不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺

文字の大きさ
15 / 49

子供たちには聞かせられない話です。大人になるとは決断を積み重ねていくことかもしれません。

しおりを挟む


元夫は処分が決まるまで謹慎になったそうです。
少し違いますね、もう余計なことができないよう軟禁されているらしいです。
屋敷内での活動にも騎士が付き監視されているそうで、息が詰まる日々を過ごしているとか。
国から遣わされた人が教えてくれましたが、まだ当主ではあるそうです。まあ形だけですが。
後を決めるのに難航しているらしいですね。
元夫には兄弟がいないので近しい親戚から相応しい人を探しているけれど、調べると横領が見つかったり借金塗れだったりと問題が見つかって中々後継者を決められないそうです。このままなら国からの監査役を受け入れての存続かそれも無理ならお家取り潰しになるとのこと。
こちらへの襲撃事件の処分もこれからです。
賠償を求めないので、代わりに処分についてはある程度こちらの要望が通るでしょう。
兄と話し合ねばなりません。



使者を見送った後で兄の執務室で向かい合います。

「それで、レインはどういう決着を望んでるのかな」

いつものように笑みを浮かべた兄ですが、瞳の奥は冷たく光っていました。
私も同じような笑みを浮かべていることでしょう。

「二度とこの地に踏み入れないよう、子供たちとふいにでも会うことがないようどこかに蟄居していてほしいと思います」

「ふうん? 優しいね?」

揶揄するような兄の言葉をスルーして地名を挙げていきます。

「グラン、アベレーン、オルクス、その辺りですかね」

「なるほど、アレの母方の領地か。
離婚のときもそうだが、今回のことでかなり迷惑を掛けられたと思っているだろうし適任だな。
これ以上恥をかかされないよう面倒を見てもらえそうだ。こちらからも頼んでおくか」

「そうですね、直接ではなく国を通してお願いした方が効果的でしょう」

「さっさと終わらせるか。
アベレーンを第一候補として挙げておく」

さらりと精霊信仰の強い土地を第一候補にした兄に苦笑する。
精霊を怒らせかねない行為をした元夫を好意的に受け入れることはありえません。
アベレーンの領主も厳しい目で監視するでしょうし、元夫のしたことが領民にも知られていたら街を歩くこともできませんね。
そもそも出歩かせてもらえないと思いますけれど。

「そうしたら方針も決まったし、早いうちに王宮に行ってくるか。
留守の間はいつもの通りよろしく頼むな」

「お任せください」

執務はいつも手伝っているので王都へ行っている間くらいなら私で対応できるでしょう。
今は忙しい時期でもありませんし。

「せっかくだからリオンとルイスに役立ちそうな物を土産に探してくるよ。
それに、ミオンが鑑定のスキルを欲しいと言っていたんだろ?
良さそうな人間を紹介してもらえるよう何人かに話をしてこようと思う。
ライナスの教師にもう一人くらい欲しいしな」

兄の言葉に目を伏せて返事をする。
言葉にはしないけれどわかっているという意思表示です。
いずれはライナスに後継者になってほしい。
そう考えていることは知っていました。
『精霊のいとし子』に溺愛されるライナスが当主になることで領地の安寧が保たれる。
現当主として将来の繁栄のために道筋を作るのは当然のことです。
だから兄は結婚もせず子供も作らないのでしょう。
精霊のいとし子リオンとルイス』が大切に思う存在を多くこの地に置くことで領地が災害などにみまわれる可能性を減らす。
私もそれに意を唱えることはしません。
兄はそれが引き継いできたこの地のためにできることだと決めた、私もその覚悟を支えます。
そんなことを考えていると兄がふっと笑いました。

「譲ったとか我慢してるとかそういうわけじゃないから余計なことは考えず楽しく暮らせばいいんだ。
俺だって妹夫婦と甥っ子姪っ子に囲まれた賑やかな暮らしを楽しんでるぞ?」

言い様がおかしくて笑ってしまいました。
そうですね、家族に囲まれた暮らしであるのに変わりはありません。
賑やかで、笑顔と驚きに満ちた日々がある。幸せなことです。

でも、もし兄が誰かを望むことがあれば迎えることに遠慮なんかしないでほしい。
みんなも喜ぶに決まってますから。

もし私とイクスが出会ったような運命のいたずらがあったら逃さず捕まえてほしいと思います。
そんな私の言葉に兄は「あったらな」と笑うだけ。
言質は取りましたからね。
思わぬことは起こるもの、ですから。
もしそんな日が来たらちゃんと受け入れてくださいね。
絶対ですよ?


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

夏灯みかん
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

夏灯みかん
ファンタジー
生まれながらに強大な魔力を持ち、聖女として大神殿に閉じ込められてきたレイラ。 けれど王太子に「身元不明だから」と婚約を破棄され、あっさり国外追放されてしまう。 「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」 追放の道中出会った剣士ステファンと狼男ライガに拾われ、冒険者デビュー。おいしいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。 一方、魔物が出るようになった王国では大司教がレイラの回収を画策。レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。 ※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。 【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】

聖女が落ちてきたので、私は王太子妃を辞退いたしますね?

gacchi(がっち)
恋愛
あと半年もすれば婚約者である王太子と結婚して王太子妃になる予定だった公爵令嬢のセレスティナ。王太子と中庭を散策中に空から聖女様が落ちてきた。この国では聖女が落ちてきた時に一番近くにいた王族が聖女の運命の相手となり、結婚して保護するという聖女規定があった。「聖女様を王太子妃の部屋に!」「セレスティナ様!本当によろしいのですか!」「ええ。聖女様が王太子妃になるのですもの」女官たちに同情されながらも毅然として聖女の世話をし始めるセレスティナ。……セレスティナは無事に逃げ切れるのだろうか? 四年くらい前に書いたものが出て来たので投稿してみます。軽い気持ちで読んでください。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

悲報!地味系令嬢、学園一のモテ男に「嘘の告白」をされる

恋せよ恋
恋愛
「君のひたむきさに心打たれた」 学園の王子様、マーロン侯爵令息から突然の告白。 けれどそれは、退屈な優等生である彼が仕掛けた「罰ゲーム」だった。 ターゲットにされたのは、地味で貧乏な子爵令嬢・サブリナ。 彼女は震える声で告白を受け入れるが――眼鏡の奥の瞳は、冷徹に利益を計算していた。 (侯爵家の独占契約……手に入れたも同然だわ!) 実は、サブリナの正体は王都で話題の「エアハート商会」を率いる敏腕マネージャー。 「嘘の告白」をした男と、「嘘の快諾」をした女。 互いに利用し合うつもりが、いつの間にか本気に……? お互いの本性を隠したまま進む、腹黒×腹黒の騙し合いラブコメディ! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

処理中です...