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人間嫌いの勇者
VS勇者 前編
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「これは…………」
《世界勇者評議会》が借り切っている宿舎。
その一室にて、勇者正彦は部屋へ戻るなり、ある一通の手紙を読んでいた。
『今夜、東の森の湖で待つ。必ず、一人で来られたし』
来なかった場合、同行者がいた場合は問答無用で町が不幸に見舞われると、続きには書いてあった。
まず間違いなく、自分が狙いなのは分かった。
そして、差出人は女神様が言っていた人物だろう。
女神様の言う通りなら、その人物の性格からしてこれは脅しではない。
必ずやる。
そう言った類の文面だ。
だから、私は言われた通りに一人で所定の場所に来た。
そして、そこで目にしたのは湖の中央に佇むフードを被った謎の少女だった。
------------------------------------------
「来たか…………」
俺は目的の奴が来たのを確認すると、思わず頬が緩む。
相手はいつでも戦闘態勢に入れるように剣に手をかけていた。
とりあえず、まずは咳払いをして会話を始める。
「ようこそ、いらっしゃいました勇者様。今宵は満月。とても煌びやかで、幻想的な日だと思いませんか……?」
妙に演技がかった仕草で話し掛けると勇者正彦は警戒するように、無言で俺の様子を窺っていた。
「特に最近の勇者様は私にゾッコンのようで…………。正直、わたくしも非常に迷惑を被っている訳ですよ」
「……………………」
「ですから、勇者様…………。
ここで------------死んでくれません……?」
「くっ!!」
俺が勇者の前へと一気に距離を詰めると、右手に持っていたもので斬り付けた。
まあ、そこは勇者。
初見で見切った上で、防いじゃうんだからさ…………。
「流石は勇者様。なら、これならどうかな!?」
「させない!!」
俺の追撃を何度も受け流し、かわし続ける勇者。
流石に場慣れしている上、聖剣の力で身体機能を強化しているみたいだな…………。
しかも、ちゃっかり俺の情報を読み取ろうとしている。
「やっぱり、この姿のままじゃ押し切れないか」
「はあっ!!!!」
「おっと…………!」
顔スレスレで聖剣の刃をバックステップを用いて回避したが…………。
「へぇ~…………」
完璧に回避したと思ったが、フードの一部が切れていた。
一応、防刃素材なんだが、やはり、聖剣は侮るべきではなさそうだ。
「大人しく投稿してくれないかい?」
勝利を確信しているのか?
勇者はそんな事を聞いてくる。
もう俺が誰だか、理解しているようだ。
「女神様達から聞いた。
君の力があれば、魔王軍との戦況を一変させる事が出来ると…………。
なら、その力を力無き者達のために生かすべきだよ」
はあ……?
何言ってんのこいつ……?
何か、説得始めちゃったよ。
「今も何処かで、誰かが私達、勇者の助けを待っている。
だから、君も…………」
「滅べばいいじゃん」
「は……?」
俺の発言に勇者が間の抜けた顔をする。
何を言っているのか、分からない、といった感じだ。
「だから、滅べば良いんだよ。こんな世界も、人間も…………」
「な、なっ…………!?」
勇者は明らかに狼狽していた。
俺は気にする事なく、話を続ける。
「何か、あんたは色々と勘違いしているみたいだが…………。
俺はそもそも勇者をやるなんて言ってねえよ」
「…………ふざけているのか……?」
段々と状況を理解出来てきたのか、勇者の顔が見る見る怒りに染まっていく。
「ふざけてなどいるもんか。
良いか……?
耳の穴かっぽじって良く聞けよ?
俺は何処で誰が死のうが知った事じゃねぇ…………。
むしろ、死んでくれて清正するぜ」
「……………………」
勇者の聖剣の柄を握る手が強く握られる。
「大体、何で俺が人間なんてもんを守らなくちゃいけないんだ?
こんな醜くて、浅ましい生きもんを守って何の意味がある?
守っても、喜ぶのはお前みたいな偽善者だけだろうが…………」
俺も俺で、いつにも増して饒舌に話している。
やっぱり、ストレス溜まりまくっていたみたいだ。
あぁ、気持ちが楽になる。
「だから、私達に協力しないと……?」
「する訳ねぇじゃん!
何、君……?
もしかして、クラスでいう委員長タイプみたいな奴なの……?」
明らかに小馬鹿にしたように勇者を笑うと、勇者は一気に動いた。
そして、振り上げた聖剣を振り下ろし--------
「きゃあああっ! や~ら~れ~る~…………」
わざとらしい悲鳴を上げて余裕で回避。
振り下ろされた聖剣は湖へと吸い込まれて--------そのまま、湖の水そのものを蒸発させた。
「わおっ!? おっかないなあ~…………」
「っ!? 貴様!!」
その目は憎々しげに俺を睨み付ける。
俺は右手に手にしているもの…………刀状の魔道具を勇者に切っ先を向け、構える。
「さて、第二ラウンドと行きましょうか? ねぇ、勇者様…………」
俺は邪悪に微笑み、勇者へと駆け出した。
《世界勇者評議会》が借り切っている宿舎。
その一室にて、勇者正彦は部屋へ戻るなり、ある一通の手紙を読んでいた。
『今夜、東の森の湖で待つ。必ず、一人で来られたし』
来なかった場合、同行者がいた場合は問答無用で町が不幸に見舞われると、続きには書いてあった。
まず間違いなく、自分が狙いなのは分かった。
そして、差出人は女神様が言っていた人物だろう。
女神様の言う通りなら、その人物の性格からしてこれは脅しではない。
必ずやる。
そう言った類の文面だ。
だから、私は言われた通りに一人で所定の場所に来た。
そして、そこで目にしたのは湖の中央に佇むフードを被った謎の少女だった。
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「来たか…………」
俺は目的の奴が来たのを確認すると、思わず頬が緩む。
相手はいつでも戦闘態勢に入れるように剣に手をかけていた。
とりあえず、まずは咳払いをして会話を始める。
「ようこそ、いらっしゃいました勇者様。今宵は満月。とても煌びやかで、幻想的な日だと思いませんか……?」
妙に演技がかった仕草で話し掛けると勇者正彦は警戒するように、無言で俺の様子を窺っていた。
「特に最近の勇者様は私にゾッコンのようで…………。正直、わたくしも非常に迷惑を被っている訳ですよ」
「……………………」
「ですから、勇者様…………。
ここで------------死んでくれません……?」
「くっ!!」
俺が勇者の前へと一気に距離を詰めると、右手に持っていたもので斬り付けた。
まあ、そこは勇者。
初見で見切った上で、防いじゃうんだからさ…………。
「流石は勇者様。なら、これならどうかな!?」
「させない!!」
俺の追撃を何度も受け流し、かわし続ける勇者。
流石に場慣れしている上、聖剣の力で身体機能を強化しているみたいだな…………。
しかも、ちゃっかり俺の情報を読み取ろうとしている。
「やっぱり、この姿のままじゃ押し切れないか」
「はあっ!!!!」
「おっと…………!」
顔スレスレで聖剣の刃をバックステップを用いて回避したが…………。
「へぇ~…………」
完璧に回避したと思ったが、フードの一部が切れていた。
一応、防刃素材なんだが、やはり、聖剣は侮るべきではなさそうだ。
「大人しく投稿してくれないかい?」
勝利を確信しているのか?
勇者はそんな事を聞いてくる。
もう俺が誰だか、理解しているようだ。
「女神様達から聞いた。
君の力があれば、魔王軍との戦況を一変させる事が出来ると…………。
なら、その力を力無き者達のために生かすべきだよ」
はあ……?
何言ってんのこいつ……?
何か、説得始めちゃったよ。
「今も何処かで、誰かが私達、勇者の助けを待っている。
だから、君も…………」
「滅べばいいじゃん」
「は……?」
俺の発言に勇者が間の抜けた顔をする。
何を言っているのか、分からない、といった感じだ。
「だから、滅べば良いんだよ。こんな世界も、人間も…………」
「な、なっ…………!?」
勇者は明らかに狼狽していた。
俺は気にする事なく、話を続ける。
「何か、あんたは色々と勘違いしているみたいだが…………。
俺はそもそも勇者をやるなんて言ってねえよ」
「…………ふざけているのか……?」
段々と状況を理解出来てきたのか、勇者の顔が見る見る怒りに染まっていく。
「ふざけてなどいるもんか。
良いか……?
耳の穴かっぽじって良く聞けよ?
俺は何処で誰が死のうが知った事じゃねぇ…………。
むしろ、死んでくれて清正するぜ」
「……………………」
勇者の聖剣の柄を握る手が強く握られる。
「大体、何で俺が人間なんてもんを守らなくちゃいけないんだ?
こんな醜くて、浅ましい生きもんを守って何の意味がある?
守っても、喜ぶのはお前みたいな偽善者だけだろうが…………」
俺も俺で、いつにも増して饒舌に話している。
やっぱり、ストレス溜まりまくっていたみたいだ。
あぁ、気持ちが楽になる。
「だから、私達に協力しないと……?」
「する訳ねぇじゃん!
何、君……?
もしかして、クラスでいう委員長タイプみたいな奴なの……?」
明らかに小馬鹿にしたように勇者を笑うと、勇者は一気に動いた。
そして、振り上げた聖剣を振り下ろし--------
「きゃあああっ! や~ら~れ~る~…………」
わざとらしい悲鳴を上げて余裕で回避。
振り下ろされた聖剣は湖へと吸い込まれて--------そのまま、湖の水そのものを蒸発させた。
「わおっ!? おっかないなあ~…………」
「っ!? 貴様!!」
その目は憎々しげに俺を睨み付ける。
俺は右手に手にしているもの…………刀状の魔道具を勇者に切っ先を向け、構える。
「さて、第二ラウンドと行きましょうか? ねぇ、勇者様…………」
俺は邪悪に微笑み、勇者へと駆け出した。
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