転生王女は現代知識で無双する

紫苑

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定番になりつつある異世界転生【学校編】ー3年目ー

48話 噂になっちゃいました。

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次の日…まだ新学期2日目でみんな浮ついている。

学期末の落ち着きからの騒がしさを感じるヘリオス学園。

初日の亜人達の登場もあってか例年の新学期より騒めきが大きい様に感じる。

年々生徒数が増えているのもあるだろうけど…

レイの姿で廊下を歩いていると何人かが私を見ているのが分かる。

昨日考えた作戦の為に1番人が集まる教室の前に立ってアーサーが来るのを待つ。

今年からはアーサー、テト、ジャンも騎士科に所属している。

今迄はあまり授業に出ていなかったが今年からは真面目に出席する事にしたっと言っていた。

待っているとテトとジャンから少し離れてアーサーが近づいてくる。

テトが私を見てから目線を外した気がした。
その様子が昨日からのテトの元気の無さと相まって気になった。

そのままテトの様子を観察していると、いつの間にかアーサーが目の前に来ていてニヤニヤ顔の揶揄う時の笑顔全開で笑っている。

「レイ!」

大きな声で名前を呼ばれてテトから目線を向けると、アーサーはみんなに見える様に私の手首を持ち上げると甘噛みして離れる時優しく舌を出して舐めた。

その瞬間、全身が熱を持ったのが分かる。

獣人族にとって、急所への甘噛みは最上級の求愛行動で最上級の愛情表現だ。

言うなればこれは人族のキスと同じというか…それ以上と言っていいと思う。

作戦では抱き締めて見せつけると言っていたのにあまりの行動に口をぱくつかせてしまいそうになる…でも、そのまま当初の目的の為に合わせる事にした。

「アーサー、みんなの前で恥ずかしいでしょ。でも今日も貴方に会えて嬉しい。」

そう言って抱き締めた。

アーサーも優しく抱きしめ返してくれた。

「だって、今日からはもう隠さなくて良いと思うと俺嬉しくて。」

その姿を見ていた生徒達が男も女も顔を真っ赤にして騒めきが波紋の様に広がっていった。

アーサーの身体の横からジャンがお腹を抱えて笑っている姿が見える。
テトはやはりこちらを一切見ていなかった。

この学園で恋愛結婚が増えたと言っても愛情表現を見る事は全く無いと言っていいと思う。

誰かが口づけをしている所を見た事なんて無かったし…あって手紙を渡したり、ご飯を一緒に食べたり…後は家同士の交流でというのが普通だ。

我が家では両親はラブラブだから口づけをしている所は見た事があるがそれも頬や手にだ。

獣人族の群れに遊びに行けば甘噛みをしている所なども見た事もあるが…

自分が誰かとその様なスキンシップをしている事に思ったより動揺してしまった。

獣人族はとても顎の力が強いので甘噛みするのはとても気を遣っていて、本当の愛情表現だと分かっているだけにアーサーにそれをされた事で一気に体温が上がってしまう。

それに、アーサーに初めて噛まれて本当に驚いてしまった。

でも彼氏ならこの位のスキンシップをする事が自然な事だとアーサーを抱き締めながら自分に言い聞かせて納得させる。

朝の廊下で起きたレイとアーサーのその一幕は学園中で話題になり予想以上の効果を発揮した。

あまりの噂の盛り上がりにアーサーと一緒にライデン先生に呼び出されてしまった。

ライデン先生はアーサーを見つめた後に小さく溜め息をつくと笑った。

「アーサー…事情はある程度知っているが獣人族と人族では愛情表現に対する免疫は違う。その辺を考えて行動しなさい。」

「はーい。」

「お前のそういう所は私に似てしまったのか…」

「ライデン先生。お騒がせしてすみません。予想以上に騒ぎになってしまって。」

「気をつけてください。他の先生方も心配してましたから。」

「親父にこーゆー事で注意されるって面白いな。」

アーサーは面白そうに笑っている。
私は思わず苦笑いになってしまう。

交際相手の父親にスキンシップに対して注意されるとかいったいどんな状況なんだ?

ライデン先生は一年の時からヘリオス学園に居てくれているアーサーの父親だ。

生物学を元々受け持っていたが、去年からは語学、《世界向上クラブ》も受け持っていてくれる。

人族の奥さんが居ただけあって人族に対しての理解も深くそして、色んな事に力を貸してくれている。

午後の授業のカリキュラムの時の護衛役になってくれる1人でもある。

ライデン先生と少し話してから部屋を出る。

先生一人一人に研究や勉強が出来る様に個別の部屋が用意されている。

先生達全員が入れる会議用の職員室もあるが、呼び出されたのはライデン先生の個別の部屋だった。

気を遣わせてしまった様だ。

とりあえず今日は周囲にとことん見せつける為に手を繋ぎながら廊下を歩く。

食堂に着くと一斉に視線が集まった気がする…

注文して食堂の1番人目につきそうな場所に2人で座る。

すると、授業の時は聞けなかったので耐えきれなかったのか平民で騎士科で一緒の少年達が周りに集まって来た。

「レイ!お前付き合ってる人が居たのか?」

「それも…獣人?!」

「ジャンじゃなかったのか?」

アーサーに聞こえない様に私の耳の近くで極力声を抑えているがアーサーには全く意味が無く全部聞こえてしまっている事だろう。

他の生徒達も気になっている様なので不自然にならない様に他の人にもわざと聞こえる様に答える。

「実はずっと好きで昨日思いを伝えて付き合える事になったの。」

「ぇえ?!昨日?」

「えっと、アーサーさんはレイの事知ってたんですか?」

「ぁあ、アーサーでいいぞ。お嬢についてあっちの学校に行っている時から気になっていたんだ。やっと付き合えて嬉しくて今日俺は舞い上がってるんだ。」

その堂々とした交際宣言に質問していた少年達はみんな頬を赤くした。

私は声の聞こえない人にも見せつける様にカルボナーラをフォークに巻きつけるとアーサーの口の前に差し出した。

「はい。カルボナーラも美味しいよ。食べてみて。あーん。」

アーサーの笑っていた顔が一瞬固まった様に見えたが…そのまま口を開きフォークに巻きついたカルボナーラを頬張った。

《世界向上クラブ》の人が見たら今の行為は獣人に対しての特別な愛情表現である事が分かった筈だ。

獣人は食料をその手ずから貰う事を特別な愛情表現としている。

大体は両親が子供にその様にするからだろうし、生きていく上で食べる事はとても重要で自分の食べ物を相手に分け与えるのは生命の分配と認識しているのかもしれない。

続いてアーサーもハンバーグをフォークに一口サイズに分けて刺すと私の口の前に差し出した。

「レイ。ハンバーグも美味しいから食べてみな。」

先程から女の子からは「キャーキャー!」可愛い声と男の子からは「オーオー!」っと言う叫び声?が聞こえてくる。

それらの声を気にしない様にしながら差し出されたフォークに齧り付き笑った。

「本当だ。アーサーから食べさせて貰ったら余計美味しく感じちゃった。」

「あはは、可愛い事言うなぁ。」

そう言って私の口の横についていたらしいソースを指で拭うとその指についたソースを舐めた。

一層激しい奇声?が食堂に響いた。

こうしてアーサーと私はヘリオス学園の最初の公認カップル?になった。

娯楽として人々の楽しみになったのだ。

物語の中の様な恋に学園の生徒は熱狂した。

その頃丁度種族違いの恋愛小説が人気だった事もありその物語を生で見ている感覚だった様だ。

こうして、獣人族の青年と人族の平民の少女の騎士科での種族違いの恋愛は学園の生徒達の娯楽の一つとなった。

この出来事から騎士科に入る少女は自分自身の騎士を見つける事が初日に行われ、その後その任命された騎士がその少女を守りお互い成長する事が常になった。

そして、子供達が憧れる物語の一つになった。

この偽彼氏作戦がそんな綺麗な形になった事にその後驚愕するレイチェル達だったがそれはまだ先の話。

この偽彼氏作戦でちょかいをかけたかった人々は早々に諦めて2人を応援する事になっていたのもまだレイチェル達は知らない。
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