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18 夫婦の心配
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恐縮するアルフレッド君と共に久々に家族の夕食を過ごした。
家を出てから一年に何度かしか帰って来ない娘が男性を伴って帰ってきたと聞いたときには、とうとうこの日が来たかと覚悟をした。
しかし会ってみたらそういう仲ではないようだった。
とても良い青年のようなのに残念だ、というのは違うと知ったから言える台詞だな。
王都に来るまでの経緯には驚いたが。
アルフレッド君の家族に商品を盗まれてしまったとは。
彼はずいぶん気に病んでいるようだ。
責任感が強いのも善し悪しだな。
責任から逃げ回る人間よりも余程信用は出来るが。
「素敵な子でしたねえ」
隣に座ったリディアがのんびりと微笑む。
「そうだなあ」
「あんな子がソフィアのお婿さんに来てくれたら安心なのに」
「こらこら、彼には守っている工房があるんだから」
ソフィアの婿にと言ったら工房にいられなくなってしまう。
新しい工房を開くのでも支店を作るのでも望めば方法はあるが。
「それならソフィアがお嫁に行ってしまうのかしら。
淋しいけれど、今よりも手紙のやり取りはは頻繁にできそうね」
「そもそも二人は恋人でもないだろう」
夢見がちな妻を窘める。そんなところはシンシアもよく似ていた。
「あら、あの子が信頼している男の子というだけで十分よ」
やんわりと否定した私にリディアが反論する。
「あれからすっかり疑い深くなっちゃって。
このまま結婚しないことも考えているんじゃないかと心配してたのよ?
それが友人だとしてもあんな素敵な子を家に連れてくるんだもの、期待しない方がおかしいわ!」
声が大きくなっていくリディアの肩を抱き、わかっていると囁く。
「もちろん私もその事は心配していたよ。
けれど今はソフィアもアルフレッド君もその気持ちがないようだ。
二人とも弟さんのことで頭が一杯だろうし、そんな時に外野が余計な気を回しても上手くいかないものだ。 そうだろう?」
肩を撫でながら諭すとリディアも落ち着いたようだ。
私も彼が好青年なのは認めるが、今はそれどころではないだろう。
弟さんのことを抜いても職人としてこれからが正念場だ。
名前を知られる職人としてやっていけるか、それとも量産品を作る工房を作っていくのか。
職人は一人でやっていける腕前を持ってからが勝負だ。
ソフィアは彼の作品に惚れ込んでいるようなので、名前を聞けば作品がわかるような一流になることを望んでいるかもしれない。
アルフレッド君次第だが、是非一度作品を見せてほしい。
ソフィアがそこまで認めているならかなりのものだろう。
私にそれを言うことの意味もあの子ならわかっている。
家を出て行商を始めると言ったときは心配したが、予想以上に立派にやっているようで安心した。
仕入れた品物を盗まれたのは残念なことだが、商人をやっていれば商品や売上を盗まれるなど一度や二度は体験する。
品が品でなければここまで心配もしないのだがな。
「それにしても弟さんのことは心配ね」
「ああ、盗んだ物を売りつけることの意味を知らないんだろう」
ソフィアはもちろんのことアルフレッド君のためにも一刻も早く見つけたい。
グレンも話を聞いていたからすでに情報を集めるように指示をしているはずだ。
「明日から忙しくなるぞ」
「ええ、ソフィアとアルフレッド君のためですもの。
私もお友達にそれとなく聞いてみるわ」
にっこり笑うリディアの肩を頼もしいよと叩く。
リディアが直々に聞けば貴族や富裕層の奥様方の話は詳しく手に入るだろう。
「落ち着いたら二人がもっと近づけるようにどこかに誘いましょうか。
ピクニックとか、観劇もいいわねえ」
諦めてなかったリディアに、程々にと釘を刺す。
張り切る妻も可愛いが、あまりプレッシャーをかけるとかえってぎくしゃくするかもしれない。
あくまでこういうことは本人たちに気がつかれないようにそっとするものだ。
可愛い娘とその友人の憂いを早く取り除けるよう、祈りながら床に就いた。
家を出てから一年に何度かしか帰って来ない娘が男性を伴って帰ってきたと聞いたときには、とうとうこの日が来たかと覚悟をした。
しかし会ってみたらそういう仲ではないようだった。
とても良い青年のようなのに残念だ、というのは違うと知ったから言える台詞だな。
王都に来るまでの経緯には驚いたが。
アルフレッド君の家族に商品を盗まれてしまったとは。
彼はずいぶん気に病んでいるようだ。
責任感が強いのも善し悪しだな。
責任から逃げ回る人間よりも余程信用は出来るが。
「素敵な子でしたねえ」
隣に座ったリディアがのんびりと微笑む。
「そうだなあ」
「あんな子がソフィアのお婿さんに来てくれたら安心なのに」
「こらこら、彼には守っている工房があるんだから」
ソフィアの婿にと言ったら工房にいられなくなってしまう。
新しい工房を開くのでも支店を作るのでも望めば方法はあるが。
「それならソフィアがお嫁に行ってしまうのかしら。
淋しいけれど、今よりも手紙のやり取りはは頻繁にできそうね」
「そもそも二人は恋人でもないだろう」
夢見がちな妻を窘める。そんなところはシンシアもよく似ていた。
「あら、あの子が信頼している男の子というだけで十分よ」
やんわりと否定した私にリディアが反論する。
「あれからすっかり疑い深くなっちゃって。
このまま結婚しないことも考えているんじゃないかと心配してたのよ?
それが友人だとしてもあんな素敵な子を家に連れてくるんだもの、期待しない方がおかしいわ!」
声が大きくなっていくリディアの肩を抱き、わかっていると囁く。
「もちろん私もその事は心配していたよ。
けれど今はソフィアもアルフレッド君もその気持ちがないようだ。
二人とも弟さんのことで頭が一杯だろうし、そんな時に外野が余計な気を回しても上手くいかないものだ。 そうだろう?」
肩を撫でながら諭すとリディアも落ち着いたようだ。
私も彼が好青年なのは認めるが、今はそれどころではないだろう。
弟さんのことを抜いても職人としてこれからが正念場だ。
名前を知られる職人としてやっていけるか、それとも量産品を作る工房を作っていくのか。
職人は一人でやっていける腕前を持ってからが勝負だ。
ソフィアは彼の作品に惚れ込んでいるようなので、名前を聞けば作品がわかるような一流になることを望んでいるかもしれない。
アルフレッド君次第だが、是非一度作品を見せてほしい。
ソフィアがそこまで認めているならかなりのものだろう。
私にそれを言うことの意味もあの子ならわかっている。
家を出て行商を始めると言ったときは心配したが、予想以上に立派にやっているようで安心した。
仕入れた品物を盗まれたのは残念なことだが、商人をやっていれば商品や売上を盗まれるなど一度や二度は体験する。
品が品でなければここまで心配もしないのだがな。
「それにしても弟さんのことは心配ね」
「ああ、盗んだ物を売りつけることの意味を知らないんだろう」
ソフィアはもちろんのことアルフレッド君のためにも一刻も早く見つけたい。
グレンも話を聞いていたからすでに情報を集めるように指示をしているはずだ。
「明日から忙しくなるぞ」
「ええ、ソフィアとアルフレッド君のためですもの。
私もお友達にそれとなく聞いてみるわ」
にっこり笑うリディアの肩を頼もしいよと叩く。
リディアが直々に聞けば貴族や富裕層の奥様方の話は詳しく手に入るだろう。
「落ち着いたら二人がもっと近づけるようにどこかに誘いましょうか。
ピクニックとか、観劇もいいわねえ」
諦めてなかったリディアに、程々にと釘を刺す。
張り切る妻も可愛いが、あまりプレッシャーをかけるとかえってぎくしゃくするかもしれない。
あくまでこういうことは本人たちに気がつかれないようにそっとするものだ。
可愛い娘とその友人の憂いを早く取り除けるよう、祈りながら床に就いた。
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