よわよわ魔王がレベチ勇者にロックオンされました~コマンド「にげる」はどこですか~

サノツキ

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#4:宿泊研修~準備編

#4-6①.気になるお年頃だもん

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 連れて行ってもらったランチでも軽いコースを食べられる店は、とても静かで落ち着いた雰囲気で、食事は勿論美味しかったし、中庭に見える風景も素敵で、ゆっくり時間を掛けてお昼の時間を楽しめた。

(友達が好きなものを知る、ね)

 意識してよく見てみると、マシューはパイ包みやグラタンが好きで人参は嫌い、ドールはカルパッチョなどあっさりした魚介が好きで味が濃いものは苦手、と知る事ができた。

(うん、お茶やお菓子だけじゃ気付かない事も多いわね)

 またどうぞと名刺ももらった事だし今度はマルセルを連れて来ようと、頂いた名刺はポーチの奥に大切に仕舞った。



「次はどこ行きたいー?」

 今日はマリナの買い物だと言うのに、随分楽しそうなマシューに手を引かれ大通りを歩く。
 あまりにも自然に手を取られたので離すタイミングもなく、念の為手袋をしてきておいて良かったと安堵した。
 ドールは「もう少し研究室ラボに用がある」との事でランチの後別れた。

「えっと……ですね」

(本当はドレスを選びに行きたい……んだけど)

 宿泊研修の冊子にはダンスパーティーがあると書かれていた。
 経験者のゲネルに聞くと、「夜会ほどじゃない軽いもの」とのことなので本格的なドレス一式はいらないだろうが、簡易的なものでも用意はいる。

 用意できない人用にレンタルもあるとあったが、背が高くそれでいて細身のマリナの体型ではなかなか既製品で合う物もないだろうし、屋敷には自分のドレスがそれこそ山のようにあるのだ。
 作るだけ作って一度も袖を通したことがないドレスも沢山ある。
 合わないドレスを借りるという選択肢は端から消え、かと言って屋敷から持ってきているものもあるにはあるが、最新のデザインも見ておきたいと言うのが乙女ゴコロというものだ。

 ただ、今ランチをお腹いっぱい食べたばかりで、少しウェストがオーバー気味なのが気がかりではある。
 こんな状態でサイズを測られたら困る……とマリナは空いた手をお腹に当ててじっと見下ろした。

「ははあ、さては『ドレス買いたいけどお腹いっぱい食べちゃってウェストオーバーしてたらどうしよう~』って感じ?」
「!!!」

(そんなにわかりやすい顔をしてたかしら?)

 マリナの声音まで真似してそう言ってくるマシューに、ずばり心の中を的確に読まれていて返す言葉もない。

「あははーマリナちゃん、顔に出過ぎー」
「そんな顔に出てますか?」

(おかしいな、感情を出さないよう育てられたし上手く隠してきたつもりなのに)

 どうもアカデミーに来てからコントロール出来てない気がする。
 無意識ならより厄介だ。

「んんーそんな事ないんじゃない?僕には解るってだけだよ」

 ゲネルにもよくそう言われる。「『読ま』なくてもわかる」って。
 まあ彼には何も隠すことなどないから、わかられようが「読ま」れようがどうでもいいのだが。

「そんな悩み多きマリナちゃんに紹介したいお店がありまーす」

 マシューにわかられるのはいいか。
 言わなくてもわかってもらえるのは、それはそれでありがたいと思うことにして、マリナは一先ずほっとした。
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