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#3:慣れてきた学院生活~新たな出会い
#3-8.ill担当は神絵師に違いない
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「さて、今日は皆さんの属性を調べたいと思います」
いつもは静かな教室内が微かにざわつく。
貴族平民に関わらず、魔力というものを全ての人は持っており──稀に魔力のない人もいるにはいるが──5歳になる年に教会や神殿で検査してもらう。
ただ、5歳では最も強く出る第一属性しか出ず、15、6歳の検査で最終的に持っている属性を調べることが出来る。
成長につれ、火・水・土・風・光・闇の基本6属性に加え、単発で複数現れる者、また、複数の属性が合わさって新たな属性が現れる者も出てくるのだ。
「前回説明した通り──」
このアカデミーは、校門に特別な結界が張られており、一定量の魔力がないと構内に入れない仕組みになっている。
なので、当然ながらアカデミーの生徒は、皆ある程度の魔力持ちである。
「水晶は行き渡りましたね。では魔力を流してみて下さい」
5歳の検査では、マリナの基本属性は闇でマルセルは水だったと聞いた。
(手袋と指輪は外しておいた方がいいかな)
両手に乗った透明な水晶が、魔力を込めることによって様々な変化をもたらす。
マリナは、体内を巡る魔力の流れを掌に集中させ、ゆっくりと流していく。
(何が出るか……)
不純物など一切なく丸く透明な水晶は、マリナの手が触れている所から墨を流し込んだように黒く染まって行った。
(ここまでは5歳の時と同じ)
一頻り真っ黒に染まった水晶にそのまま魔力を流し続けると、暫くしてキラキラとした物が渦を巻き始め、核のように水晶の中心で光り出す。
「ユーゴイル君は、基本属性が光で中に火と風ですか。これは炎属性ですな」
「兄さんは氷だったからオレも同じのが良かったんだけど、そっか炎かー」
「マルセイラ君は、基本属性が水で土と風がありますね。これは氷属性と地属性ですね」
横ですごく物騒な属性が聞こえる。
(二人とも、戦ったらすごく強そうね……)
「マリネッテ嬢、ふむ……貴女は珍しい闇と光の属性持ちですか。混じり合い、合わさった属性は……」
「え?わたしが光属性持ち?」
マリナの水晶をしげしげと覗き込んで教師はううむと唸った。
オージェ家は、基本属性が闇の者が圧倒的に多い。その上で、火属性だったり水属性だったり二次属性が現れたりする。
しかし、光属性は……。
「それにしても、その水晶の中を満たせるとは、流石にあなた方は魔力が高いですね」
教師は最後尾のマリナたちにそう一言残して機嫌よく去っていき、引き続き他の生徒の水晶を覗き込んでいる。
「あーん、半分も変わらないー!」
前の席のヒイロが隣の席の男子に文句を言っていた。
ちらっと覗くと、ヒイロの水晶は1/3程砂が貯まり表面がうねうねと波打っていた。
(あれは、土属性?)
隣の男子のは、溜まった水に火花が散っていた。
(こっちは……雷?)
人それぞれ、持っている属性は多種多様なんだなとマリナは物思いに耽った。
(光属性か……)
闇属性に関しては、5歳の時点で解っていたことだから、それ相応の鍛錬はしてきていた。
突然光属性も持ち合わせていると言われても、まるで実感がない。
「図書室……行こうかな」
なにはともあれ、知識は必要だ。
幸いにもこのアカデミーには、ウルバーン国立図書館にも引けを取らない蔵書数を誇る図書塔がある。
マリナの放課後の行き先が決定した。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
入口の司書に属性に関する資料の場所を尋ねると、いつものフロアとは全然別の場所にあることがわかった。
入門書から専門書まで網羅した一角は、マリナの知らない言語で書かれたものもあり、かなりの冊数だった。
その中から数冊選び、いつものお気に入りの場所へ座る。
(基本6属性火・水・土・風・光・闇に、派生した炎・雷・氷・地ね……)
子供の頃に学んだ極々初期の魔法学だ。
属性には相性があり、矢印の向かう方に強く効果があり、逆は効果が弱いと。
炎←──火──→雷
↑ ↙ ↑ ↖ ↑
土←─光↔闇─→水
↓ ↘ ↓ ↗ ↓
地←──風──→氷
(大雑把に図にするとこんな感じかな)
「光ね……」
いつから光属性など備わったのだろう。
父も母も兄も光属性など持ち合わせていない。
(お父様に聞くべきかしら)
アカデミーに入って初めての父への手紙を書くべきか悩み始めた時だった。
「属性調べたんだって?」
マリナは突然掛けられた声に、驚いて飛び上がりそうになった。
この場所へ来る人など、2年のトーマぐらいなのに。
「会長……?」
「へー『新解釈・魔法属性の発現』ねえ。意外な属性でも見つかった?」
ユーリとこうして話すのは、院長室でハロルドとのいざこざがあってあって以来だ。
マリナの中ではすっかり終わったことになっているが、ユーリ達にはどうなのだろう。
「どうした?」
「あ……いえ……意外というか」
「どんな属性?」
マリナは何も言ってこないユーリに「意外」と言う言葉を使ったのだが、先程の問いかけに対する返事だと思われたらしい。
声を掛けただけでなく腰を落ち着けて話すつもりなのか、ユーリはマリナの隣りに座った。
「えっと、わたしは元々の第一属性が闇だったのですが、今日の授業で光属性もあるとわかって」
「うん」
「わたしの知る限り、家の誰にも光属性などなくて……」
「なるほど、光属性……ね」
マリナの言葉を聞いたユーリは、腕を組んでソファに深く座り何かを考えているようだった。
額にかかる癖のない金の髪といい、影を落とすほどの髪と同じ金色の長い睫毛といい、すっと通った高い鼻といい、引き結ばれた薄い口唇といい……。
(黙っていればカッコいいんだよね……小説の挿絵の人みたい)
「ちょっと試したいことがあるのだが」
「!!!」
ユーリの顔をしげしげと近くで覗き込んでいる所に、本人がぱっと目を開けた。
「どうした?」
「……いえ…………何も……」
(びっ…………くりした……)
「そうか、少し手を貸してくれないか」
「手……ですか」
「ああ」
おずおずと手を差し出すと「両手とも」と言われ、両手を差し出す。
ユーリと向かい合って手を握り合うと、「これ取るよ」と抵抗する間もなくするりとレースの手袋を抜かれた。
「あ……」
「何か?」
「いえ……」
物心つく頃から屋敷の外ではいつも手袋をしていたマリナは、それを失って何とも心もとない気持ちだった。
言うなれば「眼鏡の人が裸眼で外に出る感じ」だろうか。
殆ど無い「素手を触られる」という行為が、何とも恥ずかしい。
「手、触られるの恥ずかしい?」
「そ……んなこと」
「ふーん……」
手を繋ぐことに何の意味があるのか、ユーリはマリナの掌を擽ったり手の甲を撫でたり指を絡めて握ったりして弄った。
あまりにこそばゆくて手を引こうとしても、強く握られてる感じはないのにビクともしない。
諦めて好きにさせていると、握った掌からじわじわと温かいものが流れてくる感触がし始めた。
「あ…………ふ……」
「どう……?わかる?」
「えっと……?」
(わたしは今何をされてるの?)
何をされているのかわからないが、不快さはない。
温かい何かが流れて自分の中を巡ってまた出ていく感じ。
一旦流れを掴めば、マリナからも意図して巡らせることが出来た。
「そう……上手だね」
向かい合った端正な顔が近付きコツンと額を合わせられると、さらにキュッと強く指を絡め手を握られる。
「んっ……」
思わず小さく声が出てしまった。
触れた額からも熱が伝わってくる。
マリナは、今感じてるこの感覚が「快感」だとわかり頬を赤らめた。
「……俺の属性と混じったのかもな」
(やっぱり綺麗な顔だな……)
だから更に近付いてくるユーリを避けられなくても仕方ない。
口唇が触れる瞬間そう言って笑うユーリを、マリナはそっと瞼を伏せて受け止めた。
いつもは静かな教室内が微かにざわつく。
貴族平民に関わらず、魔力というものを全ての人は持っており──稀に魔力のない人もいるにはいるが──5歳になる年に教会や神殿で検査してもらう。
ただ、5歳では最も強く出る第一属性しか出ず、15、6歳の検査で最終的に持っている属性を調べることが出来る。
成長につれ、火・水・土・風・光・闇の基本6属性に加え、単発で複数現れる者、また、複数の属性が合わさって新たな属性が現れる者も出てくるのだ。
「前回説明した通り──」
このアカデミーは、校門に特別な結界が張られており、一定量の魔力がないと構内に入れない仕組みになっている。
なので、当然ながらアカデミーの生徒は、皆ある程度の魔力持ちである。
「水晶は行き渡りましたね。では魔力を流してみて下さい」
5歳の検査では、マリナの基本属性は闇でマルセルは水だったと聞いた。
(手袋と指輪は外しておいた方がいいかな)
両手に乗った透明な水晶が、魔力を込めることによって様々な変化をもたらす。
マリナは、体内を巡る魔力の流れを掌に集中させ、ゆっくりと流していく。
(何が出るか……)
不純物など一切なく丸く透明な水晶は、マリナの手が触れている所から墨を流し込んだように黒く染まって行った。
(ここまでは5歳の時と同じ)
一頻り真っ黒に染まった水晶にそのまま魔力を流し続けると、暫くしてキラキラとした物が渦を巻き始め、核のように水晶の中心で光り出す。
「ユーゴイル君は、基本属性が光で中に火と風ですか。これは炎属性ですな」
「兄さんは氷だったからオレも同じのが良かったんだけど、そっか炎かー」
「マルセイラ君は、基本属性が水で土と風がありますね。これは氷属性と地属性ですね」
横ですごく物騒な属性が聞こえる。
(二人とも、戦ったらすごく強そうね……)
「マリネッテ嬢、ふむ……貴女は珍しい闇と光の属性持ちですか。混じり合い、合わさった属性は……」
「え?わたしが光属性持ち?」
マリナの水晶をしげしげと覗き込んで教師はううむと唸った。
オージェ家は、基本属性が闇の者が圧倒的に多い。その上で、火属性だったり水属性だったり二次属性が現れたりする。
しかし、光属性は……。
「それにしても、その水晶の中を満たせるとは、流石にあなた方は魔力が高いですね」
教師は最後尾のマリナたちにそう一言残して機嫌よく去っていき、引き続き他の生徒の水晶を覗き込んでいる。
「あーん、半分も変わらないー!」
前の席のヒイロが隣の席の男子に文句を言っていた。
ちらっと覗くと、ヒイロの水晶は1/3程砂が貯まり表面がうねうねと波打っていた。
(あれは、土属性?)
隣の男子のは、溜まった水に火花が散っていた。
(こっちは……雷?)
人それぞれ、持っている属性は多種多様なんだなとマリナは物思いに耽った。
(光属性か……)
闇属性に関しては、5歳の時点で解っていたことだから、それ相応の鍛錬はしてきていた。
突然光属性も持ち合わせていると言われても、まるで実感がない。
「図書室……行こうかな」
なにはともあれ、知識は必要だ。
幸いにもこのアカデミーには、ウルバーン国立図書館にも引けを取らない蔵書数を誇る図書塔がある。
マリナの放課後の行き先が決定した。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
入口の司書に属性に関する資料の場所を尋ねると、いつものフロアとは全然別の場所にあることがわかった。
入門書から専門書まで網羅した一角は、マリナの知らない言語で書かれたものもあり、かなりの冊数だった。
その中から数冊選び、いつものお気に入りの場所へ座る。
(基本6属性火・水・土・風・光・闇に、派生した炎・雷・氷・地ね……)
子供の頃に学んだ極々初期の魔法学だ。
属性には相性があり、矢印の向かう方に強く効果があり、逆は効果が弱いと。
炎←──火──→雷
↑ ↙ ↑ ↖ ↑
土←─光↔闇─→水
↓ ↘ ↓ ↗ ↓
地←──風──→氷
(大雑把に図にするとこんな感じかな)
「光ね……」
いつから光属性など備わったのだろう。
父も母も兄も光属性など持ち合わせていない。
(お父様に聞くべきかしら)
アカデミーに入って初めての父への手紙を書くべきか悩み始めた時だった。
「属性調べたんだって?」
マリナは突然掛けられた声に、驚いて飛び上がりそうになった。
この場所へ来る人など、2年のトーマぐらいなのに。
「会長……?」
「へー『新解釈・魔法属性の発現』ねえ。意外な属性でも見つかった?」
ユーリとこうして話すのは、院長室でハロルドとのいざこざがあってあって以来だ。
マリナの中ではすっかり終わったことになっているが、ユーリ達にはどうなのだろう。
「どうした?」
「あ……いえ……意外というか」
「どんな属性?」
マリナは何も言ってこないユーリに「意外」と言う言葉を使ったのだが、先程の問いかけに対する返事だと思われたらしい。
声を掛けただけでなく腰を落ち着けて話すつもりなのか、ユーリはマリナの隣りに座った。
「えっと、わたしは元々の第一属性が闇だったのですが、今日の授業で光属性もあるとわかって」
「うん」
「わたしの知る限り、家の誰にも光属性などなくて……」
「なるほど、光属性……ね」
マリナの言葉を聞いたユーリは、腕を組んでソファに深く座り何かを考えているようだった。
額にかかる癖のない金の髪といい、影を落とすほどの髪と同じ金色の長い睫毛といい、すっと通った高い鼻といい、引き結ばれた薄い口唇といい……。
(黙っていればカッコいいんだよね……小説の挿絵の人みたい)
「ちょっと試したいことがあるのだが」
「!!!」
ユーリの顔をしげしげと近くで覗き込んでいる所に、本人がぱっと目を開けた。
「どうした?」
「……いえ…………何も……」
(びっ…………くりした……)
「そうか、少し手を貸してくれないか」
「手……ですか」
「ああ」
おずおずと手を差し出すと「両手とも」と言われ、両手を差し出す。
ユーリと向かい合って手を握り合うと、「これ取るよ」と抵抗する間もなくするりとレースの手袋を抜かれた。
「あ……」
「何か?」
「いえ……」
物心つく頃から屋敷の外ではいつも手袋をしていたマリナは、それを失って何とも心もとない気持ちだった。
言うなれば「眼鏡の人が裸眼で外に出る感じ」だろうか。
殆ど無い「素手を触られる」という行為が、何とも恥ずかしい。
「手、触られるの恥ずかしい?」
「そ……んなこと」
「ふーん……」
手を繋ぐことに何の意味があるのか、ユーリはマリナの掌を擽ったり手の甲を撫でたり指を絡めて握ったりして弄った。
あまりにこそばゆくて手を引こうとしても、強く握られてる感じはないのにビクともしない。
諦めて好きにさせていると、握った掌からじわじわと温かいものが流れてくる感触がし始めた。
「あ…………ふ……」
「どう……?わかる?」
「えっと……?」
(わたしは今何をされてるの?)
何をされているのかわからないが、不快さはない。
温かい何かが流れて自分の中を巡ってまた出ていく感じ。
一旦流れを掴めば、マリナからも意図して巡らせることが出来た。
「そう……上手だね」
向かい合った端正な顔が近付きコツンと額を合わせられると、さらにキュッと強く指を絡め手を握られる。
「んっ……」
思わず小さく声が出てしまった。
触れた額からも熱が伝わってくる。
マリナは、今感じてるこの感覚が「快感」だとわかり頬を赤らめた。
「……俺の属性と混じったのかもな」
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