よわよわ魔王がレベチ勇者にロックオンされました~コマンド「にげる」はどこですか~

サノツキ

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#3:慣れてきた学院生活~新たな出会い

#3-余談2.当然、部屋に帰ってからシた

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<ゲネル視点>
────────────────────



「お嬢……マリナ………寝た?」

 すうすうと気持ちよさそうな寝息が聞こえる。
 どうやら、今日は社交ダンス部で部長相手にダンスを踊ってきたらしく、筋肉痛になるほどしっかり運動してきたらしい。
 声を掛ける間もなく寝てしまったが、いつも通り「おやすみ」と言い室内の照明を落とす。
 カーテン越しに月明かりが入る程度の暗闇だが、自分には問題ない。星明かり一つ程度あれば十分だ。

「無理しちゃって」

 本人は寝てしまったが、マッサージは続ける。
 痛いのは脚だと言っていたが、ダンスは全身運動だ。筋肉痛が脚だけで済むはずがない。
 新たに手にオイルを取り掌で温めて膝下から上へ、掛けていたタオルを取り腿裏を解していく。

「ん……やっぱり凝ってるね」

 痛くならないよう、起きないよう、絶妙な力加減で掌を滑らせる。
 下から上へ、内から外へ、白く滑らかな肌を撫で擦る。

 一通り脚のマッサージが終わると、蒸しタオルでオイルの汚れを拭い取り済んだ部分にはタオルを掛け、次に何の躊躇いもなく下着の紐を解き抜き取る。
 軽く両脚を揃えて跨ぎ、体重を掛けないよう両側に膝立ちする。

 オイルを纏い滑りを良くした掌を、暗がりでも白く浮かび上がる見事に均整の取れた肢体へ滑らせ、尻から背中、肩へと筋肉の状態を確認する。
 思ったとおり、凝り固まっている。
 この状態で何時間もダンスを踊っていたのなら、何も処置しないままだと確実に明日には筋肉痛だ。
 いや、どれだけ丁寧に解しても筋肉痛は必至だろう。

 「痛くて動けない」と泣きべそをかく姿も見てみたいような気もするが、目の前の小石は取り除き整地しておく派なので、気合いを入れて全身ケアを施す。
 泣かれるよりも、喜んでもらうほうが断然嬉しい。
 あの性格の悪いダメ兄は泣かせたがるだろうが。

 ・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・

 それから小一時間程、痛くないようゆっくりと全身を揉み解し、寝衣を整え、オイルで汚れたタオル等を抱えて部屋を出る。

「お前、ホント『下僕』だよね」
「何のことです?」

 廊下に出た途端声を掛けてきたのはマリナの兄、マリノリア様だった。
 照明を落とした薄暗い廊下に佇む全身黒の出で立ちで、マリナと同じ薄紫の瞳をこちらに向け圧倒的強者の面持ちで口の端を上げている。
 怒っているわけではなさそうなので、一先ずホッとする。

「ま、いーけど」
「貴方、一体何しに来たんですか」
「そりゃ、可愛い妹の顔を見に来たに決まってんだろ。けどまあ、気持ちよさそうに寝てるみてーだし、今日はいーや」

 そう言って扉の向こうを見遣る顔は、さっき見せた不遜な表情を取っ払い、只の妹思いの兄の面持ちだった。
 あの騒動からこっち、姿も見せずこうやって夜中にやってきて妹の寝顔を盗み見るだけとは。
 この前、突然この部屋へやってきて、散々牽制をかけてきたのは何だったのか。

「……また、行くんですか」
「まあ、直ぐには行かないけど」

 普段は絶対に見せない、愛おしそうな瞳で扉の向こうを見遣る。

「じーさんもあのトシでまだまだ現役だし元気だし、いろいろこき使われんのよ。ほら、オレ優秀だし。おかげで折角飛び級して帰ってきたのに休みねーし」
「そうですか」

 この方もオージェ家の一員だ。
 実戦も兼ねて伊達に6年間もアカデミーへ通うためだけに屋敷を空けていたわけではない。
 次代の魔王たるお嬢のため、お嬢を支える一翼として、旦那様から継ぐ次代の『青』を司る人。

「だーかーらー、そのチョーシでこれからもマリナのこと頼むわ」
「言われなくても」
「はん、だから『下僕』だって言ってんだよ、馬ぁ鹿」

 そう言い残して最初と同じ表情を浮かべた彼の姿は、闇に溶けてふわりと消えた。
 相変わらず便利な事で、とフッと息を吐き、胸に手を当てて詰めていた呼吸を整える。

「なんとでも」

 誰にどう言われようと変わらない。
 私にとってお嬢に仕えることは自明の理、火を見るより明らかな事。



 お嬢に初めてお会いした時から揺るがない、私の信念。
 いつだって、私の絶対上位はお嬢だけ。

 それは、絶対、間違いない。
 それは、絶対、間違えない。

 言い聞かせるように強く思い、私もその場から闇へと溶けた。
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