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#1:入学前夜~出会い
#1-4.だから「うちの子優秀なんです」って大声で……n回目
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「ここが生徒会室」
ユーリウスと名乗った生徒会長に連れられてやってきた生徒会室。
マリナの後ろにマルセルとユーゴイルが続き、その後ろに「ケント」「ドール」と呼ばれていた人がいる。
入ってすぐは両側に机が並び壁側には書類棚と扉が幾つか、そして正面に大きな窓を背にした一際立派な執務机。
かなりの広さと豪華さに目を奪われる。
マルセルを見ると、「すごい、全部ダセイアの最高級家具だ……」と呟くのが聞こえたので、どの家具や装飾品がどこ産でいくらするのか早速チェックを入れているのがわかる。
絶対に騎士なんかよりその商才を発揮したほうがいいんじゃないかと、こんな突然の状況にも変わらず意外な特技を遺憾なく発揮している通常運転の我が弟をマリナは誇らしく思った。
「あ、いらっしゃーい、用意できてるよー」
壁際の奥の方の扉が開き、エプロンを身に着けた人が顔を出した。
マリナを見て一瞬酷く驚いた顔をしたように感じたが……気のせいだろう。
知り合い……なわけはない。
「うん、君たちが新入生枠の子たちだねえ。さ、入ってー」
その人が驚いた顔をしたのは一瞬で、案内されて入った部屋には、美しくテーブルセッティングされた長机があり、クロスも装花も薄紫で品良くコーディネートされていた。
「どう?綺麗でしょ?」
「え?ああ、はい。素敵だと思います」
「でしょでしょ?僕の一番好きな色なんだ。ユーリも褒めてー」
近くにいたマリナは感想を求められ素直に褒めたが、生徒会長はふんと鼻を鳴らしただけだった。
「もーユーリってば素っ気ないなー。ま、いいや。みんなも席に着いてー」
さあさあと皆が背中を押され着席を促される中、マリナはユーリに手を引かれるままどんどん前へと歩かされる。
「え……あの……」
(いやいや、わたしなんて末席でいいでしょうよ)
なんでこんな前に……とマリナが狼狽えても、ユーリは全く意に介さない。
結局、長机の正面にユーリ、促されるまま右角にマリナ、隣にマルセル、ユーゴイルが座らされ、左角にケントと呼ばれていた赤髪の人、ドールと呼ばれていた銀髪の人、そしてエプロンの人がエプロンを脱ぎながら座った。
途端、給仕の人が出てきてテーブルに食事が用意され始める。
エプロンの人がするのかと思った……ってそんなわけないか。
細いグラスに細かい泡の立つ飲み物が注がれ、それをユーリが軽く持ち上げる。
改めてユーリを見ると、耳の上で切り揃えたさらさらの癖の無い金髪、二重の切れ長の目、深く蒼い瞳。
少女小説に描かれてあった挿絵のような人だなと思った。
「新入生の諸君、生徒会へようこそ。乾杯」
マリナやマルセルも慌てて倣いグラスを持ち上げる。
口をつけると、日中の学院内でアルコールな訳はなくノンアルコールの泡沫果実水だった。
幾らこの国が16歳からアルコール解禁だからといって、さすがに学院内で飲酒は駄目だろう。
「さて、自己紹介から始めようか。私は先に済ませたし、ケントから」
話を向けられた赤髪先輩はやはり「ケント」というらしい。
「オレはケンティス、ケントと呼んでくれて構わない。副会長だ。若輩ながら近衛騎士第一師団にも所属している」
短髪の赤い髪に空色の瞳の爽やかな人物。
低くて落ち着いた声の人だ。
背が高いからかすっきりと見えるけど、しっかり鍛え上げられた身体は、なるほど王宮騎士だからか。
もしかして、ゆくゆくはマルセルもこんなふうになっちゃう?
「私はケンドール、ドールと呼ばれています。会計をしております」
次に、肩にかかるぐらいの長めの銀髪で黄緑の瞳をした人。
銀縁眼鏡がより知的に見えて似合ってる。
「僕はマシェライド。マシューって呼んで。仕事は書記と雑用かな。一年生には僕を手伝ってもらうね」
最後に、エプロンの人は、薄紫のくるくるとした巻き髪で、前髪の隙間から見える瞳は赤色で、あ、泣きぼくろがある。
目が合ってにこって微笑まれちゃった。
なんだろう、背はそこそこ高かったし男の人……だと思うんだけど可愛らしい人だなあというのが第一印象。
さすが有名アカデミーの生徒会は個性豊かな人たちばかりだと、マリナは自分の地味な黒髪を思って少し羨ましい気がした。
「オレはユーゴイル。ユーゴと呼んで下さい。兄さんに恥ずかしくないよう精一杯務めさせていただきます」
次はどうするのかと思っていたら、ユーゴがマリナ達新入生の先陣を切って話しだした。
ユーリと兄弟だというだけあって、顔の作りは似ているような気がする。
とは言え、同じ金髪で兄弟だからかどこか共通する容貌をしていても、ユーゴはまだまだ少年っぽい。
それにしてもブラコンめ。
この順番で行くと次はマルセルかな。
「僕はマルセイラと申します。よろしく願いします」
って、それで終わり?緊張してるのかな?
「マリネッテです。……よろしくお願いします」
順番通り最後はマリナが当たり障りのない自己紹介をした。
まさか「魔王です」とは口が裂けても言えない。
ちらっとユーリの方を見ると、何とも言えない顔でマリナのことをじっと見ているにの気付き、さっき静電気が弾けたような感じがした腕を擦り、ふいと視線を逸らす。
なんだろう……本能的に、近寄ってはいけないような気がすると思ったが、もう遅いかもしれない。
後悔とは後から思うからそうなのだと思ったのだった。
その後は、昼間だと言うのにしっかりフルコースの食事が運ばれ、雑談をしつつゆっくりとデザートまで完食してお開きとなった。
なんだかんだで学院を出る頃にはすっかり日が傾き、初日からかなり疲労困憊だ。
「じゃあね、また明日」
「ん。でも、明日から登校は別々よ」
そう釘を刺すと、可愛い弟は寂しそうな顔をしたあと、仕方ないと頷いて男子寮の方へと歩いていった。
(そんな寂しがり屋で王宮騎士なんて務まるのかしら)
いくら背を追い抜かされたとしても、マリナは姉として、寂しがり屋の弟が相変わらず心配でならない。
マリナは「3年もあればマルセルも副会長のように立派な騎士に成長するかもしれないし」と、可愛い弟の成長を楽しみに、自分は出来るだけ目立たない学生生活送ろうと、確かにこの時は思っていた。
ユーリウスと名乗った生徒会長に連れられてやってきた生徒会室。
マリナの後ろにマルセルとユーゴイルが続き、その後ろに「ケント」「ドール」と呼ばれていた人がいる。
入ってすぐは両側に机が並び壁側には書類棚と扉が幾つか、そして正面に大きな窓を背にした一際立派な執務机。
かなりの広さと豪華さに目を奪われる。
マルセルを見ると、「すごい、全部ダセイアの最高級家具だ……」と呟くのが聞こえたので、どの家具や装飾品がどこ産でいくらするのか早速チェックを入れているのがわかる。
絶対に騎士なんかよりその商才を発揮したほうがいいんじゃないかと、こんな突然の状況にも変わらず意外な特技を遺憾なく発揮している通常運転の我が弟をマリナは誇らしく思った。
「あ、いらっしゃーい、用意できてるよー」
壁際の奥の方の扉が開き、エプロンを身に着けた人が顔を出した。
マリナを見て一瞬酷く驚いた顔をしたように感じたが……気のせいだろう。
知り合い……なわけはない。
「うん、君たちが新入生枠の子たちだねえ。さ、入ってー」
その人が驚いた顔をしたのは一瞬で、案内されて入った部屋には、美しくテーブルセッティングされた長机があり、クロスも装花も薄紫で品良くコーディネートされていた。
「どう?綺麗でしょ?」
「え?ああ、はい。素敵だと思います」
「でしょでしょ?僕の一番好きな色なんだ。ユーリも褒めてー」
近くにいたマリナは感想を求められ素直に褒めたが、生徒会長はふんと鼻を鳴らしただけだった。
「もーユーリってば素っ気ないなー。ま、いいや。みんなも席に着いてー」
さあさあと皆が背中を押され着席を促される中、マリナはユーリに手を引かれるままどんどん前へと歩かされる。
「え……あの……」
(いやいや、わたしなんて末席でいいでしょうよ)
なんでこんな前に……とマリナが狼狽えても、ユーリは全く意に介さない。
結局、長机の正面にユーリ、促されるまま右角にマリナ、隣にマルセル、ユーゴイルが座らされ、左角にケントと呼ばれていた赤髪の人、ドールと呼ばれていた銀髪の人、そしてエプロンの人がエプロンを脱ぎながら座った。
途端、給仕の人が出てきてテーブルに食事が用意され始める。
エプロンの人がするのかと思った……ってそんなわけないか。
細いグラスに細かい泡の立つ飲み物が注がれ、それをユーリが軽く持ち上げる。
改めてユーリを見ると、耳の上で切り揃えたさらさらの癖の無い金髪、二重の切れ長の目、深く蒼い瞳。
少女小説に描かれてあった挿絵のような人だなと思った。
「新入生の諸君、生徒会へようこそ。乾杯」
マリナやマルセルも慌てて倣いグラスを持ち上げる。
口をつけると、日中の学院内でアルコールな訳はなくノンアルコールの泡沫果実水だった。
幾らこの国が16歳からアルコール解禁だからといって、さすがに学院内で飲酒は駄目だろう。
「さて、自己紹介から始めようか。私は先に済ませたし、ケントから」
話を向けられた赤髪先輩はやはり「ケント」というらしい。
「オレはケンティス、ケントと呼んでくれて構わない。副会長だ。若輩ながら近衛騎士第一師団にも所属している」
短髪の赤い髪に空色の瞳の爽やかな人物。
低くて落ち着いた声の人だ。
背が高いからかすっきりと見えるけど、しっかり鍛え上げられた身体は、なるほど王宮騎士だからか。
もしかして、ゆくゆくはマルセルもこんなふうになっちゃう?
「私はケンドール、ドールと呼ばれています。会計をしております」
次に、肩にかかるぐらいの長めの銀髪で黄緑の瞳をした人。
銀縁眼鏡がより知的に見えて似合ってる。
「僕はマシェライド。マシューって呼んで。仕事は書記と雑用かな。一年生には僕を手伝ってもらうね」
最後に、エプロンの人は、薄紫のくるくるとした巻き髪で、前髪の隙間から見える瞳は赤色で、あ、泣きぼくろがある。
目が合ってにこって微笑まれちゃった。
なんだろう、背はそこそこ高かったし男の人……だと思うんだけど可愛らしい人だなあというのが第一印象。
さすが有名アカデミーの生徒会は個性豊かな人たちばかりだと、マリナは自分の地味な黒髪を思って少し羨ましい気がした。
「オレはユーゴイル。ユーゴと呼んで下さい。兄さんに恥ずかしくないよう精一杯務めさせていただきます」
次はどうするのかと思っていたら、ユーゴがマリナ達新入生の先陣を切って話しだした。
ユーリと兄弟だというだけあって、顔の作りは似ているような気がする。
とは言え、同じ金髪で兄弟だからかどこか共通する容貌をしていても、ユーゴはまだまだ少年っぽい。
それにしてもブラコンめ。
この順番で行くと次はマルセルかな。
「僕はマルセイラと申します。よろしく願いします」
って、それで終わり?緊張してるのかな?
「マリネッテです。……よろしくお願いします」
順番通り最後はマリナが当たり障りのない自己紹介をした。
まさか「魔王です」とは口が裂けても言えない。
ちらっとユーリの方を見ると、何とも言えない顔でマリナのことをじっと見ているにの気付き、さっき静電気が弾けたような感じがした腕を擦り、ふいと視線を逸らす。
なんだろう……本能的に、近寄ってはいけないような気がすると思ったが、もう遅いかもしれない。
後悔とは後から思うからそうなのだと思ったのだった。
その後は、昼間だと言うのにしっかりフルコースの食事が運ばれ、雑談をしつつゆっくりとデザートまで完食してお開きとなった。
なんだかんだで学院を出る頃にはすっかり日が傾き、初日からかなり疲労困憊だ。
「じゃあね、また明日」
「ん。でも、明日から登校は別々よ」
そう釘を刺すと、可愛い弟は寂しそうな顔をしたあと、仕方ないと頷いて男子寮の方へと歩いていった。
(そんな寂しがり屋で王宮騎士なんて務まるのかしら)
いくら背を追い抜かされたとしても、マリナは姉として、寂しがり屋の弟が相変わらず心配でならない。
マリナは「3年もあればマルセルも副会長のように立派な騎士に成長するかもしれないし」と、可愛い弟の成長を楽しみに、自分は出来るだけ目立たない学生生活送ろうと、確かにこの時は思っていた。
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