43 / 61
・・、・・・?
しおりを挟む
ゆさゆさと、揺り起こされる。
「ん……ぅぐっ……!」
ざらついた声。喉が、痛い。
痛みで目を覚ますと、揺するのはステラだった。
「・・・!」
起きて、と口がパクパク。
眠い目を擦り、うんうん頷き……
「…~~」
ぅう…欠伸でも喉に痛みが…
枕元に置いてある布を引っ掴み、一旦毛布に潜って首に巻いて顔を出す。
『どうした?』
ステラの手を取って聞く。
『起きて、朝』
「??」
朝?オレ、昨日からずっと寝てたのか・・・
それにしても、寝ているオレを無理矢理起こすなんて、ステラらしくない。首を傾げ、また聞く。
『どうかしたの?』
どこかムッとしたような顔での答え。
『首、包帯巻いて青い顔!起きなかったら嫌だから、起こしたの!』
「・・・」
『ごめん。心配させて』
『本当に心配した!コルドの馬鹿!』
くしゃりとステラの顔が歪んだ。
「っ!」
マズいと思ったら、
「うあぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
思わず耳を押さえる程の大音量。
直後、バタンとドアが開いて、
「煩っせぇっ!?なに泣いてやが……って、げっ、ステラかよ!」
怒鳴り込んで来たレイニーがぎょっと怯む。
「…あ~、あれだっ。泣かしたな、お前だろっ?責任持ってなんとかしろっ!」
大音量の泣き声の中、その声に掻き消されないよう言い残して・・・逃げて行きやがった。
ステラは耳が聴こえない為、自分で声の音量調節ができない。拠って、泣くときには、それはそれは力一杯の全力で泣く。更に厄介なことに、泣いているステラには、言葉が一切通じなくなる。
「・・・」
きっと、ステラが泣き止むまでは誰も来ない。多分、ホリィ以外の奴は・・・
大音量の泣き声に辟易しながら、よしよしとステラの頭や髪を撫でてあやす。
泣かしたの、オレだし・・・
「・・・っ!?」
不明瞭な発音で名前が呼ばれ、泣いて体温の上がった熱い身体がぎゅうぅっ!と強くしがみ付く。
ごめんと思いながら、トントンとステラの背中や頭を撫で続け・・・
・・・・・・
・・・
「っ!」
ハッと目を覚ます。と、
「こ、コルド…お、起きたの?」
頭上でギクリと強張るホリィの姿。
「・・、・・・?」
なに、してる?泳ぐ青灰色の瞳を睨み付け、声を出さずに口だけを動かして問う。
「あ…ほら?ステラがっ…その、重そうだから!どかしてあげようかな~?って」
挙動不審にホリィが言う。明らかな嘘だが・・・
確かに、重い。胸の上にステラの頭が乗っかっている。涙の跡の残る顔が赤い。
泣き疲れて寝てしまったようだ。オレも、あやし疲れて一緒に寝ていたらしい。
ステラを起こさないようそっと頭を下ろし、身を起こす。服もバンダナも濡れている。
「・・・」
溜息を吐き、
「コルド?」
首元が隠れる別の服を取り出して毛布の中で、もそもそと着替える。
そして、気まずそうに顔を逸らすホリィに向き直り、その手を取る。
『なにしようとした』
ぴくりと震える手。
「だ、だから、ステラを、どけようとして…」
『嘘吐くな。首、触ろうとしたんだろ』
ホリィが目を伏せる。
『そういう悪巫山戯、二度とするな』
「巫山戯てなんかないっ!?」
『じゃあ、なに?嫌がらせ?』
「違うっ!?そんなんじゃ、ない…レイニーがっ、ウェンと話してて…コルドの怪我、すごく…酷いって…だからっ…」
伏せられた青灰色がキッとオレを見据え、
「見せて」
ホリィが言う。
『嫌だ。拒否する。出てけ』
取っていた手を投げ、拒絶を示す。
「嫌だっ!見せて。お願い」
伸びて来る手を払う。
「コルドっ!!」
嫌だと、言っているのにっ!?
「っ……わ、るなっ!?」
傷んだ喉の、潰れて嗄れた声。
ハッとした顔が泣き出しそうに歪んだ。そんなホリィをバッと突き飛ばし、部屋を出る。
喉が、痛い。走って、
「なんだ?どうしたコルド」
ウェンの隣に逃げ込む。
『ホリィが、首見せろって言うから逃げて来た。嫌だ。アイツなんとかして』
「…ったく、アイツは…」
苦々しい溜息。
「ステラは?」
『泣き疲れて寝てる。オレの部屋』
「…一応言っとくが、アイツも心配してんだ。お前が嫌がるのわかっててもな?だからそう、あまり邪険にしてやるなよ」
宥めるような低い声。ぽんと頭が撫でられる。
『わかってる。でも、嫌だ。こんなの、見られたくない。見せたくない』
こんなの、見たらアイツはっ・・・
『外、出てる。ホリィにステラのこと頼んどいて。目、冷やさないと腫れる』
「あ、おい、コルドっ!?」
返事を待たずに外へ出る。
ウェンは、追い掛けて来ない。追い掛けられない。
「ん……ぅぐっ……!」
ざらついた声。喉が、痛い。
痛みで目を覚ますと、揺するのはステラだった。
「・・・!」
起きて、と口がパクパク。
眠い目を擦り、うんうん頷き……
「…~~」
ぅう…欠伸でも喉に痛みが…
枕元に置いてある布を引っ掴み、一旦毛布に潜って首に巻いて顔を出す。
『どうした?』
ステラの手を取って聞く。
『起きて、朝』
「??」
朝?オレ、昨日からずっと寝てたのか・・・
それにしても、寝ているオレを無理矢理起こすなんて、ステラらしくない。首を傾げ、また聞く。
『どうかしたの?』
どこかムッとしたような顔での答え。
『首、包帯巻いて青い顔!起きなかったら嫌だから、起こしたの!』
「・・・」
『ごめん。心配させて』
『本当に心配した!コルドの馬鹿!』
くしゃりとステラの顔が歪んだ。
「っ!」
マズいと思ったら、
「うあぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
思わず耳を押さえる程の大音量。
直後、バタンとドアが開いて、
「煩っせぇっ!?なに泣いてやが……って、げっ、ステラかよ!」
怒鳴り込んで来たレイニーがぎょっと怯む。
「…あ~、あれだっ。泣かしたな、お前だろっ?責任持ってなんとかしろっ!」
大音量の泣き声の中、その声に掻き消されないよう言い残して・・・逃げて行きやがった。
ステラは耳が聴こえない為、自分で声の音量調節ができない。拠って、泣くときには、それはそれは力一杯の全力で泣く。更に厄介なことに、泣いているステラには、言葉が一切通じなくなる。
「・・・」
きっと、ステラが泣き止むまでは誰も来ない。多分、ホリィ以外の奴は・・・
大音量の泣き声に辟易しながら、よしよしとステラの頭や髪を撫でてあやす。
泣かしたの、オレだし・・・
「・・・っ!?」
不明瞭な発音で名前が呼ばれ、泣いて体温の上がった熱い身体がぎゅうぅっ!と強くしがみ付く。
ごめんと思いながら、トントンとステラの背中や頭を撫で続け・・・
・・・・・・
・・・
「っ!」
ハッと目を覚ます。と、
「こ、コルド…お、起きたの?」
頭上でギクリと強張るホリィの姿。
「・・、・・・?」
なに、してる?泳ぐ青灰色の瞳を睨み付け、声を出さずに口だけを動かして問う。
「あ…ほら?ステラがっ…その、重そうだから!どかしてあげようかな~?って」
挙動不審にホリィが言う。明らかな嘘だが・・・
確かに、重い。胸の上にステラの頭が乗っかっている。涙の跡の残る顔が赤い。
泣き疲れて寝てしまったようだ。オレも、あやし疲れて一緒に寝ていたらしい。
ステラを起こさないようそっと頭を下ろし、身を起こす。服もバンダナも濡れている。
「・・・」
溜息を吐き、
「コルド?」
首元が隠れる別の服を取り出して毛布の中で、もそもそと着替える。
そして、気まずそうに顔を逸らすホリィに向き直り、その手を取る。
『なにしようとした』
ぴくりと震える手。
「だ、だから、ステラを、どけようとして…」
『嘘吐くな。首、触ろうとしたんだろ』
ホリィが目を伏せる。
『そういう悪巫山戯、二度とするな』
「巫山戯てなんかないっ!?」
『じゃあ、なに?嫌がらせ?』
「違うっ!?そんなんじゃ、ない…レイニーがっ、ウェンと話してて…コルドの怪我、すごく…酷いって…だからっ…」
伏せられた青灰色がキッとオレを見据え、
「見せて」
ホリィが言う。
『嫌だ。拒否する。出てけ』
取っていた手を投げ、拒絶を示す。
「嫌だっ!見せて。お願い」
伸びて来る手を払う。
「コルドっ!!」
嫌だと、言っているのにっ!?
「っ……わ、るなっ!?」
傷んだ喉の、潰れて嗄れた声。
ハッとした顔が泣き出しそうに歪んだ。そんなホリィをバッと突き飛ばし、部屋を出る。
喉が、痛い。走って、
「なんだ?どうしたコルド」
ウェンの隣に逃げ込む。
『ホリィが、首見せろって言うから逃げて来た。嫌だ。アイツなんとかして』
「…ったく、アイツは…」
苦々しい溜息。
「ステラは?」
『泣き疲れて寝てる。オレの部屋』
「…一応言っとくが、アイツも心配してんだ。お前が嫌がるのわかっててもな?だからそう、あまり邪険にしてやるなよ」
宥めるような低い声。ぽんと頭が撫でられる。
『わかってる。でも、嫌だ。こんなの、見られたくない。見せたくない』
こんなの、見たらアイツはっ・・・
『外、出てる。ホリィにステラのこと頼んどいて。目、冷やさないと腫れる』
「あ、おい、コルドっ!?」
返事を待たずに外へ出る。
ウェンは、追い掛けて来ない。追い掛けられない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる