上 下
2 / 47
過去の記憶

私の番

しおりを挟む
私の名はレム・ファート。
サウスペドラ王国にあるクルシュドという街で生まれた犬獣人だ。茶色い耳に茶色い肩まである髪。瞳は母親譲りの黒。茶色い尻尾は父親と同じ位フサフサしてて私の自慢だ。

「行って来ま~す!」
「遅くならないうちに帰って来るのよ」
「気を付けてな」

両親の声を背に向かう場所はただ一つ。

「リュシュオンおはようっ!好きです付き合ってください!」

家の前で待つ事数分。
出て来た人物に挨拶と共に日常化した告白をする。

「何度も言ってるだろ。俺はお前とは付き合わない」

そう冷たい声で言うこの男性はリュシュオン・メイル。炎の様な赤い髪にエメラルドの瞳をしたこのイケメンは私の幼馴染で私の番だ。

「そっか…。それより今から騎士団の仕事でしょ?私も仕事だから途中まで一緒に行っていい?」
「…好きにしろ」

そう言い歩き出した彼に置いて行かれないよう慌てて付いていく。

今年22歳の彼はその若さで騎士団でもトップクラスの実力を持つ。毎日決まった時間に家を出る彼と少しでも一緒にいるために自身の仕事場までのわずかな距離を毎日歩く。

「それじゃぁ今日も頑張ってね!」
「……」

私の声に振り向きもせず行ってしまった彼を暫く見つめようやく仕事場に向かう。

カランカラン

「おはようございます!」
「レムおはよう。早速で悪いんだけどパンの焼き具合を見て頂戴」
「わかりました!」

此処は街にある食堂『黒兎の帽子亭』。今年で18歳となった私は此処で2年前から働いている。気のいい女将さんは第二のお母さんの様でとても好きだ。女将さんの旦那さんは無口だけど女将さんが大好きだ。

「いらっしゃいませ!」
「レムちゃん、いつもの頼むよ」
「わかりました」
「レムちゃん俺も」
「セバさんはダメです!奥さんからセバさんにはヘルシーな野菜料理を出す様に言われてます」
「そんなっ!一口だけでいいから肉をくれ!」
「ダメです。奥さんに言いつけますよ」
「それだけは勘弁してくれ!」

周りの笑い声が響く中、お客の皆んなと一緒に笑う。私はこの職場が大好きだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】妻に逃げられた辺境伯に嫁ぐことになりました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:454pt お気に入り:3,070

【R18】私の事が嫌いなのに執着する婚約者

恋愛 / 完結 24h.ポイント:163pt お気に入り:550

【完結】口は災いの元って本当だわ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:795pt お気に入り:1,661

R18、アブナイ異世界ライフ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:5,833

【R18】婚約者の優しい騎士様が豹変しました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:2,589

竜の国の人間様

BL / 連載中 24h.ポイント:1,704pt お気に入り:2,270

コレは流行りの転生ですか?〜どうやら輪廻転生の方でした〜

BL / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:3,346

処理中です...