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13)プレイは楽しく*

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「ちょっ、待てっ。お前、まさかっ……」
「え? 深夜に酔っ払った翔李さんに呼び出されて介抱させられた腹いせに、足枷と突っ張り棒で足が閉じられない翔李さんで遊ぼうなんて、思ってませんよ?」
「ちょっ、欲望が口からダダ漏れなんですけど!?」
「えー? 翔李さんだって、そのつもりで僕を呼び出したんでしょ? お酒臭いのを我慢して一晩抱き枕になってあげたんですから、次は僕の番です。僕達の関係は、ギブアンドテイク。そうですよね?」


 由岐はそう言って、今度はうっすらと腹黒い笑みを浮かべる。そう言われてしまえば、俺はぐぅの音も出ない。


「ついでに手枷もつけますね?」


 有無を言わさない由岐の笑顔に、俺は冷や汗がじわじわと背中を湿らせるのを感じながら、ゴクリとつばを飲み込んだのだった。


「ちょ、会うの三回目にしてこれはちょっとハードル高すぎないか?」
「そうですか? でも楽しいですよ、きっと」


 妙に慣れた手付きの由岐は、とても楽しそうだ。

 俺は寝ている間にまた服を剥かれたらしい。全裸で膝立ちにさせられた俺は、あれよあれよと言う間に両手にも枷をつけられ、それらを背後にある長い棒の両端に固定される。

 強制的に開かれた太もも、その間に息づくペニス。両足に固定された棒のせいで閉じようにも閉じられぬ両足に、股間を隠そうにも隠しようがない拘束された両手。
 まだきっちり服を着たままの由岐の前に、そんなあられもない姿を晒す自分がクラクラするほど恥ずかしい。
 俺の中で羞恥心と恐怖心、そしていつもの不思議な高揚がじわりと頭をもたげる。


「怖いですか? 翔李さんの性器も恥ずかしい穴も丸見えですよ」
「わっ、わざわざ言うなよっ」
「ふふっ。わざと言われるの、嫌いじゃないくせに」


 見透かすようにそう言って、由岐は愛らしく微笑んだ。


「翔李さんてば、すぐに顔に出ちゃうんですから。可愛いです」
「だから、俺は可愛くなんて……ぁあ、っふ……、くっ」


 俺のいつもの反論は、由岐の薄い唇によってさらりと塞がれる。されるがままに口腔内を弄ばれて、そのまま胸の尖りを啄まれる。
 ゾクン……と胸元に小さな快楽の小波が生まれて、俺は心臓が期待に高鳴り始めるのを感じた。

 慣れた手付きでペニスを掴まれ、それはあっさりと由岐の口の中へと含まれた。
 じゅぷじゅぷと水分をたっぷり絡めて抜き差しされると、唇を噛んでいても声が漏れそうだった。

 今日の由岐は意地悪だ。
 敢えて気持ちのいい雁首や鬼頭を避けて、舌で竿の周りを舐める。そのもどかしい舐め方は、口淫の快楽を知っているだけに切なかった。俺は眉間にしわを寄せて熱の籠もった吐息を吐く。

 チラチラと上目遣いで俺を見上げる由岐は、唇を離すと蠱惑的な眼差しを俺に向けて言った。


「あれ、翔李さん。翔李さんのここ、今日は他のオトコの味がしますね?」
「……っ!? は、はぁ……?」


 ちらりとテツの顔が浮かんで、俺はぎくりと体をこわばらせた。
 由岐は俺の心を読めるのだろうか?
 視線を泳がせてしまった俺をじっと見つめた由岐は、少しだけ驚いた様子だ。


「あれ? また変な酔い方をして僕のところに来るから、まさかと思ってカマをかけたのに。もしかして図星ですか?」
「あっ!? いや、これは会社の先輩と飲み会で……っ」


 気まずさに視線を逸らせた俺に向けて、由岐はクスクスと笑いながらそう言った。


「ひどいなぁ。翔李さんは僕以外の人にもこうして酔って甘えたりするんですか? あまり複数の人間と関係を持つのはリスクもあるし、感心しませんね。僕じゃ駄目なんですか? それともまさか、タチをやりたかったとか……?」
「か、関係ないだろ……」
「…………まぁそれはそうなんですけど。なんて言ったって、僕達はただのセフレ、翔李さんの心は初恋の彼のものなんですもんね?」
「くっ、イヤミかよ……」


 古傷を抉ったりカマをかけた挙げ句、嫌味まで言ってくる由岐の意図が、俺にはわからなかった。


「いいえ? あ、翔李さんがタチをヤリたいっていうんなら、僕にも関係はありますかねぇ」
「は、はぁ?!」


 まさか、今夜は俺がタチ……? そんなおめでたい俺の思考は、すぐに打ち砕かれた。


「それなら僕は、翔李さんにはこれからしっかりと女の子になって貰って、ココが男として使い物にならないようにして差し上げないといけませんから」
「いや、ちょっ……何言って……」


 由岐は天使のようないつもの笑顔を崩さなかったが、何だかいつもより笑顔が不穏な気がした。
 そんな事を考えていたら、由岐はベッドから立ち上がって部屋を出ていってしまった。

 数分後、由岐が鼻歌を歌いながら持ってきたのは、洗面器と謎の布切れ、そして何故か新品のパッケージに入った真っ白なガーゼとローションだった。


「さぁて、と。今日は楽しい遊びをしますよ、翔李さん。気に入って頂けるといいのですが」


 由岐はそう言いながら、謎の布切れをシーツの上に広げた。


「これ、何だ……?」
「子供向けの、おねしょ用防水シーツです」
「えっ」


 おねしょと聞いて、俺はいつかのバスルームで強制させられた失禁を思い出した。いくら防水シーツを敷いたからと言って、大の大人のおもらしをこんなもので防げるとは思えない。


「やっ、それは駄目だって! どうしてもって言うなら、トイレか風呂場で……」
「あはは。翔李さんてば順応力高すぎません? 僕がどうしても翔李さんのおもらしが見たいって言ったら、拒否しないってことですよね?」
「そ、それは……!」
「ふふ、翔李さんはいけない人ですね。大丈夫、今日はおもらしプレイはしませんよ」


 几帳面に防水シーツを敷き詰めた由岐はそう笑って、先程の口淫ですっかり勃起している俺のペニスの先をツンツンとつついた。

 由岐はむき出しの俺の乳首をペロリと舐めてから、洗面器の中におもむろにローションをほぼ一瓶丸々ぶちまけた。それをミネラルウォーターのペットボトルで軽く薄め、続いて真新しいガーゼをその中に浸す。


「な、何をやってるんだ……?」
「ふふっ、なんだと思います?」
「や、火傷の手当とか……?」
「ぶ……っ! 因みに誰が火傷を?」
「いや、誰もしてないけど……」


 俺の答えが余程面白かったのだろう。由岐は小さく吹き出して、肩を震わせながら笑った。
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