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#2:邂逅~それぞれの思い
#2-4.くれぐれも慰謝料請求はご遠慮下さい
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ユーリは大股でこちらへやってきて、マリナからハロルドをベリっと引き剥がした。
「お前……ユーリ、なんでここに」
「学院長が慌てふためきながら出ていくのを見たのでね、何かあるなと」
嘘だ。出ていくのを見た割に来るのが遅い。
絶対、会長、扉の外で二人のやり取り聞いていましたよね。
「わかってるなら放っておいてくれないか」
「そういうわけにも……彼女、大事な生徒会役員ですし」
「それとこれとは関係ない。私は一個人として、今彼女と大事な話をしている」
今度はハロルドがユーリに食って掛かる。
あのー二人で揉めてるなら、出て行っていいですかね?
マリナは気付かれないようそっとソファから立ち上がって機を窺った。
「殿下は魅入られてるだけなんですよ」
そんな事もわからないのかと言わんばかりに、ユーリは小馬鹿にしたような口調でそう告げる。
「魅入られ?俺が、誰に?」
「魔王に」
「魔王?」
ハロルドがマリナの方を向いて指をさす。
(あれ?わたし関係ある感じ?)
二人が言い合っている間に出て行こうとしていたマリナに視線が集まる。
「君……オージェだからって……まさか『魔王』なのか?」
「えーと……はい、まあ……一応」
一応どころか、次代の魔王決定なんだけど、まだまだ先のことだし言わなくていいか。
それより、何だか分からない内に婚約を経て結婚まで行くことを考えたら、身バレするほうがまだマシだ。
(どうせ会長にはバレているし)
「嘘だ……俺の……この気持ちが……魅入られた……まやかしだと?」
「その証拠に、ほら……」
逃げる間もなくユーリに顎を捕まれ口を開かされる。
また、ユーリの綺麗な長い指が入ってきて、敏感な舌先を優しく撫でる。
「ここに魔王の……」
「あうぅ……んんっ……んぐっ……」
(ダメ……またあのキモチイイのがやってくる)
ユーリに腰を抱かれ、上向きにされて開いた口腔内を指で弄られ快感が込み上げる。
柔らかい舌を散々弄くり回した指を抜かれ、立っていられなくてぐにゃりと身体が沈みそうになるのを支えられた。
力なくくったりと凭れ掛かるマリナの顎をくいと指で持ち上げ、今度は口唇が押し付けられ……。
「だ…………めっ!!!」
マリナは力の抜けた身体を必死で動かし、ゼロ距離寸前で両手を突っぱねてユーリから距離をとる。
(そう簡単に何度もキスされるもんですか)
この前のは不可抗力だから仕方な……くは無いけど、あれは犬に噛まれたと思って忘れよう。
そう易々と何度も意識を持っていかれてはオージェの名が廃る。
「へえ……」
逃げたマリナに腹を立てるかと思いきや、ユーリは何やら楽しげに口端を歪めて笑う。
「俺を拒むなんてな。この前はあんなに気持ち良さそうにしてたのに?」
「ちがっ……この前は……」
マリナはユーリにそう詰め寄られて、初めての身体の奥が疼くようなキスを思い出し思わず指先で自分の口唇をなぞった。
「思い出したのか。顔が赤くなったな」
いつの間にか距離を詰めて目の前に立つユーリに、するりと頬を撫でられマリナは得体の知れない恐怖を感じ身体を震わせた。
見上げるとユーリが少しだけ口角を上げて微笑んだような気がした。
「『この前』って何だ?お前ら……そういう仲なのか?」
さっきプロポーズした時とは真逆の、強く鋭い視線でハロルドが睨む。
完全に蚊帳の外にされたのを怒ってるのか、ハロルドの顔は真っ赤だ。
「まさか、そんなわけないでしょう。コレは『魔王』ですよ」
(……だよね、会長はわたしを征服したいだけなんだもんね)
マリナはユーリにコレ扱いされたことに軽いショックを受け、腰が抜けてとすんとソファに座り込むと、隣に座ってきたユーリが肩を掴んで抱き寄せてきた。
「だったら……」
「俺には……『勇者』には効かないんですよ、魔王の『魅了』は」
「なら俺だって……」
「殿下はダメです」
マリナの方に手を伸ばそうとしたハロルドの腕を、ユーリがぴしゃりと叩いて落とす。
「なんでだよ」
「あなた、魔王の『魅了』にかかってるからですよ」
(え?わたし、殿下に力使ってないよ?)
手は握られて瞳も合わせたけど、手袋してるしコンタクトもしてる。
何より、能力出してない。
マリナは自分の姿を確認し、ユーリとハロルドを交互に見やる。
「どうやら10年前の、俺じゃ上手く祓いきれてなかったようだね」
「……じゅうねんまえ?」
あ!と思い出す。
あの日、神殿で殿下たちと出会った日。
マルセルが迷子になって、生意気で偉そうな少年がいて、力を使って『お願い』した。
さっき思い出せなかったもう一人の少年は、ユーリだったのか。
マルセルが見付かったことにホッとして、気付けば少年たちはいなくなっていた。
お願いした少年に使った力を『解除』する前に。
その事が気がかりだったけど、まだ小さいマリナが掛けた『下僕化』など、放っておいてもすぐに解除されるだろうと、父にもそう聞いたから安心していた。
まさか、あの『下僕化』が掛かったまま!?
(ん?あれ?おかしくない?)
そもそも、下僕化とは人を従わせる、こちらの意のままに言うことを聞かせる能力のはず。
なのに、いくら10年前の下僕化が解けてないからって、なぜマリナはハロルドに結婚を迫られているのか。
「あの……会長も、殿下も……その……ご存知なんですか?『下僕化』について」
おずおずと切り出すと、二人は顔を見合わせてやれやれという仕草をする。
なんだかバカにされた様な気がしてちょっとムッとしてしまった。
「今代も当主も君もオージェ家の人間は滅多に王都に来ることはないが、来れば大勢の老若男女が魅了に掛かって倒れ伏すと有名ではないか。それほどオージェ固有の力は大きんだろう?」
「そうだ、我が『勇者』の家系でさえ、正面から瞳を合わせ気を抜くと骨抜きにされるというのに……俺が耐性が強くてよかったよ」
(ん?なにか聞いてた話と違う?)
オージェ家の特殊な力は『下僕化』のはず。
祖父も父も、王都は貴族同士の柵が厄介だと、社交界なんて人間関係が面倒だと、そう言って領地にいるって話じゃなかっただろうか。
二人の話を聞いてると、祖父や父から聞いていた力とは違うものを感じる。
だって、シルシの無い父に下僕化の能力はないし。
あれ?下僕化って魔王じゃなくても使えるの?
「だったら……」
いつの間にかハロルドがマリナの反対隣に座ってきて、ユーリから奪い取るようにマリナの細い腰を引き寄せた。
3人掛けのソファでもそんなに寄ったら狭いのですが。
「いつ解除されるんだ、俺に掛かった『魅了』は」
(だから、何もしてませんってば!)
「君は……はあ……いつまでこんなにいい匂いをさせて……俺を惑わせる?」
マリナの髪に顔を埋め、ちゅっちゅっと軽い音を立ててキスを落としながら、先程とは打って変わった甘い声でハロルドがそう囁く。
(えー『下僕化』ってこんなだっけ?でも、ゲネルも時々掛かって私の足舐めるしな……)
もし10年前にハロルドに掛けた『下僕化』が未だ解けてないとして、今更解除できるもの?
そう考えている内に、ハロルドは耳に掛かったマリナの髪を払い除け、耳朶に舌を這わせはじめた。
「あ……ちょっ……耳……ダ……メぇ……」
ぴちゃぴちゃと音を立てて耳朶を舐め、軽く歯を立てて甘噛みする。
ぞくぞくと腰から這い上がってくる快感に、どんどん思考が侵食されていくのを感じる。
先程のユーリは何とか突っぱねたが、ここまで感じ入ってしまうと力が入らな……。
「あうっ…………んんっ……」
「耳弱いのか……可愛い声……」
「やっ……」
尖らせた舌の先で耳穴をぐちゅぐちゅと弄られ、吐息で囁かれ、徐々に息が上がってくる。
(会長も見てないで殿下止めてよ!)
ボウっとしてくる意識を何とか持ちこたえ、頭を振ってハロルドから離れる。
まあ……やるしかないか……殴るけど。
「お、王子殿下……。その節は……んっ……お世話になりました。解除……させていただきますので、よ……ろしいでしょうか……っ」
何がなんだかわからないけど、解除して殿下が離れてくれるならそれでいい。
解除し損ねたこちらが悪いし、ここはとっとと元に戻っていただこう。
マリナは、ぎゅうぎゅうとくっ付いてくるハロルドを両手で突っぱね、かろうじて距離を取る。
「ああ、いいとも。いつでもどうぞ」
頬を赤らめ瞳をとろんとさせたハロルドが顔を上げる。
大丈夫かなあ、上手く解除できますように。
「では……どりゃ!」
ソファからすっくと立ち上がり、ハロルドの頭にげんこつを食らわす。
まさかそんな事をされると思ってなかったハロルドも、そんな事をハロルドにすると思ってなかったユーリも、目が点になっている。
そりゃそうか。
「では、失礼します!」
いくら能力を解除するためとは言え、ハロルド王子殿下を殴ってしまった。
不敬罪で捕まる前に院長室を出て、よろ付く脚を何とか動かし全速力で走ってその場から逃げた。
廊下に出て闇雲に走り、何度か角を曲がり……幸いにも追ってくる気配は……ない。
(良かったー!)
「お嬢!捜したよ、大丈夫!?」
「ゲネルぅ~」
幸いにも、途中で出会ったゲネルに大きく腕を広げられてその中に飛び込む。
ああ、やっぱりゲネルの腕の中は安心する。
(うわーん、怖かったよー!)
腕の中でグズるマリナを、ゲネルは優しく抱き締めていた。
────────────────────
魅了≠下僕化
認識の齟齬が起こってます
「お前……ユーリ、なんでここに」
「学院長が慌てふためきながら出ていくのを見たのでね、何かあるなと」
嘘だ。出ていくのを見た割に来るのが遅い。
絶対、会長、扉の外で二人のやり取り聞いていましたよね。
「わかってるなら放っておいてくれないか」
「そういうわけにも……彼女、大事な生徒会役員ですし」
「それとこれとは関係ない。私は一個人として、今彼女と大事な話をしている」
今度はハロルドがユーリに食って掛かる。
あのー二人で揉めてるなら、出て行っていいですかね?
マリナは気付かれないようそっとソファから立ち上がって機を窺った。
「殿下は魅入られてるだけなんですよ」
そんな事もわからないのかと言わんばかりに、ユーリは小馬鹿にしたような口調でそう告げる。
「魅入られ?俺が、誰に?」
「魔王に」
「魔王?」
ハロルドがマリナの方を向いて指をさす。
(あれ?わたし関係ある感じ?)
二人が言い合っている間に出て行こうとしていたマリナに視線が集まる。
「君……オージェだからって……まさか『魔王』なのか?」
「えーと……はい、まあ……一応」
一応どころか、次代の魔王決定なんだけど、まだまだ先のことだし言わなくていいか。
それより、何だか分からない内に婚約を経て結婚まで行くことを考えたら、身バレするほうがまだマシだ。
(どうせ会長にはバレているし)
「嘘だ……俺の……この気持ちが……魅入られた……まやかしだと?」
「その証拠に、ほら……」
逃げる間もなくユーリに顎を捕まれ口を開かされる。
また、ユーリの綺麗な長い指が入ってきて、敏感な舌先を優しく撫でる。
「ここに魔王の……」
「あうぅ……んんっ……んぐっ……」
(ダメ……またあのキモチイイのがやってくる)
ユーリに腰を抱かれ、上向きにされて開いた口腔内を指で弄られ快感が込み上げる。
柔らかい舌を散々弄くり回した指を抜かれ、立っていられなくてぐにゃりと身体が沈みそうになるのを支えられた。
力なくくったりと凭れ掛かるマリナの顎をくいと指で持ち上げ、今度は口唇が押し付けられ……。
「だ…………めっ!!!」
マリナは力の抜けた身体を必死で動かし、ゼロ距離寸前で両手を突っぱねてユーリから距離をとる。
(そう簡単に何度もキスされるもんですか)
この前のは不可抗力だから仕方な……くは無いけど、あれは犬に噛まれたと思って忘れよう。
そう易々と何度も意識を持っていかれてはオージェの名が廃る。
「へえ……」
逃げたマリナに腹を立てるかと思いきや、ユーリは何やら楽しげに口端を歪めて笑う。
「俺を拒むなんてな。この前はあんなに気持ち良さそうにしてたのに?」
「ちがっ……この前は……」
マリナはユーリにそう詰め寄られて、初めての身体の奥が疼くようなキスを思い出し思わず指先で自分の口唇をなぞった。
「思い出したのか。顔が赤くなったな」
いつの間にか距離を詰めて目の前に立つユーリに、するりと頬を撫でられマリナは得体の知れない恐怖を感じ身体を震わせた。
見上げるとユーリが少しだけ口角を上げて微笑んだような気がした。
「『この前』って何だ?お前ら……そういう仲なのか?」
さっきプロポーズした時とは真逆の、強く鋭い視線でハロルドが睨む。
完全に蚊帳の外にされたのを怒ってるのか、ハロルドの顔は真っ赤だ。
「まさか、そんなわけないでしょう。コレは『魔王』ですよ」
(……だよね、会長はわたしを征服したいだけなんだもんね)
マリナはユーリにコレ扱いされたことに軽いショックを受け、腰が抜けてとすんとソファに座り込むと、隣に座ってきたユーリが肩を掴んで抱き寄せてきた。
「だったら……」
「俺には……『勇者』には効かないんですよ、魔王の『魅了』は」
「なら俺だって……」
「殿下はダメです」
マリナの方に手を伸ばそうとしたハロルドの腕を、ユーリがぴしゃりと叩いて落とす。
「なんでだよ」
「あなた、魔王の『魅了』にかかってるからですよ」
(え?わたし、殿下に力使ってないよ?)
手は握られて瞳も合わせたけど、手袋してるしコンタクトもしてる。
何より、能力出してない。
マリナは自分の姿を確認し、ユーリとハロルドを交互に見やる。
「どうやら10年前の、俺じゃ上手く祓いきれてなかったようだね」
「……じゅうねんまえ?」
あ!と思い出す。
あの日、神殿で殿下たちと出会った日。
マルセルが迷子になって、生意気で偉そうな少年がいて、力を使って『お願い』した。
さっき思い出せなかったもう一人の少年は、ユーリだったのか。
マルセルが見付かったことにホッとして、気付けば少年たちはいなくなっていた。
お願いした少年に使った力を『解除』する前に。
その事が気がかりだったけど、まだ小さいマリナが掛けた『下僕化』など、放っておいてもすぐに解除されるだろうと、父にもそう聞いたから安心していた。
まさか、あの『下僕化』が掛かったまま!?
(ん?あれ?おかしくない?)
そもそも、下僕化とは人を従わせる、こちらの意のままに言うことを聞かせる能力のはず。
なのに、いくら10年前の下僕化が解けてないからって、なぜマリナはハロルドに結婚を迫られているのか。
「あの……会長も、殿下も……その……ご存知なんですか?『下僕化』について」
おずおずと切り出すと、二人は顔を見合わせてやれやれという仕草をする。
なんだかバカにされた様な気がしてちょっとムッとしてしまった。
「今代も当主も君もオージェ家の人間は滅多に王都に来ることはないが、来れば大勢の老若男女が魅了に掛かって倒れ伏すと有名ではないか。それほどオージェ固有の力は大きんだろう?」
「そうだ、我が『勇者』の家系でさえ、正面から瞳を合わせ気を抜くと骨抜きにされるというのに……俺が耐性が強くてよかったよ」
(ん?なにか聞いてた話と違う?)
オージェ家の特殊な力は『下僕化』のはず。
祖父も父も、王都は貴族同士の柵が厄介だと、社交界なんて人間関係が面倒だと、そう言って領地にいるって話じゃなかっただろうか。
二人の話を聞いてると、祖父や父から聞いていた力とは違うものを感じる。
だって、シルシの無い父に下僕化の能力はないし。
あれ?下僕化って魔王じゃなくても使えるの?
「だったら……」
いつの間にかハロルドがマリナの反対隣に座ってきて、ユーリから奪い取るようにマリナの細い腰を引き寄せた。
3人掛けのソファでもそんなに寄ったら狭いのですが。
「いつ解除されるんだ、俺に掛かった『魅了』は」
(だから、何もしてませんってば!)
「君は……はあ……いつまでこんなにいい匂いをさせて……俺を惑わせる?」
マリナの髪に顔を埋め、ちゅっちゅっと軽い音を立ててキスを落としながら、先程とは打って変わった甘い声でハロルドがそう囁く。
(えー『下僕化』ってこんなだっけ?でも、ゲネルも時々掛かって私の足舐めるしな……)
もし10年前にハロルドに掛けた『下僕化』が未だ解けてないとして、今更解除できるもの?
そう考えている内に、ハロルドは耳に掛かったマリナの髪を払い除け、耳朶に舌を這わせはじめた。
「あ……ちょっ……耳……ダ……メぇ……」
ぴちゃぴちゃと音を立てて耳朶を舐め、軽く歯を立てて甘噛みする。
ぞくぞくと腰から這い上がってくる快感に、どんどん思考が侵食されていくのを感じる。
先程のユーリは何とか突っぱねたが、ここまで感じ入ってしまうと力が入らな……。
「あうっ…………んんっ……」
「耳弱いのか……可愛い声……」
「やっ……」
尖らせた舌の先で耳穴をぐちゅぐちゅと弄られ、吐息で囁かれ、徐々に息が上がってくる。
(会長も見てないで殿下止めてよ!)
ボウっとしてくる意識を何とか持ちこたえ、頭を振ってハロルドから離れる。
まあ……やるしかないか……殴るけど。
「お、王子殿下……。その節は……んっ……お世話になりました。解除……させていただきますので、よ……ろしいでしょうか……っ」
何がなんだかわからないけど、解除して殿下が離れてくれるならそれでいい。
解除し損ねたこちらが悪いし、ここはとっとと元に戻っていただこう。
マリナは、ぎゅうぎゅうとくっ付いてくるハロルドを両手で突っぱね、かろうじて距離を取る。
「ああ、いいとも。いつでもどうぞ」
頬を赤らめ瞳をとろんとさせたハロルドが顔を上げる。
大丈夫かなあ、上手く解除できますように。
「では……どりゃ!」
ソファからすっくと立ち上がり、ハロルドの頭にげんこつを食らわす。
まさかそんな事をされると思ってなかったハロルドも、そんな事をハロルドにすると思ってなかったユーリも、目が点になっている。
そりゃそうか。
「では、失礼します!」
いくら能力を解除するためとは言え、ハロルド王子殿下を殴ってしまった。
不敬罪で捕まる前に院長室を出て、よろ付く脚を何とか動かし全速力で走ってその場から逃げた。
廊下に出て闇雲に走り、何度か角を曲がり……幸いにも追ってくる気配は……ない。
(良かったー!)
「お嬢!捜したよ、大丈夫!?」
「ゲネルぅ~」
幸いにも、途中で出会ったゲネルに大きく腕を広げられてその中に飛び込む。
ああ、やっぱりゲネルの腕の中は安心する。
(うわーん、怖かったよー!)
腕の中でグズるマリナを、ゲネルは優しく抱き締めていた。
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魅了≠下僕化
認識の齟齬が起こってます
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