不機嫌なヒーロー

ぴかち

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3.回想(悠人編)

2.悪夢の中で(悠人視点)

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永久くんの栞のおかげで、僕は少しだけクラスに馴染むことができた。それ以来、僕はますますこの栞を大切にするようになった。それまでは常に手にしていた栞を、握りしめてくしゃくしゃにしてしまわないように、本に挟むようになった。それがきっかけとなり、僕はたくさんの本を読むようになった。


そして、ある時一人のクラスメイトが声をかけてきた。

翔「…何の本読んでるんだ?」

僕は急に話しかけられてどぎまぎしてしまい、返事をすることができなかった。翔くんからすると、僕が無視したように見えたのだろう。そのことが気に食わなかったらしい彼は、次の日から彼と仲のよかった大地くん、恭也くんと共に僕をいじめるようになった。

最初は冷たい言葉を投げかけられるだけで、耐えられないほどではなかった。しかし、次第にいじめはエスカレートしていった。

ようやく少し打ち解けられたクラスの友人たちは、彼らに目をつけられないよう、僕に関わるのを避けはじめた。

僕は当然だと思った。僕が友人たちの立場なら同じ事をすると思ったからだ。きっと本物のヒーローである永久くんなら僕を助けてくれると思ったが、ここで耐えられなければ僕は弱虫のまま、永久くんのようなヒーローを目指すことができなくなると思った。

だから僕は、一人で耐えることを選んだ。


そしてある時、僕は大切な栞を彼らに奪われた。

悠人「…!返して!!」

いつもは怖くて何も言い返せなかったが、この時だけは言い返した。その栞は、世界で一番大切なものだったから。

普段は何を言っても反応しない僕が、大きな動揺を見せたことが彼らには面白かったのだろう。

翔「返してほしかったら、自分で取りに行けよ」

そう言って、彼らは栞を学校の池に捨てた。

僕はもう栞のことしか考えていなかった。自分の身体が弱いことを忘れていた。池に飛び込み、無我夢中で栞を掴んだ。そして何とか池から這い出た時には、もう動く力が残っていなかった。

(僕…このまま死んじゃうのかな。怖いよ…
助けて、永久くん。)

遠ざかる意識の中、僕はヒーローになることを決意してから初めて、永久くんに助けを求めた。

池から這い出たまま動かない僕を見て、

大地「お…おい、さすがにまずくないか?」

恭也「俺、先生呼んでくる!」

そのまま僕は、意識を失った。
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