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番外編など
子供の戯言なんかじゃない。キミとの出会い。 <ライナス視点①>
しおりを挟む病気療養の名目でやってきた令嬢を見つめて感嘆のため息をつく。
僕より2つ3つ上だろうか。
濃い金の髪に母上とは系統の違う緑の瞳は、夏の日差しにも負けずに伸びる葉のような強い色。
領地に訪れる夏の緑の色は生命力に満ち溢れていた。
「なるほど、療養ね」
彼女が持ってきた手紙を見て伯父上が口元を笑みに崩す。
なりふり構わないその手段が気に入ったのか不快に感じるよりもおもしろがっているように僕には見える。
「領地への滞在は好きにすると良い。
落ち着いた良い宿があるのでそちらを紹介しよう」
宿を用意するという、歓迎に見える拒否の言葉。
伯父上は滞在は認めるけれど屋敷へは泊めないとはっきりと告げた。
「まあ、ご厚情に感謝いたします。
ままならぬ身ゆえのご迷惑をかけてしまうことが心苦しかったのですが、宿を手配してくださるのであれば皆様へご面倒をおかけすることが避けられます。
明日には早々に宿へ移りますのでどうぞよろしくお願いいたします」
明確な一線を引かれても綺麗な笑みで返す彼女に、すごい人が来たなと思ったのだった。
夜は疲れていなければ晩餐を一緒にとの誘いを断るわけもなく彼女を加えた晩餐の準備が進められた。
普段家族しかいない屋敷に他人がいるというのはかなりの違和感がある。
同じ食卓に着いた彼女を見つめるとにこりと微笑まれる。その微笑みはとても美しく作られていた。
同じように微笑みを返して彼女の話に耳を傾ける。
リオ姉がいるときもそうだけど、女性が増えると華やかで明るい雰囲気になるね。
王都近郊の話やここに到るまでの旅の話などは興味深い。
ほとんど供を付けずに来た彼女は旅の間の苦労話を母上に楽しそうに話している。
おかげでとても楽しい時間だった。
どんな思惑があるかは別として楽しい人だな。
それが僕の彼女への初対面の感想だった。
辺境の夜は早い。
それは夏が近づいた頃でも変わらず、窓を開けると森から聞こえる夜の鳥の声しかしない。
少しじっとりするような熱を感じ窓を閉めようとしたとき、少し離れたところから呼びかける声が聞こえてきた。
「こちらでは随分早く暗くなるのですね」
他の街ではまだ家々から漏れる灯りで明るいのにと呟く彼女は、王都の眩さを思い出しているのか目を細めて外の闇を見つめた。
隣に並んだ彼女から視線を外して窓の外を見る。
「暗闇は怖いですか?」
僕の問いに微かに笑った気配がした。
いいえ、と答える声には率直な感情が宿っていた。
「こちらの闇は優しいので恐ろしいとは感じません」
森からは生き物の気配がし、見上げる空には数多の星が輝いている。
「何が蠢いているのかわからない王都の闇とは違います」
「こちらの闇にも恐ろしい物はいますが、近づかない限りはただそこに在るだけですからね」
恐ろしさの種類が違うのは確かだと思う。
動物はわざわざ忍び込んで危害を加えには来ない。
どうしてここを通りがかったのかと思えば、伯父上から宿についての話を聞いていたようだ。
「先ほど宿の手配が済んだと伺いましたので、明日にはお約束通りそちらに移らせていただきます」
微笑む彼女からはこの屋敷に滞在できない残念さや素気無くされた悔しさは見えない。
こんな辺境まで単身来るだけあって底の見えない強かさを持っているみたいだ。
彼女はどうしてここに来たんだろう。
「よかったら遊びに行ってもいいですか」
ああ、もちろん体調が許せばの話ですけれどと言葉を添える前に「是非!」と力強く返事が返ってきた。
きらきらと輝く緑の瞳は純粋な喜びに満ちていて、その喜びの理由を知りたいと思ったのだった。
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