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#3:慣れてきた学院生活~新たな出会い
#3-余談3.この後、さらに5周走った
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<ケンティス視点>
────────────────────
オレの家は代々王宮近衛騎士を拝命してきた。
父も祖父も曽祖父もその前も、近衛第一師団長となり陛下を一番近くでお守りしてきた。
家業がそうだからだけではない。
そうなるべく、誰にも文句を言わせないよう、我が家の誰もが実力でその地位を勝ち取ってきた。
二人の兄も実力で王宮で近衛騎士を努めている。
当然、オレもそうなるべく幼い頃より鍛錬を積んできた。
恐れながら、一つ上の第二王子、ハロルド殿下にお仕えするために。
◀ ◀ ◀ ◀
「ケント!お前、また腕上げたんじゃね?」
「日々修練を積んでるからね。リーノこそまた魔力が上がったんじゃないか。剣の威力が増してる」
「ははっ、剣じゃケントに敵わないからな、オレはオレのやり方で強くなるんだ」
気心の知れた友人、リーノとは街の道場で知り合った。
我が家には近い年代で訓練できる相手がいなかったし、少し年の離れた兄は、一人は既に近衛騎士として王城に入っており、もう一人はアカデミーへ入り家にはいない。
相手をしてくれそうな兵士でも、オレに遠慮してるのかそもそも程度が低いのか、家の道場では相手にならなかった。
それならと、街へ降りていろんな道場を回ってみた。
先に通っていたリーノとは、同い年ということもあってすぐに打ち解けた。
魔法の素養のないオレは剣技で、魔力も高く剣技もあるリーノは魔法剣士として切磋琢磨し、いつしかともに腕を競い合うライバルとなっていった。
2年を過ぎた頃だろうか。
リーノが道場に来なくなる日が増えた。
それまでは、少なくとも週に3日、多ければ5日は来ていたのに、週に1日だけ、2週開く時もあった。
「最近どうしたんだ?余所に通うようになったとか?」
「そんなんじゃねーよ。そんなんじゃねーんだけど……まあいろいろあって……」
リーノにしては珍しく、奥歯に物が挟まったような言い方をする。
だったらどうして。
何か言えないような事情があるのか。
家の事情で引っ越すことになったとか、よしんば夜逃げでもしようとしてるとか。
平民の事情はよくわからないが、リーノがこのまま道場に来なくなるのは嫌だと思い、話の続きを待つ。
「オレさ……隣国のアカデミーへ入学することになったんだよ」
は?
勝手に、リーノは街に住んでるただの平民の子供だと思っていた。
口調も砕けているし、服装も麻のシャツに穴の空いたパンツだ。
持っている剣だけは少し良い物だったが、「じーちゃんの形見」と言っていたからそれを信じていた。
ただの平民が立身出世するには、何か家業を営んでいるならいざ知らず、男子なら騎士になるのが一番手っ取り早い。
リーノは道場の中でも、オレと一二を争うほどの腕前だ。
しかも、リーノは魔法も使えるから魔法剣士になれる素養が十分にある。
魔法剣士なら、王宮騎士にだってなれる可能性がある。
王宮騎士になれれば一般の騎士よりも破格の待遇が得られる。
平民が王宮騎士になるのは極めて難しいかもしれないが、リーノさえその気なら、オレが推薦したっていい。
そう思っていた。
「隣国のアカデミーって……」
「あーまあ……だからいろいろと事情があって……」
たかが平民がアカデミーへ通うことなどほぼない。
余程才能に恵まれて誰かの目に止まり推薦を受けたか、何処かの貴族の落し胤だったか。
もしかして、リーノの魔法剣士としての腕を買われて?
いや、それにしても、だったら16で普通にこの国のアカデミーへ入ればいいはずだ。
それが、12で、しかも隣国の、となると話は違う。
……まさか、リーノもオレと同じ何処かの貴族の子息だったのか?
言い掛けて言葉を飲み込む。
言えるようなら言っているだろう。
黙っていたということはそういう事だ。
だったらオレから聞くようなことはしない。
オレたちは、少なくともオレは、そんな浅い仲じゃないと思っている。
リーノが言いたくなれば言うだろう、と。
「いつ帰ってくる?」
「さあなー……多分……結構先?」
アカデミーなどせいぜい通って3年か4年。
「結構先」と濁すほど長く通うところなど一つしかない。
入学するには莫大な費用と、才能、家柄、コネ、色んなものが吟味され選ばれたものしか通えない。
腕を買われた平民や、表に出れない貴族の落し胤程度の身分で入れるものではない。
「そうか……」
「可愛い妹や弟を置いていくのもなー、イヤなんだけど」
そう言ってリーノは手のひらをかざし、ハガキほどの映像を映し出す。
リーノが時々見せてくれるこの「動く写真」は、貴重な写真技術を応用したものらしく、オレはリーノが出すものしか見たことがない。
もともと、写真も魔法が使える者しか扱えないので、魔力の高いリーノなら出せるのだと納得していた。
写真は止まった場面を写し出すだけなのに対し、リーノの出す「動く写真」は、短いながらも写し出された画面が文字通り「動く」のだ。
切り取られたその空間で、まるでそこに人が、物が、生きているように。
それは、実際の風景だったり、人だったり、想像上のものでさえ、リーノの頭の中に映像があればこうやって映せるらしい。
「可愛いだろう?オレの宝物なんだ」
そこに映っていたのは、薄茶の髪をした少年と、リーノによく似た黒髪の少女……。
二人とも屈託なく笑い、こちらに向かって手を振っている。
よくよく考えれば、こんな事を平然とやってのけるリーノが平民なわけがなかった。
そんな事実を目の当たりにし、オレは考えを改める。
そうだ、リーノの言うとおり待っていよう。
気心知れた相手がいなくなるのは寂しいが、いつか彼は戻ってくる。
「リーノが戻ってくるの、オレは待ってるよ」
数年後、成長したリーノは、腕を磨き、己を高め、優れた魔法剣士として、戻ってくる。
リーノが戻ってきたら、その時は同じ王宮騎士として隣に立てればいいなと、オレは思った。
それに、リーノが貴族の子息ならば、尚更、王宮騎士として肩を並べることが出来るだろう。
家格によれば近衛騎士にだってなれる。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
それからもオレは道場へ通い続け、相手がいなくなるとまた別の所へ、そこでもダメならまた別の所、とあちこち渡り歩いている内に、王宮騎士を引退した祖父が稽古をつけてくれることになった。
どうやら、オレが街の道場を渡り歩いていることは知られていたらしい。
家で誰も相手をしてくれなかったのもオレを外へ出すためで、この度めでたく祖父の指南を受けるレベルに達したとの事。
それから1年、オレは祖父にみっちり鍛え上げられ、晴れて15にして王宮騎士へとなることができた。
なんでも史上最年少とのことだが、そんな事はどうでもいい。
オレはリーノとまた肩を並べて立てる権利を得ることができたのだと、それが嬉しかった。
更に1年後、オレはアカデミーへ入学することになった。
既に王宮騎士となっていたオレには、王宮騎士になるための「アカデミーの卒業」という条件は当てはまらないものの、このアカデミーには1つ上の学年にハロルド王子殿下がいらっしゃる。
十分な警護は付いているだろうが、同じ学生としてオレが近くでお守りするのも、この先を考えていい経験になるだろうとの事だった。
同学年には、首席入学のユーリや同じ生徒会へ入ることになったドールやマシューもいる。
何れも殿下をお守りする家門の者たちだ。
ユーリは、入学前から祖父の道場で何度か手合わせをしたことがある。
リーノの次に出来た、気の置けない友人だ。
本人は、勇者としてそこまで剣を極めるつもりはないとのことで、折角の素養の持ち主が非常に残念だと祖父が嘆いていた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
緩やかに時は過ぎ、今もリーノが戻ってきた様子はない。
オレはアカデミーで最終学年を迎えていた。
入学式の日、生徒会室にいたオレは、何やらいつになくそわそわと外を気にしているユーリに声を掛けた。
「何見てるんだ?」
「そろそろ新入生が来る頃だと思ってね」
「ああ、貴方の弟も今年入学するんでしたっけ?」
何やらユーリに仕事を頼まれたマシューを除く生徒会役員も準備に集まり、横にいたドールも顔を上げて外を見た。
ユーリには2つ下の弟がいる。
今年入学するユーリの弟はいつも兄にベッタリで、ウチとは随分違う兄弟関係に、初めて見た時は驚いたものだ。
寄ってくる弟をいつもは面倒そうに見ているユーリも、なんだかんだ気にはなっているんだなと微笑ましく思い、彼に釣られるように窓の外を見た。
「……リーノ?」
門の前に立つ黒髪の人物。
いや、違う。
リーノによく似た……「動く写真」で見たことのある彼女は……間違いない、リーノの妹だ。
艷やかな黒髪は、リーノと違って緩やかなウェーブがかかっていてふんわりとしている。
だが、遠目の能力を使って見える透き通った紫水晶のような美しい瞳は同じ色だ。
少しつり上がった猫の目のようだったリーノのような鋭さはないが、長いまつげに縁取られた大きな瞳は吸い込まれそうな魅力を放ち瞬いている。
リーノに見せてもらった動く写真の中にいた、あの少女がそこにいる。
よく見れば、隣の少年も、一緒に映っていた弟じゃないか。
タイの色を見れば、二人とも今年の新入生であることは間違いない。
兄は隣国のアカデミーへと行ったというのに、なぜこの二人はここへ来たのだろう?
単純な疑問を抱いた。
そうだな、妹と弟とがいる長子なら、リーノだけが隣国へ学びに出るのもあり得るのかもしれない。
特に妹のように女性なら、長期に渡り家を離れて隣国へと行くより、このアカデミーで3年過ごすほうが安心だ。
弟も一緒となれば更に心強く思うだろう。
オレは、リーノの弟妹がここへと通う理由を勝手にそう思っていた。
そうか、いい機会だ。
兄のことを聞けば教えてくれるだろうか。
自分が知らなかった今までを、どう過ごしているのか。
魔法剣士として、技を磨き如何ほど強くなったか。
そう言えば名はなんという。
今更ながら、オレはリーノの家名を知らなかったことに気付く。
アカデミーでは家名を名乗らない。
当然、名簿に乗ることもない。
ユーリなら……生徒会長なら知っているだろうか。
いや、こそこそと嗅ぎ回るのは止めておこう。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
入学式も無事終わり、ユーリが出席していた入学式からそのまま今年の生徒会役員になる新入生を迎えに行ったと聞き、オレとドールは慌てて一年生の教室へと向かう。
通年なら新入生が落ち着いた頃、数日を待って個別に接触を図り打診を行うのに、今年はどうしたというのか。
成績についてオレは関知していないが、ユーリの弟が首席で兄直々に迎えに行ったというのだろうか。
多くの疑問符を頭の中に飛ばしながら、走らない程度の早足でユーリの向かった先へと急ぐ。
一年生の教室、2つある内の上位クラス「ソーレ」に着くと、案の定、突然下級生の教室にやってきた生徒会長に新入生は蜂の子を突いたようにざわめいている。
やはりユーリは先に着いて首席生徒と接触しているようだ。
いつも冷静なユーリらしくもない、何か焦っているような様子に少し驚く。
「ユーリ!勝手に動かないでくださいと!」
声を掛けながら人集りをかき分け、進んだ教室の奥、そこにユーリと首席生徒と思しき人物がいた。
「ケント、ドール。新入生は確保した。手配はどうなっている?」
一緒にいたドールが何やら答えていたが、オレの頭の中を素通りしていく。
ユーリが確保したと言った新入生は、予想通りユーリの弟と、全く予想していなかったリーノの弟と妹だった。
そうか、彼らが新入生の生徒会役員か。
思わぬリーノの身内との繋がりに幸運を感じた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
「僕は王宮騎士になることが目標なんです」
その後の食事会で、弟のほうがこのアカデミーへ入学した理由をそう語っていた。
なるほど、それでここへ。
「わたしは……まあ……家の事情で?」
妹の方は何故か曖昧な言葉でその場を濁す。
この二人のことはオレが一方的にリーノから聞いて知っているだけで、二人はどうなんだろう。
オレのことをリーノから聞いてるなら話は早いが、聞いていない場合は勝手に気安く話しかけたりしたら不審に思ったりしないだろうか。
さっきの自己紹介で弟のほうが「マルセイラ」で妹のほうが「マリネッテ」と名乗っていた。
姉弟だと思っていたのだが、どうも二人の態度はよそよそしい。
どういうことだ?
この二人はリーノの姉弟ではなかったのか?
リーノは確かに「可愛い妹や弟」と言って動く写真を見せてきたような気がするのだが。
まあいい、そのうち自然と打ち解ければ親兄弟の話をすることもあるだろう。
その時、実はオレはお前たちの兄の友人だと伝えれば、リーノの話でも聞けれるんじゃないかと安易に考えていた。
まさか、新学期が始まって忙しすぎて生徒会へ行く暇もなく、周りの奴らがどんどん仲良くなって愛称呼びまでしているのに、オレだけが取り残されて全く接点がないとは……。
弟の方は、近衛騎士を目指してるだけあって、贔屓目に映らないようトレーニングに呼び出したり個人稽古を付けたりして取り立ててはいるが、いかんせん姉の方と全く話す機会がない。
そもそも個人的に令嬢と会って話すなど……今までもなかったのだから、どうやればいいのかも皆目見当が付かない。
マルセイラ……マルセルにさりげなく兄姉の話を振ってみても、上手くはぐらかされてしまう始末。
きっかけが掴めないまま現在に至るわけだが、突然降って湧いた状況に残念ながらノープランで挑むこととなり、オレは内心酷く焦っていた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
オレは毎朝の日課として学園の周辺を走っている。
余程の雨でもなければコースを選んで3周ほど、軽く走ればいい感じに体も温まりうっすら汗ばむ程の運動量だ。
今日も、朝日が昇り雲ひとつ無い空が白み始める頃、いつも通り寮を出て門の前で走る前に体を解していると、思ってもいない人影が現れた。
「あ……ケンティス先輩?おはようございます」
「お……はよう。どうした、こんな早くに」
リーノの妹であるマリナが、自分と同じくトレーニングウェアに身を包み、身体を伸ばしながら寮から出てきた。
自分で聞いておきながら、どうしたもこうしたもない。
こんな早朝にそんな格好で出てくるなど、答えは一つだろう。
「えっ……と、ランニングをしようと思いまして」
案の定、思った通りの答えが帰ってきた。
しかし、貴族の令嬢がランニングなど、しかもこんな夜が明けたばかりの早朝に護衛も付けず外を走るなど聞いたことがない。
いや、令嬢と付き合いがあるわけではないが、少なくとも周りでそんな様子は見たことも聞いたこともない。
いつだって令嬢とは、綺麗なドレスを着てお茶を飲み、使用人に傅かれ、扇で口元を覆い、きゃっきゃうふふと騒いでいるものだろう?
いつだってトレーニングとは、ゴツく汗臭い男だらけだ。
「どうしてまた」
「実はダンス部に入ったんですが、普段使わない場所なのか思ったより結構な運動量なのか、ちょっと……あの……筋肉痛が……ですね」
ほう、ダンス部とな。
それにしても、筋肉痛をさも恥ずかしい事のようにもじもじとしながら言う姿が……なんとも可愛らしい。
……可愛らしい?
「家にいた時にはこれでもいろいろトレーニングしていたんですけど、寮に入ってからは全然していなくて……いつの間にかかなり身体が鈍ってたみたいです」
「そうか」
なんと、普段からトレーニングをしていたと。
さすがリーノの妹だ。
よく見れば、普段から姿勢がいいのは鍛えられた体幹から来るものだろうし、細身で引き締まった腰や脚など綺麗な筋肉が……いや、ジロジロ見るのは不躾だ。
「なので取りあえずランニングから始めようかと」
なるほど、そう言う事なら。
「君さえ良ければ、走りやすいコースを教えよう」
「本当ですか。実はどこを走ったら良いのかわからなくて……助かります」
「ああ」
それから並んで走り始め、一番平坦で初心者向けのコースを2周ほど走った。
「はあっはあっ……ダメですね、全然走れません」
「いや、動けている方だろう。毎日走っていけば身体も慣れてくる」
実際、思ったより彼女は体力があるしフォームも綺麗だ。
独学ではなく、経験者の指導を受けていたのかもしれない。
苦しそうに息を乱しているが、続ければもっと走れるようになるだろう。
「初めから無理することはない」
「すみません、先輩のランニングの邪魔をしてしまって」
彼女は息が整うと、そう言ってオレに頭を下げて謝ってきた。
言われてみれば、確かにいつものノルマの半分も走っていないが……。
「邪魔なんかじゃない。オレも久しぶりにあのコースを走って新鮮だった」
「だったらいいんですけど……」
薄紫の瞳を細めて笑う顔が、少しリーノに似ている気がして、懐かしく思ってしまう。
やはり兄妹なのだな。
「汗をかいたろう。冷えると風邪を引く。もう戻るといい」
長い髪を纏めたから見える項ににつっと伝う汗がひどく艶かしく見え、湧き上がった衝動を抑えるように視線を逸らせた。
「あ、そうですね。今日はありがとうございました」
「ああ」
そう言って踵を返し、彼女は寮へと戻っていく。
イイのか?折角少し話せるようになったのに、すんなり別れてしまって。
「あ、明日も、この時間走るから……」
そう声を掛けると、戻りかけた彼女が足を止めて振り返る。
「ご一緒していいんですか?」
「構わない」
「わかりました。じゃあまた明日」
「ああ」
ノープランで挑んだ事だったが、何とか上手く次に繋げることが出来た。
「っし!」
この調子で距離を縮めていければ、リーノのことも聞き出せるかもしれない。
そんな調子で、毎朝の彼女とのランニングが日課となった。
オレは、いつも一人だったランニングに誰かが……彼女がいることが、存外悪くないものだと思い始めていた。
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オレの家は代々王宮近衛騎士を拝命してきた。
父も祖父も曽祖父もその前も、近衛第一師団長となり陛下を一番近くでお守りしてきた。
家業がそうだからだけではない。
そうなるべく、誰にも文句を言わせないよう、我が家の誰もが実力でその地位を勝ち取ってきた。
二人の兄も実力で王宮で近衛騎士を努めている。
当然、オレもそうなるべく幼い頃より鍛錬を積んできた。
恐れながら、一つ上の第二王子、ハロルド殿下にお仕えするために。
◀ ◀ ◀ ◀
「ケント!お前、また腕上げたんじゃね?」
「日々修練を積んでるからね。リーノこそまた魔力が上がったんじゃないか。剣の威力が増してる」
「ははっ、剣じゃケントに敵わないからな、オレはオレのやり方で強くなるんだ」
気心の知れた友人、リーノとは街の道場で知り合った。
我が家には近い年代で訓練できる相手がいなかったし、少し年の離れた兄は、一人は既に近衛騎士として王城に入っており、もう一人はアカデミーへ入り家にはいない。
相手をしてくれそうな兵士でも、オレに遠慮してるのかそもそも程度が低いのか、家の道場では相手にならなかった。
それならと、街へ降りていろんな道場を回ってみた。
先に通っていたリーノとは、同い年ということもあってすぐに打ち解けた。
魔法の素養のないオレは剣技で、魔力も高く剣技もあるリーノは魔法剣士として切磋琢磨し、いつしかともに腕を競い合うライバルとなっていった。
2年を過ぎた頃だろうか。
リーノが道場に来なくなる日が増えた。
それまでは、少なくとも週に3日、多ければ5日は来ていたのに、週に1日だけ、2週開く時もあった。
「最近どうしたんだ?余所に通うようになったとか?」
「そんなんじゃねーよ。そんなんじゃねーんだけど……まあいろいろあって……」
リーノにしては珍しく、奥歯に物が挟まったような言い方をする。
だったらどうして。
何か言えないような事情があるのか。
家の事情で引っ越すことになったとか、よしんば夜逃げでもしようとしてるとか。
平民の事情はよくわからないが、リーノがこのまま道場に来なくなるのは嫌だと思い、話の続きを待つ。
「オレさ……隣国のアカデミーへ入学することになったんだよ」
は?
勝手に、リーノは街に住んでるただの平民の子供だと思っていた。
口調も砕けているし、服装も麻のシャツに穴の空いたパンツだ。
持っている剣だけは少し良い物だったが、「じーちゃんの形見」と言っていたからそれを信じていた。
ただの平民が立身出世するには、何か家業を営んでいるならいざ知らず、男子なら騎士になるのが一番手っ取り早い。
リーノは道場の中でも、オレと一二を争うほどの腕前だ。
しかも、リーノは魔法も使えるから魔法剣士になれる素養が十分にある。
魔法剣士なら、王宮騎士にだってなれる可能性がある。
王宮騎士になれれば一般の騎士よりも破格の待遇が得られる。
平民が王宮騎士になるのは極めて難しいかもしれないが、リーノさえその気なら、オレが推薦したっていい。
そう思っていた。
「隣国のアカデミーって……」
「あーまあ……だからいろいろと事情があって……」
たかが平民がアカデミーへ通うことなどほぼない。
余程才能に恵まれて誰かの目に止まり推薦を受けたか、何処かの貴族の落し胤だったか。
もしかして、リーノの魔法剣士としての腕を買われて?
いや、それにしても、だったら16で普通にこの国のアカデミーへ入ればいいはずだ。
それが、12で、しかも隣国の、となると話は違う。
……まさか、リーノもオレと同じ何処かの貴族の子息だったのか?
言い掛けて言葉を飲み込む。
言えるようなら言っているだろう。
黙っていたということはそういう事だ。
だったらオレから聞くようなことはしない。
オレたちは、少なくともオレは、そんな浅い仲じゃないと思っている。
リーノが言いたくなれば言うだろう、と。
「いつ帰ってくる?」
「さあなー……多分……結構先?」
アカデミーなどせいぜい通って3年か4年。
「結構先」と濁すほど長く通うところなど一つしかない。
入学するには莫大な費用と、才能、家柄、コネ、色んなものが吟味され選ばれたものしか通えない。
腕を買われた平民や、表に出れない貴族の落し胤程度の身分で入れるものではない。
「そうか……」
「可愛い妹や弟を置いていくのもなー、イヤなんだけど」
そう言ってリーノは手のひらをかざし、ハガキほどの映像を映し出す。
リーノが時々見せてくれるこの「動く写真」は、貴重な写真技術を応用したものらしく、オレはリーノが出すものしか見たことがない。
もともと、写真も魔法が使える者しか扱えないので、魔力の高いリーノなら出せるのだと納得していた。
写真は止まった場面を写し出すだけなのに対し、リーノの出す「動く写真」は、短いながらも写し出された画面が文字通り「動く」のだ。
切り取られたその空間で、まるでそこに人が、物が、生きているように。
それは、実際の風景だったり、人だったり、想像上のものでさえ、リーノの頭の中に映像があればこうやって映せるらしい。
「可愛いだろう?オレの宝物なんだ」
そこに映っていたのは、薄茶の髪をした少年と、リーノによく似た黒髪の少女……。
二人とも屈託なく笑い、こちらに向かって手を振っている。
よくよく考えれば、こんな事を平然とやってのけるリーノが平民なわけがなかった。
そんな事実を目の当たりにし、オレは考えを改める。
そうだ、リーノの言うとおり待っていよう。
気心知れた相手がいなくなるのは寂しいが、いつか彼は戻ってくる。
「リーノが戻ってくるの、オレは待ってるよ」
数年後、成長したリーノは、腕を磨き、己を高め、優れた魔法剣士として、戻ってくる。
リーノが戻ってきたら、その時は同じ王宮騎士として隣に立てればいいなと、オレは思った。
それに、リーノが貴族の子息ならば、尚更、王宮騎士として肩を並べることが出来るだろう。
家格によれば近衛騎士にだってなれる。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
それからもオレは道場へ通い続け、相手がいなくなるとまた別の所へ、そこでもダメならまた別の所、とあちこち渡り歩いている内に、王宮騎士を引退した祖父が稽古をつけてくれることになった。
どうやら、オレが街の道場を渡り歩いていることは知られていたらしい。
家で誰も相手をしてくれなかったのもオレを外へ出すためで、この度めでたく祖父の指南を受けるレベルに達したとの事。
それから1年、オレは祖父にみっちり鍛え上げられ、晴れて15にして王宮騎士へとなることができた。
なんでも史上最年少とのことだが、そんな事はどうでもいい。
オレはリーノとまた肩を並べて立てる権利を得ることができたのだと、それが嬉しかった。
更に1年後、オレはアカデミーへ入学することになった。
既に王宮騎士となっていたオレには、王宮騎士になるための「アカデミーの卒業」という条件は当てはまらないものの、このアカデミーには1つ上の学年にハロルド王子殿下がいらっしゃる。
十分な警護は付いているだろうが、同じ学生としてオレが近くでお守りするのも、この先を考えていい経験になるだろうとの事だった。
同学年には、首席入学のユーリや同じ生徒会へ入ることになったドールやマシューもいる。
何れも殿下をお守りする家門の者たちだ。
ユーリは、入学前から祖父の道場で何度か手合わせをしたことがある。
リーノの次に出来た、気の置けない友人だ。
本人は、勇者としてそこまで剣を極めるつもりはないとのことで、折角の素養の持ち主が非常に残念だと祖父が嘆いていた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
緩やかに時は過ぎ、今もリーノが戻ってきた様子はない。
オレはアカデミーで最終学年を迎えていた。
入学式の日、生徒会室にいたオレは、何やらいつになくそわそわと外を気にしているユーリに声を掛けた。
「何見てるんだ?」
「そろそろ新入生が来る頃だと思ってね」
「ああ、貴方の弟も今年入学するんでしたっけ?」
何やらユーリに仕事を頼まれたマシューを除く生徒会役員も準備に集まり、横にいたドールも顔を上げて外を見た。
ユーリには2つ下の弟がいる。
今年入学するユーリの弟はいつも兄にベッタリで、ウチとは随分違う兄弟関係に、初めて見た時は驚いたものだ。
寄ってくる弟をいつもは面倒そうに見ているユーリも、なんだかんだ気にはなっているんだなと微笑ましく思い、彼に釣られるように窓の外を見た。
「……リーノ?」
門の前に立つ黒髪の人物。
いや、違う。
リーノによく似た……「動く写真」で見たことのある彼女は……間違いない、リーノの妹だ。
艷やかな黒髪は、リーノと違って緩やかなウェーブがかかっていてふんわりとしている。
だが、遠目の能力を使って見える透き通った紫水晶のような美しい瞳は同じ色だ。
少しつり上がった猫の目のようだったリーノのような鋭さはないが、長いまつげに縁取られた大きな瞳は吸い込まれそうな魅力を放ち瞬いている。
リーノに見せてもらった動く写真の中にいた、あの少女がそこにいる。
よく見れば、隣の少年も、一緒に映っていた弟じゃないか。
タイの色を見れば、二人とも今年の新入生であることは間違いない。
兄は隣国のアカデミーへと行ったというのに、なぜこの二人はここへ来たのだろう?
単純な疑問を抱いた。
そうだな、妹と弟とがいる長子なら、リーノだけが隣国へ学びに出るのもあり得るのかもしれない。
特に妹のように女性なら、長期に渡り家を離れて隣国へと行くより、このアカデミーで3年過ごすほうが安心だ。
弟も一緒となれば更に心強く思うだろう。
オレは、リーノの弟妹がここへと通う理由を勝手にそう思っていた。
そうか、いい機会だ。
兄のことを聞けば教えてくれるだろうか。
自分が知らなかった今までを、どう過ごしているのか。
魔法剣士として、技を磨き如何ほど強くなったか。
そう言えば名はなんという。
今更ながら、オレはリーノの家名を知らなかったことに気付く。
アカデミーでは家名を名乗らない。
当然、名簿に乗ることもない。
ユーリなら……生徒会長なら知っているだろうか。
いや、こそこそと嗅ぎ回るのは止めておこう。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
入学式も無事終わり、ユーリが出席していた入学式からそのまま今年の生徒会役員になる新入生を迎えに行ったと聞き、オレとドールは慌てて一年生の教室へと向かう。
通年なら新入生が落ち着いた頃、数日を待って個別に接触を図り打診を行うのに、今年はどうしたというのか。
成績についてオレは関知していないが、ユーリの弟が首席で兄直々に迎えに行ったというのだろうか。
多くの疑問符を頭の中に飛ばしながら、走らない程度の早足でユーリの向かった先へと急ぐ。
一年生の教室、2つある内の上位クラス「ソーレ」に着くと、案の定、突然下級生の教室にやってきた生徒会長に新入生は蜂の子を突いたようにざわめいている。
やはりユーリは先に着いて首席生徒と接触しているようだ。
いつも冷静なユーリらしくもない、何か焦っているような様子に少し驚く。
「ユーリ!勝手に動かないでくださいと!」
声を掛けながら人集りをかき分け、進んだ教室の奥、そこにユーリと首席生徒と思しき人物がいた。
「ケント、ドール。新入生は確保した。手配はどうなっている?」
一緒にいたドールが何やら答えていたが、オレの頭の中を素通りしていく。
ユーリが確保したと言った新入生は、予想通りユーリの弟と、全く予想していなかったリーノの弟と妹だった。
そうか、彼らが新入生の生徒会役員か。
思わぬリーノの身内との繋がりに幸運を感じた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
「僕は王宮騎士になることが目標なんです」
その後の食事会で、弟のほうがこのアカデミーへ入学した理由をそう語っていた。
なるほど、それでここへ。
「わたしは……まあ……家の事情で?」
妹の方は何故か曖昧な言葉でその場を濁す。
この二人のことはオレが一方的にリーノから聞いて知っているだけで、二人はどうなんだろう。
オレのことをリーノから聞いてるなら話は早いが、聞いていない場合は勝手に気安く話しかけたりしたら不審に思ったりしないだろうか。
さっきの自己紹介で弟のほうが「マルセイラ」で妹のほうが「マリネッテ」と名乗っていた。
姉弟だと思っていたのだが、どうも二人の態度はよそよそしい。
どういうことだ?
この二人はリーノの姉弟ではなかったのか?
リーノは確かに「可愛い妹や弟」と言って動く写真を見せてきたような気がするのだが。
まあいい、そのうち自然と打ち解ければ親兄弟の話をすることもあるだろう。
その時、実はオレはお前たちの兄の友人だと伝えれば、リーノの話でも聞けれるんじゃないかと安易に考えていた。
まさか、新学期が始まって忙しすぎて生徒会へ行く暇もなく、周りの奴らがどんどん仲良くなって愛称呼びまでしているのに、オレだけが取り残されて全く接点がないとは……。
弟の方は、近衛騎士を目指してるだけあって、贔屓目に映らないようトレーニングに呼び出したり個人稽古を付けたりして取り立ててはいるが、いかんせん姉の方と全く話す機会がない。
そもそも個人的に令嬢と会って話すなど……今までもなかったのだから、どうやればいいのかも皆目見当が付かない。
マルセイラ……マルセルにさりげなく兄姉の話を振ってみても、上手くはぐらかされてしまう始末。
きっかけが掴めないまま現在に至るわけだが、突然降って湧いた状況に残念ながらノープランで挑むこととなり、オレは内心酷く焦っていた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
オレは毎朝の日課として学園の周辺を走っている。
余程の雨でもなければコースを選んで3周ほど、軽く走ればいい感じに体も温まりうっすら汗ばむ程の運動量だ。
今日も、朝日が昇り雲ひとつ無い空が白み始める頃、いつも通り寮を出て門の前で走る前に体を解していると、思ってもいない人影が現れた。
「あ……ケンティス先輩?おはようございます」
「お……はよう。どうした、こんな早くに」
リーノの妹であるマリナが、自分と同じくトレーニングウェアに身を包み、身体を伸ばしながら寮から出てきた。
自分で聞いておきながら、どうしたもこうしたもない。
こんな早朝にそんな格好で出てくるなど、答えは一つだろう。
「えっ……と、ランニングをしようと思いまして」
案の定、思った通りの答えが帰ってきた。
しかし、貴族の令嬢がランニングなど、しかもこんな夜が明けたばかりの早朝に護衛も付けず外を走るなど聞いたことがない。
いや、令嬢と付き合いがあるわけではないが、少なくとも周りでそんな様子は見たことも聞いたこともない。
いつだって令嬢とは、綺麗なドレスを着てお茶を飲み、使用人に傅かれ、扇で口元を覆い、きゃっきゃうふふと騒いでいるものだろう?
いつだってトレーニングとは、ゴツく汗臭い男だらけだ。
「どうしてまた」
「実はダンス部に入ったんですが、普段使わない場所なのか思ったより結構な運動量なのか、ちょっと……あの……筋肉痛が……ですね」
ほう、ダンス部とな。
それにしても、筋肉痛をさも恥ずかしい事のようにもじもじとしながら言う姿が……なんとも可愛らしい。
……可愛らしい?
「家にいた時にはこれでもいろいろトレーニングしていたんですけど、寮に入ってからは全然していなくて……いつの間にかかなり身体が鈍ってたみたいです」
「そうか」
なんと、普段からトレーニングをしていたと。
さすがリーノの妹だ。
よく見れば、普段から姿勢がいいのは鍛えられた体幹から来るものだろうし、細身で引き締まった腰や脚など綺麗な筋肉が……いや、ジロジロ見るのは不躾だ。
「なので取りあえずランニングから始めようかと」
なるほど、そう言う事なら。
「君さえ良ければ、走りやすいコースを教えよう」
「本当ですか。実はどこを走ったら良いのかわからなくて……助かります」
「ああ」
それから並んで走り始め、一番平坦で初心者向けのコースを2周ほど走った。
「はあっはあっ……ダメですね、全然走れません」
「いや、動けている方だろう。毎日走っていけば身体も慣れてくる」
実際、思ったより彼女は体力があるしフォームも綺麗だ。
独学ではなく、経験者の指導を受けていたのかもしれない。
苦しそうに息を乱しているが、続ければもっと走れるようになるだろう。
「初めから無理することはない」
「すみません、先輩のランニングの邪魔をしてしまって」
彼女は息が整うと、そう言ってオレに頭を下げて謝ってきた。
言われてみれば、確かにいつものノルマの半分も走っていないが……。
「邪魔なんかじゃない。オレも久しぶりにあのコースを走って新鮮だった」
「だったらいいんですけど……」
薄紫の瞳を細めて笑う顔が、少しリーノに似ている気がして、懐かしく思ってしまう。
やはり兄妹なのだな。
「汗をかいたろう。冷えると風邪を引く。もう戻るといい」
長い髪を纏めたから見える項ににつっと伝う汗がひどく艶かしく見え、湧き上がった衝動を抑えるように視線を逸らせた。
「あ、そうですね。今日はありがとうございました」
「ああ」
そう言って踵を返し、彼女は寮へと戻っていく。
イイのか?折角少し話せるようになったのに、すんなり別れてしまって。
「あ、明日も、この時間走るから……」
そう声を掛けると、戻りかけた彼女が足を止めて振り返る。
「ご一緒していいんですか?」
「構わない」
「わかりました。じゃあまた明日」
「ああ」
ノープランで挑んだ事だったが、何とか上手く次に繋げることが出来た。
「っし!」
この調子で距離を縮めていければ、リーノのことも聞き出せるかもしれない。
そんな調子で、毎朝の彼女とのランニングが日課となった。
オレは、いつも一人だったランニングに誰かが……彼女がいることが、存外悪くないものだと思い始めていた。
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