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第1章
逃げる少年
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まだ朝日も登りきらない、昏い時間。
街の人々は未だ深い眠りの中だ。人々と同じく眠りにつく静かな街の更に薄暗い裏路地を、必死に走る黒いローブを着た人影が見えた。
(ハァハァハァ……ッ!!っ、もっと速く!もっと速く逃げないと…!)
その黒いローブが風で煽られ、顔が顕になる。その人物は、綺麗な金髪に翠の瞳をした10歳ほどの可愛らしい男の子だった。だが、今その顔は恐怖に染まっていた。その子供は、涙を溢しながら唯ひたすら『何か』から逃げていた。
「あっ……!」
その時、驚いた声と共に少年は勢いよく道に倒れてしまった。慣れない足場の悪い道をずっと走っていた為に疲労が溜まり、足が縺れてしまったのだ。
慌てて立ち上がろうとするが、直ぐに右足を押さえて蹲る。
(っ…!足が……!)
転んだ時に、足首を痛めてしまったのだろう。
凄まじい痛みが遅い、立ち上がらない。
(くそっ……!こんな所で!!)
少年は焦りながらも何とか逃げようと、痛みに耐えて立ち上がる。
(……兄上)
少年の中に、尊敬する兄の顔が浮かぶ。
あの、人が騙し騙し合う誰も信じられない様な魔窟の様な場所で戦う、少年がこの世で1番尊敬する兄。
此処で自分が殺されてしまえば、尊敬する兄の足を引っ張り迷惑になる。
(それだけは駄目だっ…!)
何時も自分を助けてくれる兄の迷惑になる事など、絶対に出来ない。
「うっ……!」
痛みに耐えながらも、少しずつ壁を伝いながら先へと進む。走れないなら、何処か隠れる場所を見付けなければ。
ーーその時、遠くから複数の気配が近付いて来るのが分かった。
「そんなっ…!」
もう少し時間を稼げると思っていたのに、追手が来るのが想像以上に早い。このままでは、少年は直ぐに殺されてしまうだろう。
(くそっ……!!)
気配が、直ぐそこまで迫って来た。
この足では、もう逃げる事も叶わない。
「……兄上、すみません」
悔しさに、キツく目を閉じた時だった。
「………っ!?」
その時、グイッと横から強い力で引っ張られた。驚きの声を上げる間も無く、口を塞がれる。
「シッ!……静かに」
背後から、少し低い声が聞こえた。
その直後、追手達がこの場にやって来た。
「おい、何処だ?」
「先に逃げたのか?」
「直ぐに探せ」
追手達は、少年に気が付く事もなく闇に溶ける様に姿を消す。
「………行ったな」
暫くしてから、背後の人物が小さく呟く。
そうして、そっと拘束していた身体を解放された。
「ごめんな、苦しかっただろ?」
そう言って少年に謝ったのは、自分より歳上の青年だった。少年の兄ほどの歳だが、兄よりも華奢な身体付きの青年だった。闇に溶ける様な黒い髪に、闇の中でも分かる煌めく黒い瞳。
「ん?お~い、大丈夫か?」
「……え、あ、あぁ。助かった、ありがとう」
少年は、青年に礼を言う。
そうしながらも、慎重に青年の動向を探る。
確かに目の前の青年に助けられたが、青年が味方だとは限らない。少年に恩を売り、兄に近付こうとする者かも知れないのだ。
(………まだ、警戒を解けない)
そう思いながら、青年を観察する。
ーーだが、何故だろう?
青年が何かを話しているが、声が聞こえない。その代わりに、耳元でドクドクと心臓の鼓動が聞こえて来る。それらを認識すると、途端に視界がぼやける。
(………あ、れ?)
そうして、自身の身体が傾いたのが分かった。
「………!?おい!」
いきなり倒れた少年を、慌てた青年が地面に倒れる前に支える。
「おい!しっかりしろ!」
(あぁ、もう駄目だ。意識が……)
そんな青年の慌てた声を最後に、少年の意識は途切れたのだった。
街の人々は未だ深い眠りの中だ。人々と同じく眠りにつく静かな街の更に薄暗い裏路地を、必死に走る黒いローブを着た人影が見えた。
(ハァハァハァ……ッ!!っ、もっと速く!もっと速く逃げないと…!)
その黒いローブが風で煽られ、顔が顕になる。その人物は、綺麗な金髪に翠の瞳をした10歳ほどの可愛らしい男の子だった。だが、今その顔は恐怖に染まっていた。その子供は、涙を溢しながら唯ひたすら『何か』から逃げていた。
「あっ……!」
その時、驚いた声と共に少年は勢いよく道に倒れてしまった。慣れない足場の悪い道をずっと走っていた為に疲労が溜まり、足が縺れてしまったのだ。
慌てて立ち上がろうとするが、直ぐに右足を押さえて蹲る。
(っ…!足が……!)
転んだ時に、足首を痛めてしまったのだろう。
凄まじい痛みが遅い、立ち上がらない。
(くそっ……!こんな所で!!)
少年は焦りながらも何とか逃げようと、痛みに耐えて立ち上がる。
(……兄上)
少年の中に、尊敬する兄の顔が浮かぶ。
あの、人が騙し騙し合う誰も信じられない様な魔窟の様な場所で戦う、少年がこの世で1番尊敬する兄。
此処で自分が殺されてしまえば、尊敬する兄の足を引っ張り迷惑になる。
(それだけは駄目だっ…!)
何時も自分を助けてくれる兄の迷惑になる事など、絶対に出来ない。
「うっ……!」
痛みに耐えながらも、少しずつ壁を伝いながら先へと進む。走れないなら、何処か隠れる場所を見付けなければ。
ーーその時、遠くから複数の気配が近付いて来るのが分かった。
「そんなっ…!」
もう少し時間を稼げると思っていたのに、追手が来るのが想像以上に早い。このままでは、少年は直ぐに殺されてしまうだろう。
(くそっ……!!)
気配が、直ぐそこまで迫って来た。
この足では、もう逃げる事も叶わない。
「……兄上、すみません」
悔しさに、キツく目を閉じた時だった。
「………っ!?」
その時、グイッと横から強い力で引っ張られた。驚きの声を上げる間も無く、口を塞がれる。
「シッ!……静かに」
背後から、少し低い声が聞こえた。
その直後、追手達がこの場にやって来た。
「おい、何処だ?」
「先に逃げたのか?」
「直ぐに探せ」
追手達は、少年に気が付く事もなく闇に溶ける様に姿を消す。
「………行ったな」
暫くしてから、背後の人物が小さく呟く。
そうして、そっと拘束していた身体を解放された。
「ごめんな、苦しかっただろ?」
そう言って少年に謝ったのは、自分より歳上の青年だった。少年の兄ほどの歳だが、兄よりも華奢な身体付きの青年だった。闇に溶ける様な黒い髪に、闇の中でも分かる煌めく黒い瞳。
「ん?お~い、大丈夫か?」
「……え、あ、あぁ。助かった、ありがとう」
少年は、青年に礼を言う。
そうしながらも、慎重に青年の動向を探る。
確かに目の前の青年に助けられたが、青年が味方だとは限らない。少年に恩を売り、兄に近付こうとする者かも知れないのだ。
(………まだ、警戒を解けない)
そう思いながら、青年を観察する。
ーーだが、何故だろう?
青年が何かを話しているが、声が聞こえない。その代わりに、耳元でドクドクと心臓の鼓動が聞こえて来る。それらを認識すると、途端に視界がぼやける。
(………あ、れ?)
そうして、自身の身体が傾いたのが分かった。
「………!?おい!」
いきなり倒れた少年を、慌てた青年が地面に倒れる前に支える。
「おい!しっかりしろ!」
(あぁ、もう駄目だ。意識が……)
そんな青年の慌てた声を最後に、少年の意識は途切れたのだった。
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