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番外編など
子供たちはいつも予想外です。有言実行、ですね。
しおりを挟む朝から降っていた雨が止み、外には青い空が広がっています。
雨に濡れた大地が日の光を浴び、きらきらと輝いてとてもきれい。
澄みきった青の空にリオンとルイスに初めて虹を見せた日のことを思い出します。
二人とも大喜びで、しばらくはまたやってと何度も繰り返していましたね。
ひとり座りができるようになってからは自分もやってみようと試行錯誤していました。
水魔法はルイスの方が上手くてリオンはできないことが悔しそうでしたが、ルイスと一緒に練習していたらすぐできるようになりましたね。微笑ましかったです。
なぜ今そんなことを思い出すのでしょう。
現実逃避でしょうか。
空を飛ぶ魔物は脅威です。
高い場所から急降下して家畜を攫うこともあると聞きますから。
この辺りでは見ない空を飛ぶ魔物の姿に、皆屋敷から出てきて動向を見守っています。
不安そうな空気が漂いますが、私は真っ直ぐにこちらへ向かってくる魔物が2体いることに、もしかしてと微かな予感が浮かびました。
ゆっくりと近づいて来る大きな影が鳥であるとわかるようになった頃、その背にきらりと銀の光が反射したのが目に入りました。
ああ、やっぱり、ですね。
目を逸らせずに飛んでくる魔鳥の姿を見守っていた皆も、誰なのか悟り安堵の空気が辺りに満ちます。
ライナスも言葉もなく魔鳥に乗ったリオンとルイスが下りてくるのを見つめていました。
やがて青い羽を持った魔鳥と白い羽を持った魔鳥が降り立ちました。
「お母様、ライナス! ただいま!!」
すごいでしょとうれしさを前面に出して魔鳥から飛び降りてきたリオンが駆けてきて胸に飛び込んできました。
抱き着いてくるリオンをぎゅっと抱きしめます。本当にすごいわ。
「兄上すごい! 空飛んでた!!」
ライナスがルイスに駆け寄ります。
まだ魔鳥から下りてなかったルイスが慌てて止まるように声を掛け、イクスがライナスの手を引いて止めました。
リオンとルイスが乗っていたとはいえ、一応魔物ですものね。
いきなり近づいたら驚かせてしまうかもしれません。
「リオンったら驚いたわ」
突然空を飛んで現れるなんて。
ルイスが最初の旅立ちの時に言っていたわね、いつか空を飛ぶ魔物で帰ってこれるようになるって。
でも本当に成し遂げてしまうなんて、しかもこんなに早く。
「成功ね、お母様たちを驚かせようってルイスと話してたのよ」
本当は少し離れたところで降りて歩いてくるつもりだったけど、この子たちの飛ぶ姿を見せたくなっちゃってと笑うリオンは成し遂げたことに誇らしそうに胸を張る。
「すごいわ、本当に。
空の上は楽しかった?」
「ええ、とっても!
いつかライナスやお母様、お父様にもあの光景を見せたい」
眩しそうに空を見上げるリオンの表情がとてもきれいで、どこまでも遠くへ心の赴くままに飛び立てるまでになった子供たちが本当に誇らしくてもう一度強く抱きしめます。
魔鳥に触りたそうなライナスを宥めたルイスがこちらへ歩いてきます。
私に微笑むルイスの顔にも嬉しく誇らし気な表情が浮かんでいて、私の胸にも喜びが湧き上がってきました。
「母上、あの日誓った約束が果たせましたよ」
「ルイスったら、あれは約束のつもりだったの?」
ルイスが本気だったのは知っているけれど、まさか誓いを立てたつもりだったなんて。
「俺にとっては。
母上を心配させたくなかったですから」
顔を見せる頻度が上がれば、安心でしょう?と笑むルイスの微笑みがイクスと重なって見えました。
私はそんなに心配症に見えるのかしら。困ったわ。
「心配をしなくなることはないわ。
でも、それ以上にルイスやリオンが自分たちの思うように生きてくれることがうれしいの。
空を飛んでいる間、楽しかったでしょう?」
「ええ、とても。
どこまでも遠くへ行けそうで、その先に何が待っているのか考えるとワクワクしました」
ここに帰ってくることを考えるのと同じくらい、それ以上にまだ知らないところへ行ったら何があるのか、どんなことが待っているのかと高揚したと語るルイス。
ああ、本当に生きることを楽しんでいるのね。
うれしさと安堵にこみ上げそうな涙を抑えます。
ルイスを抱きしめておかえりなさいと告げるとはにかんだ声でただいまと答えました。
羽ばたきの音がして、あ!とリオンとライナスの声が重なります。
手を解いて顔を上げると青い空には大きな虹が。
その虹に向かって飛び立った魔鳥の姿。
広げた羽の青と白が鮮明に瞳に焼き付きます。
なんて美しい光景でしょう。
大地には緑が生え、空の青はどこまでも澄んでいます。
架かる虹と空を舞う魔鳥の姿は現実味がなくなるほど美しくて――。
虹が消えるまで声もなく見入ったのでした。
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