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本編
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しおりを挟む簡単に肯定されて嬉しいくもある反面、やはり不安もある。気を、遣っているだけかもしれない。……こういうことは有耶無耶にしては駄目だ。今、聞かなければ。
「……その、気持ち悪い、とか、異常だとは、思わないのか…?」
「?兄様をですか?まさか」
意を決した問いに、サディアはこともなげにあっさりとそう言う。
「兄様がこのクソに会ったのは幼い頃だと聞いています。それなら、まぁ、そういうこともあるのではないかと思います。実際、生き別れた兄弟や姉妹が血縁者だとは分からずに親密な仲になったという事例も、聞いたことがあります」
「……サディア、」
「……まぁ、このクソについては異常だとは思ってますが…。僕的には、兄様の相手がこのクソだということの方が不満です」
相変わらず父上を『クソ』呼ばわりするサディアには苦笑を漏らすしかないが、当の父上は特に口を挟むことなく静観してくれているから、問題ないのだろう。器が大きい。
「……ですが、」
言葉を切ったサディアと目が合う。すると、彼はいつも通りの穏やかな笑みを向けてくれた。そこには嘘も、偽りも、なかった。
「僕に唯一寄り添ってくれた、兄様が幸せであることが一番ですから」
「サディア…‼︎」
筆舌に尽くし難い感情が込み上げてくる。思わず幼い頃のように抱きしめてしまいたくなったが、父上に捕まった今の状態では不可能だった。
予想していたかのように腰に回した腕に力を込め直した父上は、そんな俺たちを見て深々とため息をついた。
「サディア…お前はいつになったら兄離れするのだ」
「その言葉、そのままそっくりお返ししますよ父上。そろそろ子離れなさってはいかがですか?」
「……言うようになったな」
「えぇ。…お陰様で」
俺を間に挟んで何故か2人が言い合いを始めた。火花が散っているように見える…幻覚か?かくいう俺も、親離れに、更に弟離れも出来ているとは言い難いから、口を挟むのは辞めておこう。
こういうときは話を逸らすのが一番だな。
「…サディア、これからは俺の勝手で振り回すことになる」
王太子位から退いた俺の代わりに就くのは、当然サディアだ。
未来の王弟として、王の補佐の勉強や経験を積んでいた彼の努力が無駄になってしまった。これから王太子としての教育も、公務も始まって今まで以上に忙しくなる。もちろん俺もその手助けをするつもりだけど、負担をかけることに変わりはない。
「先に謝っておく。………すまない」
分かって決行したことなのに、改めて思うと俺の身勝手ぶりが酷いな。長年の想いに追い詰められていたのもあったけれど、本当に自分のことしか考えていなかった。
父上の膝上で抱えられたまま気落ちする俺の頭に、温かいものが触れた。顔を上げると慈しむような顔で父上が俺を見ていて、サディアの前なのに恥も外聞もなく甘えてしまいたくなった。
認めて、というか容認してくれているサディアの前でも流石に。と思い、我慢する俺の気持ちすら見透かしたかのように、笑みを深めた父上が揉みほぐすように撫で始めて。腑抜けてしまいそうになった俺に、何故かサディアは焦ったように声をかけてきた。
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