不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺

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番外編など

子供とは愛らしい。その景色は美しく。 <イクス視点⑥>

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あれからさらに一月を少し過ぎた頃。
無事に離婚が成立した祝いをするから来いと呼び出された。
離婚は祝うものではないと思うが、悪縁が切れたことが余程嬉しいんだろうな。
彼は相当怒っていたようだし。

屋敷に着くとレイン様が出迎えてくれた。
子供たちを見に行くと二人とも起きていて、しっかりと紫の瞳で俺を捉えている。
ぜひ抱っこしてくださいと言われ一人ずつそっと抱き上げる。
柔らかくて壊れそうで怖いが、腕に伝わる体温に自然と口元が緩む。
リオン様は腕を動かしながら体を揺らしているので落っことさないか気が気じゃない。
ルイス様の方は何が気になるのか紫の瞳でじっと俺を見ていた。
どちらも利発そうな子だと口元を緩める。
本当に愛らしい。この子たちが無事に生まれてきてよかった。

「なんだか日に日にレイン様に似てきている気がしますね」

目の形や口元もレイン様に似ていると、まだ小さいのにそう思う。

「イクスさんもそう思うのですか?
兄も屋敷の皆もそう言います、私の小さい頃にそっくりだと」

やわらかい表情でリオン様をあやすレイン様は本当に幸せそうだ。
レイン様の腕の中にいたリオン様が俺に向かって手を伸ばす。

「あら、リオンもイクスさんに抱っこしてほしいの?」

「二人一緒は怖いので一人ずつでお願いします」

柔らかくて自分で身体を支えられない幼子を一緒に抱き上げるのは無理だ。怖い。
ルイス様が俺の服を掴んだので降ろすのを躊躇う。どうしたらいいんだろうか。
悩んでる間にぐずりだしたリオン様が手を振り上げた。
その手から小さな火の玉が上がる。

「……!」

咄嗟にルイス様を上着で覆って下がったが、目の前の光景に唖然とするしかなかった。
あらダメよと困った声を出したレイン様がリオン様の手を取りそのまま出した水の球で包んで消す。

「レイン様、魔法が使えたんですね」

全く慌てることなく消化された火にリオン様が目をぱちぱちと瞬く。何が起こったのかわからないのだろう。

「ええ、水魔法は得意なんです」

小さい頃は兄と一緒に庭を水浸しにして怒られたものだわと笑う。
意外過ぎる。レイン様には驚かされてばかりだな。
素晴らしいと感心する俺に得意じゃなかったら良かったと思ったこともあったと呟く。

「水魔法に長けていたことがあの家に望まれた理由の一つですから」

あの家、レイン様の元夫の家は自然の恵みに乏しく食料などを他領から購入することで需要を賄っていたため、土魔法を使える元夫と水魔法に長けたレイン様が領地の恵みを増やしてくれることを願い縁組みを行ったのだという。
そして次代に能力を引き継いだ子供を遺してくれることを期待していたと。
元夫はその願いや期待を無視して浮気を繰り返していたがその両親も元夫を咎めることはしなかったと聞く。

「でもここにリオンやルイスと戻ってきたら、得意であることに意味が見いだせるようになりました」

そう言って窓の外に虹を作り出す。
ルイス様もリオン様も興味深そうに身を乗り出すので窓の近くへ寄った。
虹へ手を伸ばして嬉しそうな声を上げるお二人を見て、ね?と俺へ微笑みを向けるレイン様。
ルイス様が手を広げたのを見て思わず手を掴むも、窓に霜が付くのは止められなかった。

「少し温度が低いわ、ルイスは氷が得意なのかしら」

のんびり微笑むレイン様に俺も笑ってしまう。その動じなさがおかしくて。

まだ外に浮かぶ虹の下を鳥たちが飛び綺麗な鳴き声を響かせる。
そのさらに下にはたわわに実ったリンゴと春の花々が咲き誇っていて。
とても、美しい光景だった。


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