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子供たちには聞かせられない話です。大人になるとは決断を積み重ねていくことかもしれません。
しおりを挟む元夫は処分が決まるまで謹慎になったそうです。
少し違いますね、もう余計なことができないよう軟禁されているらしいです。
屋敷内での活動にも騎士が付き監視されているそうで、息が詰まる日々を過ごしているとか。
国から遣わされた人が教えてくれましたが、まだ当主ではあるそうです。まあ形だけですが。
後を決めるのに難航しているらしいですね。
元夫には兄弟がいないので近しい親戚から相応しい人を探しているけれど、調べると横領が見つかったり借金塗れだったりと問題が見つかって中々後継者を決められないそうです。このままなら国からの監査役を受け入れての存続かそれも無理ならお家取り潰しになるとのこと。
こちらへの襲撃事件の処分もこれからです。
賠償を求めないので、代わりに処分についてはある程度こちらの要望が通るでしょう。
兄と話し合ねばなりません。
使者を見送った後で兄の執務室で向かい合います。
「それで、レインはどういう決着を望んでるのかな」
いつものように笑みを浮かべた兄ですが、瞳の奥は冷たく光っていました。
私も同じような笑みを浮かべていることでしょう。
「二度とこの地に踏み入れないよう、子供たちとふいにでも会うことがないようどこかに蟄居していてほしいと思います」
「ふうん? 優しいね?」
揶揄するような兄の言葉をスルーして地名を挙げていきます。
「グラン、アベレーン、オルクス、その辺りですかね」
「なるほど、アレの母方の領地か。
離婚のときもそうだが、今回のことでかなり迷惑を掛けられたと思っているだろうし適任だな。
これ以上恥をかかされないよう面倒を見てもらえそうだ。こちらからも頼んでおくか」
「そうですね、直接ではなく国を通してお願いした方が効果的でしょう」
「さっさと終わらせるか。
アベレーンを第一候補として挙げておく」
さらりと精霊信仰の強い土地を第一候補にした兄に苦笑する。
精霊を怒らせかねない行為をした元夫を好意的に受け入れることはありえません。
アベレーンの領主も厳しい目で監視するでしょうし、元夫のしたことが領民にも知られていたら街を歩くこともできませんね。
そもそも出歩かせてもらえないと思いますけれど。
「そうしたら方針も決まったし、早いうちに王宮に行ってくるか。
留守の間はいつもの通りよろしく頼むな」
「お任せください」
執務はいつも手伝っているので王都へ行っている間くらいなら私で対応できるでしょう。
今は忙しい時期でもありませんし。
「せっかくだからリオンとルイスに役立ちそうな物を土産に探してくるよ。
それに、ミオンが鑑定のスキルを欲しいと言っていたんだろ?
良さそうな人間を紹介してもらえるよう何人かに話をしてこようと思う。
ライナスの教師にもう一人くらい欲しいしな」
兄の言葉に目を伏せて返事をする。
言葉にはしないけれどわかっているという意思表示です。
いずれはライナスに後継者になってほしい。
そう考えていることは知っていました。
『精霊のいとし子』に溺愛されるライナスが当主になることで領地の安寧が保たれる。
現当主として将来の繁栄のために道筋を作るのは当然のことです。
だから兄は結婚もせず子供も作らないのでしょう。
『精霊のいとし子』が大切に思う存在を多くこの地に置くことで領地が災害などにみまわれる可能性を減らす。
私もそれに意を唱えることはしません。
兄はそれが引き継いできたこの地のためにできることだと決めた、私もその覚悟を支えます。
そんなことを考えていると兄がふっと笑いました。
「譲ったとか我慢してるとかそういうわけじゃないから余計なことは考えず楽しく暮らせばいいんだ。
俺だって妹夫婦と甥っ子姪っ子に囲まれた賑やかな暮らしを楽しんでるぞ?」
言い様がおかしくて笑ってしまいました。
そうですね、家族に囲まれた暮らしであるのに変わりはありません。
賑やかで、笑顔と驚きに満ちた日々がある。幸せなことです。
でも、もし兄が誰かを望むことがあれば迎えることに遠慮なんかしないでほしい。
みんなも喜ぶに決まってますから。
もし私とイクスが出会ったような運命のいたずらがあったら逃さず捕まえてほしいと思います。
そんな私の言葉に兄は「あったらな」と笑うだけ。
言質は取りましたからね。
思わぬことは起こるもの、ですから。
もしそんな日が来たらちゃんと受け入れてくださいね。
絶対ですよ?
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