よわよわ魔王がレベチ勇者にロックオンされました～コマンド「にげる」はどこですか～

＃４：宿泊研修～準備編

＃４－５④．適度な距離感を維持したい

「まあ、さすがお若いだけあって毛穴レス」
「水分量も皮脂量も完璧、もちもちすべすべですわ」

　ドールたちに見送られ、マリナはいろんなボトルが所狭しと並んだ部屋に連れてこられた。
　そこで待っていたお姉さま方に身ぐるみ剥がされて施術を受ける。

「なんて肌理細やかで白い肌」
「よほど美容に詳しい侍女がいらっしゃいますのね」

（あ、それ、正体は男性(１９)です）

「ぷっくりしっとり柔らかい唇ですわね」
「髪もさらさら艶々でかなり入念にお手入れされてますわ」

（ゲネル日々のお手入れありがとう。すんごい褒められてるよ）

　声を出せないマリナは、盛大に心の中で感謝を送っておく。

「あら、リンパも詰まってないしセルライトもないだなんて、とても丁寧なマッサージを受けておられるのね」

　お姉さま方はオイルを手に全身マッサージを施しながら感心しているようだけど、うーん……？

（ゲネルにされたのは脚だけだった……よね？）

　と言った具合で、マリナは寄ってたかって撫で回され何かを測られ弄り回され、データ収集とお手入れ(？)は何とか終わり……。
　なんと、サンプルが出来る間にとプロのお手入れを受けたマリナは、全身ぴかぴかに磨き上げられてしまった。

（すごい、いろんな所がすべすべつやつやだわ）

　採られたデータを元に成分を配合してサンプルを試し、あとは好みの香りとボトルを選ぶようだ。

（そうね……ボトルの色は……）

　自分で選べるのなら……と好みの色を指定する。

「出来上がりましたらアカデミーのオージェ様宛にお届けいたします」

　ではと、店長さんをはじめお世話になったお姉様方に、腰を深く折って研究室ラボから見送られた。

（気持ちよすぎて癖になってしまう……）

「また来たかったら私を呼んで下さいね」
「そんな、まさか！」
「遠慮はなし、と言ったでしょう？貴女がより綺麗になるのに手間暇は惜しみませんよ」

　頭をポンポンと優しく撫でた手が、そのままするりと頬を掠め一撫でして離れていった。
　普段あまり表情の変わらないドールが緩く微笑むのを見て、珍しいものを見たような気になる。

「さーお腹空いたねえ。ランチにしよっかー」

　並んで歩いていたマリナとドールの間からするりと顔を出したマシューに腕を取られ、ぐいぐいと引っ張られて歩き出す。
　昨日と打って変わって心から楽しく感じたマリナは、どちらも「友達なのに……」と不思議に思った。