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第四章 ゆるやかな変化
2 恋人
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「んーとね、旅行先のおみやげやでさ、最初は一人で選ぼうと思ってたんだけど…俺全然決めらんなくて。母さんたちにもまだー?って呆れられてさ。そしたらお店の人が、声かけてくれて」
どんな好みの方にあげるんですか?て聞かれたから、普段のかえでの格好とか思い出してさ、と話す悠也の顔を、俺は目をパチパチと瞬きながら見つめてしまう。
「かえで、この間ペンポーチもうぼろぼろって言ってたじゃん?ちょうどいいかなって思って」
そんなことまで覚えていたのか、とじんわり手に握ったストライプ柄のおしゃれな生地のペンポーチを改めて見た。
「色違いのやつ、おそろいで買っちゃった」
唐突に笑顔と一緒にとんでもない単語が飛んできた。おそろい、おそろい、と脳内に悠也の声がエコーしそうになる。
「なんかこーゆーのが一つあるとさ、お互い離れてても嬉しいって」
思いがけないサプライズに感極まりそうになりながらも、俺は少し冷静さを取り戻す。
「…悠也、お前、またなんかみた?」
「え、なんでわかったの?」
気が利きすぎている。というか、色違いだとかプレゼントでおそろいだなんてこじゃれた発想が、こいつの中からいきなりパッと出てくるとは思えない。
「何見たんだよ」
俺が首に手をあてながらそういうと、悠也は「えー」と携帯を取り出し画面を見せてきた。
「遠距離恋愛のあなたも、おそろいアイテムでいつも恋人との思い出を感じようー」
液晶画面に書かれた微妙に冴えないその文面を見て、俺はなんだこのキャッチコピーは!と声を上げそうになる。
「恋人へのプレゼント。ワンポイントアドバイスってみつけたから、これ参考になるかなって思って読んでみたんだ」
「恋人」、という言葉にじゅわっと胸が焦げそうなほどの熱さを覚え、
「んごっ!?」
俺は無様な悲鳴をあげてしまい、口を手でおさえた。羞恥心で転げ回りたいような思いに駆られる。
「俺、気の利いた誕プレとかさ、そーゆーのよくわかんないから、付き合ってる プレゼント、で検索したんだ そしたら、これがでてきて」
そもそもわざわざ調べるの恥ずかしすぎるだろ~と思ったが、悠也はそういう変に真面目なやつで、俺はこいつのそういうバカなところもたまらなくすきなのだ。
「やっぱ付き合って初めての誕生日って特別じゃん?」
ぱっと俺をみた悠也が、珍しくちょっと照れくさそうに瞳を眇めた。にししっと笑う悠也の顔はガキの頃のまんまなのに、なんでこんなに心臓はぎゅいんぎゅいんと音をたてやがるんだ。
「かえで、顔赤い」
そう言ってふにゃっと笑うから、俺は「見るな!」と両手で自分の顔を覆った。
悠也は昔から何かと人を驚かせるのが好きだ。
幼少期から、後ろから何かをしかけてくる(膝カックン、目隠し、こしょこしょ、あげたらキリがない) 常習犯だし、下駄箱を開いたらおもちゃが飛び出してきたこともある。
誕生日は幼稚園の門の前で待ち伏せして、うるさいくらいどでかい音のクラッカーを鳴らして突進してきたり(あとでクラッカーは幼稚園の先生に没収され、近所迷惑だとこっぴどく叱られていた)ハロウィンには、白い布をかぶってお化けになりきり通学路を闊歩していた。
いたずらばかりのクソガキで、でも人を喜ばせるのが好きで、変わってない、けど。今日微笑みながら俺に、特別だから、とプレゼントを渡す悠也の顔は急に大人っぽいかっこよさをはらんでもいて。こんなの、どうにかなりそうだ。
「恋人」という言葉を、恥ずかしげもなく言っているところをみると、おそらく悠也はどうせ親友と同じテンションでこの単語を使っているのだろう。
だけど、そうだとしても。恋人、としての誕生日プレゼントだなんて、反則だろ。人生の運の全てを今使い果たしている気しかしない。
悠也がくいっと俺の顔を覗き込んでくるので、右手で悠也の頬を投げやりに触って反対方向に向かせる。
「なにすんだよ~」
「お前がじろじろ見てくるからだろー」
俺は抗議するが、声がかぼそくて弱々しくなっているのが自分でもわかる。
「まあでも、ほんと、ありがとう。まじで、めちゃくちゃ嬉しい」
ぼそぼそと顔を腕で隠しながら言ったのに、悠也は嬉しそうに、「どーいたしまして!」と笑った。
あー、すきだ。
俺の腕を悠也がくいくいっと引っ張ってきたので、横目で悠也をみるとにまにましている。うわ、なんだそのむかつく顔。
「なーなーかえで、なんか今日行きたいとことかある?」
「ええ…」
急に言われて、俺の頭はさらにショートしそうになる。別にいいよ、と言おうとして俺は口を閉じた。悠也がきらきらした眼差しで俺を見るものだから、うっかり欲が出る。
「じゃあ…」
ウェストポーチにプレゼントを大切にしまいながら、俺は口を開いた。
悠也と、昔過ごしたもう一度行きたい場所を思い浮かべ、 ベンチからぱっと立ち上がった。
どんな好みの方にあげるんですか?て聞かれたから、普段のかえでの格好とか思い出してさ、と話す悠也の顔を、俺は目をパチパチと瞬きながら見つめてしまう。
「かえで、この間ペンポーチもうぼろぼろって言ってたじゃん?ちょうどいいかなって思って」
そんなことまで覚えていたのか、とじんわり手に握ったストライプ柄のおしゃれな生地のペンポーチを改めて見た。
「色違いのやつ、おそろいで買っちゃった」
唐突に笑顔と一緒にとんでもない単語が飛んできた。おそろい、おそろい、と脳内に悠也の声がエコーしそうになる。
「なんかこーゆーのが一つあるとさ、お互い離れてても嬉しいって」
思いがけないサプライズに感極まりそうになりながらも、俺は少し冷静さを取り戻す。
「…悠也、お前、またなんかみた?」
「え、なんでわかったの?」
気が利きすぎている。というか、色違いだとかプレゼントでおそろいだなんてこじゃれた発想が、こいつの中からいきなりパッと出てくるとは思えない。
「何見たんだよ」
俺が首に手をあてながらそういうと、悠也は「えー」と携帯を取り出し画面を見せてきた。
「遠距離恋愛のあなたも、おそろいアイテムでいつも恋人との思い出を感じようー」
液晶画面に書かれた微妙に冴えないその文面を見て、俺はなんだこのキャッチコピーは!と声を上げそうになる。
「恋人へのプレゼント。ワンポイントアドバイスってみつけたから、これ参考になるかなって思って読んでみたんだ」
「恋人」、という言葉にじゅわっと胸が焦げそうなほどの熱さを覚え、
「んごっ!?」
俺は無様な悲鳴をあげてしまい、口を手でおさえた。羞恥心で転げ回りたいような思いに駆られる。
「俺、気の利いた誕プレとかさ、そーゆーのよくわかんないから、付き合ってる プレゼント、で検索したんだ そしたら、これがでてきて」
そもそもわざわざ調べるの恥ずかしすぎるだろ~と思ったが、悠也はそういう変に真面目なやつで、俺はこいつのそういうバカなところもたまらなくすきなのだ。
「やっぱ付き合って初めての誕生日って特別じゃん?」
ぱっと俺をみた悠也が、珍しくちょっと照れくさそうに瞳を眇めた。にししっと笑う悠也の顔はガキの頃のまんまなのに、なんでこんなに心臓はぎゅいんぎゅいんと音をたてやがるんだ。
「かえで、顔赤い」
そう言ってふにゃっと笑うから、俺は「見るな!」と両手で自分の顔を覆った。
悠也は昔から何かと人を驚かせるのが好きだ。
幼少期から、後ろから何かをしかけてくる(膝カックン、目隠し、こしょこしょ、あげたらキリがない) 常習犯だし、下駄箱を開いたらおもちゃが飛び出してきたこともある。
誕生日は幼稚園の門の前で待ち伏せして、うるさいくらいどでかい音のクラッカーを鳴らして突進してきたり(あとでクラッカーは幼稚園の先生に没収され、近所迷惑だとこっぴどく叱られていた)ハロウィンには、白い布をかぶってお化けになりきり通学路を闊歩していた。
いたずらばかりのクソガキで、でも人を喜ばせるのが好きで、変わってない、けど。今日微笑みながら俺に、特別だから、とプレゼントを渡す悠也の顔は急に大人っぽいかっこよさをはらんでもいて。こんなの、どうにかなりそうだ。
「恋人」という言葉を、恥ずかしげもなく言っているところをみると、おそらく悠也はどうせ親友と同じテンションでこの単語を使っているのだろう。
だけど、そうだとしても。恋人、としての誕生日プレゼントだなんて、反則だろ。人生の運の全てを今使い果たしている気しかしない。
悠也がくいっと俺の顔を覗き込んでくるので、右手で悠也の頬を投げやりに触って反対方向に向かせる。
「なにすんだよ~」
「お前がじろじろ見てくるからだろー」
俺は抗議するが、声がかぼそくて弱々しくなっているのが自分でもわかる。
「まあでも、ほんと、ありがとう。まじで、めちゃくちゃ嬉しい」
ぼそぼそと顔を腕で隠しながら言ったのに、悠也は嬉しそうに、「どーいたしまして!」と笑った。
あー、すきだ。
俺の腕を悠也がくいくいっと引っ張ってきたので、横目で悠也をみるとにまにましている。うわ、なんだそのむかつく顔。
「なーなーかえで、なんか今日行きたいとことかある?」
「ええ…」
急に言われて、俺の頭はさらにショートしそうになる。別にいいよ、と言おうとして俺は口を閉じた。悠也がきらきらした眼差しで俺を見るものだから、うっかり欲が出る。
「じゃあ…」
ウェストポーチにプレゼントを大切にしまいながら、俺は口を開いた。
悠也と、昔過ごしたもう一度行きたい場所を思い浮かべ、 ベンチからぱっと立ち上がった。
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