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#1:入学前夜~出会い
#1-余談3.覚えてさえいれば、大きくなって意味が解ることもあるんだよw
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<義弟視点>
────────────────────
一番古い記憶は、暗く冷たい土の中だ。
自分の体が上を向いているのか下を向いているのか認識できず、口の中は土が入ってじゃりじゃりする。鼻も土で塞がって息が出来ない。
そこが何処だったのか、いつだったのか、どういう状況だったのか、いまだに思い出せない。
思い出そうとすると頭がひどく痛む。
それに、この話を姉さんにすると、姉さんの顔が泣きそうになる。
姉さんが泣くのは嫌だから、思い出さないほうがいいのかもしれない。
次に古い記憶は、僕を抱きしめる姉さんの小さな手だ。
姉さんはどんな顔してたかな。
抱きしめられてたからわからないや。
「リュー……いえマルセル、あなたはわたしの弟よ」
なんだか泣きそうな声でそう言われて「うん」と頷き、とても嬉しかった記憶。
温かくて柔らかくていい匂いがする大好きな姉さん。
なんでだろう、僕と姉さんが双子の姉弟だって、わかりきった事をわざわざ言われて不思議に感じた思い出。
次は、真っ白な神殿でチョウチョを追いかけて捕まえた日。
父さまと姉さまに連れられて神殿へ行き、綺麗なチョウチョを見かけて捕まえ、姉さんに見せようと歩いていたら、いつの間にか迷子になってしまった。
そこで出会った二人の少年。
今となってはそれが誰だかわかるけど、当時そんな事はわかるわけもなく。
そこで見た氷の細工と交わした約束。
「王宮騎士になる」
今となっては、僕を形成する大事な指針となっている。
それは、僕が守りたい人を幸せにするための第一歩となるための、大事な目標だ。
◀ ◀ ◀ ◀
姉さんが姉さんじゃないと知ったのはいつだっただろう。
姉さんだけじゃなく、父さんも母さんも兄さんも、父さんや母さんや兄さんじゃなかった。
厳密に言えば、血の繋がりがないわけじゃない。
父さんから見れば僕は甥だし、兄さんや姉さんから見れば僕は従弟だ。
オージェ家と言えば、この国でも希少とされる黒髪が有名だ。
元に、お祖父様も父さんも兄さんも姉さんも黒髪だ。
きっと僕を生んだ母さんは黒髪だったんだろうね。
今の母さんと僕だけが違う。
みんなは、年齢を重ねてもいつまでも若々しく美しい母さんと僕が似てるという。
姉さんも「わたしもこんな真っ黒じゃなくて、マルセルみたいな明るい髪が良かったわ」と頭を撫でてくれる。
僕は好きだよ、姉さんのふわふわで艶々の黒い髪。
僕は姉さんと一緒が良かったな。
そう思っていた小さい頃、僕だけが黒髪じゃないことが嫌で、黒いインクを頭から被ったことがある。
残念ながらというか当然のごとく、僕の薄茶の髪に黒いインクが染み込んだところで真っ黒にはならなかった。
姉さんは、泣きながら僕の髪を濡れたタオルで拭いてくれた。
そんな悪戯をした僕のことを誰も叱らなかったけど、僕が黒くなるのはいけないことなんだとその時理解った。
本当はアカデミーへは僕一人で通うつもりだった。
だけど、王宮騎士になる為に一番の近道となる『ロープレ学院』は全寮制が決まりだ。
姉さんを一人屋敷に残しては行けない。
3年間アカデミーへ行ってたゲネルが戻ってきてしまう。
あいつはダメだ、あいつは執事と羊の皮を被った獣だ。
姉さんの瞳に魅入られたフリをして、何度下僕化したことか。
あんなヤツを屋敷に残しておいたら、姉さんが獣に食われてしまう。
専属侍女のメルもダメだ。
今は大人しくしていてもいつ牙を剥くか分からない。
だから、父さんにお願いして姉さんも一緒に通えるよう説得してもらった。
最初は渋っていた姉さんも、「僕のためなら」って折れてくれた。
まあ多分、父さんでダメなら僕が「姉さん、お願い♪」と言えば聞いてくれるけどね。
だって、姉さん、僕には甘いんだものw
▶ ▶ ▶ ▶
寮の裏庭で日課としている素振りを終えた。
辺りは大分薄暗くなってきている。
構えていた木刀を下ろし、鞄から取り出したタオルで汗を拭いていると、不意に感じる人の気配。
「誰?」
「よくわかったね、完全に気配を消したと思っていたのに」
「……会長?」
茂みを割って出てきたのは生徒会長のユーリウス先輩だった。
「こんばんは、素振り?」
そう言って会長は人好きのする笑顔をして近づいてくる。
「ええ、まあ」
「ちゃんと約束、覚えていたんだね」
「……もちろん」
お互い「何の」とは言わない。
「さすが、オージェ家の『黒』だね」
目の前に立つ穏やかな笑みを浮かべる会長が、唐突に空恐ろしく思える。
この人は……どこまで知っているんだろう。
そして、知っている事を僕に隠そうともしないなんて。
「何のことです?」
「敵」か?「味方」か?
まあ、少なくとも認められてはいるのだろうか。
判断がつかない今はまだ知らないフリで笑顔を返しておこう。
ん?今一瞬空気が変わったような……。
「君は……ちゃんとオージェ家に染まってるんだね」
「当たり前じゃないですか、僕の家なんですから」
この人は、僕がオージェ家の者ではないと知っているのか。
アカデミーに申告している名は、「オージェ」ではなく「オーティス」、両親が亡くなった今は叔父の家だ。
僕が「王宮騎士になりたい」とこのアカデミーへの進学許可を父さんにお願いした時、出された条件が「オージェを名乗らない」だった。
それは当然だ、この国の『暗部』を預かるオージェ家が、表に出て王宮騎士になどなれるはずがない。
奇しくも、これで堂々と「オーティス」を名乗れる。
まあ、アカデミー内では家名は明かさない決まりだけど。
「取り敢えず、『ありがとう』と言っておくよ。明日からもよろしくね」
会長、僕もあなたにお礼がいいたいんですよ。
堂々と「オージェ」ではない名を名乗る手段、幼い僕では思いつかなかった方法を教えて下さったことに。
血は継いでいても能力の発現しなかった僕は、オージェでありながらオージェでない。
それでも『黒』を担うものとして、僕に出来ること。
僕の返事を待たず、会長は来た道を戻っていった。
知らずに詰めていた息を吐く。
運動後の汗だけではない、背中を伝う感触が不快だ。
夕食前にシャワーを浴びないと……と、向こうの方に見えるのは女子寮への道を歩く姉さん……とあの長身は……ゲネル?
なんでゲネルがアカデミーにいるの!?
卒業して屋敷で執事補佐になってるんじゃなかったの!?
何のために姉さんをあの家から連れ出したと思ってるんだよ!
ってか、なんであの二人が歩いてるの?
このまま姉さんの部屋に一緒に行くわけ?
僕だってまだ姉さんの部屋に入ってない!
行こうと思えばいつでもセキュリティなんて突破できるけど、いくら弟だからって一応「男子禁制」守ってるんだからね。
このまま部屋凸しようかどうしようか考えながら植木の影に隠れて二人の行く先を見送ると、姉さんたちの後を追う姿があった。
え?ええっ!!今のって……もしかして兄さん?
ゲネルだけならまだしも、あの人まで何してるんだよ。
6年前隣国のアカデミーへ行って、以来一切音沙汰無しだった。
それが、この前急に「飛び級で卒業したからそっち帰るね」なんて連絡してきたから、ちらっと「年が明けたら僕も姉さんも『ロープレ学院』行くんだよね」なんて話をした所だ。
この前の映像通信で数年ぶりに見た通り、少年から青年へと成長した顔ははっきりと覚えている。
くっそう……姉さんと同じ黒髪で、姉さんと同じ薄紫の瞳……僕が欲しい色……羨ましい……。
姉さんはゲネルとさっき部屋に帰ったし、恐らくそれを追っていたであろう兄さん……嫌な予感しかない。
何せあの二人は仲が頗る悪いんだ。
険悪な二人に挟まれて困り果てた顔をしている姉さんの姿が目に浮かぶ。
こんなところでタオルを握り締めてる場合じゃない。
後を追わないと。
僕は小指に嵌めたリングに力を込め女子寮に潜入すると、最上階の姉さんの部屋を目指し廊下を突っ切って外階段をひたすら全速力で駆け上がった。
お行儀が悪いと叱られるかもしれないけれど今は緊急事態だ。(死)
「なにやってるの、姉さんの部屋で!」
息せき切って扉を開けると、案の定二人の睨み合いが始まっていた。
そして、予想通り困った顔の姉さん。
んもう!!なにやってるんだよ!!!
────────────────────
一番古い記憶は、暗く冷たい土の中だ。
自分の体が上を向いているのか下を向いているのか認識できず、口の中は土が入ってじゃりじゃりする。鼻も土で塞がって息が出来ない。
そこが何処だったのか、いつだったのか、どういう状況だったのか、いまだに思い出せない。
思い出そうとすると頭がひどく痛む。
それに、この話を姉さんにすると、姉さんの顔が泣きそうになる。
姉さんが泣くのは嫌だから、思い出さないほうがいいのかもしれない。
次に古い記憶は、僕を抱きしめる姉さんの小さな手だ。
姉さんはどんな顔してたかな。
抱きしめられてたからわからないや。
「リュー……いえマルセル、あなたはわたしの弟よ」
なんだか泣きそうな声でそう言われて「うん」と頷き、とても嬉しかった記憶。
温かくて柔らかくていい匂いがする大好きな姉さん。
なんでだろう、僕と姉さんが双子の姉弟だって、わかりきった事をわざわざ言われて不思議に感じた思い出。
次は、真っ白な神殿でチョウチョを追いかけて捕まえた日。
父さまと姉さまに連れられて神殿へ行き、綺麗なチョウチョを見かけて捕まえ、姉さんに見せようと歩いていたら、いつの間にか迷子になってしまった。
そこで出会った二人の少年。
今となってはそれが誰だかわかるけど、当時そんな事はわかるわけもなく。
そこで見た氷の細工と交わした約束。
「王宮騎士になる」
今となっては、僕を形成する大事な指針となっている。
それは、僕が守りたい人を幸せにするための第一歩となるための、大事な目標だ。
◀ ◀ ◀ ◀
姉さんが姉さんじゃないと知ったのはいつだっただろう。
姉さんだけじゃなく、父さんも母さんも兄さんも、父さんや母さんや兄さんじゃなかった。
厳密に言えば、血の繋がりがないわけじゃない。
父さんから見れば僕は甥だし、兄さんや姉さんから見れば僕は従弟だ。
オージェ家と言えば、この国でも希少とされる黒髪が有名だ。
元に、お祖父様も父さんも兄さんも姉さんも黒髪だ。
きっと僕を生んだ母さんは黒髪だったんだろうね。
今の母さんと僕だけが違う。
みんなは、年齢を重ねてもいつまでも若々しく美しい母さんと僕が似てるという。
姉さんも「わたしもこんな真っ黒じゃなくて、マルセルみたいな明るい髪が良かったわ」と頭を撫でてくれる。
僕は好きだよ、姉さんのふわふわで艶々の黒い髪。
僕は姉さんと一緒が良かったな。
そう思っていた小さい頃、僕だけが黒髪じゃないことが嫌で、黒いインクを頭から被ったことがある。
残念ながらというか当然のごとく、僕の薄茶の髪に黒いインクが染み込んだところで真っ黒にはならなかった。
姉さんは、泣きながら僕の髪を濡れたタオルで拭いてくれた。
そんな悪戯をした僕のことを誰も叱らなかったけど、僕が黒くなるのはいけないことなんだとその時理解った。
本当はアカデミーへは僕一人で通うつもりだった。
だけど、王宮騎士になる為に一番の近道となる『ロープレ学院』は全寮制が決まりだ。
姉さんを一人屋敷に残しては行けない。
3年間アカデミーへ行ってたゲネルが戻ってきてしまう。
あいつはダメだ、あいつは執事と羊の皮を被った獣だ。
姉さんの瞳に魅入られたフリをして、何度下僕化したことか。
あんなヤツを屋敷に残しておいたら、姉さんが獣に食われてしまう。
専属侍女のメルもダメだ。
今は大人しくしていてもいつ牙を剥くか分からない。
だから、父さんにお願いして姉さんも一緒に通えるよう説得してもらった。
最初は渋っていた姉さんも、「僕のためなら」って折れてくれた。
まあ多分、父さんでダメなら僕が「姉さん、お願い♪」と言えば聞いてくれるけどね。
だって、姉さん、僕には甘いんだものw
▶ ▶ ▶ ▶
寮の裏庭で日課としている素振りを終えた。
辺りは大分薄暗くなってきている。
構えていた木刀を下ろし、鞄から取り出したタオルで汗を拭いていると、不意に感じる人の気配。
「誰?」
「よくわかったね、完全に気配を消したと思っていたのに」
「……会長?」
茂みを割って出てきたのは生徒会長のユーリウス先輩だった。
「こんばんは、素振り?」
そう言って会長は人好きのする笑顔をして近づいてくる。
「ええ、まあ」
「ちゃんと約束、覚えていたんだね」
「……もちろん」
お互い「何の」とは言わない。
「さすが、オージェ家の『黒』だね」
目の前に立つ穏やかな笑みを浮かべる会長が、唐突に空恐ろしく思える。
この人は……どこまで知っているんだろう。
そして、知っている事を僕に隠そうともしないなんて。
「何のことです?」
「敵」か?「味方」か?
まあ、少なくとも認められてはいるのだろうか。
判断がつかない今はまだ知らないフリで笑顔を返しておこう。
ん?今一瞬空気が変わったような……。
「君は……ちゃんとオージェ家に染まってるんだね」
「当たり前じゃないですか、僕の家なんですから」
この人は、僕がオージェ家の者ではないと知っているのか。
アカデミーに申告している名は、「オージェ」ではなく「オーティス」、両親が亡くなった今は叔父の家だ。
僕が「王宮騎士になりたい」とこのアカデミーへの進学許可を父さんにお願いした時、出された条件が「オージェを名乗らない」だった。
それは当然だ、この国の『暗部』を預かるオージェ家が、表に出て王宮騎士になどなれるはずがない。
奇しくも、これで堂々と「オーティス」を名乗れる。
まあ、アカデミー内では家名は明かさない決まりだけど。
「取り敢えず、『ありがとう』と言っておくよ。明日からもよろしくね」
会長、僕もあなたにお礼がいいたいんですよ。
堂々と「オージェ」ではない名を名乗る手段、幼い僕では思いつかなかった方法を教えて下さったことに。
血は継いでいても能力の発現しなかった僕は、オージェでありながらオージェでない。
それでも『黒』を担うものとして、僕に出来ること。
僕の返事を待たず、会長は来た道を戻っていった。
知らずに詰めていた息を吐く。
運動後の汗だけではない、背中を伝う感触が不快だ。
夕食前にシャワーを浴びないと……と、向こうの方に見えるのは女子寮への道を歩く姉さん……とあの長身は……ゲネル?
なんでゲネルがアカデミーにいるの!?
卒業して屋敷で執事補佐になってるんじゃなかったの!?
何のために姉さんをあの家から連れ出したと思ってるんだよ!
ってか、なんであの二人が歩いてるの?
このまま姉さんの部屋に一緒に行くわけ?
僕だってまだ姉さんの部屋に入ってない!
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え?ええっ!!今のって……もしかして兄さん?
ゲネルだけならまだしも、あの人まで何してるんだよ。
6年前隣国のアカデミーへ行って、以来一切音沙汰無しだった。
それが、この前急に「飛び級で卒業したからそっち帰るね」なんて連絡してきたから、ちらっと「年が明けたら僕も姉さんも『ロープレ学院』行くんだよね」なんて話をした所だ。
この前の映像通信で数年ぶりに見た通り、少年から青年へと成長した顔ははっきりと覚えている。
くっそう……姉さんと同じ黒髪で、姉さんと同じ薄紫の瞳……僕が欲しい色……羨ましい……。
姉さんはゲネルとさっき部屋に帰ったし、恐らくそれを追っていたであろう兄さん……嫌な予感しかない。
何せあの二人は仲が頗る悪いんだ。
険悪な二人に挟まれて困り果てた顔をしている姉さんの姿が目に浮かぶ。
こんなところでタオルを握り締めてる場合じゃない。
後を追わないと。
僕は小指に嵌めたリングに力を込め女子寮に潜入すると、最上階の姉さんの部屋を目指し廊下を突っ切って外階段をひたすら全速力で駆け上がった。
お行儀が悪いと叱られるかもしれないけれど今は緊急事態だ。(死)
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