17 / 34
No.16 アルス様
しおりを挟む
ドナの町が見渡せる町外れの小高い丘。
そこに、2人の黒いローブを着た人物が立っていた。
「………本当に、あの町にあの方が?」
艶のある女性の声が、疑わしげにもう1人の人物に尋ねる。その問いに、もう1人の人物は頷く。
「あぁ、間違い無い。2ヶ月ほど前から、あの町にアルスと言う顔の整った人物が住み着いたらしい」
低い男性の声がそう言うと、ハッとした女は直ぐにでも走り出そうとする。そんな女の肩を、男がグッと掴んで止める。
「何するのよ、ダグラス!」
「落ち着け、ティナ」
「これが落ち着いていられる訳ないでしょっ!あの町に、アルス様が居るのよ!?5ヶ月もの間、ずっと探していたアルス様が見つかったのに、ダグラスは何で落ち着けるのよ!」
ティナと呼ばれた女は、自身の肩を掴むダグラスの手を振り払い、フードの奥からキッと睨む。そんな視線を受けても、ダグラスは動じずにティナを落ち着かせる。
「いいから落ち着け。俺だって、直ぐにでもアルス様の元へ行きたいさ」
「だったらっ!」
「だがな。俺達が今すぐアルス様の元へ行ったとして、アルス様が素直について来ると思うか?」
「そ、それは…」
ティナは、その言葉を聞いて漸く落ち着きを取り戻す。自分達は愚か、組織の誰にも何も言わずに消えたアルス。そんな彼が、素直に自分達と組織に戻るとは限らない。いや、彼の性格では絶対に戻らないだろう。
「………でも、私達にはアルス様が必要なのよ」
「分かってる。だから、こうしてアルス様を探しに来たんだ。まずは、どうしてアルス様は何も言わずに消えてしまったのか知る必要がある。原因が分からなければ、あの方を組織に連れ戻す事は出来ないだろうからな」
その言葉に、ティナは頷く。
どんな手段を使っても、アルスに戻って来て貰わなくてはならないのだから。
「これからどうするの?」
「まずは、アルス様の周辺を探る。だが、近付き過ぎるとアルス様にバレてしまう。そうなったら、また姿を眩ませてしまうだろうからな。慎重に行動する」
「分かったわ」
頷いたティナは、ドナの町を見下ろす。
「………何故アルス様は、この町に滞在する事を選んだのかしら」
今までは、町に数週間留まり次の町に移動するだけだった。なのに、このドナの町には2ヶ月もの間滞在するだけでは無く、住み着いているのだ。
「分からん。…だが、もしかしたらこの町にアルス様が組織から突然消えた原因があるのかも知れない。何にしろ、俺達の目的はただ一つ。アルス様を組織に連れ戻す事だ」
「そうね。なるべく早く、アルス様を連れ戻さないと」
改めて己の使命を胸に刻み、2人はドナの町に向かったのだった。
******
「くしゅっ!」
「リオちゃん、風邪?」
「いえ、何でも無いです」
小さなクシャミをしただけで、アルスは莉緒の側にやって来て心配そうな顔をする。
「おいおい、アルス。クシャミの一つくらいで大袈裟だぞ。前に、俺がクシャミしたって無視したくせに」
そんなアルスに、ダンテは呆れた様に話す。
「ダンテさんとリオちゃんでは、全然違うからね。ダンテさんは、裸で一日中過ごしてても風邪一つ引かなそうだよね」
「いや、そんな事したら唯の変態だろ!」
忍び寄る怪しい2人に気付く事なく、今日も平和な1日を過ごす莉緒であった。
そこに、2人の黒いローブを着た人物が立っていた。
「………本当に、あの町にあの方が?」
艶のある女性の声が、疑わしげにもう1人の人物に尋ねる。その問いに、もう1人の人物は頷く。
「あぁ、間違い無い。2ヶ月ほど前から、あの町にアルスと言う顔の整った人物が住み着いたらしい」
低い男性の声がそう言うと、ハッとした女は直ぐにでも走り出そうとする。そんな女の肩を、男がグッと掴んで止める。
「何するのよ、ダグラス!」
「落ち着け、ティナ」
「これが落ち着いていられる訳ないでしょっ!あの町に、アルス様が居るのよ!?5ヶ月もの間、ずっと探していたアルス様が見つかったのに、ダグラスは何で落ち着けるのよ!」
ティナと呼ばれた女は、自身の肩を掴むダグラスの手を振り払い、フードの奥からキッと睨む。そんな視線を受けても、ダグラスは動じずにティナを落ち着かせる。
「いいから落ち着け。俺だって、直ぐにでもアルス様の元へ行きたいさ」
「だったらっ!」
「だがな。俺達が今すぐアルス様の元へ行ったとして、アルス様が素直について来ると思うか?」
「そ、それは…」
ティナは、その言葉を聞いて漸く落ち着きを取り戻す。自分達は愚か、組織の誰にも何も言わずに消えたアルス。そんな彼が、素直に自分達と組織に戻るとは限らない。いや、彼の性格では絶対に戻らないだろう。
「………でも、私達にはアルス様が必要なのよ」
「分かってる。だから、こうしてアルス様を探しに来たんだ。まずは、どうしてアルス様は何も言わずに消えてしまったのか知る必要がある。原因が分からなければ、あの方を組織に連れ戻す事は出来ないだろうからな」
その言葉に、ティナは頷く。
どんな手段を使っても、アルスに戻って来て貰わなくてはならないのだから。
「これからどうするの?」
「まずは、アルス様の周辺を探る。だが、近付き過ぎるとアルス様にバレてしまう。そうなったら、また姿を眩ませてしまうだろうからな。慎重に行動する」
「分かったわ」
頷いたティナは、ドナの町を見下ろす。
「………何故アルス様は、この町に滞在する事を選んだのかしら」
今までは、町に数週間留まり次の町に移動するだけだった。なのに、このドナの町には2ヶ月もの間滞在するだけでは無く、住み着いているのだ。
「分からん。…だが、もしかしたらこの町にアルス様が組織から突然消えた原因があるのかも知れない。何にしろ、俺達の目的はただ一つ。アルス様を組織に連れ戻す事だ」
「そうね。なるべく早く、アルス様を連れ戻さないと」
改めて己の使命を胸に刻み、2人はドナの町に向かったのだった。
******
「くしゅっ!」
「リオちゃん、風邪?」
「いえ、何でも無いです」
小さなクシャミをしただけで、アルスは莉緒の側にやって来て心配そうな顔をする。
「おいおい、アルス。クシャミの一つくらいで大袈裟だぞ。前に、俺がクシャミしたって無視したくせに」
そんなアルスに、ダンテは呆れた様に話す。
「ダンテさんとリオちゃんでは、全然違うからね。ダンテさんは、裸で一日中過ごしてても風邪一つ引かなそうだよね」
「いや、そんな事したら唯の変態だろ!」
忍び寄る怪しい2人に気付く事なく、今日も平和な1日を過ごす莉緒であった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。
aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。
ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・
4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。
それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、
生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり
どんどんヤンデレ男になっていき・・・・
ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡
何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!
カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる