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#1:入学前夜~出会い
#1-6.答えは「はい」か「YES」だろう?
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次の日、ゲネルに淹れてもらったお茶が効いたのか、アラームがなる前にスッキリ目覚めた。
早々と朝食を済ませ寮を出ると、途中でマルセルに会った。
「あ、おはよう」
「おはようございます」
クラスメイトだもん、挨拶ぐらい大丈夫よね?
二人は人気が少ないのもあり、そのまま並んで登校する。
「早いのね」
「ね……マリネッテさんもね」
なによ「マリネッテさん」って、他人行儀ね……って、他人か。
でも、「さん」はいくらなんでも遠すぎる気がする。
マリナは自分で言っておきながら、早速対応を変えてきたマルセルを寂しく思った。
「『さん』はやめてよ、『マリナ』って呼んで」
「いきなり愛称呼びってどうなの?」
「それもそうか……じゃあ『マリネッテ』って呼ぶ?」
「だから呼び捨てはちょっと……暫くは『マリネッテさん』でいいんじゃない」
マルセルに名前を呼ばれるのは変な感じだけど、「マリネッテさん」ねえ。
「わかったわよ、それでよろしくね」
「うん」
マルセルが笑顔で頷く。
はあー今日も弟が可愛い。
「じゃあ私もマルセルのこと『マルセイラくん』呼びかなあ」
「え!?」
「だって愛称で呼び合うような仲じゃないし?」
仕方ないだろう、「マリネッテさん」と「マルセル」ではどう考えても釣り合いが取れてない。
不満そうなマルセルも、姉には逆らえないのか不承不承受け入れた。
そういえば、ゲネルがアカデミーに来てる事をマルセルは知ってるのだろうか。
マリナは昨日のゲネルの事について言おうか言うまいか、考え倦ねている内に教室へと着いてしまった。
(ま、あとでもいいか)
「じゃあね」
「うん」
廊下側と窓際、間に一つ挟んだ離れた席はおしゃべりするには遠い位置だ。
マリナ達は教室へ入る前に軽く挨拶をして別れ、別々に席へと着いた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
授業も滞り無く終わり、放課後になった。
マルセルは騎士部を見に行くって言ってたし、どうしようか……。
寮に戻ってもすることはないし……図書室とか……部活動……。
「ねえねえ、マリナちゃんって生徒会の人?」
マリナがオリエンテーションで渡された学院の案内パンフレットをつらつらと見ていると、前の席のヒイロが振り返って唐突に聞いてきた。
彼女はいつも男子に囲まれていて、話すのは昨日の朝以来だ。
相変わらず今日も可愛い。
「ああ、うん……そうみたい」
昨日強引に連れて行かれ昼食会に参加し、いつの間にか契約書にサインしていた。
あの様子では有無も言わせぬ感じだったが、もしかして断る事も出来たのだろうか?
「チッ」
ん?今、舌打ち……。
「あの方々に選ばれるなんて、マリナちゃんスゴいんだね。そんな子と友達なんて私も嬉しい♪」
「え……そんな事……」
……気のせいか……ヒイロは笑顔でそう言ってマリナを褒めてくる。
(あれ?「友達」って言った?もしかして、わたし、ヒイロさんと友達なの?)
これってもしかして初めての友達じゃないだろうかと、嬉しげににやけそうになる顔を気持ち悪がられないようぐっと堪え、何でもない風を装う。
おかげでヒイロの話は半分も耳に届いていなかった。
「それでね、会長のユーリウス様って……」
「おい、行くぞ」
「え?」
ヒイロと話してる最中、いきなり隣のユーゴがガタンと音を立てて立ち上がり、マリナの腕を掴む。
「『行く』って……」
「あ、ちょっと!」
そりゃ、話してる最中の相手がどっか行ったら戸惑うだろう。
ユーゴは、呆気にとられるヒイロを無視して、反論は許さないと言わんばかりに、ぐいぐいとマリナを引き摺り教室を出る。
ユーリといいユーゴといい、腕を引っ張るのは家系ですか、そうですか。
「い、痛いんだけど……」
「あ……ごめん……」
さすがに早足で歩くのにも疲れてきて声を掛けると、ユーゴは急に立ち止まって腕を離す。
思ったより力が強かったのに気付いたのか、素直に謝ってきた。
それにしたって……。
「……なんなの?」
「お前な、ちょっとは考えろよ。あんなヤツ、兄さんに近づきたいだけじゃねーか」
「兄さんって……何のこと?」
「あんなヤツ」ってヒイロのことだろうか。
そう言えば何か言い掛けてたような……。
「だから、お前に話しかけたり何か言ってきたりするヤツは、みんな兄さん狙いだってーの」
「まさか。彼女を悪く言わないで」
仮にもクラスメイトを、しかも初めての友達を「あんなヤツ」呼ばわりされて、しかもユーリ狙いだなどと言われて、マリナは珍しく表立ってイラッとした。
「お前はどうか知らないけど、どう見てもピンク頭のヤツは兄さん狙いだろ。そんなのもわかんねえの?」
「わかんないから聞いてるのよ。ちょっとした世間話してただけじゃない」
何でもかんでもユーリに結びつけて牽制してイチャモンを付けてくるユーゴに、マリナは段々腹が立ってくる。
そんな大声で廊下のど真ん中で言い合うマリナとユーゴイルの周りには、いつしか人集りができていた。
「え?ちょっと……これ何だよ」
無言で睨み合っていると、二人の言い合いを見ていた人たちが、いつの間にかユーゴを囲んで詰め寄っていた。
それもこの学院には珍しいガラの悪そうな、タイの色からして上級生たち。
(あ、マズい。わたしの感情が高ぶったから、下僕化の影響が出ちゃってる)
落ち着いて、落ち着いて……とマリナは深呼吸を繰り返す。
「何事だ?」
そこへ、ぱんぱんと手を鳴らし、人集りをかき分けて現れたのはユーリだった。
ユーゴを囲んでいた上級生もはっと我に返り、そそくさと逃げ出す。
蜘蛛の子を散らすように、人集りは霧散していた。
はー助かった。
「兄さん……」
あからさまにホッとしたユーゴ。
「行くよ」
ユーリは、助けたはずの弟には一瞥もくれず、またマリナの腕を掴みずんずんと足早に歩いていく。
だから、痛いってば!
ああ、放って置かれたユーゴイルが泣きそうですよ、会長!
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
そうして連れてこられたのは生徒会室……の中の、昨日昼食会をした反対側の壁にあった扉の中。
そこそこ広い部屋の中は、寮の一部屋と変わらない作りで、ソファセットに机とベッドまであり、まだ奥に扉があった。
そのソファに座らされ、マリナを囲うように背もたれに両腕を付かれると身動きができない。
「君ね、早速何してくれてんの」
「何って……」
「しらばっくれるな、『力』使ったろ?」
「力」……?
もしかして、さっきユーゴイルに腹が立って無意識で放った下僕化オーラの事だろうか。
しかも、随分昨日と雰囲気と口調が違いますが?
「…………」
目を合わせることも出来ず、かと言って上手い言い訳も見付からず、せめてもの抵抗で必死で身体をソファに押し付けユーリから離れようとする。
なのに、ユーリはゆっくりと距離を詰めてこようとにじり寄ってくる。
「君……」
なんだろう、さっきからぴりぴりぞわぞわする。
すごく嫌な予感。
「『魔王』だろ?」
早々と朝食を済ませ寮を出ると、途中でマルセルに会った。
「あ、おはよう」
「おはようございます」
クラスメイトだもん、挨拶ぐらい大丈夫よね?
二人は人気が少ないのもあり、そのまま並んで登校する。
「早いのね」
「ね……マリネッテさんもね」
なによ「マリネッテさん」って、他人行儀ね……って、他人か。
でも、「さん」はいくらなんでも遠すぎる気がする。
マリナは自分で言っておきながら、早速対応を変えてきたマルセルを寂しく思った。
「『さん』はやめてよ、『マリナ』って呼んで」
「いきなり愛称呼びってどうなの?」
「それもそうか……じゃあ『マリネッテ』って呼ぶ?」
「だから呼び捨てはちょっと……暫くは『マリネッテさん』でいいんじゃない」
マルセルに名前を呼ばれるのは変な感じだけど、「マリネッテさん」ねえ。
「わかったわよ、それでよろしくね」
「うん」
マルセルが笑顔で頷く。
はあー今日も弟が可愛い。
「じゃあ私もマルセルのこと『マルセイラくん』呼びかなあ」
「え!?」
「だって愛称で呼び合うような仲じゃないし?」
仕方ないだろう、「マリネッテさん」と「マルセル」ではどう考えても釣り合いが取れてない。
不満そうなマルセルも、姉には逆らえないのか不承不承受け入れた。
そういえば、ゲネルがアカデミーに来てる事をマルセルは知ってるのだろうか。
マリナは昨日のゲネルの事について言おうか言うまいか、考え倦ねている内に教室へと着いてしまった。
(ま、あとでもいいか)
「じゃあね」
「うん」
廊下側と窓際、間に一つ挟んだ離れた席はおしゃべりするには遠い位置だ。
マリナ達は教室へ入る前に軽く挨拶をして別れ、別々に席へと着いた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
授業も滞り無く終わり、放課後になった。
マルセルは騎士部を見に行くって言ってたし、どうしようか……。
寮に戻ってもすることはないし……図書室とか……部活動……。
「ねえねえ、マリナちゃんって生徒会の人?」
マリナがオリエンテーションで渡された学院の案内パンフレットをつらつらと見ていると、前の席のヒイロが振り返って唐突に聞いてきた。
彼女はいつも男子に囲まれていて、話すのは昨日の朝以来だ。
相変わらず今日も可愛い。
「ああ、うん……そうみたい」
昨日強引に連れて行かれ昼食会に参加し、いつの間にか契約書にサインしていた。
あの様子では有無も言わせぬ感じだったが、もしかして断る事も出来たのだろうか?
「チッ」
ん?今、舌打ち……。
「あの方々に選ばれるなんて、マリナちゃんスゴいんだね。そんな子と友達なんて私も嬉しい♪」
「え……そんな事……」
……気のせいか……ヒイロは笑顔でそう言ってマリナを褒めてくる。
(あれ?「友達」って言った?もしかして、わたし、ヒイロさんと友達なの?)
これってもしかして初めての友達じゃないだろうかと、嬉しげににやけそうになる顔を気持ち悪がられないようぐっと堪え、何でもない風を装う。
おかげでヒイロの話は半分も耳に届いていなかった。
「それでね、会長のユーリウス様って……」
「おい、行くぞ」
「え?」
ヒイロと話してる最中、いきなり隣のユーゴがガタンと音を立てて立ち上がり、マリナの腕を掴む。
「『行く』って……」
「あ、ちょっと!」
そりゃ、話してる最中の相手がどっか行ったら戸惑うだろう。
ユーゴは、呆気にとられるヒイロを無視して、反論は許さないと言わんばかりに、ぐいぐいとマリナを引き摺り教室を出る。
ユーリといいユーゴといい、腕を引っ張るのは家系ですか、そうですか。
「い、痛いんだけど……」
「あ……ごめん……」
さすがに早足で歩くのにも疲れてきて声を掛けると、ユーゴは急に立ち止まって腕を離す。
思ったより力が強かったのに気付いたのか、素直に謝ってきた。
それにしたって……。
「……なんなの?」
「お前な、ちょっとは考えろよ。あんなヤツ、兄さんに近づきたいだけじゃねーか」
「兄さんって……何のこと?」
「あんなヤツ」ってヒイロのことだろうか。
そう言えば何か言い掛けてたような……。
「だから、お前に話しかけたり何か言ってきたりするヤツは、みんな兄さん狙いだってーの」
「まさか。彼女を悪く言わないで」
仮にもクラスメイトを、しかも初めての友達を「あんなヤツ」呼ばわりされて、しかもユーリ狙いだなどと言われて、マリナは珍しく表立ってイラッとした。
「お前はどうか知らないけど、どう見てもピンク頭のヤツは兄さん狙いだろ。そんなのもわかんねえの?」
「わかんないから聞いてるのよ。ちょっとした世間話してただけじゃない」
何でもかんでもユーリに結びつけて牽制してイチャモンを付けてくるユーゴに、マリナは段々腹が立ってくる。
そんな大声で廊下のど真ん中で言い合うマリナとユーゴイルの周りには、いつしか人集りができていた。
「え?ちょっと……これ何だよ」
無言で睨み合っていると、二人の言い合いを見ていた人たちが、いつの間にかユーゴを囲んで詰め寄っていた。
それもこの学院には珍しいガラの悪そうな、タイの色からして上級生たち。
(あ、マズい。わたしの感情が高ぶったから、下僕化の影響が出ちゃってる)
落ち着いて、落ち着いて……とマリナは深呼吸を繰り返す。
「何事だ?」
そこへ、ぱんぱんと手を鳴らし、人集りをかき分けて現れたのはユーリだった。
ユーゴを囲んでいた上級生もはっと我に返り、そそくさと逃げ出す。
蜘蛛の子を散らすように、人集りは霧散していた。
はー助かった。
「兄さん……」
あからさまにホッとしたユーゴ。
「行くよ」
ユーリは、助けたはずの弟には一瞥もくれず、またマリナの腕を掴みずんずんと足早に歩いていく。
だから、痛いってば!
ああ、放って置かれたユーゴイルが泣きそうですよ、会長!
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
そうして連れてこられたのは生徒会室……の中の、昨日昼食会をした反対側の壁にあった扉の中。
そこそこ広い部屋の中は、寮の一部屋と変わらない作りで、ソファセットに机とベッドまであり、まだ奥に扉があった。
そのソファに座らされ、マリナを囲うように背もたれに両腕を付かれると身動きができない。
「君ね、早速何してくれてんの」
「何って……」
「しらばっくれるな、『力』使ったろ?」
「力」……?
もしかして、さっきユーゴイルに腹が立って無意識で放った下僕化オーラの事だろうか。
しかも、随分昨日と雰囲気と口調が違いますが?
「…………」
目を合わせることも出来ず、かと言って上手い言い訳も見付からず、せめてもの抵抗で必死で身体をソファに押し付けユーリから離れようとする。
なのに、ユーリはゆっくりと距離を詰めてこようとにじり寄ってくる。
「君……」
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