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第1章
別に怒っていないよ
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気を失った少年を、その場に放置するほどマリオンは鬼では無い。仕方ないが、少年を孤児院に連れて行く事にした。
「よ…っと」
意識の無い少年を、マリオンは慎重に背負う。
(毎日の様にテイル達を背負ってた事が役に立ったな)
そのまま、先程の追手が居ないことを確認し孤児院に戻る。
(まだ誰も起きて無いな…)
孤児院は静まり返り、物音一つしない。
自分の部屋に連れて行く事は出来ない為、マリオンは空いている部屋に少年を運ぶ。部屋に入り簡易ベッドに少年を寝かせる。
「ふぅ……」
「お疲れ様です」
「⁉︎」
一息ついた途端、背後から声が聞こえて来た。余りにも突然の事に、マリオンは驚きに息を飲んだ。慌てて振り返ると、其処には微笑むガスが居た。
「院長先生…」
「こんな朝早くから何処に出掛けたかと思えば…。これはまた、大層なお友達を連れて来たね」
ガスは、そう言いながらマリオン達に近付く。そうして、眠っている少年の容態を確認する。
「うん、気を失っているだけだね。それと、右足首を捻挫…か」
「あ、あの…」
淡々と少年の容態を確認するガスに、マリオンは躊躇いがちに声をかける。
「うん?何だい?」
「………怒ってませんか?」
「怒る?何故だい?」
「だって…」
自分の事さえ満足に出来ないのに、この様な明らかに訳有りだと分かる少年を連れ帰って来たのだ。間違い無く、孤児院の皆に迷惑をかける事になる。それが分かっていたのに、マリオンは少年を連れて来た。
「………マリオン、私は怒っていないよ」
「えっ…」
「だって、君は困っているこの子を助けたんだよ?人助けをした君を怒る訳ないよ。そもそも、私が孤児院を経営している事も人助けの一環だしね」
そう言って、ガスはマリオンの頭を撫でる。
「………君は今、孤児院に迷惑をかける事になるから悩んでるんだろう?」
「…はい」
「それは、心配しなくていいよ。そもそも、この少年を君が助けていなかった方が大変だったよ」
その言葉に、マリオンは質問をする。
「この子を知ってるんですか?」
「まぁね。実際は、遠くからチラッと見た程度だけれど。兎に角、マリオンがこの子をここに連れて来てくれてよかったよ。私は、これからこの子の家族に連絡を入れてくるから、マリオンにはこの子の怪我の手当てをお願いしてもいいかな?」
「わかりました」
ガスに言われた通りに、ガスが少年の身内に連絡を入れている間にマリオンは少年の足首に塗り薬を塗って、その上から包帯を巻いて行く。治療を終えると、そっと少年の顔を覗き見る。
(いかにも「貴族です」って顔だよなぁ…)
さらりとした綺麗な金髪に、日に当たった事のなさそうな白い肌。今は閉じられていて見えない瞳の色が、透き通る様な翠だとマリオンは知っている。
「……でも、手にはタコがあるんだよな」
まだゴツゴツしていない、子供特有の柔らかい手。だが、その手には確かに剣だこがある。
「院長先生は、いったい何処でこの子を見たんだろう?」
この街を含む広大な領地を治めるバルバトール侯爵家の人々は、燃える様な赤い髪の一族だ。この少年の様な金髪の貴族は見たことが無い。
「うっ。………此処は?」
そんな事を考えていると、少年が目を覚ました。マリオンは、驚かせない様になるべく穏やかな声で話しかける。
「起きた?体調はどう?足首以外に、何処か痛いところは無い?」
「ない」
「よかった。………オレの事、覚えてる?」
「………僕を助けてくれた」
「うん、そう。オレはマリオン。此処は、オレの住んでるアルミス孤児院。君が気を失ったから、此処まで運んできたんだ」
マリオンの説明を、少年は驚く事もなく静かに聞いていた。
(ーーいや)
マリオンは、徐に少年の額に手を当てる。少年の額は、驚く程に熱かった。
(やっぱり、熱がある)
静かに聞いていたのではなく、ただ熱で朦朧としていただけだったらしい。
「初対面のオレを信用出来ないのは分かってる。でも、今はゆっくり休んでくれ。熱があるうちは、冷静な判断が出来ないだろうし」
大丈夫だと言う様に、少年の頭を何度も撫でる。
すると、安心したのか少年は直ぐに深い眠りについた。それを見届け、マリオンはガスに話を聞くべく部屋を後にしたのだった。
「よ…っと」
意識の無い少年を、マリオンは慎重に背負う。
(毎日の様にテイル達を背負ってた事が役に立ったな)
そのまま、先程の追手が居ないことを確認し孤児院に戻る。
(まだ誰も起きて無いな…)
孤児院は静まり返り、物音一つしない。
自分の部屋に連れて行く事は出来ない為、マリオンは空いている部屋に少年を運ぶ。部屋に入り簡易ベッドに少年を寝かせる。
「ふぅ……」
「お疲れ様です」
「⁉︎」
一息ついた途端、背後から声が聞こえて来た。余りにも突然の事に、マリオンは驚きに息を飲んだ。慌てて振り返ると、其処には微笑むガスが居た。
「院長先生…」
「こんな朝早くから何処に出掛けたかと思えば…。これはまた、大層なお友達を連れて来たね」
ガスは、そう言いながらマリオン達に近付く。そうして、眠っている少年の容態を確認する。
「うん、気を失っているだけだね。それと、右足首を捻挫…か」
「あ、あの…」
淡々と少年の容態を確認するガスに、マリオンは躊躇いがちに声をかける。
「うん?何だい?」
「………怒ってませんか?」
「怒る?何故だい?」
「だって…」
自分の事さえ満足に出来ないのに、この様な明らかに訳有りだと分かる少年を連れ帰って来たのだ。間違い無く、孤児院の皆に迷惑をかける事になる。それが分かっていたのに、マリオンは少年を連れて来た。
「………マリオン、私は怒っていないよ」
「えっ…」
「だって、君は困っているこの子を助けたんだよ?人助けをした君を怒る訳ないよ。そもそも、私が孤児院を経営している事も人助けの一環だしね」
そう言って、ガスはマリオンの頭を撫でる。
「………君は今、孤児院に迷惑をかける事になるから悩んでるんだろう?」
「…はい」
「それは、心配しなくていいよ。そもそも、この少年を君が助けていなかった方が大変だったよ」
その言葉に、マリオンは質問をする。
「この子を知ってるんですか?」
「まぁね。実際は、遠くからチラッと見た程度だけれど。兎に角、マリオンがこの子をここに連れて来てくれてよかったよ。私は、これからこの子の家族に連絡を入れてくるから、マリオンにはこの子の怪我の手当てをお願いしてもいいかな?」
「わかりました」
ガスに言われた通りに、ガスが少年の身内に連絡を入れている間にマリオンは少年の足首に塗り薬を塗って、その上から包帯を巻いて行く。治療を終えると、そっと少年の顔を覗き見る。
(いかにも「貴族です」って顔だよなぁ…)
さらりとした綺麗な金髪に、日に当たった事のなさそうな白い肌。今は閉じられていて見えない瞳の色が、透き通る様な翠だとマリオンは知っている。
「……でも、手にはタコがあるんだよな」
まだゴツゴツしていない、子供特有の柔らかい手。だが、その手には確かに剣だこがある。
「院長先生は、いったい何処でこの子を見たんだろう?」
この街を含む広大な領地を治めるバルバトール侯爵家の人々は、燃える様な赤い髪の一族だ。この少年の様な金髪の貴族は見たことが無い。
「うっ。………此処は?」
そんな事を考えていると、少年が目を覚ました。マリオンは、驚かせない様になるべく穏やかな声で話しかける。
「起きた?体調はどう?足首以外に、何処か痛いところは無い?」
「ない」
「よかった。………オレの事、覚えてる?」
「………僕を助けてくれた」
「うん、そう。オレはマリオン。此処は、オレの住んでるアルミス孤児院。君が気を失ったから、此処まで運んできたんだ」
マリオンの説明を、少年は驚く事もなく静かに聞いていた。
(ーーいや)
マリオンは、徐に少年の額に手を当てる。少年の額は、驚く程に熱かった。
(やっぱり、熱がある)
静かに聞いていたのではなく、ただ熱で朦朧としていただけだったらしい。
「初対面のオレを信用出来ないのは分かってる。でも、今はゆっくり休んでくれ。熱があるうちは、冷静な判断が出来ないだろうし」
大丈夫だと言う様に、少年の頭を何度も撫でる。
すると、安心したのか少年は直ぐに深い眠りについた。それを見届け、マリオンはガスに話を聞くべく部屋を後にしたのだった。
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