青い顔。
「そこの、トーマス・シモンズ及び取り巻きの二人。久し振りだな」
背後から声を掛ける。多分、この男子学生のリーダー格はそんな名前だったと思う。
「お前は…レポート代行の」
「こんなとこで学校サボってカツアゲか?」
「コルドっ!?」
涙混じりの甲高い声。
「だから頭悪ぃンだよ。アンタらはさ?」
「コイツっ!?」
オレの言葉に気色ばむ三人。
「ヤだな?別に喧嘩は売ってねーよ。ホントのことだろ?オレの書いたレポートでA判定。留年だっけ?免れたんじゃなかったか?」
顔を歪める三人の男子学生。
「・・・なんの、用だ?お前が」
トーマス?が口を開く。
「それ、オレの弟。手、出さないでくれる?そしたらまた、レポート書いてやってもいい。嫌ってンなら・・・ま、自分でガンバレ」
「っ・・・行け」
「どうも」
三人をすり抜け、震えるスノウの手を引いてゆっくりとその場を離れる。
「ふぅ・・・」
危なかった。二人ならなんとか相手にすることもできるが、三人なら完璧ボコられる。短絡的に殴り掛かって来るような馬鹿じゃなくて助かった。
「ふぇっ…コルドぉ~」
えぐえぐと泣き出したスノウが、
「こわ、か…った~」
抱き付こうとするのを頭を掴んで阻止。
「スノウ。泣くのはいいが、くっ付くのはやめろ。離れろよな」
「ぅう~…ヒドい~」
「だってお前、鼻水付けるし。汚い」
「コルドのバカぁ~~!」
「はいはい。帰ンぞ?バカスノウ」
小さな熱い手を引いて歩く。
スノウの泣き声がえぐえぐからぐずぐすに変わった頃、ポツンとスノウが言った。
「…レポートって、なに?」
「学校の宿題のこと」
「しく、だい?」
「面倒だが、提出サボったり出来が悪かったりすると進級できない…らしいぞ?」
学校行ったことないから知らないが。
「・・・なんで、コルドが?」
「割と稼げるんだ。図書館いると、ああいうバカ、結構多いからな」
「ふ~ん」
値段は敢えて設定しない。ソイツ自身に、そのレポートに、幾ら出すかを決めさせる。価値を。
それにしても、オレに簡単に解けるレポートが、学校に通って勉強している奴らに解けないというのは、とても不思議だ。
まあ、そのお陰である程度稼げるんだが。
暫く歩いて、スノウが落ち着いたようなので切り出す。
「お前さ、なんの為に笛持ってんの?ああいうバカに絡まれたら、デカい音出してとっとと逃げろって、教えたよな?ホリィもレイニーもさ」
「…忘れてた」
「今のはオレにもなんとかできたけど、単に運が良かっただけだ。いつも都合よく助けが入るワケじゃねーんだ。確り覚えて、ちゃんと自分で実行しろ」
「・・・」
繋いだ手が、ぎゅっと握られる。
「……ごめん」
「オレに謝られてもな?」
「…うん。ごめん。昨日…ケンカしたのに、助けてくれて、ありがとう」
スノウにしては素直な謝罪とお礼の言葉。
「別に。幾らアホでも一応妹は妹だから」
放っとくのも寝覚めが悪い。
スノウは好きじゃないが、別にヒドい目に遭えばいいと思うようなこともない。
それなりに元気でいればいいと思う。バカと性格ブスはいい加減に直してほしいが。
「コルドのバカっ、イジワルっ!?」
「はいはい。それだけ喚けるんなら、もう大丈夫だよな?まずは顔洗えよ。普通の顔が、腫れて不細工になる前にな」
近場の井戸を示す。
「っ!コルドなんか大っ嫌いっ!!」
「いいから顔洗えって。後で目ぇ腫れて痛くなって、開かなくなっても知らんぞ?」
「ぅう~~~洗うわよっ!?」
手が乱暴に払われ、スノウが井戸に向かってぷりぷりと歩いて行く。
「ホリィはやさしいのにっ!?」
バシャバシャ顔を洗いながら、
「どうしてコルドは……」
スノウはぶちぶちと愚痴を零す。
「イジワルでヒドいこと言うのよっ…なんでホリィは、こんな冷たい奴…」
イジワル、ヒドい、冷たい。
どれもよく言われる言葉だ。
スノウがそう思うなら、そうなんだろう。
スノウを家に送り、また外へ。スノウがする筈だった買い物に代わりに行くことにした。
「悪いね。スノウが怖がるからさ」
玄関を出て言うと、銀灰色の尻尾が一揺れ。ファングには、スノウを助けに入る前に、少し距離を取ってもらっていた。
見覚えのある奴が、見覚えのある連中に囲まれて、人気のない方へと歩いて行くのが見えた。
「ったく、仕方ねーな」
後を追うと、
「………さ、金欠で困ってんだ。言ってる意味、わかるよな?痛い目見たくなきゃ、出せよ」
やっぱり、カツアゲ。
男子学生三名に囲まれたチビは、青い顔。
「そこの、トーマス・シモンズ及び取り巻きの二人。久し振りだな」
背後から声を掛ける。多分、この男子学生のリーダー格はそんな名前だったと思う。
「お前は…レポート代行の」
「こんなとこで学校サボってカツアゲか?」
「コルドっ!?」
涙混じりの甲高い声。
「だから頭悪ぃンだよ。アンタらはさ?」
「コイツっ!?」
オレの言葉に気色ばむ三人。
「ヤだな?別に喧嘩は売ってねーよ。ホントのことだろ?オレの書いたレポートでA判定。留年だっけ?免れたんじゃなかったか?」
顔を歪める三人の男子学生。
「・・・なんの、用だ?お前が」
トーマス?が口を開く。
「それ、オレの弟。手、出さないでくれる?そしたらまた、レポート書いてやってもいい。嫌ってンなら・・・ま、自分でガンバレ」
「っ・・・行け」
「どうも」
三人をすり抜け、震えるスノウの手を引いてゆっくりとその場を離れる。
「ふぅ・・・」
危なかった。二人ならなんとか相手にすることもできるが、三人なら完璧ボコられる。短絡的に殴り掛かって来るような馬鹿じゃなくて助かった。
「ふぇっ…コルドぉ~」
えぐえぐと泣き出したスノウが、
「こわ、か…った~」
抱き付こうとするのを頭を掴んで阻止。
「スノウ。泣くのはいいが、くっ付くのはやめろ。離れろよな」
「ぅう~…ヒドい~」
「だってお前、鼻水付けるし。汚い」
「コルドのバカぁ~~!」
「はいはい。帰ンぞ?バカスノウ」
小さな熱い手を引いて歩く。
スノウの泣き声がえぐえぐからぐずぐすに変わった頃、ポツンとスノウが言った。
「…レポートって、なに?」
「学校の宿題のこと」
「しく、だい?」
「面倒だが、提出サボったり出来が悪かったりすると進級できない…らしいぞ?」
学校行ったことないから知らないが。
「・・・なんで、コルドが?」
「割と稼げるんだ。図書館いると、ああいうバカ、結構多いからな」
「ふ~ん」
値段は敢えて設定しない。ソイツ自身に、そのレポートに、幾ら出すかを決めさせる。価値を。
それにしても、オレに簡単に解けるレポートが、学校に通って勉強している奴らに解けないというのは、とても不思議だ。
まあ、そのお陰である程度稼げるんだが。
暫く歩いて、スノウが落ち着いたようなので切り出す。
「お前さ、なんの為に笛持ってんの?ああいうバカに絡まれたら、デカい音出してとっとと逃げろって、教えたよな?ホリィもレイニーもさ」
「…忘れてた」
「今のはオレにもなんとかできたけど、単に運が良かっただけだ。いつも都合よく助けが入るワケじゃねーんだ。確り覚えて、ちゃんと自分で実行しろ」
「・・・」
繋いだ手が、ぎゅっと握られる。
「……ごめん」
「オレに謝られてもな?」
「…うん。ごめん。昨日…ケンカしたのに、助けてくれて、ありがとう」
スノウにしては素直な謝罪とお礼の言葉。
「別に。幾らアホでも一応妹は妹だから」
放っとくのも寝覚めが悪い。
スノウは好きじゃないが、別にヒドい目に遭えばいいと思うようなこともない。
それなりに元気でいればいいと思う。バカと性格ブスはいい加減に直してほしいが。
「コルドのバカっ、イジワルっ!?」
「はいはい。それだけ喚けるんなら、もう大丈夫だよな?まずは顔洗えよ。普通の顔が、腫れて不細工になる前にな」
近場の井戸を示す。
「っ!コルドなんか大っ嫌いっ!!」
「いいから顔洗えって。後で目ぇ腫れて痛くなって、開かなくなっても知らんぞ?」
「ぅう~~~洗うわよっ!?」
手が乱暴に払われ、スノウが井戸に向かってぷりぷりと歩いて行く。
「ホリィはやさしいのにっ!?」
バシャバシャ顔を洗いながら、
「どうしてコルドは……」
スノウはぶちぶちと愚痴を零す。
「イジワルでヒドいこと言うのよっ…なんでホリィは、こんな冷たい奴…」
イジワル、ヒドい、冷たい。
どれもよく言われる言葉だ。
スノウがそう思うなら、そうなんだろう。
スノウを家に送り、また外へ。スノウがする筈だった買い物に代わりに行くことにした。
「悪いね。スノウが怖がるからさ」
玄関を出て言うと、銀灰色の尻尾が一揺れ。ファングには、スノウを助けに入る前に、少し距離を取ってもらっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる