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しおりを挟む「(――彼は何を言っているんだ!?)」
どうしてそんなことを望むのか――確かに『なんでも』と王は言ったが、軽んじられているといっても俺は外交を担当しているし腐っても王族だ。正当な第三位王位継承者だというのに。そもそも、俺だぞ? 傍仕えだって望んでいなかったのに……なんでそんなことを――…
流石に平常心は保てなく思いっきり動揺を表に出している俺に、ほとんどの貴族がすぐに興味を失い王の返答を聞こうと視線を戻す。
それにほっとしたのもつかの間、横にいる兄様たち、そして王妃から視線を感じ、俯く。
説明しろと言われても、俺には「分かりません」と答えることしか出来ないので口を噤んだ。
「…ふむ。第三王子か。確かに、第一王子は結婚をしておるし、第二王子には婚約者がおるが、第三王子には婚約者もおらんしの。貴殿が望むのであれば、褒美として相応しかろう。だが、いいのか? 伴侶を望むのなら捕虜でやってきたあの国の姫でもよいのだぞ?」
「いいえ。私は第三王子を望みます。他のどんなものも要りません。不相応だというのなら、爵位も返上して構いません」
「(お、王も何言って…! 大体、俺が彼の功績に見合うほどの褒美なわけがないし、せっかく与えられた爵位まで返上しようとするなんて……!)」
俺が思ったことを貴族たちも思ったのだろう。あまりにもあっさりと了承する王への疑問などが飛び交う。咄嗟に止めようと口を開いたときに、再度王の手が上がる。
「確かにみなの疑問はもっともだが、それほどの働きをしているのは確かだ。この男がいなければ、今頃この首都が戦火に晒されていた可能性だってあるのだ。その功績は戦争を短期で終わらせただけに留まらない。敵将の首まで持って帰った功労者への褒美に異論がある者は余が許す。発言せよ」
そこまで王に言われては、疑問や不満に思っていたとしても、意義を唱えることは誰にも出来なかった。
王はその反応も分かっていたかのようにゆっくりと周りを見回し、「いないようだな」とわざとらしく言葉にした後、彼に視線を戻す。
「では、貴殿への褒美は聞き届けた。爵位の返上は良い。準備ができ次第、下賜する貴殿の領地へと送り届けよう」
「ありがとうございます」
―――どうして、こうなった。
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